前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第5話:久しぶりにお兄様と沢山話をしました

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「私だって、手当ぐらいできますわ。まあ、昔の私なら絶対にこんな事をしなかったでしょうけれど…自分で言うのも何ですが、少し前の私は我が儘で傲慢で、どうしようもないクズでしたわ。でもこれからは、人様にご迷惑をおかけしない様に生きようと思っております。

 お兄様にも、今まで沢山迷惑をおかけしてごめんなさい。これからはお兄様にも、極力ご迷惑をおかけしない様に生きていきますので、どうかご安心を」

 胸を叩いてアピールをした。

 そんな私を、キョトンとした顔で見つめるお兄様。

「やはり使用人や父上、母上が言っていたことは本当だったのだな…ソフィーナの性格が、180度変わってしまったというのは…」

 口を押え、お兄様がブツブツと何かを呟いている。きっとまだ、お兄様は私の性格が変わった事に、困惑しているのだろう。

「お兄様が驚かれるのも、無理はないですわ。ですがどうか今の私に慣れて下さいね。それでは私は今から、綺麗なバラを見ながらお茶を楽しみますので、これで失礼いたします」

 令嬢らしくカーテシーを決め、クルリと反対側を向いた。

「待って、ソフィーナ。俺も一緒にお茶をしてもいいかな?最近はあまり、ゆっくり話をしたことがなかっただろう?だから、その…」

「もちろんですわ。それでは一緒にお茶をしましょう」

 お兄様の手を握り、中庭の奥に進んでいく。いつの間にかすっかり大きくなった手。

「お兄様、覚えていますか?まだ私が幼かった時、いつもお兄様に着き歩いていましたよね。スタスタ歩いていくお兄様を必死に追いかけて。私が“お兄様、待って”と声をかけると、私の方に戻って来てくれて。スッと手を取って歩いてくれていましたよね」

「ああ、そんな事もあったな。あの頃のソフィーナは、いつも俺につき歩いていたな。あの頃は本当に可愛かったな…」

「お兄様?」

「いや、何でもない。ただ、まさかこの歳でソフィーナと一緒に、手を繋いで歩いていることが不思議なだけだよ」

 そう言って笑ったお兄様。懐かしいわ、お兄様はふとした瞬間、こうやって笑いかけてくれるのよね。

「お兄様のその笑顔、私は大好きですわ。これからも笑顔でいて下さいね」

 ギュッとお兄様の腕に抱き着いた。私は前世では、兄弟姉妹がいなかった。だからこうやって、お兄様と話せるのがなんだか嬉しい。

「本当にソフィーナは変わったのだね。さあ、お茶にしよう。この辺りだろう?」

「ええ、そうですわ。ここです」

 2人向かい合わせに座ると、すぐに使用人たちがお茶とお菓子を準備してくれた。もちろん、私の大好きなお茶とお菓子だ。

「いつもありがとう。このお菓子、美味しいのよね」

 使用人にお礼を言うと、早速お菓子を頂く。さすが公爵家の料理人が作っただけの事はある。ほっぺたが落ちるくらい美味しいわ。もう1つ食べちゃおう。

「ソフィーナは、そのお菓子がお気に入りなのかい?それにしても、君が使用人にお礼を言うだなんて。話には聞いていたが、実際目の当たりにすると、なんだか現実ではないような気がして」

「もう、お兄様ったら。だから私は変わったと言ったでしょう。お兄様もそんな顔をしていないで、食べて下さい。とても美味しいですよ。さすが我が家の料理人たちですわ」

 ちょうど口をあけていたので、その隙間にお菓子をねじ込んだ。どうだ、美味しいだろう。

「ソフィーナ、急にお菓子を放り込まないでくれ。だが、確かに美味しいな…」

「そうでしょう、お兄様も苦いお茶ばかり飲んでいないで、たまには甘いお菓子も食べないと。甘いものには、疲れをとってくれたり、リラックスできる効果があるのですよ」

 どうだ、物知りだろう!そんな気持ちで伝えたのだが、何を思ったのか、お兄様が急に声を上げて笑い出したのだ。一体どうしたのかしら?

 訳が分からず、コテンと首をかしげる。
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