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第4話:お兄様、お久しぶりです
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誰かいるのかしら?
草むらの方に目をやると、口をあけて固まっている人物が。この人は…
「お兄様、お久しぶりですわ。こんなところでどうされたのですか?もしかしてお兄様もお天気がいいから、中庭を散歩されていたのですか?本当に素敵なお庭ですものね。私なんて、つい鼻歌を歌って、踊ってしまいましたわ。健康な体だと、どれだけ動いても息が切れないのですもの。あぁ、なんて幸せなのかしら?」
こんな風に踊って歌っても、まだまだ元気なのだ。健康って本当に最高ね。それにこのお花、いい香りがするし。せっかくだから、お部屋に飾ろうかしら?
「…ソフィーナが事故のせいで、おかしくなったとは聞いていたが…ここまでおかしくなってしまったとは…」
ん?お兄様、何か今呟いた?
「お兄様、さっきから固まって、どうされたのですか?そうだわ、お兄様にも謝らないと。今まで酷い我が儘なクズ妹で本当にごめんなさい。お兄様も、私のせいで色々と苦労したでしょう?これからはお兄様にご迷惑をおかけしない様に、生きていきますわ」
両親に溺愛され、わがまま放題の私に、唯一苦言を呈していたお兄様。正直前までは、そんなお兄様が大嫌いだった。お兄様も私の事がきっと、嫌いだろう。
現に私が事故を起こしてから、一度も様子を見に来ることがなかったのだ。まあ、気持ちは分からいではない。あんなクズな妹など、心配する価値もないと思ったのだろう。
今思うと、あれほどまでにクズでどうしようもない妹を持ったお兄様が、気の毒だったとしか言いようもない。お兄様はクズな私とは違って優秀で真面目で、正義感が強いのだ。
きっと今まで、クズな妹のせいで苦労してきただろう。だからこれからは、お兄様の足を引っ張らない様に、真面目に生きていこうと思っている。
「お兄様、このお花、とてもいい香りがしますの。お兄様もお部屋に飾るといいですわ。いつもお勉強ばかりしているのでしょう?たまにはお花の香りをかいで、リラックスする事も大切ですわ」
使用人からハサミを借り、近くにあったお花を何本か切って渡したのだが…
なぜか固まって動かない。
「お兄様?大丈夫ですか?お兄様」
「あ…ああ、大丈夫だ。せっかくだから、花は頂いていこう。それじゃあ俺は、まだやらなければいけない事があるから…」
そう言ってお花を受け取ると、クルリと反対側を向いたお兄様。ぎこちない動き方で歩いていったかと思ったら
「お兄様、危ない!」
ゴンっと、木に頭をぶつけたのだ。いつも冷静で、私を睨みつけているお兄様が、木に頭をぶつけるだなんて。
「お兄様、大丈夫ですか?すぐに濡れたタオルを持ってきて」
「お…俺は大丈夫だ。ちょっと考え事を…」
「大変、おでこから血が出ていますわ。すぐに手当てをしないと」
「お嬢様、濡れタオルをお持ちいたしました。お坊ちゃま、すぐに医者を手配いたします」
「大したことはない。本当に…」
「救急箱を持ってきて。私が手当てをするわ。それにしても、いつも凛としているお兄様が、あんな風に木で頭をぶつけるだなんて」
おでこに濡れたタオルを当てながら、笑いが込みあげてきた。
「それに、歩き方も変でしたよ。左右の手足が同時に動いていましたもの」
思い出したらおかしくて、声を上げて笑ってしまった。そんな私を、またお兄様が目を見開けて見ている。
「ごめんなさい、別に私は、バカにしていた訳ではないのですよ。ただ、いつも真面目なお兄様でも、そんな事があるのだなって。そう思っただけですわ」
私は決してバカにした訳ではないのだ。
「いや、別に怒っている訳ではない。ただ…ソフィーナがこうやって無邪気に笑う顔を見たのが久しぶりで…」
「確かにこんな風に笑ったのは、久しぶりですね。でも、私だっておかしかったら笑うんですよ。はい、手当てが完了しましたよ。これでもう大丈夫です」
前世の記憶を頼りに、手当てを行った。私だって、やれば出来るのだ。
「ありがとう…まさかソフィーナに、手当てをしてもらう日が来るだなんてな…」
そう言ってお兄様が苦笑いをしていた。
草むらの方に目をやると、口をあけて固まっている人物が。この人は…
「お兄様、お久しぶりですわ。こんなところでどうされたのですか?もしかしてお兄様もお天気がいいから、中庭を散歩されていたのですか?本当に素敵なお庭ですものね。私なんて、つい鼻歌を歌って、踊ってしまいましたわ。健康な体だと、どれだけ動いても息が切れないのですもの。あぁ、なんて幸せなのかしら?」
こんな風に踊って歌っても、まだまだ元気なのだ。健康って本当に最高ね。それにこのお花、いい香りがするし。せっかくだから、お部屋に飾ろうかしら?
「…ソフィーナが事故のせいで、おかしくなったとは聞いていたが…ここまでおかしくなってしまったとは…」
ん?お兄様、何か今呟いた?
「お兄様、さっきから固まって、どうされたのですか?そうだわ、お兄様にも謝らないと。今まで酷い我が儘なクズ妹で本当にごめんなさい。お兄様も、私のせいで色々と苦労したでしょう?これからはお兄様にご迷惑をおかけしない様に、生きていきますわ」
両親に溺愛され、わがまま放題の私に、唯一苦言を呈していたお兄様。正直前までは、そんなお兄様が大嫌いだった。お兄様も私の事がきっと、嫌いだろう。
現に私が事故を起こしてから、一度も様子を見に来ることがなかったのだ。まあ、気持ちは分からいではない。あんなクズな妹など、心配する価値もないと思ったのだろう。
今思うと、あれほどまでにクズでどうしようもない妹を持ったお兄様が、気の毒だったとしか言いようもない。お兄様はクズな私とは違って優秀で真面目で、正義感が強いのだ。
きっと今まで、クズな妹のせいで苦労してきただろう。だからこれからは、お兄様の足を引っ張らない様に、真面目に生きていこうと思っている。
「お兄様、このお花、とてもいい香りがしますの。お兄様もお部屋に飾るといいですわ。いつもお勉強ばかりしているのでしょう?たまにはお花の香りをかいで、リラックスする事も大切ですわ」
使用人からハサミを借り、近くにあったお花を何本か切って渡したのだが…
なぜか固まって動かない。
「お兄様?大丈夫ですか?お兄様」
「あ…ああ、大丈夫だ。せっかくだから、花は頂いていこう。それじゃあ俺は、まだやらなければいけない事があるから…」
そう言ってお花を受け取ると、クルリと反対側を向いたお兄様。ぎこちない動き方で歩いていったかと思ったら
「お兄様、危ない!」
ゴンっと、木に頭をぶつけたのだ。いつも冷静で、私を睨みつけているお兄様が、木に頭をぶつけるだなんて。
「お兄様、大丈夫ですか?すぐに濡れたタオルを持ってきて」
「お…俺は大丈夫だ。ちょっと考え事を…」
「大変、おでこから血が出ていますわ。すぐに手当てをしないと」
「お嬢様、濡れタオルをお持ちいたしました。お坊ちゃま、すぐに医者を手配いたします」
「大したことはない。本当に…」
「救急箱を持ってきて。私が手当てをするわ。それにしても、いつも凛としているお兄様が、あんな風に木で頭をぶつけるだなんて」
おでこに濡れたタオルを当てながら、笑いが込みあげてきた。
「それに、歩き方も変でしたよ。左右の手足が同時に動いていましたもの」
思い出したらおかしくて、声を上げて笑ってしまった。そんな私を、またお兄様が目を見開けて見ている。
「ごめんなさい、別に私は、バカにしていた訳ではないのですよ。ただ、いつも真面目なお兄様でも、そんな事があるのだなって。そう思っただけですわ」
私は決してバカにした訳ではないのだ。
「いや、別に怒っている訳ではない。ただ…ソフィーナがこうやって無邪気に笑う顔を見たのが久しぶりで…」
「確かにこんな風に笑ったのは、久しぶりですね。でも、私だっておかしかったら笑うんですよ。はい、手当てが完了しましたよ。これでもう大丈夫です」
前世の記憶を頼りに、手当てを行った。私だって、やれば出来るのだ。
「ありがとう…まさかソフィーナに、手当てをしてもらう日が来るだなんてな…」
そう言ってお兄様が苦笑いをしていた。
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