前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第12話:お優しい方ばかりです

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「お兄様、私、皆様に謝罪したいのですが」

「ああ、分かっているよ。それじゃあまずは、あいつらからにしようか」

 お兄様の視線の先にいるのは、公爵令息のアレック様とセシル様だ。2人ともお兄様のお友達で幼馴染。あの2人にも、散々迷惑をかけた。しっかり謝らないと。

 ただ、私たちが2人の方を向くと、スッと視線をそらされてしまった。今までの私のクズっぷりを考えると、私とは関わりたくないと思っても仕方がないだろう。

 それでもお兄様と一緒に、2人の元へと向かった。

「アレック、セシル。久しぶりだな」

 お兄様がまずは声をかけた。

「…ああ…ソリティオか、久しぶりだな…その…」

「珍しいな、お前がその…」

「アレック様、セシル様、お久しぶりです。今まで散々暴言を吐いたり、時に暴れたりとご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。本当になんとお詫びをしたらいいか…許してもらえるだなんて思っておりませんが、どうか謝罪させてください」

 大きな声で、はっきりと2人に謝罪し、そして深々と頭を下げたのだ。私が今までにやった事を考えれば、到底許される事ではない。それでも、しっかりと謝罪だけはしたいのだ。

「ソフィーナ嬢、頭を下げてくれ」

「ソリティオ、一体何があったのだ?俺たちにわかるように説明してくれ」

 動揺する2人が、お兄様に助けを求めている。

「ソフィーナは、3ヶ月前の事故ですっかり人格が変わってしまったのだよ。今までの行いを恥じ、謝罪するために今日の夜会に参加したんだ。だからどうか、ソフィーナの事を、許してやって欲しい」

 お兄様も私の為に、2人に頭を下げてくれたのだ。どこまでもお優しいお兄様。

「おい、ソリティオまでやめてくれ。ソフィーナ嬢、君の気持ちも理解したよ。だから、どうか2人とも頭を上げてくれ」

「そうだよ、ソフィーナ嬢が心から反省して謝罪してくれたんだ。俺はソフィーナ嬢を許すよ」

「もちろん、俺も許すから」

「まあ、本当ですか!アレック様、セシル様。ありがとうございます。あんなにも酷い事をしたどうしようもないクズ令嬢の私を、許してくださるだなんて。お2人はどこまで心が広いお方なのでしょう。なんとお礼を申し上げたらいいか」

 お兄様のお友達は、なんという心の広い人たちなのだろう。きっとお兄様に免じて、私の事を許してくださったのだろう。2人の懐の深さに感激し、涙ながらに2人の手を握り、感謝の気持ちを伝えた。

「ソ…ソフィーナ嬢…君って子は…」

「やべ…可愛すぎるだろう…」

 なぜか2人の顔が、一気に赤くなったのだ。一体どうしたのだろう。状況がいまいち理解できずに、首をかしげる。

「ソフィーナ、軽々しく男の手を握るには良くないよ。ほら、他にも謝罪に行きたいのだろう?それじゃあアレック、セシル、また後で」

「アレック様、セシル様、お許しいただき本当にありがとうございます。これからは、私とも仲良くしてくださいね」

 固まっている2人に挨拶をして、その場を去る。ただ、まだ顔を赤くして固まっている2人。大丈夫かしら?

 その後も、片っ端から貴族たちに謝罪をして回った。皆なぜか口をあんぐりあけて固まっている人が多かったが、それでも皆私の謝罪を受け入れてくれたのだ。それどころか、これからは仲良くしたいと言ってくれたお優しい方までいた。

「お兄様、この国の貴族の方たちは、皆様心がとても広い方ばかりなのですね。あんなにも酷い事をしたのに、こんなにあっさりと許してくださるだなんて」

「そうだね…ねえ、ソフィーナ、申し訳ないという気持ちを前面に表すのは結構だが、だれかれ構わず手を握り、お礼を言うのは止めた方がいい。同性ならともかく、特に異性には良くないよ」

 再びお兄様に注意されてしまった。確かに馴れ馴れしく手を握るのは良くなかったかもしれない。

「ごめんなさい、皆様が優しくしてくださるから、嬉しくてつい…そうですよね、さすがに馴れ馴れしかったですよね」

 私とした事が、つい調子に乗ってしまった。

「そんなに悲しそうな顔をしないでくれ。ただ、令息どもがソフィーナを…いいや、何でもない。そろそろファラオたちが入場してくる頃だから、謝罪周りはこの辺にしておこうか」

 ふと周りを見渡すと、皆入り口の方を向いていた。どうやら殿下たちが入場してくるようだ。
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