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第39話:歯がゆい気持ちを抱えて~ファラオ視点~
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“ファラオ様、私、どうしても王妃になりたいのです。ですから私、絶対にあなた様と結婚しますから”
それが彼女の口癖だった。
ソフィーナ・リレイスト。銀色の美しい髪に、宝石のような紫の瞳。この世のものとは思えない程、整った顔立ちをした女性。だが、その性格は強烈で、一度癇癪を起すと、もうだれにも止められない。
その上、気に入らない事があると、怒鳴り散らし、時には暴力も振るう恐ろしい女。いくら権力を持ったリレイスト公爵家の令嬢で、見た目が美しくても、あのような女性は御免だ。それが貴族令息たち皆の意見だ。
彼女の兄ですら、妹を毛嫌いしていた。
でも僕は…なぜか初めて出会った時から、彼女が気になって仕方がなかったのだ。どうしようもない人間だが、どこか妙に惹かれるというか、そんな不思議な感情を抱いていた。
この気持ちは一体、何なんだろう。あんな我が儘で癇癪もちな女、絶対に関わりたくないはずなのに…妙に彼女の事が気になって仕方がなかった。
きっと気のせいだ!そう自分に言い聞かせながら生きていた。
でも、僕は見てしまったのだ。
そう、王宮主催のお茶会を開いた時の事。相変わらず我が儘でどうしようもないソフィーナ嬢に振り回された僕を含めた貴族たちは、ぐったりとしていた。さすがにあんな我が儘には付き合いきれない、そう思い、逃げるように中庭の奥に来た時だった。
有ろう事か、ソフィーナ嬢も、中庭の奥に来ていたのだ。どうしてソフィーナ嬢がこんな所にいるのだ?見つかったら厄介だ、さっさと戻ろう。そう思った時だった。
どこからか迷い込んだ子猫が、ソフィーナ嬢の元に現れたのだ。それも非常に汚れている。きっと自分の前に小汚い姿で現れた子猫に怒り狂い、最悪の場合…大変だ、あの子猫を助けないと。
そう思った時だった。
「小汚い猫ね。何なの、あなた。もしかして、お母様と離れてしまったの?お腹が空いているの?仕方ないわね。少し待っていなさい。いい?ここから動くのではないわよ。分かったわね」
そう言うと、どこかに去って行ったソフィーナ嬢。しばらくすると、ミルクとパン、さらにぬれタオルを持ってきたのだ。
「あなた、本当に汚いわね。そんなんじゃあ、お母様に嫌われるわよ。はい、綺麗になったわ。ほら、ご飯よ。沢山べるのよ」
なんと子猫を綺麗に拭いてあげたうえで、食事を与えたのだ。必死にミルクを浸したパンを食べる子猫。
「あなた、可愛いわね…それに温かい」
子猫の背中を撫でながら、ふいに彼女が笑ったのだ。その顔を見た瞬間、一気に鼓動が早くなるのを感じた。僕はやっぱり、ソフィーナ嬢が好きなんだ!
それに彼女、いつもあんなんだけれど、実は優しい部分も持ち合わせているのだろう。その後母猫と再会した子猫は、親子でどこかに行ってしまった。
僕はこの日、ソフィーナ嬢への気持ちを確信した。僕はソフィーナ嬢が好きなんだ。僕は彼女と結婚したい。日に日にそう思う様になっていった。
幸い彼女も僕と結婚したいと言ってくれている、彼女はこの国で一番権力を持った貴族の娘。僕たちが結婚する事は、自然の流れ、そう思っていた。
だが、貴族や両親は、猛反対。もしソフィーナ嬢を王妃なんかにしたら、国が亡びるとまで言いだしたのだ。
さらにソフィーナ嬢の父親ですら
“私は父親としては、娘の願いをかなえてやりたい。だが、国の事を考えると…”
そう言いだしたのだ。確かに今のソフィーナ嬢では、王妃になる事は難しい。それなら皆がソフィーナ嬢を認めてくれたら。
そんな思いから、ソフィーナ嬢にもう少し思いやりを持つように注意をしたが、そのたびに癇癪を起し、暴れまわる。時には使用人に八つ当たりをする事もあった。
使用人からも“ソフィーナ様が殿下と結婚されるのでしたら、私共は王宮使用人を辞めます”とまで言い出したのだ。
このままでは、本当にソフィーナ嬢と結婚できなくなる。何とかしないと!
でも、僕もどうしていいか分からない。僕がどんなにもがいても、当のソフィーナ嬢が変わってくれないと、どうしようもないのだ。
そんな中、ソフィーナ嬢が馬車の事故に遭ったと聞かされたのだ。
それが彼女の口癖だった。
ソフィーナ・リレイスト。銀色の美しい髪に、宝石のような紫の瞳。この世のものとは思えない程、整った顔立ちをした女性。だが、その性格は強烈で、一度癇癪を起すと、もうだれにも止められない。
その上、気に入らない事があると、怒鳴り散らし、時には暴力も振るう恐ろしい女。いくら権力を持ったリレイスト公爵家の令嬢で、見た目が美しくても、あのような女性は御免だ。それが貴族令息たち皆の意見だ。
彼女の兄ですら、妹を毛嫌いしていた。
でも僕は…なぜか初めて出会った時から、彼女が気になって仕方がなかったのだ。どうしようもない人間だが、どこか妙に惹かれるというか、そんな不思議な感情を抱いていた。
この気持ちは一体、何なんだろう。あんな我が儘で癇癪もちな女、絶対に関わりたくないはずなのに…妙に彼女の事が気になって仕方がなかった。
きっと気のせいだ!そう自分に言い聞かせながら生きていた。
でも、僕は見てしまったのだ。
そう、王宮主催のお茶会を開いた時の事。相変わらず我が儘でどうしようもないソフィーナ嬢に振り回された僕を含めた貴族たちは、ぐったりとしていた。さすがにあんな我が儘には付き合いきれない、そう思い、逃げるように中庭の奥に来た時だった。
有ろう事か、ソフィーナ嬢も、中庭の奥に来ていたのだ。どうしてソフィーナ嬢がこんな所にいるのだ?見つかったら厄介だ、さっさと戻ろう。そう思った時だった。
どこからか迷い込んだ子猫が、ソフィーナ嬢の元に現れたのだ。それも非常に汚れている。きっと自分の前に小汚い姿で現れた子猫に怒り狂い、最悪の場合…大変だ、あの子猫を助けないと。
そう思った時だった。
「小汚い猫ね。何なの、あなた。もしかして、お母様と離れてしまったの?お腹が空いているの?仕方ないわね。少し待っていなさい。いい?ここから動くのではないわよ。分かったわね」
そう言うと、どこかに去って行ったソフィーナ嬢。しばらくすると、ミルクとパン、さらにぬれタオルを持ってきたのだ。
「あなた、本当に汚いわね。そんなんじゃあ、お母様に嫌われるわよ。はい、綺麗になったわ。ほら、ご飯よ。沢山べるのよ」
なんと子猫を綺麗に拭いてあげたうえで、食事を与えたのだ。必死にミルクを浸したパンを食べる子猫。
「あなた、可愛いわね…それに温かい」
子猫の背中を撫でながら、ふいに彼女が笑ったのだ。その顔を見た瞬間、一気に鼓動が早くなるのを感じた。僕はやっぱり、ソフィーナ嬢が好きなんだ!
それに彼女、いつもあんなんだけれど、実は優しい部分も持ち合わせているのだろう。その後母猫と再会した子猫は、親子でどこかに行ってしまった。
僕はこの日、ソフィーナ嬢への気持ちを確信した。僕はソフィーナ嬢が好きなんだ。僕は彼女と結婚したい。日に日にそう思う様になっていった。
幸い彼女も僕と結婚したいと言ってくれている、彼女はこの国で一番権力を持った貴族の娘。僕たちが結婚する事は、自然の流れ、そう思っていた。
だが、貴族や両親は、猛反対。もしソフィーナ嬢を王妃なんかにしたら、国が亡びるとまで言いだしたのだ。
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そう言いだしたのだ。確かに今のソフィーナ嬢では、王妃になる事は難しい。それなら皆がソフィーナ嬢を認めてくれたら。
そんな思いから、ソフィーナ嬢にもう少し思いやりを持つように注意をしたが、そのたびに癇癪を起し、暴れまわる。時には使用人に八つ当たりをする事もあった。
使用人からも“ソフィーナ様が殿下と結婚されるのでしたら、私共は王宮使用人を辞めます”とまで言い出したのだ。
このままでは、本当にソフィーナ嬢と結婚できなくなる。何とかしないと!
でも、僕もどうしていいか分からない。僕がどんなにもがいても、当のソフィーナ嬢が変わってくれないと、どうしようもないのだ。
そんな中、ソフィーナ嬢が馬車の事故に遭ったと聞かされたのだ。
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