前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第40話:どんどん良くない方向に進んでいく~ファラオ視点~

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「ソフィーナ嬢が、馬車の事故に遭っただって?それで、彼女は大丈夫なのかい?」

「ええ、命に別状はないようです。ですが酷い怪我をしている様で、しばらくは外には出られないとの事です」

 酷い怪我だと?可哀そうに、すぐに見舞いに行かないと。

「すぐに公爵家に使いを出してくれ。彼女のお見舞いに行きたい」

「何をおっしゃっているのですか?ソフィーナ嬢と殿下は、正式に婚約を結んでいる訳ではないのですよ。それなのにお見舞いだなんて、絶対にダメです。それにその様な事をなされたら、貴族たちに何を言われるか。

 いいですか、殿下。いくらあなた様がソフィーナ様を思っていても、あの性格では到底殿下とは結婚できないのです。いい加減ソフィーナ様の事は諦めて、別の令嬢との結婚をお考え下さい」

 そう言われてしまったのだ。確かに僕がどれほどソフィーナ嬢を想っても、あの性格では絶対に両親も貴族たちも、僕たちの結婚を認めてくれないだろう。父親でもあるリレイスト公爵ですら、僕とソフィーナ嬢との結婚は無理だろうと踏んでいるのだから…

 それでも僕は、ソフィーナ嬢が好きだ。せめてお見舞いの品だけでも渡そうと思ったのだが、それすら許されなかった。

 その上…

「陛下、ソフィーナ嬢は今、大けがをしていていらっしゃいます。3ヶ月後には、殿下の15歳のお誕生日がございます。その際のエスコートを、よさそうな令嬢にお願いしましょう。その令嬢と婚約を結ぶとソフィーナ嬢に思わせればきっと、彼女も諦めるかもしれません。

 もし諦めなかったとしても、さすがにリレイスト公爵が説得するでしょう」

「だが、殿下のお相手をして下さる令嬢は、誰にするのですか?」

「アドソン公爵殿のご令嬢は、御年16歳でしたよね。爵位的にも殿下の婚約者として、ちょうどよいのでは?」

「いえ、家の娘はその様な大役は無理です。それに…万が一ソフィーナ嬢に逆恨みでもされたら、その…」

「それじゃあ、レクシーノ公爵…」

「家もその様な大役は、とても無理です」

 次々と辞退していく貴族たち。皆リレイスト公爵家とソフィーナ嬢を、敵に回したくはないのだろう。

「それでは、アレソーヌ侯爵殿のご令嬢はどうですか?御年14歳になられましたよね。年齢的にもちょうどいいかと」

「あの…我が家は…その…」

「引き受けて下さいますか?ありがとうございます」

 穏やかで断る事が苦手なアレソーヌ侯爵家が、結局他の貴族に押し切られる形で引き受ける事になったのだ。確かソラ嬢と言ったな。物静かで大人しい令嬢だ。

 ただ、僕はソラ嬢になんて興味がない。

「皆様、お待ちください。確かにソフィーナ嬢は少し我が儘なところはありますが、僕はやはりソフィーナ嬢と未来を歩みたいのです。彼女の教育に関して、僕も協力いたします。ですので、どうかソフィーナ嬢と…」

「殿下、またその様な事を。殿下はどうしてそんなに、ソフィーナ嬢にこだわるのですか?もしかして、リレイスト公爵に弱みでも握られているのですか?」

「その様な事は…」

「私共も、何とかソフィーナ嬢に考えを改めてもらえる様に働きかけましたが、増々癇癪は酷くなるばかり。とてもではありませんが、彼女では王妃は務まりません。いい加減諦めて下さい」

「そうだぞ、ファラオ。公爵は既に今回の件は、話してある。自分抜きで話してもらって構わないと、許可をとっているし。もうソフィーナ嬢の事は、諦めなさい。アレソーヌ侯爵、すまないがファラオとソラ嬢の婚約、前向きに検討してくれ」

「承知いたしました」

「それじゃあ、近々ソラ嬢とファラオの面談を行おう。ファラオ、いい加減に自分の立場を考えて行動しなさい。お前はこの国を継ぐ次期王になる人間なのだから。分かったな」

 僕だってそんな事くらい、分かっている。でも、どうしてもソフィーナ嬢の事を、諦める事が出来ないんだ。

 このままだと本当に、別の令嬢と結婚させられてしまう。一体どうすればいいんだ…
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