前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第50話:距離が縮まっています

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「ファラオ様、見て下さい。随分と成長してきましたわ」

「本当だね。毎日ソフィーナがお世話をしているからだよ。さあ、太陽の日差しが強くなってきたよ。今日はこの辺にして、一旦部屋に戻ろう」

「この雑草だけ抜いてから戻りますわ。それにスカイたちにも、ご飯をあげないといけませんし」

「ソフィーナは随分熱心だね。分かったよ、それじゃあもう少しだけ作業をして行こうか」

 1ヶ月前、私の為に作って下さった花壇にクレマチスの種を植えた。それから毎日、庭師の指導を受けながらお世話をしていた。その甲斐もあって、クレマチスは順調に育ってくれているのだ。

 前世からみても、こんな風に何かを育てる事などなかった為、とにかく楽しくてたまらない。こんな経験、中々出来るものではない。その為、ついつい熱が入ってしまうのだ。

「ミャァァ」

「あらスカイ、待ちきれずに迎えに来てくれたの。ごめんね、すぐにご飯のあげるからね」

 私の傍にやって来たのは、かつて私が助けた猫だ。あの後名前がないという事で、私が命名した。そんなスカイやスカイの子供たち、母猫ともすっかり仲良くなった。特にスカイは、私に懐いてくれている。

「ソフィーナ、スカイが待ちきれなくなった様だね。そろそろ終わりにしよう」

「そうですね、スカイをこれ以上待たせる訳にはいきませんので」

 スカイを抱きかかえ、使用人が準備してくれたご飯をあげた。ファラオ様がスカイたちのお世話をしてくれていたおかげで、すっかり大きくなった。大切にしてもらっていた様で、人にもよく懐いている。

「そろそろ僕たちも戻ろう。汗をかいて気持ち悪いだろう?湯あみを済ませたら、お茶にしよう」

「そうですね、かなり汗をかいたので、さっぱりさせたいですわ」

 私の為に準備されたお部屋で湯あみを済ませ、ドレスに着替えた。ちなみに花壇で作業をするときは、動きやすい洋服を着ている。最初は“公爵令嬢がその様な格好をしてはいけません”と使用人たちに言われたが、ファラオ様が彼女たちを説得してくれたのだ。

 ファラオ様はいつも、私の気持ちに寄り添ってくれている。それが嬉しくてたまらない。私もファラオ様の為に、何かしたい。そんな気持ちが芽生えているのだが、何をしたらいいのかしら?

 そんな思いを抱きながら、ファラオ様の元に向かった。

「お待たせしてごめんなさい」

「そんな事は気にしなくてもいいよ。さあ、お茶にしよう。今日は午後から、ソラ嬢に会うのだったね」

「はい、ソラ様とは仲良くさせていただいておりまして。もうすぐ婚約披露パーティがあるというのに、私との時間をとって下さっているのです」

「2ヶ月後だったね。ソフィーナ、君さえよければその…僕と一緒にパーティに参加してくれないかい?」

「私が殿下とですか?」

「ああ、そうだよ。もしかして、誰かに誘われているのかい?」

 誰かから誘われている訳ではないし、また前みたいにお兄様と一緒に行こうと思っていたくらいだ。

「特には誘われておりませんわ。ぜひご一緒させていただきたいです」

「それは本当かい?嬉しいな。そうだ、君が当日着ていくドレス、僕に贈らせてくれないかい?」

「それは申し訳ないですわ。ドレスは私の方で準備しますので」

「いいや、僕に贈らせてほしい。どうかこの通りだ」

 ファラオ様が必死に訴えてくる。そこまで言って下さるのなら、お言葉に甘えよう。

「分かりましたわ。それではお願いします」

「よかった!君にピッタリのドレスを選ぶから、楽しみにしていて」

 何だかファラオ様、とても嬉しそうだ。私のドレスを選ぶのが、そんなに嬉しいだなんて。私もファラオ様に何か送りたいな。増々そんな感情が沸き上がる。

 でも、何を贈ればいいのかしら?

 そうだわ、今日ソラ様に相談してみよう。
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