私を陥れる様な婚約者はいりません!彼と幸せになりますから邪魔しないで下さい

Karamimi

文字の大きさ
5 / 57

第5話:お父様に真実を打ち明けました

しおりを挟む
 我が国の貴族女性は、結婚して家を守る事をよしとしている、その考えは十分理解している。だが、あんな男と一緒になるくらいなら、後ろ指をさされてでも一生独身を貫いた方がずっとましのだ。

「アントアーネの気持ちは分かったよ。ただ、ラドル殿はどんな噂が流れようと、君に寄り添ってくれると思うよ。現にアントアーネの悪い噂が流れた時に、我が家から婚約解消の件を伝えたこともあったが、彼は一貫して“アントアーネと婚約解消をするつもりはない”と、はっきり伝えてくれたのだよ。

 アントアーネがラドル殿に申し訳ないと思う気持ちも理解できるが、きっとラドル殿なら君を幸せにしてくれるよ。こんな事は言いたくはないが、ラドル殿ほど君を愛してくれている人はいないよ」

 お父様が真っすぐ私を見つめ、語り掛けてくる。

「本当にあの人が、私を愛しているとお思いですか?好きな女性の悪い噂を流し、評判を落とすような男が?お父様、こちらをご覧ください」

 私の専属使用人たちが、書類やデータを沢山持ってきた。さらにラドル様が私の悪い噂を流す様、令息たちに指示を出している映像も流した。

「な…何なんだこの映像は!ふざけるな!ラドル、あの男、口では調子のいい事を言って、陰ではこんなにも酷い事をしていただなんて!このような侮辱、断じて許せることではない!

 あの男を今すぐ裁判にかけてやる!今すぐこのデータを裁判所に提出してくれ!ラドルを訴えてやる」

 顔を真っ赤にして怒るお父様。いつも穏やかな人なのに、こんなに怒るのは初めてだ。

「お父様、落ち着いて下さい。私はラドル様をどうこうしたい訳ではありません。ただ、あの男との関係を絶ちたいだけなのです。婚約の解消さえできれば、私は満足ですから」

「アントアーネ、君って子は、何と心の優しい子なんだ…こんなに優しい子を、ラドルは!」

 さらに顔を赤くしてお父様が怒っている。とにかく落ち着いてもらわないと。

「お父様、私の事はもういいのです。ただ、彼との婚約を解消できれば…お父様、どうか婚約解消を認めて下さい」

「認めるに決まっているだろう!我が娘を、ここまで侮辱したのだからな。それにしても、凄い資料だな…アントアーネ、君はいつからラドル殿がアントアーネに関する悪い噂を流していた事を、知っていたのだい?こんなにも沢山の証拠を集めたという事は、相当前からかい?」

「半年前、たまたま令息たちに指示を出している姿を目撃して知りました」

「ちょうど君が、原因不明の熱に苦しんでいた時期か…もしかしてあの熱は」

「はい、そうです。唯一信じていたラドル様に裏切られていたことを知ったショックで、熱が出た様です」

 私の言葉を聞いたお父様が、小刻みに肩を震わせ涙を流しだした。

「どうしてもっと早く言ってくれなかったのだい?アントアーネが、こんなに苦しんでいただなんて…すぐに話してくれたら、半年も君に我慢させる必要もなかったのに…」

「証拠がないのに、そんな事を話してもお父様も困ると思ったのです。ですから、証拠をしっかり集めてから、お父様に話しをしようと思って。お父様、これで私は、ラドル様と婚約を解消できますか?」

 今まで抑えていた感情が溢れ出し、泣きながらお父様に問いかけた。そんな私を、強く抱きしめるお父様。

「アントアーネ、すまなかった。君が全てを知り、苦しんでいただなんて…そうとも知らずに、呑気な事を言ってしまって…私は父親失格だ」

「お父様は父親失格ではありませんわ。私の方こそ、ずっと黙っていてごめんなさい」

「いいや、アントアーネは悪くはない。何も知らずに、のうのうと生きていた私が悪いのだよ。アントアーネがそんな酷い事をする子ではないと、わかっていたのに…すぐに私が調査をしていれば、君をここまで苦しませることはなかったのに。大切な娘を守れない私は、父親失格なのだよ」

「お父様、泣かないで下さい。もう過去の事はいいのです。とにかく私は、一刻も早くあの男と婚約を解消できれば満足ですので」

「分かった…すぐにブラッディ伯爵家に使いの者を出そう。そしてラドルの悪事を全て伯爵にぶちまけよう。ラドル!絶対に許さないぞ。伯爵家からしっかり慰謝料を請求して、婚約を解消しよう。もう二度と、ラドルにアントアーネを傷つけさせない。

 だからどうか、安心してくれ。アントアーネ、すぐに準備をしてくれ。今から伯爵家に向かおう」

 えっ?今から向かうですって…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嫌われたと思って離れたのに

ラム猫
恋愛
 私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。  距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。

婚約破棄した王子が見初めた男爵令嬢に王妃教育をさせる様です

Mr.後困る
恋愛
婚約破棄したハワード王子は新しく見初めたメイ男爵令嬢に 王妃教育を施す様に自らの母に頼むのだが・・・

婚約解消したはずなのに、元婚約者が嫉妬心剥き出しで怖いのですが……

マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のフローラと侯爵令息のカルロス。二人は恋愛感情から婚約をしたのだったが……。 カルロスは隣国の侯爵令嬢と婚約をするとのことで、フローラに別れて欲しいと告げる。 国益を考えれば確かに頷ける行為だ。フローラはカルロスとの婚約解消を受け入れることにした。 さて、悲しみのフローラは幼馴染のグラン伯爵令息と婚約を考える仲になっていくのだが……。 なぜかカルロスの妨害が入るのだった……えっ、どういうこと? フローラとグランは全く意味が分からず対処する羽目になってしまう。 「お願いだから、邪魔しないでもらえませんか?」

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します

もるだ
恋愛
未来で起こる出来事が分かるクラーラは、王宮で開催されるパーティーの会場で大好きな婚約者──ルーカス王太子殿下から謀反を企てたと断罪される。王太子妃を狙うマリアに嵌められたと予知したクラーラは、断罪返しを開始する!

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜

彩華(あやはな)
恋愛
 一つの密約を交わし聖女になったわたし。  わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。  王太子はわたしの大事な人をー。  わたしは、大事な人の側にいきます。  そして、この国不幸になる事を祈ります。  *わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。  *ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。 ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。

処理中です...