9 / 57
第9話:何を考えているのですか?
しおりを挟む
「アントアーネ嬢、ありがとう。それじゃあ、すぐに婚約解消の手続きを…」
「待って下さい!どうして僕とアントアーネが、婚約を解消しないといけないのですか?僕たちは、仲睦まじいのに。僕はずっと、アントアーネを大切にして来たし、アントアーネだって、僕を慕ってくれていた。アントアーネ、僕の為に婚約を解消する事に同意したのだろう?でも僕は、君と婚約を解消するつもりはないよ。すまない、辛い思いをさせてしまって。でも、もう大丈夫だよ。僕が君を守るから」
「ラドル、何を言っているのだい?アントアーネ嬢と結婚したら、お前の評判も下がってしまうかもしれないのだよ。アントアーネ嬢も、了承してくれているのだから…」
「父上、僕はアントアーネを愛しています。たとえどんな噂が流れようと、僕は彼女を愛しているのです。たとえ父上や母上が反対しても、僕は絶対にアントアーネと結婚します。それにアントアーネの悪い噂を流した奴らの目星は付いています。あいつらを訴えて、アントアーネの名誉を回復させれば、何ら問題はないのでしょう?」
この男は、一体何を言っているのだろう。自ら私の悪い噂を流したくせに…それなのに、私を愛している?私と絶対に結婚する?バカにするのも、いい加減にして欲しいわ。
怒りと悲しみ、悔しさから体が震える。そんな私の手を、ギュッと握ってくれたのはお父様だ。優しい眼差しで、私を見つめていた。そして、ゆっくりと頷いたのだ。
“アントアーネの気持ちをぶつけなさい”
お父様の瞳は、そう言っている様だった。
「ラドル様は、私は愛しているのですか?本当に私と結婚したいのですか?」
真っすぐラドル様の方を向き、問いかけた。
「当たり前だろう。僕はずっと、君を愛しているのだから。君だって、僕の事を慕ってくれていただろう?」
「そうですね…あなた様と婚約した当初は、本当に嬉しくて天にも昇る様な気持ちでした。真実を知るまでは…」
この半年、必死に調べた資料をそっと机に並べた。
「ラドル様、私の酷い噂を流したのは、あなた様ですね?身分の低い令息たちを使って」
机の上に並べられた書類を手に取り、目を大きく見開いているラドル様の両親。ラドル様も大きく目を見開き、固まっている。
「ラドル様、私はあなた様にここまで恨まれるほど、嫌われていたのですよね。ですが正直、こんな仕打ちを受けるほどあなた様に何かした記憶がございません。私、あなた様に何かしたのでしょうか?どうしてこんな酷い事をなさったのですか?そのせいで私は…」
一気に感情が涙と共に溢れ出した。
「ラドル、これは一体どういうことだ!そんなにアントアーネ嬢の事が嫌いだったのか?それならどうして、早く言わなかったのだ。この様な恐ろしい事をしなくても」
「そうよ、ラドル。こんな事をしなくても、婚約解消したいなら素直に言えばよかったじゃない。この様な事をして、一体何を考えているの?」
俯くラドル様に、ラドル様のご両親が詰め寄っている。
「アントアーネが悪いんだ…君が他の子とばかり仲良くして、僕を蔑ろにしたから…だから僕は…」
「私がラドル様を蔑ろにした?一体何をおっしゃっているの?」
「君は学院に入ってから、ずっと令嬢たちと仲良くしていたではないか。僕の事なんてほったらかしにして。だから僕は、君に僕だけを見て欲しくて、噂を流したのだよ。そうすれば君は孤立して、僕だけを見てくれると思ったから」
この人は何を言っているの?私が令嬢と仲良くしていたから、悪い噂を流したですって…そうすれば、私がラドル様だけを見るからですって。
「そんなふざけた理由で、アントアーネの評判を落としたのかい?君はアントアーネを何だと思っているのだい?アントアーネがこの1年、どれほど傷つき苦しんできたか。アントアーネが大切な婚約者に裏切られたと知った時、どれだけ辛く悲しかったか。アントアーネは君に裏切られたと知った時、高熱を出したのだよ。君だって覚えているだろう!」
珍しくお父様が声を荒げた。
まさかそんな理由で、私を地獄に叩き落しただなんて…
「待って下さい!どうして僕とアントアーネが、婚約を解消しないといけないのですか?僕たちは、仲睦まじいのに。僕はずっと、アントアーネを大切にして来たし、アントアーネだって、僕を慕ってくれていた。アントアーネ、僕の為に婚約を解消する事に同意したのだろう?でも僕は、君と婚約を解消するつもりはないよ。すまない、辛い思いをさせてしまって。でも、もう大丈夫だよ。僕が君を守るから」
「ラドル、何を言っているのだい?アントアーネ嬢と結婚したら、お前の評判も下がってしまうかもしれないのだよ。アントアーネ嬢も、了承してくれているのだから…」
「父上、僕はアントアーネを愛しています。たとえどんな噂が流れようと、僕は彼女を愛しているのです。たとえ父上や母上が反対しても、僕は絶対にアントアーネと結婚します。それにアントアーネの悪い噂を流した奴らの目星は付いています。あいつらを訴えて、アントアーネの名誉を回復させれば、何ら問題はないのでしょう?」
この男は、一体何を言っているのだろう。自ら私の悪い噂を流したくせに…それなのに、私を愛している?私と絶対に結婚する?バカにするのも、いい加減にして欲しいわ。
怒りと悲しみ、悔しさから体が震える。そんな私の手を、ギュッと握ってくれたのはお父様だ。優しい眼差しで、私を見つめていた。そして、ゆっくりと頷いたのだ。
“アントアーネの気持ちをぶつけなさい”
お父様の瞳は、そう言っている様だった。
「ラドル様は、私は愛しているのですか?本当に私と結婚したいのですか?」
真っすぐラドル様の方を向き、問いかけた。
「当たり前だろう。僕はずっと、君を愛しているのだから。君だって、僕の事を慕ってくれていただろう?」
「そうですね…あなた様と婚約した当初は、本当に嬉しくて天にも昇る様な気持ちでした。真実を知るまでは…」
この半年、必死に調べた資料をそっと机に並べた。
「ラドル様、私の酷い噂を流したのは、あなた様ですね?身分の低い令息たちを使って」
机の上に並べられた書類を手に取り、目を大きく見開いているラドル様の両親。ラドル様も大きく目を見開き、固まっている。
「ラドル様、私はあなた様にここまで恨まれるほど、嫌われていたのですよね。ですが正直、こんな仕打ちを受けるほどあなた様に何かした記憶がございません。私、あなた様に何かしたのでしょうか?どうしてこんな酷い事をなさったのですか?そのせいで私は…」
一気に感情が涙と共に溢れ出した。
「ラドル、これは一体どういうことだ!そんなにアントアーネ嬢の事が嫌いだったのか?それならどうして、早く言わなかったのだ。この様な恐ろしい事をしなくても」
「そうよ、ラドル。こんな事をしなくても、婚約解消したいなら素直に言えばよかったじゃない。この様な事をして、一体何を考えているの?」
俯くラドル様に、ラドル様のご両親が詰め寄っている。
「アントアーネが悪いんだ…君が他の子とばかり仲良くして、僕を蔑ろにしたから…だから僕は…」
「私がラドル様を蔑ろにした?一体何をおっしゃっているの?」
「君は学院に入ってから、ずっと令嬢たちと仲良くしていたではないか。僕の事なんてほったらかしにして。だから僕は、君に僕だけを見て欲しくて、噂を流したのだよ。そうすれば君は孤立して、僕だけを見てくれると思ったから」
この人は何を言っているの?私が令嬢と仲良くしていたから、悪い噂を流したですって…そうすれば、私がラドル様だけを見るからですって。
「そんなふざけた理由で、アントアーネの評判を落としたのかい?君はアントアーネを何だと思っているのだい?アントアーネがこの1年、どれほど傷つき苦しんできたか。アントアーネが大切な婚約者に裏切られたと知った時、どれだけ辛く悲しかったか。アントアーネは君に裏切られたと知った時、高熱を出したのだよ。君だって覚えているだろう!」
珍しくお父様が声を荒げた。
まさかそんな理由で、私を地獄に叩き落しただなんて…
512
あなたにおすすめの小説
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
婚約解消したはずなのに、元婚約者が嫉妬心剥き出しで怖いのですが……
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢のフローラと侯爵令息のカルロス。二人は恋愛感情から婚約をしたのだったが……。
カルロスは隣国の侯爵令嬢と婚約をするとのことで、フローラに別れて欲しいと告げる。
国益を考えれば確かに頷ける行為だ。フローラはカルロスとの婚約解消を受け入れることにした。
さて、悲しみのフローラは幼馴染のグラン伯爵令息と婚約を考える仲になっていくのだが……。
なぜかカルロスの妨害が入るのだった……えっ、どういうこと?
フローラとグランは全く意味が分からず対処する羽目になってしまう。
「お願いだから、邪魔しないでもらえませんか?」
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
未来予知できる王太子妃は断罪返しを開始します
もるだ
恋愛
未来で起こる出来事が分かるクラーラは、王宮で開催されるパーティーの会場で大好きな婚約者──ルーカス王太子殿下から謀反を企てたと断罪される。王太子妃を狙うマリアに嵌められたと予知したクラーラは、断罪返しを開始する!
婚約者様への逆襲です。
有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。
理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。
だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。
――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」
すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。
そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。
これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。
断罪は終わりではなく、始まりだった。
“信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。
【完結】わたしは大事な人の側に行きます〜この国が不幸になりますように〜
彩華(あやはな)
恋愛
一つの密約を交わし聖女になったわたし。
わたしは婚約者である王太子殿下に婚約破棄された。
王太子はわたしの大事な人をー。
わたしは、大事な人の側にいきます。
そして、この国不幸になる事を祈ります。
*わたし、王太子殿下、ある方の視点になっています。敢えて表記しておりません。
*ダークな内容になっておりますので、ご注意ください。
ハピエンではありません。ですが、救済はいれました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる