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第19話:アントアーネの気持ちを大切にしたい~ブラッド視点~
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「アントアーネ、本当にそれでいいのかい?あの男のせいで、君は随分と辛い思いをしたのに。それなのに、何もせずにあの男を許すだなんて」
そっとアントアーネの手を握り、問いかけた。
「許すつもりはありませんわ。でも…もう疲れたのです。それにこの国の人たちは、何を言っても私の言う事など信じませんわ。たとえあの人を訴えたところで、結局私が悪者にされて終わりです」
そう言うと、アントアーネの瞳から涙がこぼれ落ちた。彼女はもう、全てを絶望し、何もかも諦めているのだろう。可哀そうに、ここまでアントアーネを追い詰めるだなんて。
「アントアーネ、もう無理をする必要はないよ。こんな国にもういる必要はない。この国の事は忘れて、リューズ王国でのんびり過ごそう。すぐに君がリューズ王国に来られるように、手続きを行うね」
そうだ、わざわざアントアーネを傷つける奴がいるこの国にいる必要はない。アントニオ殿の様に、我が国に来たらいい。きっと母上もアントアーネが来たら、喜ぶだろう。
早速手続きを、そう思ったのだが
「お待ちください、ブレッド様。あなたの提案は有難いのですが、私は貴族学院を卒業したいのです。この国の貴族は、貴族学院を卒業する義務がありますから…だから、卒業後、リューズ王国に連れて行ってくださいませんか?」
「だが、卒業まで、後半年もあるのだよ。確かにこの国では貴族学院を卒業するのが金とされているが…」
「もし私が、貴族学院を卒業せずにリューズ王国に行ったら、お父様たちが罰せられてしまいますわ…我が国では、よほどの理由がない限り、貴族は必ず貴族学院を卒業しないといけませんので…
私は大丈夫ですわ。後半年の辛抱ですから…」
そう言ってほほ笑んだアントアーネ。これほどまでに辛い思いをしているのに、まだ両親の事を心配しているだなんて。こんな優しい子に、あの男は!
「分かったよ、君の望むままにしよう」
「ありがとうございます、ブラッド様…」
そう言うと、ゆっくり瞳を閉じたアントアーネ。
「どうして瞳を閉じるのだい?しっかりしてくれ、アントアーネ」
必死に彼女を揺すった。もしかしてこのまま!
「落ち着いてくれ、ブラッド殿、アントアーネはどうやら眠っただけの様だ」
動揺する俺に話しかけてきたのは、アントニオ殿だ。確かに彼の言う様に、アントアーネは眠っているだけの様だ。ただ、息づかいが荒く、とても苦しそうだ。
その時だった。
「アントアーネ!!」
部屋に入って来たのは、アントアーネの父親だ。
「可哀そうに、また高熱を出すだなんて」
「父上、アントアーネは今日、貴族学院で酷い扱いを受けておりました。クラスメートからラドルに謝罪する様に求められ、無理やり跪かされそうになっていたのですよ」
「何だって!ラドルの奴、ふざけるな!やっぱりあの男、許せない。すぐにあの男の悪事を公表して…」
「伯爵、落ち着いて下さい。アントアーネはそれを望んでいません!とはいえ、このままアントアーネを傷つける事だけはさせたくありません。彼女の要望を聞きいれつつ、リューズ王国へ連れていく準備をしたいと考えております」
「父上、ブラッド殿はアントアーネの事を考えて、アントアーネがリューズ王国で暮せるように手配を勧めてくれるとの事だ。既にリマ侯爵夫人にも、連絡を入れてくれているよ」
「ブラッド殿、君まで来てくれたのだね。アントアーネの件、君にまで心配をかけてすまなかった。リューズ王国の件も、ありがとう。この国にいては、アントアーネが傷つくだけだ。すぐにでもリューズ王国に行く手配を進めよう」
「その件なのですが、アントアーネは貴族学院を卒業してから、リューズ王国に向かう事を希望しているのですよ。どうやら父上の事を、心配している様で…」
「何だって!確かに貴族学院を卒業する事は、貴族の義務だ。義務を果たさなければ、それなりの罰が与えられている。とはいえ、娘を犠牲にしてまで、私は貴族学院を卒業させたいとは思っていないよ。すぐに退学の手続きを…」
「伯爵、落ち着いて下さい。アントアーネは誰よりも優しい子です。きっと、何が何でも貴族学院を卒業すると言うでしょう。俺に良い考えがあります。どうか俺に、アントアーネを守るための手助けをさせて下さいませんか?」
真っすぐ伯爵を見つめ、訴えた。
そっとアントアーネの手を握り、問いかけた。
「許すつもりはありませんわ。でも…もう疲れたのです。それにこの国の人たちは、何を言っても私の言う事など信じませんわ。たとえあの人を訴えたところで、結局私が悪者にされて終わりです」
そう言うと、アントアーネの瞳から涙がこぼれ落ちた。彼女はもう、全てを絶望し、何もかも諦めているのだろう。可哀そうに、ここまでアントアーネを追い詰めるだなんて。
「アントアーネ、もう無理をする必要はないよ。こんな国にもういる必要はない。この国の事は忘れて、リューズ王国でのんびり過ごそう。すぐに君がリューズ王国に来られるように、手続きを行うね」
そうだ、わざわざアントアーネを傷つける奴がいるこの国にいる必要はない。アントニオ殿の様に、我が国に来たらいい。きっと母上もアントアーネが来たら、喜ぶだろう。
早速手続きを、そう思ったのだが
「お待ちください、ブレッド様。あなたの提案は有難いのですが、私は貴族学院を卒業したいのです。この国の貴族は、貴族学院を卒業する義務がありますから…だから、卒業後、リューズ王国に連れて行ってくださいませんか?」
「だが、卒業まで、後半年もあるのだよ。確かにこの国では貴族学院を卒業するのが金とされているが…」
「もし私が、貴族学院を卒業せずにリューズ王国に行ったら、お父様たちが罰せられてしまいますわ…我が国では、よほどの理由がない限り、貴族は必ず貴族学院を卒業しないといけませんので…
私は大丈夫ですわ。後半年の辛抱ですから…」
そう言ってほほ笑んだアントアーネ。これほどまでに辛い思いをしているのに、まだ両親の事を心配しているだなんて。こんな優しい子に、あの男は!
「分かったよ、君の望むままにしよう」
「ありがとうございます、ブラッド様…」
そう言うと、ゆっくり瞳を閉じたアントアーネ。
「どうして瞳を閉じるのだい?しっかりしてくれ、アントアーネ」
必死に彼女を揺すった。もしかしてこのまま!
「落ち着いてくれ、ブラッド殿、アントアーネはどうやら眠っただけの様だ」
動揺する俺に話しかけてきたのは、アントニオ殿だ。確かに彼の言う様に、アントアーネは眠っているだけの様だ。ただ、息づかいが荒く、とても苦しそうだ。
その時だった。
「アントアーネ!!」
部屋に入って来たのは、アントアーネの父親だ。
「可哀そうに、また高熱を出すだなんて」
「父上、アントアーネは今日、貴族学院で酷い扱いを受けておりました。クラスメートからラドルに謝罪する様に求められ、無理やり跪かされそうになっていたのですよ」
「何だって!ラドルの奴、ふざけるな!やっぱりあの男、許せない。すぐにあの男の悪事を公表して…」
「伯爵、落ち着いて下さい。アントアーネはそれを望んでいません!とはいえ、このままアントアーネを傷つける事だけはさせたくありません。彼女の要望を聞きいれつつ、リューズ王国へ連れていく準備をしたいと考えております」
「父上、ブラッド殿はアントアーネの事を考えて、アントアーネがリューズ王国で暮せるように手配を勧めてくれるとの事だ。既にリマ侯爵夫人にも、連絡を入れてくれているよ」
「ブラッド殿、君まで来てくれたのだね。アントアーネの件、君にまで心配をかけてすまなかった。リューズ王国の件も、ありがとう。この国にいては、アントアーネが傷つくだけだ。すぐにでもリューズ王国に行く手配を進めよう」
「その件なのですが、アントアーネは貴族学院を卒業してから、リューズ王国に向かう事を希望しているのですよ。どうやら父上の事を、心配している様で…」
「何だって!確かに貴族学院を卒業する事は、貴族の義務だ。義務を果たさなければ、それなりの罰が与えられている。とはいえ、娘を犠牲にしてまで、私は貴族学院を卒業させたいとは思っていないよ。すぐに退学の手続きを…」
「伯爵、落ち着いて下さい。アントアーネは誰よりも優しい子です。きっと、何が何でも貴族学院を卒業すると言うでしょう。俺に良い考えがあります。どうか俺に、アントアーネを守るための手助けをさせて下さいませんか?」
真っすぐ伯爵を見つめ、訴えた。
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