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第54話:リューズ王国からの来客
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「ブラッド様、そろそろですかね?」
「そうだね、そろそろ来ると思うのだけれど」
ソワソワしながら、港で船が来るのを待つ。今日はリューズ王国からお兄様とお兄様の婚約者になる令嬢、それにブラッド様のご両親がやってくるのだ。どうやら明日の卒業式の為に、わざわざ来てくれるとの事。
おじ様やおば様は10年ぶりだし、何よりもお兄様の恋人は今日初めて会うのだ。まさかあのお兄様が、恋人を連れて帰ってくるだなんて。楽しみすぎて、昨日の夜はほとんど眠れなかったくらいだ。
お父様やお母様も、心なしか落ち着きがない。
「あなた、船はまだかしら?」
「まだ到着予定時刻には、少し時間があるからね。少し早く来すぎてしまったかもしれない」
こちらでも、同じような会話が繰り広げられていた。
「アントアーネ、船が来た様だよ」
ブラッド様が指さす方向には、確かに大きな船が。あの船にお兄様たちが乗っているのね。お兄様の恋人と、仲良くできるかしら?もし嫌われてしまったら、どうしよう…
何だか妙に緊張してきた。そんな私に気が付いたブラッド様が、ギュッと私の手を握ってくれたのだ。
「アントアーネ、緊張しているのかい?大丈夫だよ」
そう言ってほほ笑んでくれたブラッド様。彼の笑顔と手から伝わる温もりが、私に安心感を与えてくれる。
船が停まり、中からお兄様たちが降りてきたのだ。
「マリネ、アントアーネちゃんも久しぶりね。アントアーネちゃん、随分と綺麗になったわね。10年ぶりかしら?最後に会ったのは、まだこんなに小さかったものね」
「リマ、相変わらず元気ね。よく来てくれたわ、疲れたでしょう。さあ、馬車に乗って」
「おば様、それにおじ様も、お久しぶりですわ。お2人ともお変わりなくてよかったですわ」
物静かで優しい雰囲気のおじ様に対し、非常に元気なおば様。10年前に会ったっきりだったが、全く変わっていないようだ。
「父上、母上、ブラッド殿、アントアーネ。ただいま」
この声は!
「お兄様、それに…」
「アントアーネちゃん、大きくなったわね。私の事を、覚えてくれているかしら?イリーネよ、ほら、リューズ王国では、一緒に遊んだでしょう?」
お兄様を押しのけ、私の元にやってきた女性。イリーネ様?もしかして。
「イリーネお姉様ですか?まあ、懐かしい。リューズ王国では、随分と可愛がってもらいましたね。まさかイリーネお姉様が、お兄様の恋人なのですか?」
「ええ、そうよ。アントアーネちゃんに会うのを、楽しみにしていたの。会えて嬉しいわ」
そう言って笑ったイリーネお姉様。
ブラッド様の従姉弟で侯爵令嬢のイリーネお姉様。私より2つ年上で、ブラッド様の領地に遊びに行った時に、たまたまイリーネお姉様も来ていて、仲良くなったのだ。非常に面倒見がよく、領地にいる間、よく一緒に遊んでもらったものだ。
ただ、体が弱くて空気の綺麗な領地で療養していると言っていた。
まさかイリーネお姉様が、お兄様の恋人だなんて。でも昔からイリーネお姉様とお兄様は、よく2人で一緒にいたし、2人がくっ付いても不思議ではない。
「この国はリューズ王国に比べて、寒いでしょう。体調を崩しては大変ですわ。どうかこれを使って下さい。それから、すぐに馬車に乗ってください。お兄様、イリーネお姉様は、体があまり丈夫ではないのですよ。もう少し配慮しないと」
すかさずお兄様に文句を言う。本当にお兄様は、気が利かないのだから。
そんな私の姿を見て、お兄様とイリーネお姉様が目を合わせて笑っていた。
「アントアーネちゃん、ありがとう。でももう私は、すっかり元気になったのよ。それにしても、こんなに優しくていい子を、この国の人たちは虐めたのよね…許せないわ…」
いつも穏やかで笑顔の素敵なイリーネお姉様なのだが、今ものすごく怖い顔をしたのは、気のせいかしら?
「そうだね、そろそろ来ると思うのだけれど」
ソワソワしながら、港で船が来るのを待つ。今日はリューズ王国からお兄様とお兄様の婚約者になる令嬢、それにブラッド様のご両親がやってくるのだ。どうやら明日の卒業式の為に、わざわざ来てくれるとの事。
おじ様やおば様は10年ぶりだし、何よりもお兄様の恋人は今日初めて会うのだ。まさかあのお兄様が、恋人を連れて帰ってくるだなんて。楽しみすぎて、昨日の夜はほとんど眠れなかったくらいだ。
お父様やお母様も、心なしか落ち着きがない。
「あなた、船はまだかしら?」
「まだ到着予定時刻には、少し時間があるからね。少し早く来すぎてしまったかもしれない」
こちらでも、同じような会話が繰り広げられていた。
「アントアーネ、船が来た様だよ」
ブラッド様が指さす方向には、確かに大きな船が。あの船にお兄様たちが乗っているのね。お兄様の恋人と、仲良くできるかしら?もし嫌われてしまったら、どうしよう…
何だか妙に緊張してきた。そんな私に気が付いたブラッド様が、ギュッと私の手を握ってくれたのだ。
「アントアーネ、緊張しているのかい?大丈夫だよ」
そう言ってほほ笑んでくれたブラッド様。彼の笑顔と手から伝わる温もりが、私に安心感を与えてくれる。
船が停まり、中からお兄様たちが降りてきたのだ。
「マリネ、アントアーネちゃんも久しぶりね。アントアーネちゃん、随分と綺麗になったわね。10年ぶりかしら?最後に会ったのは、まだこんなに小さかったものね」
「リマ、相変わらず元気ね。よく来てくれたわ、疲れたでしょう。さあ、馬車に乗って」
「おば様、それにおじ様も、お久しぶりですわ。お2人ともお変わりなくてよかったですわ」
物静かで優しい雰囲気のおじ様に対し、非常に元気なおば様。10年前に会ったっきりだったが、全く変わっていないようだ。
「父上、母上、ブラッド殿、アントアーネ。ただいま」
この声は!
「お兄様、それに…」
「アントアーネちゃん、大きくなったわね。私の事を、覚えてくれているかしら?イリーネよ、ほら、リューズ王国では、一緒に遊んだでしょう?」
お兄様を押しのけ、私の元にやってきた女性。イリーネ様?もしかして。
「イリーネお姉様ですか?まあ、懐かしい。リューズ王国では、随分と可愛がってもらいましたね。まさかイリーネお姉様が、お兄様の恋人なのですか?」
「ええ、そうよ。アントアーネちゃんに会うのを、楽しみにしていたの。会えて嬉しいわ」
そう言って笑ったイリーネお姉様。
ブラッド様の従姉弟で侯爵令嬢のイリーネお姉様。私より2つ年上で、ブラッド様の領地に遊びに行った時に、たまたまイリーネお姉様も来ていて、仲良くなったのだ。非常に面倒見がよく、領地にいる間、よく一緒に遊んでもらったものだ。
ただ、体が弱くて空気の綺麗な領地で療養していると言っていた。
まさかイリーネお姉様が、お兄様の恋人だなんて。でも昔からイリーネお姉様とお兄様は、よく2人で一緒にいたし、2人がくっ付いても不思議ではない。
「この国はリューズ王国に比べて、寒いでしょう。体調を崩しては大変ですわ。どうかこれを使って下さい。それから、すぐに馬車に乗ってください。お兄様、イリーネお姉様は、体があまり丈夫ではないのですよ。もう少し配慮しないと」
すかさずお兄様に文句を言う。本当にお兄様は、気が利かないのだから。
そんな私の姿を見て、お兄様とイリーネお姉様が目を合わせて笑っていた。
「アントアーネちゃん、ありがとう。でももう私は、すっかり元気になったのよ。それにしても、こんなに優しくていい子を、この国の人たちは虐めたのよね…許せないわ…」
いつも穏やかで笑顔の素敵なイリーネお姉様なのだが、今ものすごく怖い顔をしたのは、気のせいかしら?
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