私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます

Karamimi

文字の大きさ
12 / 53

第12話:すぐに勘を取り戻したけれど…

しおりを挟む
「それじゃあ、早速稽古に入ろう。ジャンヌ、お前はこの4年、令嬢として生きて来たのだろう?無理はしなくていいからな」

「グラディオンったら、甘やかさないで。私は騎士団員としてここにきているのだから、皆と同じメニューをこなすわ。皆も私の事を、昔と同じように令嬢と思ってもらわなくてもいいからね。それじゃあ、早速稽古に入りましょう」

この1週間、自主的に練習を行ってきたのだ。きっと大丈夫なはず。

そんな思いで稽古を開始した。

「ジャンヌは4年ぶりの稽古なのに、あまり動きが鈍っていないな。さすがジャンヌだな」

「本当だ。見た目だけは立派な令嬢になっちまったけれど、やっぱりジャンヌだ」

私の練習風景を見て、他の仲間たちがそう言って笑っていた。皆から見ても、私の動きはあまり変わっていない様だ。

ただ、見た目だけは立派な令嬢とは、どういう意味だろう。

でもよかった。皆と同じ練習メニューを、なんとかこなせている。それに、段々勘が戻ってきたわ。

ただ…

「ジャンヌ、今日は初日だ、あまり無理するな」

「わ…私は…大丈夫…よ…」

勘は戻って来たものの、体力が付いていかないのだ。昔は余裕でこなせたメニューが、半分程度で息切れを起こしてしまうだなんて、情けない。

せっかく騎士団に再入団出来たのに、皆のお荷物になってしまうだなんて…シャーロン様と婚約破棄した今、もう私には貴族令嬢としての居場所はないだろう。だからこそ、騎士団は私に残された唯一の居場所なのに…


悔しくて涙が込みあげてくる。こんなんじゃダメよ、もっともっと頑張らないと。その日何とか稽古をこなした後、積極的に後片付けを行った。

「ジャンヌ、今日は相当疲れているだろう?片づけは俺たちがやっておくから、お前はもう帰れよ」

「私は大丈夫よ。私、今日皆にいっぱい迷惑をかけてしまったから、これくらいは私にやらせて」

心配そうな仲間たちに笑顔を向けると、黙々と片づけた。

全て片付けが終わり、皆と別れて馬車に乗り込む。さすがに今日は疲れたわ。

「ジャンヌ、大丈夫かい?久しぶりの騎士団だ。かなり疲れたのだろう」

「姉上、顔色があまり良くないですよ。無理は禁物です。どうか今日はゆっくり休んでください」

お父様とディーノが心配そうに声をかけて来た。

「ありがとうございます。でも私は大丈夫ですわ。これくらい、何ともありません」

本当か物凄く疲れている。でも、昔の私ならこんなもの平気だったはず…

そうよ、一刻も早く、4年間のブランクを取り戻さないと!私に必要なのは体力よ。

翌日から朝早く起きて、自主練習を行った。さらに

「お父様、ディーノ、今日から私、早く行く事にしましたの。ですので、別々で騎士団に参りましょう」

そう伝え、2人よりも一足先に騎士団へと向かった。皆が来た時に、すぐに稽古に取り掛かれる様に、1人もくもくと準備を行う。今の私は、この隊のお荷物でしかない。せめて少しでも、皆の役に立ちたいのだ。

「あれ、ジャンヌ。おはよう。もしかしてこれ、全部ジャンヌが1人で準備したのか?」

「おはよう、グラディオン。そうよ。私はこの隊で一番下っ端なのだから、1番早く来て準備をするのは当然でしょう。それに昨日、皆にも迷惑をかけたし」

私が体力がないばかりに、皆の練習の足を引っ張ってしまったのだ。

「そんな事は気にしなくていいよ。それにうちの部隊では、下っ端とかそんな事は関係ない。そもそもジャンヌが言ったんじゃないか。“みんな平等に準備も片付けもしよう。新人にばかり押し付ける様なことは絶対にダメだ”って」

「確かにそうだけれど、それは嫌がる人に無理やり準備や片づけをさせていた人がいたからよ。でも、私は自分の意思でやっているの。皆の役に立ちたいのよ。もう私には、ここしか居場所がないから…」

しまった、ついうっかりグラディオンにこんな事を言ってしまった。

私の言葉を聞いたグラディオンが、一瞬大きく目を見開いた。そして

「ジャンヌ、俺のせいですまない…」

悲しそうに呟いたのだ。どうしてグラディオンが謝るの?その意味が、私には全く分からない。

「すまない、何でもない。ジャンヌ、この隊の隊長は俺だ。誰か1人に何かをやらせることはさせない。これからは1人で準備をしたり片づけをしたりするのは避けて欲しい。ただ、ジャンヌが焦る気持ちもわかる。4年もの間、騎士団を離れていたのだからな。ジャンヌが望むなら、俺が自主練習に付き合ってやるよ」

「グラディオンが?いいわよ、あなたはただでさえ隊長の仕事もあって忙しいのでしょう?私は大丈夫だから。それから、勝手な事をしてごめんなさい。この隊はあなたの隊だものね。これからは、隊長でもあるあなたの指示に従うわ」

昔からずっと一緒に稽古に励んできたグラディオン。この4年で、彼は隊長にまで登りつめたのよね。私はいつの間にか、グラディオンにも置いて行かれてしまったわ…

それがなんだか悲しくて寂しい。でも、仕方がない事なのだ。

「ジャンヌ、俺は…」

「ジャンヌ、グラディオン隊長も。随分早いな。ジャンヌ、昨日お前無理をしただろう?体は大丈夫か?」

他の隊員たちがやって来た。

「ええ、大丈夫よ。今日もよろしくね」

皆の足ばかり引っ張ってはいられない。もっともっと頑張らないと。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

【完結】見えてますよ!

ユユ
恋愛
“何故” 私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。 美少女でもなければ醜くもなく。 優秀でもなければ出来損ないでもなく。 高貴でも無ければ下位貴族でもない。 富豪でなければ貧乏でもない。 中の中。 自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。 唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。 そしてあの言葉が聞こえてくる。 見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。 私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。 ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。 ★注意★ ・閑話にはR18要素を含みます。  読まなくても大丈夫です。 ・作り話です。 ・合わない方はご退出願います。 ・完結しています。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

処理中です...