私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます

Karamimi

文字の大きさ
23 / 53

第23話:久々に友人と話しました

しおりを挟む
両親と一緒に馬車に乗り込むと、グルシュファー伯爵家を目指す。

「ジャンヌ、今日のそのドレス、とても素敵よ。やっぱりあなたは、騎士団の制服よりもドレスの方がよく似合うわ」

「そうか?ジャンヌは騎士団の制服の方がよく似合うぞ」

「あなたは黙っていて頂戴。大体あなたは、もう少し社交界の場に顔を出してください。そもそも私と結婚するときに、約束しましたわよね。しっかり伯爵の仕事もこなすと。それなのにあなたは…」

どうやらお母様のスイッチが入ってしまった様で、物凄い勢いでお父様に文句を言っている。これは、そっとしておいた方がよさそうだわ…

本当にお母様は、今日も元気ね。まあ、それだけ思う事があるのだろう。

「母さん、落ち着いてくれ。ほら、グルシュファー伯爵家に着いたぞ。早く行こう」

一刻も早くこの状況を打破したいお父様が、お母様を連れて急いで馬車から降りて行った。私も馬車から降り、今日の舞台でもあるホールへと向かう。

大丈夫よ、私は何も悪い事をしていないのだから。堂々としていればいい。そう自分に言い聞かせ、背筋をまっすぐ伸ばすと、ゆっくり入場していく。私が入場した途端、一斉に皆が私の方を向いた。

見たいならどうぞ見ればいい。ただ…私は見世物ではないが…

「ジャンヌ、来てくれたのね。嬉しいわ」

そんな私に声をかけて来たのは、アリスだ。

「アリス、久しぶりね。ごめんね、色々と忙しくて、なかなか会う時間が取れなくて」

「いいのよ、そんな事。それよりも、色々と大変だったわね。あなた、社交界であることない事言われていたのよ…でも、元気そうで本当によかったわ」

あることない事とは、きっとシャーロン様と婚約破棄した事だろう。何となくだが、私が悪者になっている事は想像できる。

“それで一体何があったの?巷ではついにシャーロン様がジャンヌに愛想をつかして婚約破棄をしたことになっているわ。一方的に婚約破棄されたジャンヌは、ショックで寝込んでいるとも…でもジャンヌがショックで寝込むなんて、本当にあり得ない話だわ。だってジャンヌよ。シャーロン様を締め上げたならわかるけれど、寝込むだなんてね。そもそもあなた、今騎士団で伸び伸びと過ごしているそうじゃない”

アリスが耳元で、真剣な表情で必死に私に訴えているが…なんだろう、この何とも言えない気持ちになるのは…

“アリス、実は婚約破棄は私から言い出した事なの。私ね、もう限界だったのよ。シャーロン様は私の事を嫌っていたでしょう?これ以上私の事を嫌いな人間と一緒にいたくないと思ったの。それにその…令嬢たちともかなり親密にしていた様だし…”

“そうだったのね。それにしてもジャンヌがよく4年もあの状況に耐えたわね。やっぱり、騎士団時代に助けてもらった事が、よほど心に響いたのね。あなたが誰かに助けてもらうだなんて、奇跡に近い出来事だったもの…”

だからアリス、私の事を一体何だと思っているのよ!でも、確かに騎士団時代にシャーロン様に助けられたことがきっかけで、彼の事が好きになった。

危険を冒してまで私を助けてくれたシャーロン様。彼のお陰で、私の無罪は証明され、汚名を返上する事が出来たのだ。でも…

“そんな暗い顔をしないで。でも、よかったじゃない。また大好きな騎士団に戻れたのだし。貴族の中には、好き勝手言う人間も多いけれど、気にする事はないわ。私は自分の気持ちに真っすぐなジャンヌが大好きよ”

“ありがとう、アリス。私ね、シャーロン様と婚約破棄をして、騎士団に戻って気が付いたの。やっぱり私は、自分らしく生きたいって。それに嫌な事から逃げたりもしたくないって。だから今日、夜会に参加したの。もちろん、アリスにも会いたかったし”

“すっかり昔のジャンヌに戻ったわね。やっぱりジャンヌはこうでなくっちゃ。正直シャーロン様と婚約していた4年間、ジャンヌがジャンヌじゃないみたいで、凄く不安だったの。こう言ったら語弊があるけれど、シャーロン様とジャンヌは縁がなかったのよ。やっぱりジャンヌには、グラディオン様がお似合いよね”

「ちょっと、どうしてそこでグラディオンの名前が出てくるのよ!」

急にアリスが変な事を言うから、つい大声を出してしまった。そのせいで、皆がこちらを注目している。

“大きな声を出してごめんなさい。急にグラディオンの話になるから、びっくりしちゃって…”

“あら、違うの?ダン様がジャンヌとグラディオン様、いい感じだと言っていたから、てっきりそうなのかと。それにあなたが本来の姿を取り戻したのも、グラディオン様のお陰なのかと思ったのだけれど”

確かに私は騎士団に戻って、グラディオンと一緒に過ごすことで少しずつ自分らしさを取り戻していったけれど。

“グラディオンと私はそんな仲じゃないわよ”

そう、彼とは良き友人であり、上司でもあるのだ。決してそんな仲ではない。それにしても、ダンったら、婚約者のアリスにそんな話をしていただなんて。本当に油断も隙も無いわ。

「アリス、ちょっといいかい?」

その時だった。アリスのお父様がアリスに声をかけて来たのだ。

「ごめんね、ジャンヌ。本当は今日ずっと一緒にいようと思っていたのだけれど、お父様に呼ばれてしまって」

「私は大丈夫よ。今日あなたとお話しできて、よかったわ。またゆっくりと話をしましょう」

「ええ、それじゃあね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】身を引いたつもりが逆効果でした

風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。 一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。 平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません! というか、婚約者にされそうです!

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる

kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。 いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。 実はこれは二回目の人生だ。 回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。 彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。 そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。 その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯ そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。 ※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。 ※ 設定ゆるゆるです。

【完結】見えてますよ!

ユユ
恋愛
“何故” 私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。 美少女でもなければ醜くもなく。 優秀でもなければ出来損ないでもなく。 高貴でも無ければ下位貴族でもない。 富豪でなければ貧乏でもない。 中の中。 自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。 唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。 そしてあの言葉が聞こえてくる。 見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。 私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。 ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。 ★注意★ ・閑話にはR18要素を含みます。  読まなくても大丈夫です。 ・作り話です。 ・合わない方はご退出願います。 ・完結しています。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

殿下、毒殺はお断りいたします

石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。 彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。 容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。 彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。 「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。 「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。

【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ

・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。 アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。 『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』 そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。 傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。 アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。 捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。 --注意-- こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。 一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。 二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪ ※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。 ※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。

あなただけが私を信じてくれたから

樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。 一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。 しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。 処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。

処理中です...