30 / 53
第30話:グラディオンの想い
しおりを挟む
騎士団に再入団して早半年が過ぎた。この半年、毎日が夢の様な日々を送っている。夜会も月に1回のペースで出ている。
またシャーロン様に絡まれたらどうしよう、そう思っていたが、今のところ私が出ている夜会にはグラディオンも出ている為、シャーロン様に絡まれることはない。
というよりも、シャーロン様が近づいてくると、すぐにグラディオンが追い払ってくれるのだ。
どうやらシャーロン様は、グラディオンが怖い様で、グラディオンを睨みつけながら去っていく。まあ、今のグラディオンには、逆立ちしても勝てないものね。
ちなみに…半年たった今でも、私もグラディオンには全く歯が立たない。一体どこまで強くなったのかしら?あの人。
ただでさえ強いのに、まだ皆よりも厳しい訓練を行っているのだから、本当に嫌になるわ。これじゃあ、いつまでたってもグラディオンに勝つどころか、追いつく事すら出来ないじゃない。
「ジャンヌ、今日は自主練習はどうするんだ?もしするなら、俺も付き合うぞ」
グラディオンが話しかけて来た。私は怪我の一件以降、あまり無理をしない様に、自主練習は出来る範囲で行っているのだ。
「今日は少しだけやってから帰ろうと思っているの。最近ちょっと無理をしすぎて、肩がちょっと痛くて」
「肩が痛いとはどういうことだ?どうして痛みがあるのに黙っていたんだ?今日はもう家に帰った方がいい」
相変わらず心配性なグラディオンね。
「大丈夫よ。昨日医者にも見てもらったから。特に問題ない様よ。だから…」
「いいや、今日はもう帰った方がいい。無理をして悪化したら大変だろう?肩の調子が良くなったら、またいつでも練習をすればいい。ほら、帰るぞ」
私の手を引き、グラディオンが歩き出した。相変わらず私の事を女として見ていない様で、平気で手を握ったり頭を撫でたりするのだ。
まあ、いいけれどね…
「ほら、馬車に着いたぞ。いいか、まっすぐ家に帰るんだぞ。心配だから、俺が家まで送ってやろうか?もう少し早かったら、ディーノたちと一緒に帰れたのにな」
朝はよくお父様とディーノと一緒に来ているが、帰りは別々の事が多いのだ。もうお父様とディーノは帰ってしまった様だ。
「私1人で大丈夫よ。それじゃあ、帰るわね。また明日」
馬車に乗り込み、見送ってくれるグラディオンに手を振った。笑顔でグラディオンが手を振り返してくれる。きっとこの後、グラディオンは1人自主練習をするのだろう。
あの人、どこまで強くなるつもりかしら?本当にどんどん引き離されていくじゃない。こうなったら、お父様を相手に家で自主練習をしようかしら?でも、あまり無理をすると、お母様が怒るのだ。
「ジャンヌは令嬢なのよ。無理をして痕が残る様な怪我をしたらどうするの?」
そう言うのだ。令嬢だろうが令息だろうが、痕が残る怪我をしたら大変な事だと思うのだが。お母様は、すぐにそうやって“あなたは令嬢だから”というのだ。
本当にお母様は…
そんな事を考えているうちに、屋敷に着いた。今日も疲れたわ。すぐに湯あみをして…て、大変、大切なトレーニング用品を忘れてきてしまったわ。あれがないと、夜のトレーニングが出来ない。
いつもは家用に置いてあるトレーニング用品を、今日はたまたま騎士団に持って行ってしまったのだ。急いで取りに行かないと!
部屋から出て玄関へと向かう。すると
「あら、ジャンヌ。まだ着替えていなかったの?もうすぐ晩御飯よ。早く着替えていらっしゃい」
「お母様、ちょっと今から騎士団に行って参りますわ。大切なトレーニング用品を忘れてきてしまって」
「トレーニング用品なら、沢山持っているじゃない。お父様やディーノから借りてもいいし。明日にしたら?」
「あれじゃないとダメなのです。すぐに戻ってきますから」
急いで馬車に乗り込み、騎士団を目指した。そして騎士団に着くと、すぐに稽古場へと向かう。
「あったわ。私ったらこんな大切な物を、騎士団に忘れてくるだなんて。やっぱり持ち歩くのは良くないわね」
トレーニング用品を回収すると、そのまま稽古場を後にしようとしたのだが。
「あら、灯りが付いているわ。もしかして、まだグラディオンが1人で稽古をしているのかしら?もう、いくら何でも頑張りすぎよ。私にはさっさと帰れと言ったくせに。一言文句を言ってやるわ」
灯りがともっている方へ向かって歩いていく、すると…
「グラディオン、いつまで気持ちを隠しておくつもだい?ジャンヌは今、フリーだ。いい加減、気持ちを伝えたらどうだ?お前、ジャンヌの事がずっと好きだったのだろう?」
この声は、副騎士隊長?
「確かに俺は、ジャンヌが好きだ。今も昔も、この気持ちが色あせる事はない。でも…ジャンヌは今騎士団に戻れて、物凄く幸せそうなんだよ。ジャンヌにとって、騎士団は大切な居場所だ。それにジャンヌは、俺の事を男として見ていない。そんな俺が気持ちを伝えたら、ジャンヌはどう思う?きっと混乱し、困惑するだろう」
「確かにそうかもしれないが、それじゃあいつまでたっても、ジャンヌと婚約は出来ないぞ。騎士団長だって、グラディオンにならジャンヌをやってもいいと言ってくれているのだろう?だったら…」
何を話しているの?お父様が私を、グラディオンにやってもいい?グラディオンは私の事が好き?
嘘…
またシャーロン様に絡まれたらどうしよう、そう思っていたが、今のところ私が出ている夜会にはグラディオンも出ている為、シャーロン様に絡まれることはない。
というよりも、シャーロン様が近づいてくると、すぐにグラディオンが追い払ってくれるのだ。
どうやらシャーロン様は、グラディオンが怖い様で、グラディオンを睨みつけながら去っていく。まあ、今のグラディオンには、逆立ちしても勝てないものね。
ちなみに…半年たった今でも、私もグラディオンには全く歯が立たない。一体どこまで強くなったのかしら?あの人。
ただでさえ強いのに、まだ皆よりも厳しい訓練を行っているのだから、本当に嫌になるわ。これじゃあ、いつまでたってもグラディオンに勝つどころか、追いつく事すら出来ないじゃない。
「ジャンヌ、今日は自主練習はどうするんだ?もしするなら、俺も付き合うぞ」
グラディオンが話しかけて来た。私は怪我の一件以降、あまり無理をしない様に、自主練習は出来る範囲で行っているのだ。
「今日は少しだけやってから帰ろうと思っているの。最近ちょっと無理をしすぎて、肩がちょっと痛くて」
「肩が痛いとはどういうことだ?どうして痛みがあるのに黙っていたんだ?今日はもう家に帰った方がいい」
相変わらず心配性なグラディオンね。
「大丈夫よ。昨日医者にも見てもらったから。特に問題ない様よ。だから…」
「いいや、今日はもう帰った方がいい。無理をして悪化したら大変だろう?肩の調子が良くなったら、またいつでも練習をすればいい。ほら、帰るぞ」
私の手を引き、グラディオンが歩き出した。相変わらず私の事を女として見ていない様で、平気で手を握ったり頭を撫でたりするのだ。
まあ、いいけれどね…
「ほら、馬車に着いたぞ。いいか、まっすぐ家に帰るんだぞ。心配だから、俺が家まで送ってやろうか?もう少し早かったら、ディーノたちと一緒に帰れたのにな」
朝はよくお父様とディーノと一緒に来ているが、帰りは別々の事が多いのだ。もうお父様とディーノは帰ってしまった様だ。
「私1人で大丈夫よ。それじゃあ、帰るわね。また明日」
馬車に乗り込み、見送ってくれるグラディオンに手を振った。笑顔でグラディオンが手を振り返してくれる。きっとこの後、グラディオンは1人自主練習をするのだろう。
あの人、どこまで強くなるつもりかしら?本当にどんどん引き離されていくじゃない。こうなったら、お父様を相手に家で自主練習をしようかしら?でも、あまり無理をすると、お母様が怒るのだ。
「ジャンヌは令嬢なのよ。無理をして痕が残る様な怪我をしたらどうするの?」
そう言うのだ。令嬢だろうが令息だろうが、痕が残る怪我をしたら大変な事だと思うのだが。お母様は、すぐにそうやって“あなたは令嬢だから”というのだ。
本当にお母様は…
そんな事を考えているうちに、屋敷に着いた。今日も疲れたわ。すぐに湯あみをして…て、大変、大切なトレーニング用品を忘れてきてしまったわ。あれがないと、夜のトレーニングが出来ない。
いつもは家用に置いてあるトレーニング用品を、今日はたまたま騎士団に持って行ってしまったのだ。急いで取りに行かないと!
部屋から出て玄関へと向かう。すると
「あら、ジャンヌ。まだ着替えていなかったの?もうすぐ晩御飯よ。早く着替えていらっしゃい」
「お母様、ちょっと今から騎士団に行って参りますわ。大切なトレーニング用品を忘れてきてしまって」
「トレーニング用品なら、沢山持っているじゃない。お父様やディーノから借りてもいいし。明日にしたら?」
「あれじゃないとダメなのです。すぐに戻ってきますから」
急いで馬車に乗り込み、騎士団を目指した。そして騎士団に着くと、すぐに稽古場へと向かう。
「あったわ。私ったらこんな大切な物を、騎士団に忘れてくるだなんて。やっぱり持ち歩くのは良くないわね」
トレーニング用品を回収すると、そのまま稽古場を後にしようとしたのだが。
「あら、灯りが付いているわ。もしかして、まだグラディオンが1人で稽古をしているのかしら?もう、いくら何でも頑張りすぎよ。私にはさっさと帰れと言ったくせに。一言文句を言ってやるわ」
灯りがともっている方へ向かって歩いていく、すると…
「グラディオン、いつまで気持ちを隠しておくつもだい?ジャンヌは今、フリーだ。いい加減、気持ちを伝えたらどうだ?お前、ジャンヌの事がずっと好きだったのだろう?」
この声は、副騎士隊長?
「確かに俺は、ジャンヌが好きだ。今も昔も、この気持ちが色あせる事はない。でも…ジャンヌは今騎士団に戻れて、物凄く幸せそうなんだよ。ジャンヌにとって、騎士団は大切な居場所だ。それにジャンヌは、俺の事を男として見ていない。そんな俺が気持ちを伝えたら、ジャンヌはどう思う?きっと混乱し、困惑するだろう」
「確かにそうかもしれないが、それじゃあいつまでたっても、ジャンヌと婚約は出来ないぞ。騎士団長だって、グラディオンにならジャンヌをやってもいいと言ってくれているのだろう?だったら…」
何を話しているの?お父様が私を、グラディオンにやってもいい?グラディオンは私の事が好き?
嘘…
121
あなたにおすすめの小説
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目の人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
あなただけが私を信じてくれたから
樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。
一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。
しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。
処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる