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6 トーマス殿下の評判 レオナルド・ボンディング目線
しおりを挟む~レオナルド目線
「お部屋の準備が整いました」
執事のセバスがドアの前で頭をさげる。
「誰かメイドに案内させてくれ。ああ、メイドの中から三人ほど選んで、荷ほどきの手伝いをするように伝えろ」
「かしこまりました」
やがて三人のメイドがやって来て彼女と挨拶を交わし、そのまま彼女を連れて行った。
「レオナルド様!!良ろしゅうございましたね!素晴らしいご令嬢ではございませんか!セバスはこの日をどんなに待ちわびていたことか!わたくしもトーマス殿下に感謝したいくらいでございます!」
二人になった客間でセバスが興奮して叫んだ。
お前、盗み聞きをしていたのか?
「ああ、俺もまだ信じられない。狐につままれているような気分だ」
「さっそく婚約の書類を作成なさいませ!こういったことは早いに越したことはありません、トーマス殿下の気が変わらない内に正式な婚約者になるのです!」
確かにいくら王太子命令と言っても、明日にも状況が変わってしまう可能性もある。
やっぱりリリア嬢を返せと言われるかもしれない。
そんなことになる前に正式に婚約を結んでおいたほうがいい。
「そうだな!すぐに用意しよう!」
俺とセバスはあわただしく執務室に駆け込んだ。
* * *
「ではこれをコンポジット伯爵家に送ってくれ。最速でな」
「かしこまりました」
出来上がった婚約の誓約書を使用人に手渡して、ほっと一息、セバスがお茶の準備をしてくれる。
「それにしても、トーマス殿下は一体何を考えているんだ。あのリリア嬢よりも素晴らしい女性だというのか?そのナタリーという令嬢は」
リリア嬢の発言に驚いた俺はすぐに調べた。
すると、出るわ出るわ、この短時間で大まかな経緯はすぐに把握できた。
「トーマス殿下は昔からお優しく、品行方正な王子と評判でございました。リリア様とも仲睦まじく、国王陛下と王妃様も、それはもう、リリア様を我が娘のように可愛がってらっしゃる、と」
「そのトーマス殿下が、たった一ヶ月で新しい恋に狂ったと?信じられん。陛下は何と仰っておられるのだ」
「さあ、まだそこまでは分かりませんが・・・・・・相当お怒りではないかと」
「はー、トーマス殿下にも困ったものだな。しかも、新しい恋人はつい一年ほど前まで平民として暮らしていた男爵家の庶子というでないか。いくら素晴らしい女性でも、さすがに未来の王妃になるには無理がある」
「そうでごさいますね。王族と男爵令嬢の婚姻など聞いたこともございませんから。リリア様との時ですら、伯爵家ということでかなりの反発があったと記憶しております。しかし、公爵家、侯爵家の高位貴族にトーマス殿下と歳の合うご令嬢がいなかったこと、陛下と王妃がリリア様をいたく気に入られ、望まれたことで何とか結ばれた婚約でしたが」
「今後、王宮は騒がしくなりそうだな。お前のいう通り、婚約の書類をすぐに送って正解だった。最低でも一年間は俺が婚約者としてリリア嬢を守ることが出来る」
「お褒めに預かり光栄にございますが、レオナルド様、こちらも頑張って下さいませ」
セバスが自分の胸ポケットから小さな手鏡を取り出し、俺に手渡した。
「? なんだ?」
「笑顔の練習です。リリア様に今度笑って見せると約束しておりましたね?さあ、頑張って笑いなさいませ!」
お前、やはり盗み聞きしていただろう!
しかし、笑顔、笑顔か。
手鏡に向かって笑ってみたが、なかなか難しいもんだな。
「人から好かれるにはまず笑顔!笑顔はどんな悪い人間でも優しく善良に見せることが出来るのです。しかし笑顔と一口に言ってもいろんな種類がございます。女性に好かれる笑顔を伝授いたしましょう!ほら、もっと口角を上げて!目尻を下げるのです!ああ、口角が下がってしまっております!上げて!はい、ストップ!そのまま10秒、1、2、3、4・・・・・・ほら!口角!!」
せ、セバス、ちょっとスパルタ過ぎないか?
しかもどんなに悪い人間でも善良に?
俺は確かにデカすぎるし、目つきも悪い。
顔に大きな傷もある恐ろしい見た目をしているが悪い人間ではないぞ?
俺は小さな手鏡を持ち、リリア嬢との約束を果たすべく必死で笑顔の練習をするのだった。
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7 計画 へ
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