国民的アイドルは乙女ゲームのヒロインに転生したようです~婚約破棄の後は魔物公爵に嫁げ?えー、何でよ?!

むぎてん

文字の大きさ
22 / 38

22 解放

しおりを挟む

「これがリンと俺の前世だ」

レオナルド様が泣いている。
厳ついその顔をぐしゃぐしゃにして、泣いている。

ああ、泣かないで。
私はレオナルド様を泣かせたくはないのよ?
優しい世界で優しいあなたと笑っていたかったの。

だけどごめんなさい、私はあなたを苦しめる。
私はトーマスと離れる事が出来ないから。

離れてしまえば壊れてしまう。
私も、トーマスも。

摩周を産み出したのは私だ。
摩周は今世では、自身の肉体を持つトーマスとして生まれて来た。
私はトーマスの命に責任を持たなければならないわ。
もう、私の中の摩周ではないのだから。


「俺たちは結婚なんてしない。元々一人の人間なんだ。結婚なんて出来るわけがない。だから婚約破棄をして隣国に逃げて、二人でひっそりと暮らすつもりだったんだ。でも俺はその計画を勝手に変更してリリアをお前の婚約者に据えた。リリアは何も知らなかったんだ。ごめんねリリア。・・・・でもレオナルドはいい男だったろ?」

「うん、とってもいい男だった。トーマス、ありがとう」

「レオナルド、お前を巻き込んで悪かった。リリアを守るには、お前に託すのが一番確実だったんだ。でもそれだけじゃない、リリアに幸せになって欲しかったんだ。リリアはお前といれば幸せになれる。俺たちは身体は別々になってもやっぱり一心同体だからね、分かるんだよ。だから頼む、リリアと俺を受け入れてくれないか?同居させろなどとは言わない。三日に一度会わせてくれるだけでいいんだ」

トーマス、駄目よ。
私はもうこれ以上、レオナルド様を傷つけたくはないの。

「いいえ、レオナルド様、貴方が傷ついてまで私とトーマスを受け入れる事はないわ。私たちは隣国で静かに暮らします。・・・・この1ヶ月間、私は幸せでした。私が心から愛する事が出来たのは、前世でも今世でもレオナルド様だけ。もう、それだけで幸せなんです。だから、お願い、もう、泣かないで・・・・・・」

「リリア・・・・・・」

呟いたレオナルド様は涙で濡れた顔を乱暴に拭うと、私の顔を挟み込むように両手で掴み、大声で怒鳴った。

「お前は馬鹿か!!!  リリア!  お前は俺がどれだけお前を愛しているのか解っていないのか! お前がいなければ生きて行けないのは俺も一緒なんだよ!! 出ていくなど絶対に許さない!!」

思いの全てを爆発させたようなレオナルド様の叫び声に、私の全身が震えた。

「リリア、リン、どっちでもいい。どんなお前でも愛してるんだ。トーマスが引っ付いて来ようと、マシューが引っ付いて来ようと構わない。お前の全てを受け止めてやる。俺の側にいろ」

「レオナルド様・・・・・・」

「リリア、よく聞け。俺は俺の全てを懸けてお前を幸せにする。お前の『新しい幸せな世界』は俺の隣だ!分からないなら何度でも言ってやる。俺の隣で幸せになれ!」


目眩すら覚えるほどの幸福感が私を満たした。



ああ、見付けた、見付けたよ摩周。




地獄のような世界を生きていた。
耐えきれずに摩周を作り出し、私の地獄に引きずり込んだ。

地獄を抜け出しても、私たちは離れられない。
二人でいい。摩周がいてくれれば何もいらない。

寂しい二人、悲しい二人。
本当は、ひとり。

ずっと探してた。
真っ暗闇の中を手探りで探し続けていた。
どこある?どこに行けばあるの?

ねえ、摩周、摩周、摩周、摩周。



今、新しい幸せな世界がここにあった。




「リン、見つかって良かったね、『新しい幸せな世界』」

トーマスが泣いている。
私も泣いている。

私たちは、もう、気付いている。

リンと摩周が、本当の夜明けを迎えていることに。

「トーマス、私はやっと摩周を解放してあげられる」

「解放されたのはリンだよ。リンはあの地獄の世界にずっと縛られてた。解放してくれたのはレオナルドだ。俺はリンが俺を生んでくれたことに感謝してる。ありがとう、リン」

「摩周、ずっと、ずっと側にいてくれてありがとう。手を繋いでいてくれてありがとう。抱き締めていてくれてありがとう」

「うん、リンが幸せになって良かった。レオナルド、リリアをよろしくね。俺たちはもう、大丈夫。離れても生きて行ける。俺たちはお前のお陰で、初めて一人の『リリア』と一人の『トーマス』になれた。・・・・・・ありがとう、レオナルド」



手を繋ぎ、静かに目を閉じた。
今この瞬間、私とトーマスは『リン』と『摩周』の葬式をしているのだと思った。

辛かったね、苦しかったね。
でも、頑張った。
そう、あなたたちは、頑張ったんだよ。

さようなら・・・・・・


寂しい、悲しい二人はもう、いない。

『新しい幸せな世界』に足を踏み出したリリアとトーマスがここにいた。


────────────────────
23 マサヤの遺書
  ~レオナルド・ボンディング目線 へ

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】モブの王太子殿下に愛されてる転生悪役令嬢は、国外追放される運命のはずでした

Rohdea
恋愛
公爵令嬢であるスフィアは、8歳の時に王子兄弟と会った事で前世を思い出した。 同時に、今、生きているこの世界は前世で読んだ小説の世界なのだと気付く。 さらに自分はヒーロー(第二王子)とヒロインが結ばれる為に、 婚約破棄されて国外追放となる運命の悪役令嬢だった…… とりあえず、王家と距離を置きヒーロー(第二王子)との婚約から逃げる事にしたスフィア。 それから数年後、そろそろ逃げるのに限界を迎えつつあったスフィアの前に現れたのは、 婚約者となるはずのヒーロー(第二王子)ではなく…… ※ 『記憶喪失になってから、あなたの本当の気持ちを知りました』 に出てくる主人公の友人の話です。 そちらを読んでいなくても問題ありません。

モブなのに、転生した乙女ゲームの攻略対象に追いかけられてしまったので全力で拒否します

みゅー
恋愛
乙女ゲームに、転生してしまった瑛子は自分の前世を思い出し、前世で培った処世術をフル活用しながら過ごしているうちに何故か、全く興味のない攻略対象に好かれてしまい、全力で逃げようとするが…… 余談ですが、小説家になろうの方で題名が既に国語力無さすぎて読むきにもなれない、教師相手だと淫行と言う意見あり。 皆さんも、作者の国語力のなさや教師と生徒カップル無理な人はプラウザバック宜しくです。 作者に国語力ないのは周知の事実ですので、指摘なくても大丈夫です✨ あと『追われてしまった』と言う言葉がおかしいとの指摘も既にいただいております。 やらかしちゃったと言うニュアンスで使用していますので、ご了承下さいませ。 この説明書いていて、海外の商品は訴えられるから、説明書が長くなるって話を思いだしました。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

無事にバッドエンドは回避できたので、これからは自由に楽しく生きていきます。

木山楽斗
恋愛
悪役令嬢ラナトゥーリ・ウェルリグルに転生した私は、無事にゲームのエンディングである魔法学校の卒業式の日を迎えていた。 本来であれば、ラナトゥーリはこの時点で断罪されており、良くて国外追放になっているのだが、私は大人しく生活を送ったおかげでそれを回避することができていた。 しかしながら、思い返してみると私の今までの人生というものは、それ程面白いものではなかったように感じられる。 特に友達も作らず勉強ばかりしてきたこの人生は、悪いとは言えないが少々彩りに欠けているような気がしたのだ。 せっかく掴んだ二度目の人生を、このまま終わらせていいはずはない。 そう思った私は、これからの人生を楽しいものにすることを決意した。 幸いにも、私はそれ程貴族としてのしがらみに縛られている訳でもない。多少のわがままも許してもらえるはずだ。 こうして私は、改めてゲームの世界で新たな人生を送る決意をするのだった。 ※一部キャラクターの名前を変更しました。(リウェルド→リベルト)

転生悪役令嬢は冒険者になればいいと気が付いた

よーこ
恋愛
物心ついた頃から前世の記憶持ちの悪役令嬢ベルティーア。 国の第一王子との婚約式の時、ここが乙女ゲームの世界だと気が付いた。 自分はメイン攻略対象にくっつく悪役令嬢キャラだった。 はい、詰んだ。 将来は貴族籍を剥奪されて国外追放決定です。 よし、だったら魔法があるこのファンタジーな世界を満喫しよう。 国外に追放されたら冒険者になって生きるぞヒャッホー!

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

断罪が行われないってどういうこと!?~一分前に前世を思い出した悪役令嬢は原作のトンデモ展開についていけない

リオン(未完系。)
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生している、そう気が付いたのは断罪が行われる一分前。 もうだめだと諦めるエリザベスだが、事態は予想もしていない展開へと転がっていく…?

悪役令嬢に転生したので断罪イベントで全てを終わらせます。

吉樹
恋愛
悪役令嬢に転生してしまった主人公のお話。 目玉である断罪イベントで決着をつけるため、短編となります。 『上・下』の短編集。 なんとなく「ざまぁ」展開が書きたくなったので衝動的に描いた作品なので、不備やご都合主義は大目に見てください<(_ _)>

処理中です...