30年待たされた異世界転移

明之 想

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第12章 激闘編

任せてほしい

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「ノワール!?」

「クゥゥン」

 駆け寄るセレス様に鼻をこすりつけるノワール。

「クン、クウゥン!」

「ふふ、くすぐったい」

 小型化していない体躯で華奢なセレス様に甘える様は、何というか独特なものがあるな。ノワールを見慣れた騎士たちも若干引いてるんじゃないか。

 まっ、悪いことじゃない。
 ということで。

「セレス様、私はそろそろ出発したいと思います」

「あっ、コーキさん」

「どうしました?」

「あの、その……」

 声をかけたのに言いよどんでる?

「セレス様?」

「っ……この先で」

 ん?

「悲劇的な何かが。何かが起こるかもしれないんです。親しい誰かの命に、生死に関わるような、何かが」

 言葉に詰まりながらも言い終えたその内容は突拍子もないこと。
 ただし、俺にとっては耳を疑うことじゃない。

「それは、予知でしょうか?」

「はい」

 やはり。

「セレス様は予知を見たので、現場へ向かおうとしていたのですね?」

「……はい」

 予知で見ていたのなら、こんな場所で俺に会っても驚かないわけだ。

「けど、ごめんなさい。詳しいことは分かりませんし、今日この後に起こるとも断定できなくて。だから、私も一緒に」

「いえ、予知の話を聞けただけで充分です」

「コーキさん?」

「あとは私に任せてセレス様はエンノアに。エンノアで待っていてもらえませんか?」

「……」

 俯いてしまった。
 簡単には頷いてくれないようだ。
 まあ当然だな。
 予知を見た自身こそが現場に赴くべき、俺に同行すべきだと考えているのだろうから。

 それでも、ここは譲れないんだよ。

「セレス様には申し訳ないのですが、可能な限り早く到着したいんです」

「……」

「待機していただけませんか?」

 護衛しながらとなると、倍以上の時間がかかってしまう。
 なので、どうか自重してほしい。
 俺に任せてほしい。

「セレス様?」

「……ですよね。足手まといですよね」

「……」

「分かりました」

 不安を顔に残しながらも首を縦に振るセレス様。

「今回は、いえ、今回もお願いします、コーキさん」

「了解です。すべて私にお任せください!」

 不安を消し去れるように力強く言葉を返すと、セレス様の頬に僅かながら笑みが。

「クゥゥン」

 そこを舐めようとするノワール。

「あっ、もう」

 空気が読めるじゃないか。

「頼んだぞ、ノワール」

「オン」

「ユーフィリアも」

「はい。ノワールもいますし大丈夫です」

 今のノワールは万全からは程遠い状態。
 とはいえ、並の魔物に後れを取ることはない。エビルズマリス本体やその強力な分体以外なら問題なく戦える。もちろん多数の魔物が相手となると話は違ってくるが、それも騎士たちと連携すれば何とかなるだろう。

 だから、俺が不安に思う必要などない。
 後顧の憂いなく、去っていい。
 そのはずだ。

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