30年待たされた異世界転移

明之 想

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第8章 南部動乱編

テポレン山の戦い 28

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「テポレンを誰より知る我らが南の警戒を怠るという失態を……」

「コーキ殿、申し訳のうございます」

 難局を乗り切り高揚しているだろうに、反省の弁を述べるスぺリスさんとゼミア長老。エンノアの民らしい言葉だが。

「おふたりの責任ではありません。南は安全と軍議で皆が判断したのですから」

「……」

「今回は、断崖の南斜面を登って来た敵が一枚上手だっただけですよ」

 とはいえ、少しは警戒すべきだったな。
 そこは俺の失態でもある。

「その敵を撃破できたのも、コーキ殿のおかげです」

 いや、俺の到着まで持ちこたえた皆の力だ。

「最悪の事態に至らぬよう防いでいただき、また我らエンノアも救っていただ き……」

「……」

「感謝の言葉もございません」

「いえ……」

 エンノアの思いは十分理解できる。
 感謝の気持ちもありがたい。

 が、今は西も東も戦闘の真っ只中。
 すべき話は他にある。

「ゼミアさん、スぺリスさん、そういう話は後にしましょうか」

「……申し訳ありません」

 だから、もう謝らないでくれ。
 それより。

「魔道具隊に問題はありませんか? 負傷者は?」

 エンノアの魔道具隊はこの戦いの肝。
 負傷者がいるなら、可能な限り治療をしておきたい。

「多少傷を負った者もいますが、魔法矢の射撃に問題が生じるほどではございません。ただ、我々を護っていただいた騎士の皆さんが……」

 やはり、被害はワディンだけか。

「……」

 正直、騎士1人でも失うのは大きな痛手だ。
 それでも今は、この奇襲を凌ぎ切ったのだから幸いと前を向いた方がいい。

「コーキ殿、このあとは?」

「我らはどう動けば?」

「魔道具隊はこれまで通り、魔法矢での援護をお願いします」

「西を重点的にでしょうか?」

「……」

 現状、西側はヴァーンやアル、ワディン騎士の奮闘で防御に成功している。
 東もB地点で爆発を起こしたばかり。敵軽装歩兵部隊の足も止まったまま。
 左右の樹林も足止めに成功している。

 なら。

「ここからは東西均等に射撃してください。魔法隊も東西両方にお願いします」

「「「「「はっ!」」」」」

「その後は、状況次第で臨機応変に進めましょう」

「「「「「了解しました!」」」」」

 よし。
 仕切り直しだ。

「それで、コーキ殿は?」

 俺は……。

 もし勝手が許されるなら、ずっと幸奈を護っていたい。
 ただ、この戦いは俺が本陣に留まった状態で勝てるような甘いものじゃないだろう。
 力と知恵を出し尽くして、ギリギリ勝ち筋が見えるかどうかの戦いだ。

 幸奈のもとを離れるのは不安だが……。

「コーキ殿?」

 幸いなことに、奇襲部隊を討ち果たした今の本陣は落ち着きを取り戻している。
 ディアナとユーフィリアも西から本陣に戻っている。

 本陣の奥にいる幸奈のもとには、ディアナとユーフィリア、そしてシア。3人がしっかりと護衛としてついている状態だ。

「……」

 これなら、俺が外に出ても何とかなるはず。
 本陣に何かあればすぐに戻れるように気配を感知しながら戦えばいい。

 となると、出るのは……東だな。

「ゼミアさん、スぺリスさん、本陣は任せますよ。私は東に出ますので」

「「承知しました」」

 2人の返事を聞きながら防壁を出ようとした、その時。

『ピィィィィ!!』

 耳を刺すような高音がテポレン山中を突き抜けた!

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