【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

文字の大きさ
11 / 58

第11話 帰り道

しおりを挟む
 折角家に行ったけど、抱き合ってお互いのフェロモンを堪能するだけで三時間もたってしまい、今日は解散になった。
 ……というか、解散にしないと俺もアキヤさんも離れられなくなりそうで怖くて……二人で「一回落ち着こう! いや、一緒にいると落ち着くんだけど……でも」と無理やり離れてきた。
 だから、地元の駅に着いたのもまだ夕方の明るい時間で、駅から自宅までの道のりも、休日らしくたくさんの人でにぎわっていた。

「あ! ミチくんだ!」
「モニくん、キョウイチさん!」

 駅と俺の家のちょうど中間にあるモニくんの住むマンション……正確にはモニくんの番のキョウイチさんの持ち物である一〇階建ての高級マンションの前で偶然二人に出会った。
 モニくんはいつものかわいい笑顔で癖のあるふわふわ明るい栗毛で、俺と会う時にはあまり着ていない質の良さそうな白いファーコート。
 隣に立つキョウイチさんは、一目で高級ブランドだと解るモノグラム柄のスーツを嫌味なく着こなして、チラっと見える靴も腕時計もネックレスもサングラスもすべてが超高級そうで……こういうアイテム全部、見るたびに違うんだよなぁ。いくつ持っているんだろう。

「……」

 無言で俺を見つめるキョウイチさんは、アキヤさんよりも背が高くて、マッチョまではいかないけどムキムキで、顔も圧のある美形。アキヤさんがイケメンとかハンサムだとしたら、キョウイチさんは男前とか美丈夫とかそっち系。
 海外に油田も持っている財閥の御曹司……継いで代表なんだっけ? とにかく日本一と言っても良いお金持ちだし、国の経済や政治にまで大きな影響のあるすごい人。
 マンガやドラマでしか見ないようなアルファの頂点。
 ……いろんな意味で最強過ぎて、ちょっと怖いし近寄りがたいんだけど、運命の番であるモニくんにはでろっでろに甘くて、モニくんの友達である俺にも優しくしてくれる……はずなのに、今日はなぜか一歩後ろに下がってしまった。

「キョウイチさん、どうしたの?」
「……そうか、モニにはわからないんだな」
「? ミチくんのフェロモンがいつもよりちょっと濃いけど……キョウイチさんには解らないはずだよね?」

 モニくんがかわいく首をかしげると、キョウイチさんは困ったように笑う。
 ちょっと珍しい顔だけど……あ、そうか。

「もしかして……アルファとさっきまで一緒だったの、解ります?」
「解る。しかも、アルファらしいアルファだろう?」

 俺が少しだけ近づいてしまったからか、キョウイチさんが顔をしかめる。
 最強アルファのキョウイチさんがこんな顔しちゃうんだ?

「はい。とてもアルファらしい人と一緒にいました」

 目の前の二人は番になっているから、モニくんはキョウイチさん以外のアルファのフェロモンが解らないし、キョウイチさんにはモニくん以外のオメガのフェロモンが解らない。でも、同属のフェロモンはなんとなく解る……けど、普通ならアルファ同士で同じ部屋にいたってフェロモンは解らない。解るのは、明らかにオメガと一緒にいて、フェロモンの分泌が激しくなった時だし、キョウイチさんはアルファの中でもかなり強いというか、代々アルファで遺伝子的に濃いから少々のアルファのフェロモンは気にならないはずなのに……。

「ミチくん……もしかして……!」

 そういう色々なことをモニくんも考えたのか、顔を赤らめて口元を抑えるけど……だいたい何の想像したのかは解るけど……。

「ち、違うから! まだ……ハグとキスしただけだから!」
「ハグとキスだけそれか。強いアルファだな。ミチさんの運命か?」
「はい……そうです」

 キョウイチさんは笑顔になったものの、さりげなくモニくんの後ろに回る。
 やっぱり番の首の後ろって落ち着くんだなぁ……身長差がすごいから意味あるのか解らないけど。

「よかったな。俺が不快に思うほど強いフェロモンなんてなかなか無い。良い相手だ」
「あ、ありがとうございます!」
「キョウイチさんが認めるなんて俺も安心! アキヤさんだっけ? 会ってみたいなぁ。ミチくん、今度ダブルデートしようね」
「番になって、フェロモンが落ち着いたころに頼む。相手もその方がいいだろう」
「はい。俺もアキヤさんに二人を紹介したいです」

 俺が頷いた瞬間、モニくんがキョウイチさんの袖を捲って腕時計を確認した。

「あ! 予約の時間やばくない?」
「予約ぐらいすぐに変更できるだろ」
「だめだよ! 飲食店の直前予約変更ってすっごく迷惑なんだから! 俺、キョウイチさんが店の人に嫌われるの嫌だからね!」

 モニくんの言葉にキョウイチさんは一瞬怪訝そうな顔をするけど、素直に頷いてスーツのポケットから車の鍵を取り出した。

「……わかった。ミチさん、車で送りたいが、今日はすまない。まぁ、そのフェロモンなら襲われることもないだろう」
「え、あ。いえ」
「じゃあねミチくん、また詳しく聞かせてね!」
「うん」

 入り口のすぐ横にある駐車場へと向かうだけなのに手を繋いで体を寄せ合って進む二人の背中を見送ってから、自宅へと足を進める。
 二人の仲睦まじい様子に、なぜかアキヤさんの顔が浮かんだ。

しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

ハコ入りオメガの結婚

朝顔
BL
オメガの諒は、ひとり車に揺られてある男の元へ向かった。 大昔に家同士の間で交わされた結婚の約束があって、諒の代になって向こうから求婚の連絡がきた。 結婚に了承する意思を伝えるために、直接相手に会いに行くことになった。 この結婚は傾いていた会社にとって大きな利益になる話だった。 家のために諒は自分が結婚しなければと決めたが、それには大きな問題があった。 重い気持ちでいた諒の前に現れたのは、見たことがないほど美しい男だった。 冷遇されるどころか、事情を知っても温かく接してくれて、あるきっかけで二人の距離は近いものとなり……。 一途な美人攻め×ハコ入り美人受け オメガバースの設定をお借りして、独自要素を入れています。 洋風、和風でタイプの違う美人をイメージしています。 特に大きな事件はなく、二人の気持ちが近づいて、結ばれて幸せになる、という流れのお話です。 全十四話で完結しました。 番外編二話追加。 他サイトでも同時投稿しています。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました

小池 月
BL
 大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。  壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。  加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。  大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。  そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。 ☆BLです。全年齢対応作品です☆

この噛み痕は、無効。

ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋 α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。 いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。 千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。 そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。 その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。 「やっと見つけた」 男は誰もが見惚れる顔でそう言った。

処理中です...