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第11話 帰り道
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折角家に行ったけど、抱き合ってお互いのフェロモンを堪能するだけで三時間もたってしまい、今日は解散になった。
……というか、解散にしないと俺もアキヤさんも離れられなくなりそうで怖くて……二人で「一回落ち着こう! いや、一緒にいると落ち着くんだけど……でも」と無理やり離れてきた。
だから、地元の駅に着いたのもまだ夕方の明るい時間で、駅から自宅までの道のりも、休日らしくたくさんの人でにぎわっていた。
「あ! ミチくんだ!」
「モニくん、キョウイチさん!」
駅と俺の家のちょうど中間にあるモニくんの住むマンション……正確にはモニくんの番のキョウイチさんの持ち物である一〇階建ての高級マンションの前で偶然二人に出会った。
モニくんはいつものかわいい笑顔で癖のあるふわふわ明るい栗毛で、俺と会う時にはあまり着ていない質の良さそうな白いファーコート。
隣に立つキョウイチさんは、一目で高級ブランドだと解るモノグラム柄のスーツを嫌味なく着こなして、チラっと見える靴も腕時計もネックレスもサングラスもすべてが超高級そうで……こういうアイテム全部、見るたびに違うんだよなぁ。いくつ持っているんだろう。
「……」
無言で俺を見つめるキョウイチさんは、アキヤさんよりも背が高くて、マッチョまではいかないけどムキムキで、顔も圧のある美形。アキヤさんがイケメンとかハンサムだとしたら、キョウイチさんは男前とか美丈夫とかそっち系。
海外に油田も持っている財閥の御曹司……継いで代表なんだっけ? とにかく日本一と言っても良いお金持ちだし、国の経済や政治にまで大きな影響のあるすごい人。
マンガやドラマでしか見ないようなアルファの頂点。
……いろんな意味で最強過ぎて、ちょっと怖いし近寄りがたいんだけど、運命の番であるモニくんにはでろっでろに甘くて、モニくんの友達である俺にも優しくしてくれる……はずなのに、今日はなぜか一歩後ろに下がってしまった。
「キョウイチさん、どうしたの?」
「……そうか、モニにはわからないんだな」
「? ミチくんのフェロモンがいつもよりちょっと濃いけど……キョウイチさんには解らないはずだよね?」
モニくんがかわいく首をかしげると、キョウイチさんは困ったように笑う。
ちょっと珍しい顔だけど……あ、そうか。
「もしかして……アルファとさっきまで一緒だったの、解ります?」
「解る。しかも、アルファらしいアルファだろう?」
俺が少しだけ近づいてしまったからか、キョウイチさんが顔をしかめる。
最強アルファのキョウイチさんがこんな顔しちゃうんだ?
「はい。とてもアルファらしい人と一緒にいました」
目の前の二人は番になっているから、モニくんはキョウイチさん以外のアルファのフェロモンが解らないし、キョウイチさんにはモニくん以外のオメガのフェロモンが解らない。でも、同属のフェロモンはなんとなく解る……けど、普通ならアルファ同士で同じ部屋にいたってフェロモンは解らない。解るのは、明らかにオメガと一緒にいて、フェロモンの分泌が激しくなった時だし、キョウイチさんはアルファの中でもかなり強いというか、代々アルファで遺伝子的に濃いから少々のアルファのフェロモンは気にならないはずなのに……。
「ミチくん……もしかして……!」
そういう色々なことをモニくんも考えたのか、顔を赤らめて口元を抑えるけど……だいたい何の想像したのかは解るけど……。
「ち、違うから! まだ……ハグとキスしただけだから!」
「ハグとキスだけそれか。強いアルファだな。ミチさんの運命か?」
「はい……そうです」
キョウイチさんは笑顔になったものの、さりげなくモニくんの後ろに回る。
やっぱり番の首の後ろって落ち着くんだなぁ……身長差がすごいから意味あるのか解らないけど。
「よかったな。俺が不快に思うほど強いフェロモンなんてなかなか無い。良い相手だ」
「あ、ありがとうございます!」
「キョウイチさんが認めるなんて俺も安心! アキヤさんだっけ? 会ってみたいなぁ。ミチくん、今度ダブルデートしようね」
「番になって、フェロモンが落ち着いたころに頼む。相手もその方がいいだろう」
「はい。俺もアキヤさんに二人を紹介したいです」
俺が頷いた瞬間、モニくんがキョウイチさんの袖を捲って腕時計を確認した。
「あ! 予約の時間やばくない?」
「予約ぐらいすぐに変更できるだろ」
「だめだよ! 飲食店の直前予約変更ってすっごく迷惑なんだから! 俺、キョウイチさんが店の人に嫌われるの嫌だからね!」
モニくんの言葉にキョウイチさんは一瞬怪訝そうな顔をするけど、素直に頷いてスーツのポケットから車の鍵を取り出した。
「……わかった。ミチさん、車で送りたいが、今日はすまない。まぁ、そのフェロモンなら襲われることもないだろう」
「え、あ。いえ」
「じゃあねミチくん、また詳しく聞かせてね!」
「うん」
入り口のすぐ横にある駐車場へと向かうだけなのに手を繋いで体を寄せ合って進む二人の背中を見送ってから、自宅へと足を進める。
二人の仲睦まじい様子に、なぜかアキヤさんの顔が浮かんだ。
……というか、解散にしないと俺もアキヤさんも離れられなくなりそうで怖くて……二人で「一回落ち着こう! いや、一緒にいると落ち着くんだけど……でも」と無理やり離れてきた。
だから、地元の駅に着いたのもまだ夕方の明るい時間で、駅から自宅までの道のりも、休日らしくたくさんの人でにぎわっていた。
「あ! ミチくんだ!」
「モニくん、キョウイチさん!」
駅と俺の家のちょうど中間にあるモニくんの住むマンション……正確にはモニくんの番のキョウイチさんの持ち物である一〇階建ての高級マンションの前で偶然二人に出会った。
モニくんはいつものかわいい笑顔で癖のあるふわふわ明るい栗毛で、俺と会う時にはあまり着ていない質の良さそうな白いファーコート。
隣に立つキョウイチさんは、一目で高級ブランドだと解るモノグラム柄のスーツを嫌味なく着こなして、チラっと見える靴も腕時計もネックレスもサングラスもすべてが超高級そうで……こういうアイテム全部、見るたびに違うんだよなぁ。いくつ持っているんだろう。
「……」
無言で俺を見つめるキョウイチさんは、アキヤさんよりも背が高くて、マッチョまではいかないけどムキムキで、顔も圧のある美形。アキヤさんがイケメンとかハンサムだとしたら、キョウイチさんは男前とか美丈夫とかそっち系。
海外に油田も持っている財閥の御曹司……継いで代表なんだっけ? とにかく日本一と言っても良いお金持ちだし、国の経済や政治にまで大きな影響のあるすごい人。
マンガやドラマでしか見ないようなアルファの頂点。
……いろんな意味で最強過ぎて、ちょっと怖いし近寄りがたいんだけど、運命の番であるモニくんにはでろっでろに甘くて、モニくんの友達である俺にも優しくしてくれる……はずなのに、今日はなぜか一歩後ろに下がってしまった。
「キョウイチさん、どうしたの?」
「……そうか、モニにはわからないんだな」
「? ミチくんのフェロモンがいつもよりちょっと濃いけど……キョウイチさんには解らないはずだよね?」
モニくんがかわいく首をかしげると、キョウイチさんは困ったように笑う。
ちょっと珍しい顔だけど……あ、そうか。
「もしかして……アルファとさっきまで一緒だったの、解ります?」
「解る。しかも、アルファらしいアルファだろう?」
俺が少しだけ近づいてしまったからか、キョウイチさんが顔をしかめる。
最強アルファのキョウイチさんがこんな顔しちゃうんだ?
「はい。とてもアルファらしい人と一緒にいました」
目の前の二人は番になっているから、モニくんはキョウイチさん以外のアルファのフェロモンが解らないし、キョウイチさんにはモニくん以外のオメガのフェロモンが解らない。でも、同属のフェロモンはなんとなく解る……けど、普通ならアルファ同士で同じ部屋にいたってフェロモンは解らない。解るのは、明らかにオメガと一緒にいて、フェロモンの分泌が激しくなった時だし、キョウイチさんはアルファの中でもかなり強いというか、代々アルファで遺伝子的に濃いから少々のアルファのフェロモンは気にならないはずなのに……。
「ミチくん……もしかして……!」
そういう色々なことをモニくんも考えたのか、顔を赤らめて口元を抑えるけど……だいたい何の想像したのかは解るけど……。
「ち、違うから! まだ……ハグとキスしただけだから!」
「ハグとキスだけそれか。強いアルファだな。ミチさんの運命か?」
「はい……そうです」
キョウイチさんは笑顔になったものの、さりげなくモニくんの後ろに回る。
やっぱり番の首の後ろって落ち着くんだなぁ……身長差がすごいから意味あるのか解らないけど。
「よかったな。俺が不快に思うほど強いフェロモンなんてなかなか無い。良い相手だ」
「あ、ありがとうございます!」
「キョウイチさんが認めるなんて俺も安心! アキヤさんだっけ? 会ってみたいなぁ。ミチくん、今度ダブルデートしようね」
「番になって、フェロモンが落ち着いたころに頼む。相手もその方がいいだろう」
「はい。俺もアキヤさんに二人を紹介したいです」
俺が頷いた瞬間、モニくんがキョウイチさんの袖を捲って腕時計を確認した。
「あ! 予約の時間やばくない?」
「予約ぐらいすぐに変更できるだろ」
「だめだよ! 飲食店の直前予約変更ってすっごく迷惑なんだから! 俺、キョウイチさんが店の人に嫌われるの嫌だからね!」
モニくんの言葉にキョウイチさんは一瞬怪訝そうな顔をするけど、素直に頷いてスーツのポケットから車の鍵を取り出した。
「……わかった。ミチさん、車で送りたいが、今日はすまない。まぁ、そのフェロモンなら襲われることもないだろう」
「え、あ。いえ」
「じゃあねミチくん、また詳しく聞かせてね!」
「うん」
入り口のすぐ横にある駐車場へと向かうだけなのに手を繋いで体を寄せ合って進む二人の背中を見送ってから、自宅へと足を進める。
二人の仲睦まじい様子に、なぜかアキヤさんの顔が浮かんだ。
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