【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

文字の大きさ
10 / 58

第10話 訪問2

しおりを挟む
「あの、凝った模様にするの、好きなんです。周りにはシンプルなデザインの方が似合うよって言われるし、仕事用はシンプルなデザインにするんですけど……作っていて楽しくて」
「え? じゃあ、もしかしてこの前仕事帰りに会った時に着ていたのも手編み?」
「そうです」
「手編みなんだ……あぁいうシンプルで作りがしっかりしているニットは流石に既製品だと……。でも、そうだね。確かにアレもすごく似合っていたけど、このデザインも似合っていると思うよ。何より体形にピッタリだよね。ジャストサイズだから柄がかわいくてもキレイめっていうか……既製品だとちょっとぶかぶかなものが多いと思うんだけど」

 わ……俺の言われたい言葉ばっかり言ってくれる。

「そうなんです! 自分サイズで作れるのが手編みの良いところなんです。オーバーサイズのも作るんですけど、今日はアキヤさんと会うからちょっとキレイめの格好の方がいいかなと思って……」
「うん。俺好み。でも、オーバーサイズの服を着ているところも見たいな。次はそういうの着てきてくれる?」

 アキヤさんのリクエストだ! しっかり覚えないと……。
 それにしても、嬉しいなぁ。俺の趣味に、作ったものに、こんなに興味を持ってくれるなんて。

「はい! それと……」

 ……いや、ちょっと待て。
 
「ミチくん?」

 浮かれてつい、余分なことを言いそうになってしまった。
 アキヤさんのも編みたい……って。
 まだ番にもなっていないのに、手編みなんて重いよね?
 今まで、友達に作りすぎて何度も引かれているし……運命の相手だからって要らないけど無理に受け取ってくれても悪いし……。
 うん。絶対にまだ早い。

「それと……このコーヒー美味しいですね!」

 ……話が繋がっていない。下手な誤魔化しだ。
 でも、アキヤさんは特に俺を疑うことなく微笑んでくれた。

「口に合ったなら良かった。初めて買う店のだから心配だったんだけど」
「俺、こういう酸味の少ない苦いコーヒー好きだからちょうどいいです。アキヤさんの淹れ方も上手なんだと思います」
「これ、ドリップバッグだからそんなに……でも、気に入ったなら家に常備しておくよ」

 アキヤさんがそう言いながら自分のカップをテーブルに置く。
 ……なんとなく釣られて、オレもまだ中身のあるカップをテーブルに置いた。

「これから、ミチくんが来てくれること増えるだろうから」

 俺が今住んでいるマンションはオメガ専用のマンションなので、アキヤさんは入れない。
 だから、お家デートっていうと俺がここに来ることが増えるんだろうけど……。

「アキヤさん……」

 三〇センチあいていた俺とアキヤさんの距離が、いつの間にか一〇センチなっていた。
 それに、手……太ももに……。
 これって、そういう雰囲気?

「ミチくん、初めて会った時から、ずっとしたかったんだけど」
「は、はい……」

 アキヤさんの顔が近い。
 あ、わ、するんだ。
 キス?
 それとも、もっと……?

「まず、抱きしめて良い?」
「……」

 まず、ってことは……その後はもっと何かするんだよね?
 緊張で上手く声が出なくて、小さく頷くのが精一杯だった。

「ミチくん……」
「あ……」

 ソファに座ったまま、上半身をぴったりくっつけるように、両手で、しっかりと抱きしめられた。
 俺はニット、アキヤさんはカットソーと柔らかい生地のジャケット……それだけの生地が間にあるのに、アキヤさんの体温を感じるし……。

「はぁ……」
「ん……」

 お互いの肩に顎を乗せているから、首筋に……首の後ろに顔が近づく。
 フェロモンが一番解る場所。
 アキヤさんのフェロモン……。

 すごい。

 ほっとする。
 
 出会った瞬間ドキドキしたし、一緒にいるとドキドキすることばかりだから、フェロモンをしっかり感じればもっともっとドキドキすると思ったのに、違う。
 これ、ほっとする。ここが俺の居場所だって感じがする。居心地がいい。
 ずっとこれ浴びていたい。

「ん……アキヤさん……」
「ミチくん……」

 俺もアキヤさんの背中に腕を回して顔を摺り寄せれば、アキヤさんも同じようにしてくれる。

「安心する」
「俺もです。ほっとする」

 俺よりちょっと背が高くて、筋肉があって厚みがあるのもいい。フェロモンだけじゃない、この体も好き。
 腕の中にいるの、安心する。

「もうちょっとフェロモン出ることしていい? 今日は最後まではしないから。ちゃんと段階守るから」
「……はい」

 アルファに求められて断れることなんてない。
 この人になら、なにされてもいい。
 別に段階なんて守らなくていい。
 でも……経験のない俺に合わせようとしてくれている優しさも、震えるくらい嬉しい。

 フェロモンに包まれながら身を任せていると、アキヤさんが顔を上げて、少しだけ体が離れる。

「ミチくん」
「ん……」

 優しく頬を撫でられて……唇が近づいてきた。

 キスだ……。

 アキヤさんの唇、薄く見えるのに柔らかい。この感触だけで、触れあっただけで……体の奥からぶわっと何かが沸いたのがわかった。

「はぁ……」
「あ……」

 少しだけ唇が離れて、視線がぶつかる。
 少し潤んだ瞳、薄く開いた唇の隙間からこぼれる熱っぽい息。

 あ。

 すごい。アキヤさんの、にじみ出るようなフェロモンが……すごい。濃い。
 体がゾクっとした。震えた。
 震えて……多分……。

「っ……!」

 俺もめちゃくちゃフェロモンが出た。

「ミチくん……」
「んっ」
「ミチくん、ミチくん……っ」
「あ、アキヤさん……ん」

 またぎゅっと抱きしめあって、お互いの首の後ろに顔を近づけあって、大量のフェロモンをしっかりと堪能した。

しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

αが離してくれない

雪兎
BL
運命の番じゃないのに、αの彼は僕を離さない――。 Ωとして生まれた僕は、発情期を抑える薬を使いながら、普通の生活を目指していた。 でもある日、隣の席の無口なαが、僕の香りに気づいてしまって……。 これは、番じゃないふたりの、近すぎる距離で始まる、運命から少しはずれた恋の話。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。

陽七 葵
BL
 主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。  しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。  蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。  だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。  そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。  そこから物語は始まるのだが——。  実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。  素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪

【運命】に捨てられ捨てたΩ

あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

処理中です...