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第14話 準備1
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「駅から見えているし、次からはお迎えいいですよ」
モニくん、ヨナちゃんに「本音を言う!」と約束してしまった翌日、アキヤさんの家の最寄り駅につくと、先週と同じコート姿のアキヤさんが笑顔で出迎えてくれ、仲良く手を繋いでアキヤさんの部屋までやってきた。
「そう? でも、行ける時は行くよ。俺がそうしたいから。……それよりも、そのニット姿もかわいいね。オーバーサイズもいいな」
玄関でコートを脱ぐと、アキヤさんは先週の会話をちゃんと覚えてくれていたようで、淡い青色のオーバーサイズのセーターをきちんと褒めてくれる。
嬉しい。俺の容姿と俺の作品、まとめて褒められるんだから、嬉しいに決まってる。
「ありがとうございます。あの、タイトな服とオーバーサイズ、どっちがいいとか、ありますか?」
今後も喜んで欲しいから、アキヤさん好みの服を着ようと思うのに……。
「どっちもいい。両方好きというか……色んなミチくんが見たいから、どっちも着て欲しい。他の服も」
「じゃあ……色々着てみます」
アキヤさん……本当に優しいし、俺のこと好きって気持ちも伝わってくる。
俺の趣味も俺のことも認めてくれて嬉しいんだけど……
「……」
コートを片手に、俺と並んで廊下を進むアキヤさんをチラッと見る。
今日のアキヤさんは、スーツではないけど黒いジャケットと白いシャツ。
キレイ目でかっこいい、アルファっぽい私服。あからさまなロゴは無いけど、仕立ての良さとか生地の感じから言って、百貨店レベルの物ではあると思う。
かっこいいと思う。
かっこいいと思う、けど……。
「あの、アキヤさんってニット製品、着ます?」
「もう少し寒い時期になったら着るよ。職場が節電で寒いし、スーツの中にカーディガンやセーターを着たり、手袋とかマフラーもつけたりする」
着ないわけじゃないか……だったら、小物くらいなら……。
「……じゃあ、もしよかったら……俺が……」
「え? 作ってくれるの?」
勇気を出して絞り出した言葉に、アキヤさんは立ち止まって俺の方を向きながら食い気味に返事をしてくれる。
「はい。手編み、嫌じゃなかったら」
「嫌じゃない! まぁ……正直に言えば、下手な手編みだったら嫌だけど……ミチくんのこのセーターみたいなクオリティなんだよね? 全然オッケー。むしろ、お願いします!」
「あ……」
遠慮してない? 俺に合わせてない?
ちゃんと聞かなきゃと思うのに……
「作って欲しい物、リクエストしていい?」
「も、もちろんです」
「いいの? 何からお願いしよう! マフラーは絶対に欲しい! あとは、セーター……カーディガンの方が季節が早いか? 私服の時のニット帽も欲しいし……手袋も通勤の時に絶対使うな……」
え? そんなに作っていいの?
やった! 全部作りたい!
「あ、材料費とか俺が出すし、無理なら無理って正直に言ってね? 俺、編み物とかよく解らないから調子に乗って図々しいこと言っちゃうかもしれないし」
「大丈夫です! 俺、作るの大好きで、一つでも多く作りたいし、自分用だと作れないサイズとかデザインとか作るのが楽しくて……あと、好きな人が俺の手編みの服着てるとか、最高だなって」
作れるのが嬉しいし、アキヤさんが受け入れてくれたことが嬉しいし……やっぱり、友達の言う通り腹を割って話すって大事だなと思った。
運命の相手なのに、信じないのは良くない。俺、慎重になりすぎてた。
「実はずっと言いたかったけど……手編みが迷惑な人も多いし、運命の相手だと気を使って嫌々受け取られちゃうかもって心配で……ちょっと遠慮しちゃっていました。こんなに喜んでもらえるなら早く言えばよかった」
「俺、ミチくんの運命の番だよ? 手編みは本当に嬉しいし、ちょっとくらいのことでは嫌いになんて絶対にならない。でも……そうか、これから一生一緒にいるんだから、お互い無理せずに、本音で付き合わないといけないか……」
アキヤさんは真摯に俺に向き合ってくれた後、少し言葉を濁すというか、自分に言い聞かせているようだ。
「……? アキヤさん?」
「……」
アキヤさんが一瞬黙ったあと、ゆっくり口を開いた。
「俺も一つだけ、遠慮と言うか……格好つけていたことがあって」
格好つける?
確かにずっとかっこいいけど……無理をしているようには見えないのに?
「俺、本当はブラックコーヒー苦手で、砂糖とミルクたっぷりのやつが好き」
「……え?」
初めて会った日からずっと、コーヒーを飲む時はブラックだったのに?
「ミチくんがブラックなのに、俺が砂糖とか入れるのは格好悪いかなって……こういう考えの方が格好悪いよね?」
アキヤさんは自分に呆れたように苦笑いをするけど、その表情も普通に格好いい。
「ビールより甘いチューハイとかカクテルが好きだし、食べ物も、肉とか寿司も普通に好きだけど……フルーツと生クリームいっぱいのケーキとかタルトとかめちゃくちゃ好きで……アルファなのに甘党なんだ」
アキヤさんは気まずそうだけど……
確かにアルファで甘党は意外だけど……
え……
そんなの……
「かっわいいぃ……!」
「ミチくん……?」
アキヤさんはちょっと複雑そうな顔をするけど、もうだめ、かわいい!
「ギャップ萌えってこういうことなんだ……」
「……」
「しかも、俺のためにかっこつけてくれてたなんて、かわいい。好き……!」
「……」
「そんな話聞いちゃったら、これからアキヤさんが甘いコーヒー飲んでいても、ブラックコーヒー飲んでいても、絶対に見るたびにキュンと来ちゃう!」
「……」
「今日の手土産はお酒のアテにしちゃったけど、次はケーキにしますね! アキヤさんが美味しそうに食べているところ見たい!」
「……ミチくんが買ってきてくれた好物とか、やばい顔になる気がする」
もうすでにめちゃくちゃ真っ赤に照れてかわいい顔だから、絶対においしいケーキを買ってこようと思った。
うん。腹割って話すの、最高だ。
モニくん、ヨナちゃんに「本音を言う!」と約束してしまった翌日、アキヤさんの家の最寄り駅につくと、先週と同じコート姿のアキヤさんが笑顔で出迎えてくれ、仲良く手を繋いでアキヤさんの部屋までやってきた。
「そう? でも、行ける時は行くよ。俺がそうしたいから。……それよりも、そのニット姿もかわいいね。オーバーサイズもいいな」
玄関でコートを脱ぐと、アキヤさんは先週の会話をちゃんと覚えてくれていたようで、淡い青色のオーバーサイズのセーターをきちんと褒めてくれる。
嬉しい。俺の容姿と俺の作品、まとめて褒められるんだから、嬉しいに決まってる。
「ありがとうございます。あの、タイトな服とオーバーサイズ、どっちがいいとか、ありますか?」
今後も喜んで欲しいから、アキヤさん好みの服を着ようと思うのに……。
「どっちもいい。両方好きというか……色んなミチくんが見たいから、どっちも着て欲しい。他の服も」
「じゃあ……色々着てみます」
アキヤさん……本当に優しいし、俺のこと好きって気持ちも伝わってくる。
俺の趣味も俺のことも認めてくれて嬉しいんだけど……
「……」
コートを片手に、俺と並んで廊下を進むアキヤさんをチラッと見る。
今日のアキヤさんは、スーツではないけど黒いジャケットと白いシャツ。
キレイ目でかっこいい、アルファっぽい私服。あからさまなロゴは無いけど、仕立ての良さとか生地の感じから言って、百貨店レベルの物ではあると思う。
かっこいいと思う。
かっこいいと思う、けど……。
「あの、アキヤさんってニット製品、着ます?」
「もう少し寒い時期になったら着るよ。職場が節電で寒いし、スーツの中にカーディガンやセーターを着たり、手袋とかマフラーもつけたりする」
着ないわけじゃないか……だったら、小物くらいなら……。
「……じゃあ、もしよかったら……俺が……」
「え? 作ってくれるの?」
勇気を出して絞り出した言葉に、アキヤさんは立ち止まって俺の方を向きながら食い気味に返事をしてくれる。
「はい。手編み、嫌じゃなかったら」
「嫌じゃない! まぁ……正直に言えば、下手な手編みだったら嫌だけど……ミチくんのこのセーターみたいなクオリティなんだよね? 全然オッケー。むしろ、お願いします!」
「あ……」
遠慮してない? 俺に合わせてない?
ちゃんと聞かなきゃと思うのに……
「作って欲しい物、リクエストしていい?」
「も、もちろんです」
「いいの? 何からお願いしよう! マフラーは絶対に欲しい! あとは、セーター……カーディガンの方が季節が早いか? 私服の時のニット帽も欲しいし……手袋も通勤の時に絶対使うな……」
え? そんなに作っていいの?
やった! 全部作りたい!
「あ、材料費とか俺が出すし、無理なら無理って正直に言ってね? 俺、編み物とかよく解らないから調子に乗って図々しいこと言っちゃうかもしれないし」
「大丈夫です! 俺、作るの大好きで、一つでも多く作りたいし、自分用だと作れないサイズとかデザインとか作るのが楽しくて……あと、好きな人が俺の手編みの服着てるとか、最高だなって」
作れるのが嬉しいし、アキヤさんが受け入れてくれたことが嬉しいし……やっぱり、友達の言う通り腹を割って話すって大事だなと思った。
運命の相手なのに、信じないのは良くない。俺、慎重になりすぎてた。
「実はずっと言いたかったけど……手編みが迷惑な人も多いし、運命の相手だと気を使って嫌々受け取られちゃうかもって心配で……ちょっと遠慮しちゃっていました。こんなに喜んでもらえるなら早く言えばよかった」
「俺、ミチくんの運命の番だよ? 手編みは本当に嬉しいし、ちょっとくらいのことでは嫌いになんて絶対にならない。でも……そうか、これから一生一緒にいるんだから、お互い無理せずに、本音で付き合わないといけないか……」
アキヤさんは真摯に俺に向き合ってくれた後、少し言葉を濁すというか、自分に言い聞かせているようだ。
「……? アキヤさん?」
「……」
アキヤさんが一瞬黙ったあと、ゆっくり口を開いた。
「俺も一つだけ、遠慮と言うか……格好つけていたことがあって」
格好つける?
確かにずっとかっこいいけど……無理をしているようには見えないのに?
「俺、本当はブラックコーヒー苦手で、砂糖とミルクたっぷりのやつが好き」
「……え?」
初めて会った日からずっと、コーヒーを飲む時はブラックだったのに?
「ミチくんがブラックなのに、俺が砂糖とか入れるのは格好悪いかなって……こういう考えの方が格好悪いよね?」
アキヤさんは自分に呆れたように苦笑いをするけど、その表情も普通に格好いい。
「ビールより甘いチューハイとかカクテルが好きだし、食べ物も、肉とか寿司も普通に好きだけど……フルーツと生クリームいっぱいのケーキとかタルトとかめちゃくちゃ好きで……アルファなのに甘党なんだ」
アキヤさんは気まずそうだけど……
確かにアルファで甘党は意外だけど……
え……
そんなの……
「かっわいいぃ……!」
「ミチくん……?」
アキヤさんはちょっと複雑そうな顔をするけど、もうだめ、かわいい!
「ギャップ萌えってこういうことなんだ……」
「……」
「しかも、俺のためにかっこつけてくれてたなんて、かわいい。好き……!」
「……」
「そんな話聞いちゃったら、これからアキヤさんが甘いコーヒー飲んでいても、ブラックコーヒー飲んでいても、絶対に見るたびにキュンと来ちゃう!」
「……」
「今日の手土産はお酒のアテにしちゃったけど、次はケーキにしますね! アキヤさんが美味しそうに食べているところ見たい!」
「……ミチくんが買ってきてくれた好物とか、やばい顔になる気がする」
もうすでにめちゃくちゃ真っ赤に照れてかわいい顔だから、絶対においしいケーキを買ってこようと思った。
うん。腹割って話すの、最高だ。
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