【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

文字の大きさ
14 / 58

第14話 準備1

しおりを挟む
「駅から見えているし、次からはお迎えいいですよ」

 モニくん、ヨナちゃんに「本音を言う!」と約束してしまった翌日、アキヤさんの家の最寄り駅につくと、先週と同じコート姿のアキヤさんが笑顔で出迎えてくれ、仲良く手を繋いでアキヤさんの部屋までやってきた。

「そう? でも、行ける時は行くよ。俺がそうしたいから。……それよりも、そのニット姿もかわいいね。オーバーサイズもいいな」

 玄関でコートを脱ぐと、アキヤさんは先週の会話をちゃんと覚えてくれていたようで、淡い青色のオーバーサイズのセーターをきちんと褒めてくれる。
 嬉しい。俺の容姿と俺の作品、まとめて褒められるんだから、嬉しいに決まってる。

「ありがとうございます。あの、タイトな服とオーバーサイズ、どっちがいいとか、ありますか?」

 今後も喜んで欲しいから、アキヤさん好みの服を着ようと思うのに……。

「どっちもいい。両方好きというか……色んなミチくんが見たいから、どっちも着て欲しい。他の服も」
「じゃあ……色々着てみます」

 アキヤさん……本当に優しいし、俺のこと好きって気持ちも伝わってくる。
 俺の趣味も俺のことも認めてくれて嬉しいんだけど……

「……」

 コートを片手に、俺と並んで廊下を進むアキヤさんをチラッと見る。
 今日のアキヤさんは、スーツではないけど黒いジャケットと白いシャツ。
 キレイ目でかっこいい、アルファっぽい私服。あからさまなロゴは無いけど、仕立ての良さとか生地の感じから言って、百貨店レベルの物ではあると思う。
 かっこいいと思う。
 かっこいいと思う、けど……。

「あの、アキヤさんってニット製品、着ます?」
「もう少し寒い時期になったら着るよ。職場が節電で寒いし、スーツの中にカーディガンやセーターを着たり、手袋とかマフラーもつけたりする」

 着ないわけじゃないか……だったら、小物くらいなら……。

「……じゃあ、もしよかったら……俺が……」
「え? 作ってくれるの?」

 勇気を出して絞り出した言葉に、アキヤさんは立ち止まって俺の方を向きながら食い気味に返事をしてくれる。

「はい。手編み、嫌じゃなかったら」
「嫌じゃない! まぁ……正直に言えば、下手な手編みだったら嫌だけど……ミチくんのこのセーターみたいなクオリティなんだよね? 全然オッケー。むしろ、お願いします!」
「あ……」

 遠慮してない? 俺に合わせてない?
 ちゃんと聞かなきゃと思うのに……

「作って欲しい物、リクエストしていい?」
「も、もちろんです」
「いいの? 何からお願いしよう! マフラーは絶対に欲しい! あとは、セーター……カーディガンの方が季節が早いか? 私服の時のニット帽も欲しいし……手袋も通勤の時に絶対使うな……」

 え? そんなに作っていいの?
 やった! 全部作りたい!

「あ、材料費とか俺が出すし、無理なら無理って正直に言ってね? 俺、編み物とかよく解らないから調子に乗って図々しいこと言っちゃうかもしれないし」
「大丈夫です! 俺、作るの大好きで、一つでも多く作りたいし、自分用だと作れないサイズとかデザインとか作るのが楽しくて……あと、好きな人が俺の手編みの服着てるとか、最高だなって」

 作れるのが嬉しいし、アキヤさんが受け入れてくれたことが嬉しいし……やっぱり、友達の言う通り腹を割って話すって大事だなと思った。
 運命の相手なのに、信じないのは良くない。俺、慎重になりすぎてた。

「実はずっと言いたかったけど……手編みが迷惑な人も多いし、運命の相手だと気を使って嫌々受け取られちゃうかもって心配で……ちょっと遠慮しちゃっていました。こんなに喜んでもらえるなら早く言えばよかった」
「俺、ミチくんの運命の番だよ? 手編みは本当に嬉しいし、ちょっとくらいのことでは嫌いになんて絶対にならない。でも……そうか、これから一生一緒にいるんだから、お互い無理せずに、本音で付き合わないといけないか……」

 アキヤさんは真摯に俺に向き合ってくれた後、少し言葉を濁すというか、自分に言い聞かせているようだ。

「……? アキヤさん?」
「……」

 アキヤさんが一瞬黙ったあと、ゆっくり口を開いた。

「俺も一つだけ、遠慮と言うか……格好つけていたことがあって」

 格好つける?
 確かにずっとかっこいいけど……無理をしているようには見えないのに?

「俺、本当はブラックコーヒー苦手で、砂糖とミルクたっぷりのやつが好き」
「……え?」

 初めて会った日からずっと、コーヒーを飲む時はブラックだったのに?

「ミチくんがブラックなのに、俺が砂糖とか入れるのは格好悪いかなって……こういう考えの方が格好悪いよね?」

 アキヤさんは自分に呆れたように苦笑いをするけど、その表情も普通に格好いい。

「ビールより甘いチューハイとかカクテルが好きだし、食べ物も、肉とか寿司も普通に好きだけど……フルーツと生クリームいっぱいのケーキとかタルトとかめちゃくちゃ好きで……アルファなのに甘党なんだ」

 アキヤさんは気まずそうだけど……
 確かにアルファで甘党は意外だけど……
 え……
 そんなの……

「かっわいいぃ……!」
「ミチくん……?」

 アキヤさんはちょっと複雑そうな顔をするけど、もうだめ、かわいい!

「ギャップ萌えってこういうことなんだ……」
「……」
「しかも、俺のためにかっこつけてくれてたなんて、かわいい。好き……!」
「……」
「そんな話聞いちゃったら、これからアキヤさんが甘いコーヒー飲んでいても、ブラックコーヒー飲んでいても、絶対に見るたびにキュンと来ちゃう!」
「……」
「今日の手土産はお酒のアテにしちゃったけど、次はケーキにしますね! アキヤさんが美味しそうに食べているところ見たい!」
「……ミチくんが買ってきてくれた好物とか、やばい顔になる気がする」

 もうすでにめちゃくちゃ真っ赤に照れてかわいい顔だから、絶対においしいケーキを買ってこようと思った。

 うん。腹割って話すの、最高だ。

しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

ハコ入りオメガの結婚

朝顔
BL
オメガの諒は、ひとり車に揺られてある男の元へ向かった。 大昔に家同士の間で交わされた結婚の約束があって、諒の代になって向こうから求婚の連絡がきた。 結婚に了承する意思を伝えるために、直接相手に会いに行くことになった。 この結婚は傾いていた会社にとって大きな利益になる話だった。 家のために諒は自分が結婚しなければと決めたが、それには大きな問題があった。 重い気持ちでいた諒の前に現れたのは、見たことがないほど美しい男だった。 冷遇されるどころか、事情を知っても温かく接してくれて、あるきっかけで二人の距離は近いものとなり……。 一途な美人攻め×ハコ入り美人受け オメガバースの設定をお借りして、独自要素を入れています。 洋風、和風でタイプの違う美人をイメージしています。 特に大きな事件はなく、二人の気持ちが近づいて、結ばれて幸せになる、という流れのお話です。 全十四話で完結しました。 番外編二話追加。 他サイトでも同時投稿しています。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

処理中です...