【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

文字の大きさ
49 / 58

第49話 幸せ

しおりを挟む
 その後、マフラーのお礼にと高級なお寿司をご馳走になってから、結婚して海外在住の弟さんとノートパソコン越しに挨拶をさせてもらった。
 アキヤさんの一歳年下で外見もよく似ているアルファの弟さんも、知的で眼鏡が良く似合う柔らかい雰囲気のパートナーの男性も、最初から満面の笑みを向けてくれた。

『兄さん、そんなデレデレした顔する人だったんだ? 幸せそうでなにより』
「え? 俺、デレデレしてる?」
『してるしてる。ミチさん、素敵な巣はこちらでも話題になっていますし、兄のこの顔を見てとても安心しました。兄は頼られたいくせに、身内には結構甘えてくるんですよ。兄には思いっきりたくさん甘えて、ちょっとだけ甘やかしてやってください』
「ちょっ、余計なこと言うなって! 折角ミチくんにかっこいいと思ってもらえるように、頼れるアルファを頑張っているのに!」

 そうなんだ!
 さすがご家族。良いこと教えてくれる!

「アキヤさん、俺、甘やかすのも好きですよ」
「ミチくん……」
「それに、アキヤさんは何していてもかっこいいから大丈夫です。安心して甘えてください!」
「うっ……うん」
『ははっ! 兄さんにお似合いの素敵な方だ』
『本当ですね。とても素敵な番だと思います』
「お似合いだけど、アキヤにはもったいないくらい、かわいいオメガだわ」
「アキヤ、ミチさんのこと絶対に幸せにしなきゃだめよ」
「わかってる。世界一幸せにする」

 もう世界一幸せだと思うけど……でも、よかった。
 番の大切な家族に受け入れてもらえたみたいだ。
 まぁ、結婚ではないから、俺はまだ家族の一員でも何でもないんだけど。
 やっぱり番の家族には良い印象を持ってもらいたい……ん?
 結婚……番……?
 あれ?
 ふと気になったことがあったものの、和やかなリビングで聞くには気が引けて、アキヤさんのご実家を出てから、アキヤさんが運転する車の中で疑問を口にした。

「あの、オメガのお母様が『家族にオメガがいない』とおっしゃっていましたけど、アルファの弟さんって結婚されていますよね?」

 お相手は男性だったし。
 あの方、オメガじゃないの? 番じゃないの?
 それとも、海外在住だからカウントされていないだけ?

「あぁ。弟の結婚相手はベータの男性なんだよ」
「え? じゃあ、番……?」
「番はいるんだけど、一緒に暮らすには合わないらしくて、お互いに納得して体調のためにも番になるだけなって、結婚相手は別って決めたみたいだよ」
「そうだったんですね」

 なるほど。
 法律的には間違っていないし、そういうカップルがいるのも解っていた。
 ただ……パートナーが男性だったから、アルファが結婚するのは子供が作れるようにオメガか女性だと勝手に思っていたから……だめだな。俺、考えが古い。

「弟も少し悩んでいたけど、番と結婚は別だからね。番も普通に良い子で、今も親友とか仲間……遠い親戚みたいな感じで上手くやっているみたいだよ」

 番と結婚は別。
 そうだ。
 そうだよね。
 俺、勝手に番になったら次は結婚だなって思っていたけど、そうする人が多いだけで、そういうルールでもなんでもないんだよね。

「……そ、うですね。番と結婚は別ですよね」

 勝手に浮かれていた自分が恥ずかしくて、少し言葉に詰まってしまうと、アキヤさんが「しまった」という顔で俺を見る。

「あ……あ! 違う、いや、違わないけど!」 

 慌てたアキヤさんが、車を路肩に止める。
 俺の方が「しまった」だ。
 ここまで慌てさせるつもりじゃなかったのに。

「あの、俺、別に……」 
「ミチくん!」

 アキヤさんが俺の言葉をさえぎって、両手で俺の手を強く握った。

「俺は、ちゃんと番と結婚は一緒だと思っているからね!」
「それって……」

 アキヤさんは、自分の番と……俺と……結婚したいってこと?

「アキヤさん……!」
「あ……」

 多分俺がめちゃくちゃ笑顔になってしまったことで、アキヤさんはやっと自分が何を言ったか自覚したようだった。
 これ、ほとんどプロポーズ……。

「あ、あ、今のナシ! いや、嘘って意味じゃなくて……えっと、だから……」
「ふふっ、大丈夫ですよ、解ってます。落ち着いて」

 今度は俺からアキヤさんの手を握って、そっと手の甲を撫でる。

「あぁ、もう、もっと言い方あったのに……それに、親の態度でもバレバレだったよね? あー……浮かれて口が滑ったから……」

 ご両親になんて言ってくれてたんだろう?
 もう息子のように思われていたからきっと……?
 焦っているアキヤさんをただただ嬉しく見ていると、アキヤさんは一度大きく深呼吸してから俺の手を握り返した。

「もっと、ちゃんとした時に、ちゃんと、かっこよく言わせて欲しい。だから一回忘れて」
「解りました。でも……」

 アキヤさんの言葉は嬉しいけど、番と結婚が必ずではないように、アルファがプロポーズするのも絶対じゃないよね?

「なかなか言ってくれないなら、俺から言っちゃうかもしれないですよ?」
「ミチくん……かわいいのにかっこいい。俺のオメガ、最高過ぎる」

 アキヤさんが、握った手を引き寄せて軽く唇を啄むキスをしてくれた。
 キスの感触よりも、顔が近くなったから強く感じるアキヤさんのフェロモンの方がドキドキする。
 俺の大好きなフェロモン。
 俺の大好きなアルファ。
 俺の大好きなアキヤさん。

 うん。
 俺、オメガに生まれて良かった。

 目の前の最愛の人と微笑み合いながら、今が人生で一番幸せだなと思った。
 そして、人生で一番幸せは、きっとまた更新されると思う。

 アキヤさんと一緒にいる限り、きっと。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

ハコ入りオメガの結婚

朝顔
BL
オメガの諒は、ひとり車に揺られてある男の元へ向かった。 大昔に家同士の間で交わされた結婚の約束があって、諒の代になって向こうから求婚の連絡がきた。 結婚に了承する意思を伝えるために、直接相手に会いに行くことになった。 この結婚は傾いていた会社にとって大きな利益になる話だった。 家のために諒は自分が結婚しなければと決めたが、それには大きな問題があった。 重い気持ちでいた諒の前に現れたのは、見たことがないほど美しい男だった。 冷遇されるどころか、事情を知っても温かく接してくれて、あるきっかけで二人の距離は近いものとなり……。 一途な美人攻め×ハコ入り美人受け オメガバースの設定をお借りして、独自要素を入れています。 洋風、和風でタイプの違う美人をイメージしています。 特に大きな事件はなく、二人の気持ちが近づいて、結ばれて幸せになる、という流れのお話です。 全十四話で完結しました。 番外編二話追加。 他サイトでも同時投稿しています。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

処理中です...