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第49話 幸せ
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その後、マフラーのお礼にと高級なお寿司をご馳走になってから、結婚して海外在住の弟さんとノートパソコン越しに挨拶をさせてもらった。
アキヤさんの一歳年下で外見もよく似ているアルファの弟さんも、知的で眼鏡が良く似合う柔らかい雰囲気のパートナーの男性も、最初から満面の笑みを向けてくれた。
『兄さん、そんなデレデレした顔する人だったんだ? 幸せそうでなにより』
「え? 俺、デレデレしてる?」
『してるしてる。ミチさん、素敵な巣はこちらでも話題になっていますし、兄のこの顔を見てとても安心しました。兄は頼られたいくせに、身内には結構甘えてくるんですよ。兄には思いっきりたくさん甘えて、ちょっとだけ甘やかしてやってください』
「ちょっ、余計なこと言うなって! 折角ミチくんにかっこいいと思ってもらえるように、頼れるアルファを頑張っているのに!」
そうなんだ!
さすがご家族。良いこと教えてくれる!
「アキヤさん、俺、甘やかすのも好きですよ」
「ミチくん……」
「それに、アキヤさんは何していてもかっこいいから大丈夫です。安心して甘えてください!」
「うっ……うん」
『ははっ! 兄さんにお似合いの素敵な方だ』
『本当ですね。とても素敵な番だと思います』
「お似合いだけど、アキヤにはもったいないくらい、かわいいオメガだわ」
「アキヤ、ミチさんのこと絶対に幸せにしなきゃだめよ」
「わかってる。世界一幸せにする」
もう世界一幸せだと思うけど……でも、よかった。
番の大切な家族に受け入れてもらえたみたいだ。
まぁ、結婚ではないから、俺はまだ家族の一員でも何でもないんだけど。
やっぱり番の家族には良い印象を持ってもらいたい……ん?
結婚……番……?
あれ?
ふと気になったことがあったものの、和やかなリビングで聞くには気が引けて、アキヤさんのご実家を出てから、アキヤさんが運転する車の中で疑問を口にした。
「あの、オメガのお母様が『家族にオメガがいない』とおっしゃっていましたけど、アルファの弟さんって結婚されていますよね?」
お相手は男性だったし。
あの方、オメガじゃないの? 番じゃないの?
それとも、海外在住だからカウントされていないだけ?
「あぁ。弟の結婚相手はベータの男性なんだよ」
「え? じゃあ、番……?」
「番はいるんだけど、一緒に暮らすには合わないらしくて、お互いに納得して体調のためにも番になるだけなって、結婚相手は別って決めたみたいだよ」
「そうだったんですね」
なるほど。
法律的には間違っていないし、そういうカップルがいるのも解っていた。
ただ……パートナーが男性だったから、アルファが結婚するのは子供が作れるようにオメガか女性だと勝手に思っていたから……だめだな。俺、考えが古い。
「弟も少し悩んでいたけど、番と結婚は別だからね。番も普通に良い子で、今も親友とか仲間……遠い親戚みたいな感じで上手くやっているみたいだよ」
番と結婚は別。
そうだ。
そうだよね。
俺、勝手に番になったら次は結婚だなって思っていたけど、そうする人が多いだけで、そういうルールでもなんでもないんだよね。
「……そ、うですね。番と結婚は別ですよね」
勝手に浮かれていた自分が恥ずかしくて、少し言葉に詰まってしまうと、アキヤさんが「しまった」という顔で俺を見る。
「あ……あ! 違う、いや、違わないけど!」
慌てたアキヤさんが、車を路肩に止める。
俺の方が「しまった」だ。
ここまで慌てさせるつもりじゃなかったのに。
「あの、俺、別に……」
「ミチくん!」
アキヤさんが俺の言葉をさえぎって、両手で俺の手を強く握った。
「俺は、ちゃんと番と結婚は一緒だと思っているからね!」
「それって……」
アキヤさんは、自分の番と……俺と……結婚したいってこと?
「アキヤさん……!」
「あ……」
多分俺がめちゃくちゃ笑顔になってしまったことで、アキヤさんはやっと自分が何を言ったか自覚したようだった。
これ、ほとんどプロポーズ……。
「あ、あ、今のナシ! いや、嘘って意味じゃなくて……えっと、だから……」
「ふふっ、大丈夫ですよ、解ってます。落ち着いて」
今度は俺からアキヤさんの手を握って、そっと手の甲を撫でる。
「あぁ、もう、もっと言い方あったのに……それに、親の態度でもバレバレだったよね? あー……浮かれて口が滑ったから……」
ご両親になんて言ってくれてたんだろう?
もう息子のように思われていたからきっと……?
焦っているアキヤさんをただただ嬉しく見ていると、アキヤさんは一度大きく深呼吸してから俺の手を握り返した。
「もっと、ちゃんとした時に、ちゃんと、かっこよく言わせて欲しい。だから一回忘れて」
「解りました。でも……」
アキヤさんの言葉は嬉しいけど、番と結婚が必ずではないように、アルファがプロポーズするのも絶対じゃないよね?
「なかなか言ってくれないなら、俺から言っちゃうかもしれないですよ?」
「ミチくん……かわいいのにかっこいい。俺のオメガ、最高過ぎる」
アキヤさんが、握った手を引き寄せて軽く唇を啄むキスをしてくれた。
キスの感触よりも、顔が近くなったから強く感じるアキヤさんのフェロモンの方がドキドキする。
俺の大好きなフェロモン。
俺の大好きなアルファ。
俺の大好きなアキヤさん。
うん。
俺、オメガに生まれて良かった。
目の前の最愛の人と微笑み合いながら、今が人生で一番幸せだなと思った。
そして、人生で一番幸せは、きっとまた更新されると思う。
アキヤさんと一緒にいる限り、きっと。
アキヤさんの一歳年下で外見もよく似ているアルファの弟さんも、知的で眼鏡が良く似合う柔らかい雰囲気のパートナーの男性も、最初から満面の笑みを向けてくれた。
『兄さん、そんなデレデレした顔する人だったんだ? 幸せそうでなにより』
「え? 俺、デレデレしてる?」
『してるしてる。ミチさん、素敵な巣はこちらでも話題になっていますし、兄のこの顔を見てとても安心しました。兄は頼られたいくせに、身内には結構甘えてくるんですよ。兄には思いっきりたくさん甘えて、ちょっとだけ甘やかしてやってください』
「ちょっ、余計なこと言うなって! 折角ミチくんにかっこいいと思ってもらえるように、頼れるアルファを頑張っているのに!」
そうなんだ!
さすがご家族。良いこと教えてくれる!
「アキヤさん、俺、甘やかすのも好きですよ」
「ミチくん……」
「それに、アキヤさんは何していてもかっこいいから大丈夫です。安心して甘えてください!」
「うっ……うん」
『ははっ! 兄さんにお似合いの素敵な方だ』
『本当ですね。とても素敵な番だと思います』
「お似合いだけど、アキヤにはもったいないくらい、かわいいオメガだわ」
「アキヤ、ミチさんのこと絶対に幸せにしなきゃだめよ」
「わかってる。世界一幸せにする」
もう世界一幸せだと思うけど……でも、よかった。
番の大切な家族に受け入れてもらえたみたいだ。
まぁ、結婚ではないから、俺はまだ家族の一員でも何でもないんだけど。
やっぱり番の家族には良い印象を持ってもらいたい……ん?
結婚……番……?
あれ?
ふと気になったことがあったものの、和やかなリビングで聞くには気が引けて、アキヤさんのご実家を出てから、アキヤさんが運転する車の中で疑問を口にした。
「あの、オメガのお母様が『家族にオメガがいない』とおっしゃっていましたけど、アルファの弟さんって結婚されていますよね?」
お相手は男性だったし。
あの方、オメガじゃないの? 番じゃないの?
それとも、海外在住だからカウントされていないだけ?
「あぁ。弟の結婚相手はベータの男性なんだよ」
「え? じゃあ、番……?」
「番はいるんだけど、一緒に暮らすには合わないらしくて、お互いに納得して体調のためにも番になるだけなって、結婚相手は別って決めたみたいだよ」
「そうだったんですね」
なるほど。
法律的には間違っていないし、そういうカップルがいるのも解っていた。
ただ……パートナーが男性だったから、アルファが結婚するのは子供が作れるようにオメガか女性だと勝手に思っていたから……だめだな。俺、考えが古い。
「弟も少し悩んでいたけど、番と結婚は別だからね。番も普通に良い子で、今も親友とか仲間……遠い親戚みたいな感じで上手くやっているみたいだよ」
番と結婚は別。
そうだ。
そうだよね。
俺、勝手に番になったら次は結婚だなって思っていたけど、そうする人が多いだけで、そういうルールでもなんでもないんだよね。
「……そ、うですね。番と結婚は別ですよね」
勝手に浮かれていた自分が恥ずかしくて、少し言葉に詰まってしまうと、アキヤさんが「しまった」という顔で俺を見る。
「あ……あ! 違う、いや、違わないけど!」
慌てたアキヤさんが、車を路肩に止める。
俺の方が「しまった」だ。
ここまで慌てさせるつもりじゃなかったのに。
「あの、俺、別に……」
「ミチくん!」
アキヤさんが俺の言葉をさえぎって、両手で俺の手を強く握った。
「俺は、ちゃんと番と結婚は一緒だと思っているからね!」
「それって……」
アキヤさんは、自分の番と……俺と……結婚したいってこと?
「アキヤさん……!」
「あ……」
多分俺がめちゃくちゃ笑顔になってしまったことで、アキヤさんはやっと自分が何を言ったか自覚したようだった。
これ、ほとんどプロポーズ……。
「あ、あ、今のナシ! いや、嘘って意味じゃなくて……えっと、だから……」
「ふふっ、大丈夫ですよ、解ってます。落ち着いて」
今度は俺からアキヤさんの手を握って、そっと手の甲を撫でる。
「あぁ、もう、もっと言い方あったのに……それに、親の態度でもバレバレだったよね? あー……浮かれて口が滑ったから……」
ご両親になんて言ってくれてたんだろう?
もう息子のように思われていたからきっと……?
焦っているアキヤさんをただただ嬉しく見ていると、アキヤさんは一度大きく深呼吸してから俺の手を握り返した。
「もっと、ちゃんとした時に、ちゃんと、かっこよく言わせて欲しい。だから一回忘れて」
「解りました。でも……」
アキヤさんの言葉は嬉しいけど、番と結婚が必ずではないように、アルファがプロポーズするのも絶対じゃないよね?
「なかなか言ってくれないなら、俺から言っちゃうかもしれないですよ?」
「ミチくん……かわいいのにかっこいい。俺のオメガ、最高過ぎる」
アキヤさんが、握った手を引き寄せて軽く唇を啄むキスをしてくれた。
キスの感触よりも、顔が近くなったから強く感じるアキヤさんのフェロモンの方がドキドキする。
俺の大好きなフェロモン。
俺の大好きなアルファ。
俺の大好きなアキヤさん。
うん。
俺、オメガに生まれて良かった。
目の前の最愛の人と微笑み合いながら、今が人生で一番幸せだなと思った。
そして、人生で一番幸せは、きっとまた更新されると思う。
アキヤさんと一緒にいる限り、きっと。
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