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後日談
お祝い 1
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アキヤさんと正式に番になってから数日。
オメガ友達であるモニくんとヨナちゃんが番祝いを開いてくれた。
「ミチくん、番おめでとう! かんぱーい!」
いつもの俺の家ではなく、ちょっと高級なフランス料理店のオメガ用個室。
手に持っているのも普段は頼まない高級なシャンパンの入ったグラスだ。
「乾杯」
「ありがとう」
番祝いと言われて乾杯して飲むシャンパンは格別に美味しかった。
……高級なシャンパンだからかもしれないけど。
「今日もヨナちゃんのおごりだから遠慮なく食べて飲んで!」
「いいの? こんないいお店」
事前に「どの店が良い?」と候補をいくつか言われた中から俺が選んだ店ではあるけど、一番安いコースでも一万円近かった。このシャンパンのボトルなんか、一本数万円だろうし……。
他の店の価格帯も似たような感じで、いくらお祝いと言っても自分でも負担するつもりだったのに。
「今日は俺も半分出すって言ったんだけどね~」
「自宅の飲み会ではミチが料理を作ってモニが飲み物を用意してくれるから、外食は私が払う。そういうルールだし……友達の大事なお祝いにお金が使えるのって、働き甲斐がある」
ヨナちゃんが珍しくキレイな笑顔からもう一歩深い、モデルの仕事用とは全然違う友達らしい笑顔でそんなことを言うから……お言葉に甘えるしかないな。
「ありがとう、ヨナちゃん」
「そんなわけだから、俺からは物をプレゼント! はいどーぞ」
すでにシャンパンのグラスを空にしたモニくんから、有名なハイブランドのオレンジ色の紙袋をテーブル越しに受け取った。
「え、このブランドの?」
俺、モニくんに番ができた時にあげたプレゼントは「番記念でカップルっぽい写真撮りたいから二人のイニシャルとハートのセーター編んで!」というリクエストで作った二人分のセーターだった。
精一杯丁寧に、毛糸の質にもこだわって編んだものだけど……。
「気を遣われたくないから正直に言うけどね、キョウイチさんが常連かメンバーかなんかで、よく解らないけど安く買えたから。多分ミチくんの想像する値段の半分くらいだよ」
「そうなの?」
半額でも高くない? とは思うけど……自分のプレゼントと比べて申し訳ない気持ちもあるけど……プレゼントは気持ちの問題だから金額は気にしないでいいのかもしれないけど……。
こんな高価なブランドの物をもらえるほどの祝い事なんだ、番って。
そう考えると目の前のプレゼントが一層嬉しく思えた。
「うん。それにね、俺、ブランドもの詳しくないんだけど、キョウイチさんの買物に付き合った時に、このブランドの革製品は手入れすれば一〇〇年だって使えて、長く時間を重ねるごとに使い込まれた自分だけの良い風合いになるって言われて……これから一生一緒にいるミチくんとアキヤさんにピッタリだと思って!」
「そんな素敵なこと言われたら……喜んでいただきます。開けて良い?」
「もちろん!」
モニくんに促されて紙袋の中からリボンのかかった箱を取り出し、ちょっと緊張しながら蓋を開くと……。
「キーケース?」
「そう! もう一つの箱は色違い。アキヤさんとお揃いで使ってもらいたいな」
アキヤさんの分まで……。
友達に、番を含めまるごと祝ってもらっているんだと思うと、なんとも言えない感動に震えた。
「そっか……アキヤさんも含めて祝ってもらうことなんだ」
「そうだよ~。会社とかでも祝われたんじゃないの?」
「うん。祝ってもらった。でも……友達にこんな風に祝ってもらうと、自分の生活と言うか、人間関係? そういうことの中に番が入ってきたんだなって実感して……しみじみ嬉しい」
「なかなか実感わかないよね。でも、俺はもうアキヤさんはミチくんの番だから、ミチくんの一部だと思っているよ。番ぐるみで仲良くできたらいいな。そうだ! この前言っていたダブルデートしようよ!」
「あぁ、キョウイチさんと言っていた?」
あれは確か、初めてアキヤさんの家に行った帰りだ。
モニくんとキョウイチさんに偶然出会ってそんな話をしたんだった。
「うん! 俺はね、俺の好きな人と俺の大事な友達が仲良くなってくれるの嬉しい! ミチくんはどう?」
俺の好きな人……アキヤさん。
俺の大事な友達……モニくん、ヨナちゃん。
頭の中でなんとなく三人が一緒ににこにこ話しているところを想像すると、胸の辺りがじんわりと熱くなった。
オメガ友達であるモニくんとヨナちゃんが番祝いを開いてくれた。
「ミチくん、番おめでとう! かんぱーい!」
いつもの俺の家ではなく、ちょっと高級なフランス料理店のオメガ用個室。
手に持っているのも普段は頼まない高級なシャンパンの入ったグラスだ。
「乾杯」
「ありがとう」
番祝いと言われて乾杯して飲むシャンパンは格別に美味しかった。
……高級なシャンパンだからかもしれないけど。
「今日もヨナちゃんのおごりだから遠慮なく食べて飲んで!」
「いいの? こんないいお店」
事前に「どの店が良い?」と候補をいくつか言われた中から俺が選んだ店ではあるけど、一番安いコースでも一万円近かった。このシャンパンのボトルなんか、一本数万円だろうし……。
他の店の価格帯も似たような感じで、いくらお祝いと言っても自分でも負担するつもりだったのに。
「今日は俺も半分出すって言ったんだけどね~」
「自宅の飲み会ではミチが料理を作ってモニが飲み物を用意してくれるから、外食は私が払う。そういうルールだし……友達の大事なお祝いにお金が使えるのって、働き甲斐がある」
ヨナちゃんが珍しくキレイな笑顔からもう一歩深い、モデルの仕事用とは全然違う友達らしい笑顔でそんなことを言うから……お言葉に甘えるしかないな。
「ありがとう、ヨナちゃん」
「そんなわけだから、俺からは物をプレゼント! はいどーぞ」
すでにシャンパンのグラスを空にしたモニくんから、有名なハイブランドのオレンジ色の紙袋をテーブル越しに受け取った。
「え、このブランドの?」
俺、モニくんに番ができた時にあげたプレゼントは「番記念でカップルっぽい写真撮りたいから二人のイニシャルとハートのセーター編んで!」というリクエストで作った二人分のセーターだった。
精一杯丁寧に、毛糸の質にもこだわって編んだものだけど……。
「気を遣われたくないから正直に言うけどね、キョウイチさんが常連かメンバーかなんかで、よく解らないけど安く買えたから。多分ミチくんの想像する値段の半分くらいだよ」
「そうなの?」
半額でも高くない? とは思うけど……自分のプレゼントと比べて申し訳ない気持ちもあるけど……プレゼントは気持ちの問題だから金額は気にしないでいいのかもしれないけど……。
こんな高価なブランドの物をもらえるほどの祝い事なんだ、番って。
そう考えると目の前のプレゼントが一層嬉しく思えた。
「うん。それにね、俺、ブランドもの詳しくないんだけど、キョウイチさんの買物に付き合った時に、このブランドの革製品は手入れすれば一〇〇年だって使えて、長く時間を重ねるごとに使い込まれた自分だけの良い風合いになるって言われて……これから一生一緒にいるミチくんとアキヤさんにピッタリだと思って!」
「そんな素敵なこと言われたら……喜んでいただきます。開けて良い?」
「もちろん!」
モニくんに促されて紙袋の中からリボンのかかった箱を取り出し、ちょっと緊張しながら蓋を開くと……。
「キーケース?」
「そう! もう一つの箱は色違い。アキヤさんとお揃いで使ってもらいたいな」
アキヤさんの分まで……。
友達に、番を含めまるごと祝ってもらっているんだと思うと、なんとも言えない感動に震えた。
「そっか……アキヤさんも含めて祝ってもらうことなんだ」
「そうだよ~。会社とかでも祝われたんじゃないの?」
「うん。祝ってもらった。でも……友達にこんな風に祝ってもらうと、自分の生活と言うか、人間関係? そういうことの中に番が入ってきたんだなって実感して……しみじみ嬉しい」
「なかなか実感わかないよね。でも、俺はもうアキヤさんはミチくんの番だから、ミチくんの一部だと思っているよ。番ぐるみで仲良くできたらいいな。そうだ! この前言っていたダブルデートしようよ!」
「あぁ、キョウイチさんと言っていた?」
あれは確か、初めてアキヤさんの家に行った帰りだ。
モニくんとキョウイチさんに偶然出会ってそんな話をしたんだった。
「うん! 俺はね、俺の好きな人と俺の大事な友達が仲良くなってくれるの嬉しい! ミチくんはどう?」
俺の好きな人……アキヤさん。
俺の大事な友達……モニくん、ヨナちゃん。
頭の中でなんとなく三人が一緒ににこにこ話しているところを想像すると、胸の辺りがじんわりと熱くなった。
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