追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい

夏見ナイ

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第54話 ゴロツキと一撃

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バルカスが次に打ってきた手は、予想通り暴力的なものだった。

彼が雇ったのは『黒犬傭兵団』という、質の悪さで有名なゴロツキ集団だった。正規の騎士団には入れなかったあぶれ者や、犯罪歴のある荒くれ者が集まっており、金さえ貰えば汚れ仕事も平気で請け負う連中だ。

彼らは五十人ほどの集団で、エデンへと続く街道を我が物顔で練り歩いていた。

「へへっ、聞いたかよ。今度の標的は辺境の村一つだって話だぜ」
「ちょろい仕事だ。村人どもを少し痛めつけて、金目の物を奪えばいいんだろ?」
「なんでも、その村には極上の美人が何人もいるらしいぞ。楽しみだなあ!」

彼らは下卑た笑い声を上げながら、武器をガチャガチャと鳴らしていた。彼らにとって辺境の村など、少し脅せば簡単にひれ伏す良いカモでしかなかった。

一方、エデンでは。

見張り台からの報告で、武装集団の接近はすでに察知されていた。

「リアム様、どうしますか? 村の男たちを集めて迎撃の準備を……」

村長が緊張した面持ちで尋ねてくる。だが俺は首を横に振った。

「いえ、その必要はありません。彼らが来ることは予想していました。すでに適任者を向かわせています」

俺は村の入り口の方角を静かに見つめた。

「彼女一人で十分です」

村の入り口から少し離れた街道の真ん中。
そこに一人のエルフの少女が立っていた。

ルナリエルだ。彼女は腕を組み、退屈そうにあくびを噛み殺しながら、近づいてくる土埃の集団を待っていた。

やがて傭兵団が彼女の目の前に到着した。彼らは道を塞ぐように立っている美しいエルフの姿を見て、足を止めた。

「おいおい、見ろよ。とびきりの上玉がいるじゃねえか」
「エルフか! へへっ、こいつはツイてるぜ! 村への手土産にするか!」

傭兵団のリーダーらしき、顔に大きな傷のある大男が、下卑た笑みを浮かべて前に進み出た。

「よう、姉ちゃん。俺たちはこの先の村に用があるんだ。怪我をしたくなければそこをどきな……いや、待てよ。俺たちの相手をしてくれるなら、可愛がってやってもいいぜ?」

男の言葉に、後ろの傭兵たちがドッと卑猥な笑い声を上げた。

ルナリエルはそんな彼らを、道端の石ころを見るような冷徹な目で見つめ返した。

「……臭いわね」

彼女は心底不快そうに鼻をつまんだ。

「あなたたち、何日風呂に入っていないの? それに、その薄汚い欲望の臭い。ここに立っているだけでエデンの清浄な空気が汚れるわ」

「ああん? なんだと、このアマ……!」

リーダーの男が顔を真っ赤にして怒鳴った。

「生意気な口をききやがって! おい、野郎ども! この女を捕まえろ! たっぷりと教育してやる!」

「「「ヒャッハー!」」」

傭兵たちが一斉に武器を抜き、ルナリエルに襲いかかろうとした。

その瞬間。

ルナリエルの姿が掻き消えた。

「え?」

先頭にいた男が間抜けな声を漏らす。

次の瞬間、彼らの視界を銀色の閃光が走り抜けた。

それはたった一撃だった。

だがその一撃は、五十人の傭兵団全員の間を雷光のごとき速度で駆け巡っていた。

ザシュッ――!!!

音が後から追いついてくる。

「ぐはっ!?」
「な、なんだ……!?」

傭兵たちが次々とその場に崩れ落ちていく。彼らの鎧はまるで紙細工のように綺麗に切り裂かれ、武器は半分のところで両断されていた。

命までは奪っていない。だが全員が手足の腱や急所を寸分違わず峰打ちされており、立つことすらできなかった。

五十人が、たった一瞬で戦闘不能になったのだ。

「……遅すぎるわ」

ルナリエルはいつの間にか傭兵団の最後尾に立っていた。彼女は抜き放った愛剣をゆっくりと鞘に納めた。

カチン。

その小さな音が、静寂を取り戻した街道に響き渡った。

「あなたたちのような三流、剣を抜く価値もなかったわね」

彼女は地面に転がり、うめき声を上げる男たちを冷たく見下ろした。

そこへ俺が村の男たちを連れて到着した。

「終わったか、ルナリエル」

「ええ。見ての通りよ。退屈すぎてあくびが出そうだったわ」

彼女は何事もなかったかのように肩をすくめた。

目の前に広がる光景に、同行した村の男たちが息を呑む。五十人の武装集団がたった一人に、しかも一瞬で壊滅させられているのだ。改めて自分たちの村の守護者がどれほど規格外の存在なのかを思い知らされた瞬間だった。

「た、助けてくれ……! あ、あんた、一体何者なんだ……!」

リーダーの男が恐怖に引きつった顔で、ルナリエルを見上げながら後ずさる。

ルナリエルはそんな彼に氷の微笑を向けた。

「わたし? ただの、この村の『門番』よ。……二度とこのエデンの地をその汚い足で踏まないことね。次は命がないと思いなさい」

その言葉にゴロツキたちは震え上がり、何度も頷くことしかできなかった。

バルカスの第二の刺客は、村にたどり着くことすらできず門前払いされる形となった。

俺は圧倒的な強さを見せつけたルナリエルの隣に並び、敗走していく傭兵たちの背中を見送りながら思った。

悪徳領主の次の一手はもっと本気でくるだろう。だが俺たちには最強の矛がいる。

この楽園は誰にも踏みにじらせはしない。
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