【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ

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第9話 追放

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「……おい、大丈夫か」
最初に我に返ったのは、鈴木だった。彼は慌てて自分のポーチから回復薬を取り出し、膝をついている健太に駆け寄る。
「しっかりしろ! 今、ポーションを……」
「……いえ、大丈夫です」
健太はか細い声でそれを制すると、痛みに耐えながら意識を集中させた。自分の【無限収納】から、赤い小瓶を一つ取り出し、その場で飲み干す。切り裂かれた腕の傷口が、淡い光と共にみるみる塞がっていく。魔法のような光景に、パーティーのメンバーは再び言葉を失った。

一番衝撃を受けていたのは、リーダーの田中だった。
彼は、自分を庇った荷物持ちと、倒れ伏すゴブリンリーダーを交互に見比べ、わなわなと唇を震わせている。その表情に浮かんでいるのは、感謝や安堵ではなかった。嫉妬、焦り、そして何よりも、傷つけられた自尊心からくる屈辱の色だった。

「……ボスは倒した。さっさと素材を剥ぎ取って帰るぞ」
田中は吐き捨てるようにそう言うと、健太には目もくれず、ゴブリンリーダーの死体に歩み寄った。その後のダンジョンからの帰路は、まるで葬列のようだった。誰も口を開かず、ただ黙々と歩くだけ。健太の腕の傷は癒えたが、パーティーとの間にできた溝は、致命的なほどに深まっていた。

ギルドの前に戻り、太陽の光を浴びたとき、健太はようやく緊張の糸が切れるのを感じた。これで、今日の仕事は終わりだ。
「あの、日当の件ですが……」
健太がおずおずと切り出すと、田中は待ってましたとばかりに振り返った。その目は、冷たく、敵意に満ちていた。

「お前に払う金だと? よく聞け、新人」
田中は人差し指を健太に突きつける。
「お前みたいな素人がいると、パーティーが危険に晒される。勝手な行動で連携を乱し、俺たちを危機に陥れた。分かっているのか?」
「え……? でも、俺は助けようと……」
「黙れ! 今回は運が良かっただけだ! 次も同じことができる保証がどこにある!? 俺たちDランクのやり方に、ズブの素人が口を出すな!」

理不尽。その一言に尽きた。
命がけで助けた結果が、これか。サラリーマン時代にいくらでも経験してきた、責任転嫁とパワハラの構図そのものだった。健太は何か言い返そうとしたが、喉が渇いて言葉が出てこない。
隣で鈴木たちが何か言いたげに口をもごもごさせているが、リーダーの剣幕に押されて、結局うつむいてしまった。

「ほらよ」
田中は懐から銀貨を数枚取り出すと、それを地面に投げ捨てた。チャリン、と乾いた音が響く。
「約束の日当、銀貨5枚だ。ありがたく拾え。そして、もう二度と俺たちの前に顔を見せるな。お前は今日でクビだ」

そう言い放つと、田中たちは健太を置き去りにして、ギルドの建物の中に消えていった。おそらく、ゴブリンリーダー討伐の報告を、自分たちだけの手柄として申請するのだろう。

一人残された健太は、地面に散らばる銀貨を黙って見つめていた。やがて、ゆっくりと屈み込み、それを一枚一枚拾い上げる。
たった五枚の銀貨。これが、命を懸けた代償。
握りしめた硬貨は、ひどく冷たく、そしてあまりにも軽く感じられた。それとは対照的に、胸の奥で静かに燃え始めた怒りの炎は、ずしりと重かった。
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