【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ

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第10話 スキルの再検証

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ギシ、と軋む音を立ててドアを開け、健太は自分のアパートの部屋に転がり込んだ。壁に背を預け、そのままズルズルと床に座り込む。左腕には、塞がったとはいえ生々しい傷跡が残っていた。ポケットの中では、あの理不尽の象徴である五枚の銀貨が冷たい感触を伝えてくる。

悔しい。
腹立たしい。
田中たちの顔を思い出すだけで、胃の腑が煮えくり返るようだった。だが、それ以上に自分自身に腹が立った。なぜ、何も言い返せなかったのか。なぜ、みすみす手柄を横取りされたのか。

結局、自分は何も変わっていない。会社で上司に理不尽を押し付けられていた頃と、本質的には何一つ。場所と相手が変わっただけで、弱い立場であることには変わりない。

「……いや」

健太は、ふと何かに気づいたように顔を上げた。
本当にそうだろうか?
今日のダンジョンでの出来事を、もう一度、冷静に思い返してみる。

鈴木の口元に、ピンポイントで出現したポーション。
田中の背後を狙うゴブリンの足元に、突然現れた盾。
そして、ゴブリンリーダーの胸を内側から貫くように射出された、ショートソード。

あれは、本当に「たまたま」だったのか? 運が良かっただけ?
違う。断じて違う。
あれはすべて、健太自身の意思によって引き起こされた現象だ。

「……試してみよう」

健太は立ち上がり、テーブルの上に置いてあったテレビのリモコンを手に取った。意識を集中させ、スキルを発動する。リモコンは淡い光に包まれ、掌から掻き消えた。
これは今まで通りだ。

問題はここからだ。
健太は部屋の反対側にあるベッドの方に視線を向け、心の中で強く念じた。

――リモコンを、枕の上に。

すると、ベッドの枕元に、先ほどと同じように何もない空間からリモコンがことりと現れた。
健太は息をのんだ。自分の目で見ていながら、信じがたい光景だった。
もう一度試す。今度は、キッチンのシンクの中へ。成功。次は、本棚の隙間へ。これも成功。距離や場所にほとんど制約がない。

「思考による、即時・任意地点への取り出し……」
健太の心臓が、興奮で早鐘を打ち始める。これは、ただの物入れの機能ではない。

次に、重量。パーティーのあれだけ大量の荷物を収納しても、健太は全く重さを感じなかった。試しに、部屋で一番重いであろう、古びた本で満載のダンボール箱を収納してみる。やはり、体に何の負荷もかからない。
重量・質量の完全無視。これだけでも、ポーターとしては破格の性能だ。

そして、最大の問題は「射出」だ。
健太は収納したリモコンを、今度はクッションに向かって「撃ち出す」イメージで取り出した。
ビュッ、と短い風切り音と共に、リモコンがクッションに突き刺さるほどの勢いで飛んでいった。

「……できる」
確信が、全身を駆け巡った。
収納口のサイズや形状を、ある程度コントロールできるのだ。細く絞れば、中にあるものを銃弾のように射出できる。ゴブリンリーダーを倒した一撃は、まぐれではなかった。

【無限収納】。
それは、ギルドの誰もが「ハズレ」と嘲笑したスキル。
だが、その真の姿は、無限の倉庫であると同時に、無限の射出機であり、無限の罠設置機でもあった。使い方次第では、どんな戦闘スキルよりも恐ろしい兵器庫になりうる。

「……そうか」
健太の口元に、追放されて以来、初めて笑みが浮かんだ。それは自嘲でも、諦めでもない。新たな可能性を見出した者の、獰猛な笑みだった。

ソロでやれる。いや、ソロの方がいい。
パーティーに縛られていては、このスキルの真価は発揮できない。

健太はポケットから五枚の銀貨を取り出し、テーブルの上に置いた。
「田中さん。あんたが俺を追放してくれたおかげで、目が覚めましたよ」
誰に言うでもなく呟き、彼はパソコンの電源を入れた。
まずは情報収集だ。ソロで、安全に、そして効率的に稼ぐための。
サラリーマン時代に培った、徹底的な事前準備とリスク管理。それに、この規格外のスキルが加わればどうなるか。
彼の胸の中では、悔しさの炎が、未来を照らす希望の炎へと静かに燃え移っていた。
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