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第65話 お土産選び
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縁結びの神様からの力強い後押しを受け、俺たちの心は幸福感で満たされていた。
清水寺からの帰り道、参道にずらりと並んだお土産物屋に俺たちは立ち寄ることにした。
日が落ち、店先に灯された提灯の明かりが、どこかノスタルジックな雰囲気を醸し出している。
「うわー、八ツ橋の種類、めっちゃあるじゃん!」
「この漬物、試食していいんだって!」
健太や天野さんたちは目を輝かせながら、あちこちの店を覗き込んでいる。
俺も、家族や妹の美咲へのお土産を選ばなければならない。
俺は隣を歩く雫に、手話で尋ねた。
『雫は、誰かにお土産買うの?』
すると彼女はこくりと頷いた。そしてスマホを取り出し、メモ帳に文字を打ち込んで見せてくれる。
『お姉ちゃんに。いつもお世話になってるから』
その文字を見て、俺は潮さんの顔を思い出した。あのパワフルで、でも妹思いの優しいお姉さん。彼女なら、どんなお土産を喜ぶだろうか。
俺たちが色とりどりの京菓子が並ぶ店先を眺めていると、雫がある一点を指差した。
そこにあったのは、抹茶を使った緑色の金平糖だった。小さな星のような形をした可愛らしいお菓子。
『お姉ちゃん、こういうキラキラしてて可愛いものが好きなの』
雫が嬉しそうに手話で教えてくれる。
「へえ、意外だな」
俺がそう言うと、彼女はくすくすと笑った。
彼女が潮さんのために一生懸命お土産を選んでいる姿。
その横顔を見ていると、俺の心の中にふわりと温かいものが広がった。
彼女の大切な家族。
その人のことを、俺も一緒に考えている。
その事実がなんだかとても自然で、そして少しだけくすぐったいような不思議な気持ちにさせた。
「じゃあ、俺は妹にこれにしようかな」
俺は、雫が選んだ金平糖の隣にあったウサギの形をした和三盆を手に取った。美咲もこういう可愛いものが好きだったはずだ。
俺たちが、お互いの家族のために同じ店でお土産を選んでいる。
その光景は周りから見たら、どんな風に見えているのだろう。
もしかしたら、もうずっと昔からこうしているのが当たり前だったかのような、そんな自然な空気が俺たちの間には流れていた。
会計を済ませ、店の外に出る。
健太たちはまだ別の店で試食に夢中になっているようだった。
俺たちは二人きりで、店の軒先に置かれた縁台に腰を下ろした。
買ったばかりのお土産の袋を、隣に並べて置く。
「……なんか、不思議な感じだな」
俺がぽつりと声で呟いた。
雫は不思議そうに小首を傾げる。
俺は手話で言葉を続けた。
『こうして、雫と一緒にお互いの家族へのお土産を選んでるなんて』
『なんだか、未来のこと、少しだけ考えちゃった』
俺の少しだけ踏み込んだ言葉。
彼女はその意味をすぐに理解したのだろう。
彼女の頬が、提灯の赤い光を浴びてぽっと可愛らしく染まった。
そして彼女は恥ずかしそうに俯いてしまったが、その口元には隠しきれない嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
彼女も同じことを考えてくれていたらいいな。
いつか、こうして二人で当たり前のように、お互いの家族のことを考えられるような、そんな未来が来たら。
そんな甘い想像をしてしまい、俺の心臓はまた一つ甘く跳ねた。
しばらくして、健太たちが満足そうに店から出てきた。
「おーい、二人とも! 買ったかー?」
「お前ら、試食しすぎだろ」
俺が呆れて言うと、健太は「腹ごしらえも観光のうちだろ!」と胸を張った。
全員のお土産選びが終わり、俺たちはバス停へと向かう。
バスに揺られホテルへと帰る道すがら。
俺は、隣に座る雫の横顔をそっと盗み見た。
彼女は今日一日が本当に楽しかったのだろう。少し疲れた様子だったが、その表情は満ち足りた幸福感で輝いていた。
その手には、潮さんへのお土産の袋が大切そうに握られている。
この温かい気持ちを、京都だけで終わらせたくない。
東京に帰っても、俺たちのこの関係が続いていく。
そして、いつか本当にお互いの家族にちゃんと挨拶できる日が来るのかもしれない。
そんな少しだけ先の未来を想像して。
俺は、バスの窓に映る自分の顔が最高にだらしなく緩んでいることに、気づかないふりをしていた。
清水寺からの帰り道、参道にずらりと並んだお土産物屋に俺たちは立ち寄ることにした。
日が落ち、店先に灯された提灯の明かりが、どこかノスタルジックな雰囲気を醸し出している。
「うわー、八ツ橋の種類、めっちゃあるじゃん!」
「この漬物、試食していいんだって!」
健太や天野さんたちは目を輝かせながら、あちこちの店を覗き込んでいる。
俺も、家族や妹の美咲へのお土産を選ばなければならない。
俺は隣を歩く雫に、手話で尋ねた。
『雫は、誰かにお土産買うの?』
すると彼女はこくりと頷いた。そしてスマホを取り出し、メモ帳に文字を打ち込んで見せてくれる。
『お姉ちゃんに。いつもお世話になってるから』
その文字を見て、俺は潮さんの顔を思い出した。あのパワフルで、でも妹思いの優しいお姉さん。彼女なら、どんなお土産を喜ぶだろうか。
俺たちが色とりどりの京菓子が並ぶ店先を眺めていると、雫がある一点を指差した。
そこにあったのは、抹茶を使った緑色の金平糖だった。小さな星のような形をした可愛らしいお菓子。
『お姉ちゃん、こういうキラキラしてて可愛いものが好きなの』
雫が嬉しそうに手話で教えてくれる。
「へえ、意外だな」
俺がそう言うと、彼女はくすくすと笑った。
彼女が潮さんのために一生懸命お土産を選んでいる姿。
その横顔を見ていると、俺の心の中にふわりと温かいものが広がった。
彼女の大切な家族。
その人のことを、俺も一緒に考えている。
その事実がなんだかとても自然で、そして少しだけくすぐったいような不思議な気持ちにさせた。
「じゃあ、俺は妹にこれにしようかな」
俺は、雫が選んだ金平糖の隣にあったウサギの形をした和三盆を手に取った。美咲もこういう可愛いものが好きだったはずだ。
俺たちが、お互いの家族のために同じ店でお土産を選んでいる。
その光景は周りから見たら、どんな風に見えているのだろう。
もしかしたら、もうずっと昔からこうしているのが当たり前だったかのような、そんな自然な空気が俺たちの間には流れていた。
会計を済ませ、店の外に出る。
健太たちはまだ別の店で試食に夢中になっているようだった。
俺たちは二人きりで、店の軒先に置かれた縁台に腰を下ろした。
買ったばかりのお土産の袋を、隣に並べて置く。
「……なんか、不思議な感じだな」
俺がぽつりと声で呟いた。
雫は不思議そうに小首を傾げる。
俺は手話で言葉を続けた。
『こうして、雫と一緒にお互いの家族へのお土産を選んでるなんて』
『なんだか、未来のこと、少しだけ考えちゃった』
俺の少しだけ踏み込んだ言葉。
彼女はその意味をすぐに理解したのだろう。
彼女の頬が、提灯の赤い光を浴びてぽっと可愛らしく染まった。
そして彼女は恥ずかしそうに俯いてしまったが、その口元には隠しきれない嬉しそうな笑みが浮かんでいた。
彼女も同じことを考えてくれていたらいいな。
いつか、こうして二人で当たり前のように、お互いの家族のことを考えられるような、そんな未来が来たら。
そんな甘い想像をしてしまい、俺の心臓はまた一つ甘く跳ねた。
しばらくして、健太たちが満足そうに店から出てきた。
「おーい、二人とも! 買ったかー?」
「お前ら、試食しすぎだろ」
俺が呆れて言うと、健太は「腹ごしらえも観光のうちだろ!」と胸を張った。
全員のお土産選びが終わり、俺たちはバス停へと向かう。
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俺は、隣に座る雫の横顔をそっと盗み見た。
彼女は今日一日が本当に楽しかったのだろう。少し疲れた様子だったが、その表情は満ち足りた幸福感で輝いていた。
その手には、潮さんへのお土産の袋が大切そうに握られている。
この温かい気持ちを、京都だけで終わらせたくない。
東京に帰っても、俺たちのこの関係が続いていく。
そして、いつか本当にお互いの家族にちゃんと挨拶できる日が来るのかもしれない。
そんな少しだけ先の未来を想像して。
俺は、バスの窓に映る自分の顔が最高にだらしなく緩んでいることに、気づかないふりをしていた。
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