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第64話 縁結びの神様
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着物に着替えた俺たちの班別行動は、さらにその熱を帯びていた。
祇園の石畳を歩き、抹茶のパフェに舌鼓を打ち、インスタ映えする写真を撮りまくる。その全てがキラキラとした青春の一ページとして、俺たちの心に刻まれていった。
特に、着物姿の雫の破壊力は凄まじく、俺は一日のうちに何度も心臓を撃ち抜かれ、そのたびに平静を装うのに必死だった。
そして、初日の班別行動の締めくくりとして、俺たちは京都観光の王道、清水寺へと向かった。
夕暮れ時。朱色に輝く仁王門をくぐり、長い参道を登っていく。眼下に広がり始めた京の街並みが、夕日に照らされて美しい。
「うわー、すげー! これが清水の舞台か!」
有名な「清水の舞台」にたどり着いた健太が、手すりから身を乗り出すようにして歓声を上げた。その高さと木造建築の迫力に、俺たちも圧倒される。
「ここから飛び降りる勇気って、相当だよな」
「いや、絶対死ぬだろ」
そんな物騒な会話をしながら、俺たちはしばらくの間、その絶景に見入っていた。
舞台を渡り終え、順路に沿って歩いていると、天野さんが「あ!」と声を上げた。
彼女が指差す先には、ひときわ多くの人で賑わう小さな社があった。
「地主神社! 縁結びの神様だって! 行こ行こ!」
その言葉に、女子たちが「きゃー!」と色めき立つ。
俺と雫は顔を見合わせた。お互いの顔が少しだけ赤くなっているのが分かる。
縁結び。
今の俺たちにとって、それはあまりにも直接的で、そして無視できないキーワードだった。
神社は恋の成就を願う若い女性たちでごった返していた。
ピンク色の可愛らしいお守りやハート型の絵馬が、所狭しと並んでいる。
その、あまりにも恋愛一色な雰囲気に俺は少しだけ気圧されてしまった。
「見て見て! 恋占いの石だって!」
天野さんが指差す先には、二つの大きな石が十メートルほどの間隔をあけて置かれていた。片方の石から目を閉じて歩き、無事にもう片方の石にたどり着くことができれば恋が叶うという有名な石だ。
「私、やってみる!」
天野さんが挑戦するのを、俺たちは固唾を飲んで見守った。健太が「右!」「いや、もうちょい左!」と茶々を入れながらナビゲートし、なんとか彼女は石にたどり着くことができた。
その微笑ましい光景を、俺は雫の隣で眺めていた。
「……雫も、やってみる?」
俺が手話でそっと尋ねる。
すると彼女はぶんぶんと勢いよく首を横に振った。そして、顔を真っ赤にして俯いてしまう。
その反応が可愛くて、俺は思わず笑ってしまった。
そうだよな。もう、占う必要なんてないもんな。
俺たちは本殿でお参りをすることにした。
二人並んで賽銭箱の前へ進む。
俺は財布から五円玉を二枚取り出し、一枚を雫の小さな手にそっと握らせた。
「ご縁がありますように、ってな」
俺がにっと笑いかけると、彼女ははにかむように微笑んで、こくりと頷いた。
二人同時に賽銭箱にお金を投げ入れる。
チャリン、という軽やかな音。
俺たちは、目を閉じ静かに手を合わせた。
(神様)
俺は心の中で静かに語りかけた。
(俺は、隣にいるこの女の子がどうしようもなく好きです)
(彼女の笑顔を、これからもずっと一番近くで見ていたいです)
(どうか、俺たちのこの幸せな時間が一日でも長く、永遠に続きますように)
(そして、彼女がずっと笑顔でいられますように)
それは、今まで生きてきた中で最も真剣で、最も心のこもった願いだった。
数秒間、祈りを捧げた後、俺はそっと目を開けた。
隣を見ると、雫もちょうど目を開けたところだった。
その潤んだ瞳が、俺の顔を真っ直ぐに見つめている。
彼女もきっと、俺と同じことを願ってくれたのだろう。
その瞳がそう語っていた。
言葉はなくても、伝わる想いがある。
俺たちは微笑み合い、そして静かにその場を後にした。
お参りを終えた後、俺たちはそれぞれおみくじを引くことにした。
「俺、大吉だぜ! 見ろよ、『恋愛:この人となら幸福になる』だってよ!」
健太が天野さんの隣で大声でおみくじを読み上げている。天野さんは「うるさいなー」と言いながらも、満更でもない顔をしていた。
俺も、自分の引いたおみくじをドキドキしながら開いた。
結果は、「吉」。
可もなく不可もなく、といったところか。
恋愛の欄に目をやると、こう書かれていた。
『静かに想いを育みなさい。誠意が伝われば、必ず成就する』
「……当たってるかもな」
俺は、思わず苦笑してしまった。
ふと、隣で同じようにおみくじを開いていた雫の手元がぴたりと止まったのが見えた。
彼女は信じられないものを見るように、その小さな紙切れをじっと見つめている。
「どうした? 何て書いてあった?」
俺が手話で尋ねると、彼女はゆっくりと、そして少しだけ震える手でそのおみくじを俺に見せてくれた。
そこに書かれていたのは、たった二文字。
『大吉』
そして、その下に続く恋愛の項目。
『運命の人です。離してはいけません』
そのあまりにもストレートで、あまりにも力強い言葉。
俺は、その文字を読んだ瞬間、全身に鳥肌が立つのを感じた。
まるで神様が俺たちの背中を力強く押してくれているかのようだった。
雫は、そのおみく-じを宝物のように、ぎゅっと胸に抱きしめた。
そして、顔を上げる。
その顔は夕日に照らされて、決意と、そしてどうしようもないほどの幸福感でキラキラと輝いていた。
彼女は俺に向かって、人生で一番幸せだ、というかのように、ふわりと花が咲くように微笑んだ。
運命の人。
ああ、そうだよ。
俺もずっと前からそう思っていた。
君こそが、俺の運命の人なんだと。
縁結びの神様の前で。
俺たちの心は、神託という名の祝福を受けてまた一つ固く、固く結ばれた。
この手を、絶対に離さない。
俺は彼女の隣で、そう固く誓った。
祇園の石畳を歩き、抹茶のパフェに舌鼓を打ち、インスタ映えする写真を撮りまくる。その全てがキラキラとした青春の一ページとして、俺たちの心に刻まれていった。
特に、着物姿の雫の破壊力は凄まじく、俺は一日のうちに何度も心臓を撃ち抜かれ、そのたびに平静を装うのに必死だった。
そして、初日の班別行動の締めくくりとして、俺たちは京都観光の王道、清水寺へと向かった。
夕暮れ時。朱色に輝く仁王門をくぐり、長い参道を登っていく。眼下に広がり始めた京の街並みが、夕日に照らされて美しい。
「うわー、すげー! これが清水の舞台か!」
有名な「清水の舞台」にたどり着いた健太が、手すりから身を乗り出すようにして歓声を上げた。その高さと木造建築の迫力に、俺たちも圧倒される。
「ここから飛び降りる勇気って、相当だよな」
「いや、絶対死ぬだろ」
そんな物騒な会話をしながら、俺たちはしばらくの間、その絶景に見入っていた。
舞台を渡り終え、順路に沿って歩いていると、天野さんが「あ!」と声を上げた。
彼女が指差す先には、ひときわ多くの人で賑わう小さな社があった。
「地主神社! 縁結びの神様だって! 行こ行こ!」
その言葉に、女子たちが「きゃー!」と色めき立つ。
俺と雫は顔を見合わせた。お互いの顔が少しだけ赤くなっているのが分かる。
縁結び。
今の俺たちにとって、それはあまりにも直接的で、そして無視できないキーワードだった。
神社は恋の成就を願う若い女性たちでごった返していた。
ピンク色の可愛らしいお守りやハート型の絵馬が、所狭しと並んでいる。
その、あまりにも恋愛一色な雰囲気に俺は少しだけ気圧されてしまった。
「見て見て! 恋占いの石だって!」
天野さんが指差す先には、二つの大きな石が十メートルほどの間隔をあけて置かれていた。片方の石から目を閉じて歩き、無事にもう片方の石にたどり着くことができれば恋が叶うという有名な石だ。
「私、やってみる!」
天野さんが挑戦するのを、俺たちは固唾を飲んで見守った。健太が「右!」「いや、もうちょい左!」と茶々を入れながらナビゲートし、なんとか彼女は石にたどり着くことができた。
その微笑ましい光景を、俺は雫の隣で眺めていた。
「……雫も、やってみる?」
俺が手話でそっと尋ねる。
すると彼女はぶんぶんと勢いよく首を横に振った。そして、顔を真っ赤にして俯いてしまう。
その反応が可愛くて、俺は思わず笑ってしまった。
そうだよな。もう、占う必要なんてないもんな。
俺たちは本殿でお参りをすることにした。
二人並んで賽銭箱の前へ進む。
俺は財布から五円玉を二枚取り出し、一枚を雫の小さな手にそっと握らせた。
「ご縁がありますように、ってな」
俺がにっと笑いかけると、彼女ははにかむように微笑んで、こくりと頷いた。
二人同時に賽銭箱にお金を投げ入れる。
チャリン、という軽やかな音。
俺たちは、目を閉じ静かに手を合わせた。
(神様)
俺は心の中で静かに語りかけた。
(俺は、隣にいるこの女の子がどうしようもなく好きです)
(彼女の笑顔を、これからもずっと一番近くで見ていたいです)
(どうか、俺たちのこの幸せな時間が一日でも長く、永遠に続きますように)
(そして、彼女がずっと笑顔でいられますように)
それは、今まで生きてきた中で最も真剣で、最も心のこもった願いだった。
数秒間、祈りを捧げた後、俺はそっと目を開けた。
隣を見ると、雫もちょうど目を開けたところだった。
その潤んだ瞳が、俺の顔を真っ直ぐに見つめている。
彼女もきっと、俺と同じことを願ってくれたのだろう。
その瞳がそう語っていた。
言葉はなくても、伝わる想いがある。
俺たちは微笑み合い、そして静かにその場を後にした。
お参りを終えた後、俺たちはそれぞれおみくじを引くことにした。
「俺、大吉だぜ! 見ろよ、『恋愛:この人となら幸福になる』だってよ!」
健太が天野さんの隣で大声でおみくじを読み上げている。天野さんは「うるさいなー」と言いながらも、満更でもない顔をしていた。
俺も、自分の引いたおみくじをドキドキしながら開いた。
結果は、「吉」。
可もなく不可もなく、といったところか。
恋愛の欄に目をやると、こう書かれていた。
『静かに想いを育みなさい。誠意が伝われば、必ず成就する』
「……当たってるかもな」
俺は、思わず苦笑してしまった。
ふと、隣で同じようにおみくじを開いていた雫の手元がぴたりと止まったのが見えた。
彼女は信じられないものを見るように、その小さな紙切れをじっと見つめている。
「どうした? 何て書いてあった?」
俺が手話で尋ねると、彼女はゆっくりと、そして少しだけ震える手でそのおみくじを俺に見せてくれた。
そこに書かれていたのは、たった二文字。
『大吉』
そして、その下に続く恋愛の項目。
『運命の人です。離してはいけません』
そのあまりにもストレートで、あまりにも力強い言葉。
俺は、その文字を読んだ瞬間、全身に鳥肌が立つのを感じた。
まるで神様が俺たちの背中を力強く押してくれているかのようだった。
雫は、そのおみく-じを宝物のように、ぎゅっと胸に抱きしめた。
そして、顔を上げる。
その顔は夕日に照らされて、決意と、そしてどうしようもないほどの幸福感でキラキラと輝いていた。
彼女は俺に向かって、人生で一番幸せだ、というかのように、ふわりと花が咲くように微笑んだ。
運命の人。
ああ、そうだよ。
俺もずっと前からそう思っていた。
君こそが、俺の運命の人なんだと。
縁結びの神様の前で。
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この手を、絶対に離さない。
俺は彼女の隣で、そう固く誓った。
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