クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ

文字の大きさ
70 / 100

第70話 プレゼント選びに悩む

しおりを挟む
修学旅行が終わり、季節はあっという間に晩秋へと移り変わっていた。
街はハロウィンのオレンジ色から、クリスマスを彩る赤と緑の色へとその装いを急速に変え始めている。
俺と雫の恋も、その季節の移ろいと共に穏やかで、しかし確かな深みを増していた。

クリスマスに、二人で一緒に過ごす。
あの日の約束は、俺たちの心の中に温かくてキラキラとした灯火のようにずっと灯り続けていた。
メッセージのやり取りでも、時々その話題が出る。
『イルミネーション、見に行きたいな』
雫からそんなメッセージが来れば、俺は『綺麗そうな場所、探しとくよ』と返す。
そんな未来の計画を立てるだけで、どうしようもなく幸せな気持ちになった。

そして、十二月に入った最初の週末。
俺は一人で、賑やかな駅前のショッピングモールを訪れていた。
目的は、もちろん一つ。
雫へのクリスマスプレゼント選びだ。

人生で初めて、女の子へのプレゼントを真剣に選ぶ。
その事実に、俺は柄にもなくそわそわと落ち着かなかった。
彼女は、何を貰ったら喜んでくれるだろうか。
アクセサリー? マフラー? それとも、何か可愛らしい雑貨?
考えれば考えるほど、分からなくなる。
彼女の笑顔を思い浮かべる。あの、花が咲くようなとろけるような笑顔。
あの笑顔が見れるなら、俺はなんだってする。

俺は、まず可愛らしい雑貨が並ぶファンシーショップに入ってみた。
猫のぬいぐるみ、星の飾りがついたオルゴール。
確かに可愛い。可愛いが、しかし何かが違う気がした。
彼女はもう子供じゃない。俺の大切な恋人なのだ。
もっと特別なものを贈りたい。

次に、俺はマフラーや手袋が並ぶ服飾雑貨の店へと足を運んだ。
柔らかなカシミヤのマフラー。ファーのついた暖かそうな手袋。
実用的で、良いかもしれない。お揃いで持つのも悪くない。
俺は、淡い水色のマフラーを手に取り、鏡の前で自分の首に巻いてみる。
……似合わない。
俺はそっとマフラーを棚に戻した。

最後に、俺は意を決してキラキラとした照明が眩しいアクセサリーショップの前に立った。
ガラスケースの中には、小さな宝石がちりばめられた繊細なネックレスやブレスレットが、まるで星屑のように輝いている。
場違い感が半端ない。
周りには幸せそうなカップルばかり。一人で入るには相当な勇気が必要だった。

俺が店の前でうろうろと不審な動きを繰り返していると、中からにこやかな女性店員さんが出てきて声をかけてくれた。
「プレゼント、お探しですか?」
「あ、は、はい……」
俺はしどろもどろに頷く。
「彼女さんへのクリスマスプレゼントですか?」
「は、はい……」
「素敵ですね! よかったら、一緒に選ぶお手伝いさせてください」
その天使のような笑顔に、俺は救われた気持ちで店の中へと足を踏み入れた。

店員さんはとても親切だった。
俺から雫の雰囲気や好きな色、普段の服装などを聞き出すと、いくつかの商品を提案してくれた。
「彼女さんは、清楚で可愛らしい雰囲気なんですね。でしたら、こちらなんていかがですか?」
彼女が指差したのは、小さな月の形をしたモチーフがついた華奢なシルバーのネックレスだった。
月のモチーフの中心には、小さな淡い水色の石がキラリと埋め込まれている。

「月……」
俺は思わず呟いた。
月宮雫。
彼女の名前に、あまりにもぴったりなデザイン。
そして、その水色の石は彼女が好きな色だと、いつか話してくれた色だった。
まるで彼女のために作られたかのようなネックレス。
俺は、完全にそれに一目惚れしてしまった。

「これにします」
俺は迷いなく、そう言った。
値段は正直、高校生の俺にとっては少しだけ背伸びしたものだった。
でも、構わない。
これをつけた彼女の笑顔が見れるなら、バイト代なんて安いものだ。

丁寧にラッピングしてもらった小さな箱を、俺は大切にカバンの奥深くにしまった。
プレゼントが決まったことで、俺の心は安堵と、そして高まる期待感でいっぱいになった。
早くクリスマスイヴにならないだろうか。
早くこれを彼女に渡して、その笑顔が見たい。

その頃、雫もまた一人で、慣れない手つきで編み物と格闘していた。
潮のアドバイスを受け、彼女が俺へのプレゼントとして選んだのは手編みのマフラーだった。
「男は、手作りのものに弱いものなのよ!」
姉の力強い言葉を信じて、彼女は生まれて初めて編み物に挑戦していた。

何度も目を間違えてはほどいてやり直す。
指は毛糸で擦れて、少しだけ赤くなっていた。
でも、不思議と辛くはなかった。
このマフラーを使う、航くんの姿を想像する。
彼が、「暖かいよ」とあの優しい笑顔で笑ってくれる姿を。
その想像だけで、彼女の心は温かいもので満たされていく。

相手を想う時間。
何を贈れば喜んでくれるだろうかと頭を悩ませる時間。
その時間が何よりも幸せで、かけがえのないものなのだと。
俺たちは離れた場所で、同じ気持ちを感じながら。
それぞれのプレゼントに、たくさんの「好き」という想いを込めていた。
聖なる夜は、もうすぐそこまで迫っている。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景
恋愛
高校三年生の柴代大和は、小学校一年生の頃からの付き合いである秋田泰希の姉である夕希に恋心を抱いていたが、夕希の結婚をきっかけに恋心を諦めていた。 そして小学生の頃の夢を見た日、泰希から大和は夕希の離婚を伝えられ、それと同時にある頼みをされる。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

僕の姉的存在の幼馴染が、あきらかに僕に好意を持っている件〜

柿 心刃
恋愛
僕の幼馴染で姉的な存在である西田香奈は、眉目秀麗・品行方正・成績優秀と三拍子揃った女の子だ。彼女は、この辺りじゃ有名な女子校に通っている。僕とは何の接点もないように思える香奈姉ちゃんが、ある日、急に僕に急接近してきた。 僕の名は、周防楓。 女子校とは反対側にある男子校に通う、ごく普通の男子だ。

不器用な姉弟は傷を舐め合う、舐め合う舌はちょっとざらつく

桜乃マヒロ
恋愛
 姉の柊和(ひより)は美人で聡明な完璧万能超人、弟の護(まもる)は優しく献身的な天然男子。高校生ながら二人暮らしの柊和と護は、お互いを支え合って日々を生きてきた。  ある日、友人である生徒会長から呼び出された柊和は、自分を次の生徒会の会長に推薦したいと打診を受ける。 「私はただ、私の後なら柊和ちゃんがいいなって、そんな風に思っただけだからね」  二人だけの閉鎖的だった日常は、生徒会をきっかけに急激な変化を迎える。新しい出会いと日常の中で、今まで眠っていた二人の過去と、片や必死に封じ込み、片や無自覚だった特別な想いに、光が射し込むことになり──? 「あくっ……護には負けない!」 「なんの話か知らないけど、宣言されたら負かせたくなるね?」  顔と心に傷として刻まれた過去に囚われ、自分よりお互いを大切にしすぎてすれ違い続ける不器用な姉弟。そんな二人の両片思いのお話。 —————————————————————————————————  面白いと思っていただけた時は、お気に入りにしていただけると、凄く励みになります!  一日一話を目標に更新中!(現在火曜・木曜・土曜お休み中) 「小説家になろう」 「カクヨム」様でも同時に投稿しています。

迷子を助けたら生徒会長の婚約者兼女の子のパパになったけど別れたはずの彼女もなぜか近づいてくる

九戸政景
恋愛
新年に初詣に来た父川冬矢は、迷子になっていた頼母木茉莉を助け、従姉妹の田母神真夏と知り合う。その後、真夏と再会した冬矢は真夏の婚約者兼茉莉の父親になってほしいと頼まれる。 ※こちらは、カクヨムやエブリスタでも公開している作品です。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...