クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ

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第69話 クリスマスの約束

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あっという間に過ぎ去った、夢のような三泊四日。
修学旅行の最終日はクラス全員で嵐山を再訪し、お土産を買ったり食べ歩きをしたりと、名残惜しさを噛み締めるようにして過ごした。
帰りの新幹線の中、俺と雫はまた隣同士の席に座った。
でも、もう行きの時のような初々しい緊張感はない。代わりに、そこには穏やかで満ち足りた空気が流れていた。
俺たちはごく自然に手を繋ぎ、イヤホンを片方ずつ分け合って同じ音楽を聴く。時々、雫が俺の肩にこてんと頭を預けてきて、そのまま気持ちよさそうに寝息を立てる。その無防備な寝顔が、たまらなく愛おしかった。

東京駅に到着し解散の号令がかかった時、俺たちの心には楽しかった思い出と共に、明日からまたいつもの日常に戻るのだという一抹の寂しさが広がっていた。
「じゃあな、航! また月曜!」
健太たちと別れ、俺と雫は二人きりで家路につく。
もうすっかり当たり前になった恋人繋ぎ。
その温もりを感じながら、俺たちは言葉少なに歩いていた。

「……終わっちゃったな」
俺がぽつりと声で呟く。
隣を歩く雫も、こくりと寂しそうに頷いた。
次にこんな風に一日中一緒にいられるのは、いつになるんだろう。
そんなことを考えると、胸がきゅっと締め付けられた。

季節はもうすっかり秋だ。
駅からの帰り道、街路樹の葉が赤や黄色に色づき始めている。
吹く風もひんやりとしていて、少しだけ人肌恋しい。

ふと、通りかかったデパートのショーウィンドウが俺の目に留まった。
そこには早くもクリスマスをテーマにした、きらびやかな装飾が施されていた。
サンタクロースの人形、緑と赤のリボン、そしてキラキラと輝くたくさんのイルミネーション。
その光景を見た瞬間、俺の頭の中に一つの考えが、電球が灯るようにぱっと閃いた。

そうだ。
クリスマス。

俺は立ち止まった。
そして、隣を歩いていた雫の手をきゅっと少しだけ強く握る。
不思議そうな顔で俺を見上げる彼女の潤んだ瞳。
俺は彼女の目を真っ直ぐに見つめた。
そして、少しだけ照れくさかったが、はっきりと手話で伝えた。

『なあ、雫』
俺は一度、言葉を切った。
ごくりと喉が鳴る。心臓が期待にどくんと大きく跳ねた。

『今年の、クリスマス』
俺は両手でもみの木のような形を作った。
『もしよかったら、俺と一緒に過ごしてくれないかな?』

俺の未来への新しい約束の言葉。
それは修学旅行という大きなイベントが終わってしまった寂しさを吹き飛ばすための、俺なりの精一杯の提案だった。

俺のメッセージを受け取った雫は、一瞬きょとんとした顔をした。
そして、俺の言葉の意味をゆっくりと噛み締めるように理解していく。
クリスマス。
二人きりで、一緒に。

次の瞬間。
彼女の顔が、ぱあっとイルミネーションの光にも負けないくらい明るく輝いた。
それは、俺が今まで見た中で一番嬉しそうで、一番幸せそうな満開の笑顔だった。
彼女は言葉を発する代わりに、ぶんぶんと首がもげてしまいそうな勢いで、何度も何度も力強く頷いた。
その喜びように、俺の心も温かいものでいっぱいになる。

よかった。
彼女も同じ気持ちでいてくれたんだ。
俺は安堵と喜びで、思わず彼女の体を抱きしめそうになるのを必死で堪えた。
ここはまだ駅前の大通りだ。

「……よかった」
俺はなんとかそれだけ声を絞り出す。
そして彼女に向かって、最高の笑顔でにっと笑ってみせた。

修学旅行は終わってしまった。
でも、俺たちの物語はまだ終わらない。
次の季節へ。
新しい特別なイベントへ。
俺たちの恋は、これからもずっと続いていくのだ。

俺たちはまた、ゆっくりと歩き出した。
繋いだ手のひらから伝わる彼女の温もり。
そして、心の中に灯ったクリスマスという新しい、温かくてキラキラとした光。
その光がこれからの季節を、そして俺たちの未来を明るく照らしてくれることだけは、もう間違いなかった。
秋の夜風が、俺たちの髪を優しく揺らす。
その風はどこか遠くから、聖なる夜の鐘の音を運んできてくれているような気がした。
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