隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ

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第45話 新学期の空気、あるいは変わってしまったもの

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長かったようで、あっという間だった夏休みが終わり、二学期が始まった。
始業式の体育館は、夏休み前と変わらない生徒たちのざわめきと、校長の退屈な話で満たされている。
だが、俺にとってその風景は全く違うものに見えていた。
隣を見れば、同じクラスの仲間たち。
陽平が「あー、かったりぃ」とあくびを噛み殺している。
天宮さんが、少しだけ日焼けした肌で真剣な表情で前を見つめている。
そして、数メートル離れた列には彼女がいる。
雪城冬花。
背筋をピンと伸ばし、少しも動じることなく静かにそこに佇んでいる。その姿は、夏休み前と何も変わらない完璧な『氷の女王』だ。
だが、俺にはもう分かっている。
あのクールな仮面の下にある、彼女の本当の顔を。
夏祭りの夜に見せたか弱い涙。
俺のベッドで眠っていた無防備な寝顔。
そして、眠れない夜に交わした二人だけの固い約束。
俺たちはこの夏を通して、たくさんの思い出と秘密を共有した。
その一つ一つが、俺たちの関係を深く、そしてかけがえのないものに変えてくれた。

ホームルームのために教室に戻ると、その変化はよりはっきりと感じられた。
俺が自分の席に着く。
隣の席の彼女。
俺たちの間には、相変わらず言葉はない。
だが、そこには夏休み前にはなかった確かな『空気』が存在していた。
それは他人が踏み入ることのできない、俺たち二人だけの特別な空気。
甘くて、少しだけ気まずくて、でもどうしようもなく心地よい、そんな空気だ。

俺が教科書を机に入れていると、彼女がすっと小さなメモをこちらに差し出してきた。
『おはようございます。新学期も、よろしくお願いしますね、未来の旦那様』
そのいつも通りのメッセージに、俺は思わず吹き出しそうになる。
俺もノートの切れ端にペンを走らせた。
『おう。よろしくな、未来の嫁さん』
そして俺は、夏休みの間に練習した渾身のペンギンのイラストをその下に添えた。
俺のへたくそなペンギンを見た彼女の肩が、くすくすと小さく震える。
そのささやかなやり取り。
それだけで、俺の心は温かいもので満たされていった。

周囲のクラスメイトたちも、俺たちの間のその微妙な変化に気づいているようだった。
「なあ、相沢と雪城さんて、夏休み中に絶対何かあったよな」
「うん、なんか雰囲気変わったよね。前よりも壁がなくなった感じ?」
「ていうか、もう夫婦の貫禄すらあるんだけど……」
ひそひそと交わされる会話が耳に入ってくる。
陽平はニヤニヤしながら俺の肩を突いてきた。
「よお、新婚さん。良い夏休みを過ごせたみたいじゃねえか」
「うるさい」
俺は照れ隠しにそう返すのが精一杯だった。

その変化は、天宮さんの態度にも現れていた。
彼女は俺に話しかける時、以前よりも少しだけ距離を置くようになった。
「相沢くん、おはよう。夏休み、楽しかった?」
その笑顔は相変わらず太陽のように明るい。
だが、その瞳の奥にほんの少しだけ何かを諦めたような寂しさの色が浮かんでいるのを、俺は見逃さなかった。
球技大会の頃のような積極的なアプローチはもうない。
彼女はきっと気づいているのだ。
俺と雪城さんの間に流れる特別な空気に。
俺の心がもう完全に雪城さんだけのものになってしまっていることに。
そのことに、俺は少しだけ胸の痛みを感じた。
彼女の優しさに、俺は何一つ応えることができなかったから。
だが、俺はもう迷わない。
俺の隣には雪城冬花がいる。
彼女と共に歩むと、そう決めたのだから。

授業が始まり、教師の声が教室に響き渡る。
俺はノートを取りながら、ちらりと隣の彼女を盗み見た。
彼女も、ちょうど同じタイミングでこちらを見ていた。
視線が絡み合う。
俺たちはどちらからともなく、ふっと小さく笑い合った。
それは他の誰にも気づかれない、ほんの一瞬の出来事。
だが、俺たちにとっては、何よりも雄弁な愛情の確認だった。

夏休みが明けて。
俺たちの間の空気は確かに変わった。
未来の嫁と、未来の旦那様。
そんな奇妙でいびつな関係から、俺たちは少しだけ前に進んだのかもしれない。
まだ恋人ではない。
まだお互いの本当の気持ちを、言葉にして伝えたわけでもない。
でも、そこには未来とか過去とか、そんなものを超えた揺ぎない確かな絆が、確かに生まれていた。
これから始まる二学期。
文化祭に、修学旅行。たくさんのイベントが俺たちを待っている。
きっと、また色々なことが起こるだろう。
でも、もう怖くはない。
彼女が隣にいてくれるなら、俺はどんな未来だって乗り越えていける。
俺はそんな確信を胸に、新しい学期の最初のページを力強くめくったのだった。
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