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第68話 未来からの伝言、あるいは今の私の言葉
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後夜祭の最後の炎が消え、文化祭の全てが終わった。
クラスメイトたちは三日間の健闘を称え合い、そして名残惜しそうにそれぞれの家路についていく。
俺も雪城さんも、その喧騒の輪から少しだけ離れた場所で、静かにその光景を見つめていた。
「……終わったな」
俺がぽつりと呟くと、隣の彼女もこくりと小さく頷いた。
「はい。最高の文化祭でしたね」
その声には確かな満足感と、そしてほんの少しの寂しさが滲んでいる。
俺も同じ気持ちだった。
この数週間、俺たちは本当に駆け抜けた。
色々なことがあった。
喧嘩もしたし、すれ違いもした。
でも、その全てが今の、この温かい気持ちに繋がっている。
そう思うと、全ての出来事が愛おしく、そしてかけがえのない宝物のように思えた。
「そろそろ、帰ろうか」
俺がそう言って彼女の方を向いた、その時だった。
彼女は俺の顔をじっと見つめていた。
その深い碧色の瞳には、今まで見たことのないような真剣で、そして決意に満ちた強い光が宿っている。
「優斗さん」
彼女が俺の名前を呼んだ。
その声は静かだったけれど、どこまでも真っ直ぐに俺の心に響いてきた。
「私、あなたに伝えなければならないことがあります」
「え……?」
俺は息を呑んだ。
彼女のそのあまりにも真剣な表情に、俺の心臓がドクンと大きく音を立てた。
伝えなければならないこと。
それは一体何だろうか。
俺の脳裏に、夏祭りの夜に彼女が見せたあの悲しい涙が蘇る。
もしかして、あの事故のことだろうか。俺が記憶を失ってしまうという、あの悲しい未来のことだろうか。
俺が固唾をのんで彼女の次の言葉を待っていると、彼女はゆっくりと首を横に振った。
「いいえ。未来のことではありません」
彼女はそう言って、一歩俺に近づいた。
その距離、手を伸ばせば触れられてしまいそうなほど。
そして彼女は俺の目を逸らさずに見つめ返した。
「未来とか、関係なく。今の私が、あなたに伝えたい言葉です」
その前置き。
それだけで、俺はもう全てを悟ってしまった。
彼女が何を言おうとしているのか。
俺の心臓はもはや破裂寸前だった。
彼女は一度深く息を吸い込んだ。
そして、その桜色の唇がゆっくりと開かれる。
「私はずっと、未来のあなたを追いかけていました」
彼女は静かに語り始めた。
「未来のあなたが私にくれた言葉を。未来のあなたが私に見せてくれた優しさを。それをこの時代で再現することだけが、私の全てでした」
「でも、違ったんです」
彼女の瞳が潤んでいく。
「この文化-祭を通して、あなたと一緒に過ごす中で、私は気づきました」
「私が本当に好きなのは、未来の完璧なあなたなんかじゃない」
「今、目の前にいる、不器用でちょっと頼りなくて、でも誰よりも一生懸命で、誰よりも温かい、今のあなたのことが……」
彼女はそこで一度言葉を切った。
そして、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、それでも最高に美しい笑顔で、こう告げた。
「今の私が、優斗さんの隣にいたいです」
それは告白だった。
未来の嫁としてではない。
ただの雪城冬花という、一人の女の子としての魂からの叫び。
未来とか、運命とか、そんなもの全部取っ払った、ありのままの彼女の本当の気持ち。
そのあまりにも純粋で、あまりにも真っ直ぐな愛の言葉。
俺の心は、もう喜びと愛おしさではち切れそうだった。
俺はもう迷わなかった。
俺が彼女に返す言葉も、たった一つしかなかったから。
クラスメイトたちは三日間の健闘を称え合い、そして名残惜しそうにそれぞれの家路についていく。
俺も雪城さんも、その喧騒の輪から少しだけ離れた場所で、静かにその光景を見つめていた。
「……終わったな」
俺がぽつりと呟くと、隣の彼女もこくりと小さく頷いた。
「はい。最高の文化祭でしたね」
その声には確かな満足感と、そしてほんの少しの寂しさが滲んでいる。
俺も同じ気持ちだった。
この数週間、俺たちは本当に駆け抜けた。
色々なことがあった。
喧嘩もしたし、すれ違いもした。
でも、その全てが今の、この温かい気持ちに繋がっている。
そう思うと、全ての出来事が愛おしく、そしてかけがえのない宝物のように思えた。
「そろそろ、帰ろうか」
俺がそう言って彼女の方を向いた、その時だった。
彼女は俺の顔をじっと見つめていた。
その深い碧色の瞳には、今まで見たことのないような真剣で、そして決意に満ちた強い光が宿っている。
「優斗さん」
彼女が俺の名前を呼んだ。
その声は静かだったけれど、どこまでも真っ直ぐに俺の心に響いてきた。
「私、あなたに伝えなければならないことがあります」
「え……?」
俺は息を呑んだ。
彼女のそのあまりにも真剣な表情に、俺の心臓がドクンと大きく音を立てた。
伝えなければならないこと。
それは一体何だろうか。
俺の脳裏に、夏祭りの夜に彼女が見せたあの悲しい涙が蘇る。
もしかして、あの事故のことだろうか。俺が記憶を失ってしまうという、あの悲しい未来のことだろうか。
俺が固唾をのんで彼女の次の言葉を待っていると、彼女はゆっくりと首を横に振った。
「いいえ。未来のことではありません」
彼女はそう言って、一歩俺に近づいた。
その距離、手を伸ばせば触れられてしまいそうなほど。
そして彼女は俺の目を逸らさずに見つめ返した。
「未来とか、関係なく。今の私が、あなたに伝えたい言葉です」
その前置き。
それだけで、俺はもう全てを悟ってしまった。
彼女が何を言おうとしているのか。
俺の心臓はもはや破裂寸前だった。
彼女は一度深く息を吸い込んだ。
そして、その桜色の唇がゆっくりと開かれる。
「私はずっと、未来のあなたを追いかけていました」
彼女は静かに語り始めた。
「未来のあなたが私にくれた言葉を。未来のあなたが私に見せてくれた優しさを。それをこの時代で再現することだけが、私の全てでした」
「でも、違ったんです」
彼女の瞳が潤んでいく。
「この文化-祭を通して、あなたと一緒に過ごす中で、私は気づきました」
「私が本当に好きなのは、未来の完璧なあなたなんかじゃない」
「今、目の前にいる、不器用でちょっと頼りなくて、でも誰よりも一生懸命で、誰よりも温かい、今のあなたのことが……」
彼女はそこで一度言葉を切った。
そして、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、それでも最高に美しい笑顔で、こう告げた。
「今の私が、優斗さんの隣にいたいです」
それは告白だった。
未来の嫁としてではない。
ただの雪城冬花という、一人の女の子としての魂からの叫び。
未来とか、運命とか、そんなもの全部取っ払った、ありのままの彼女の本当の気持ち。
そのあまりにも純粋で、あまりにも真っ直ぐな愛の言葉。
俺の心は、もう喜びと愛おしさではち切れそうだった。
俺はもう迷わなかった。
俺が彼女に返す言葉も、たった一つしかなかったから。
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