隣の席のクールな銀髪美少女、俺にだけデレるどころか未来の嫁だと宣言してきた

夏見ナイ

文字の大きさ
77 / 97

第78話 運命の修正力、あるいは世界の法則

しおりを挟む
星空の下、俺たちは重い真実を共有した。
俺が彼女への愛を失ってしまう未来。その原因となる一つの『事故』。
彼女は、そのあまりにも悲しい運命にたった一人で抗うために、この時代に来た。
俺は彼女が背負ってきたものの、その途方もない重さに改めて胸が締め付けられるのを感じていた。
同時に、燃えるような静かな怒りが心の奥底から湧き上がってくるのを感じていた。
そんな未来、絶対に認めない。
俺たちの幸せを、そんな理不尽な運命に奪わせてなるものか。

「……冬花」
俺は彼女の名前を呼んだ。
「その『事故』って、一体何なんだ? いつ、どこで、何が起きるのか分かってるのか?」
今、俺が知るべきは具体的な情報だった。敵の正体が分からなければ戦いようがない。
俺の真剣な問いに、彼女はこくりと静かに頷いた。
「はい。詳細な日時、場所、状況、全て私の記憶にあります」
「だったら……!」
俺が身を乗り出すと、彼女は静かに俺の言葉を制した。
「ですが、問題はそう単純ではないんです」
彼女の表情が再び険しいものに変わる。
「ただその事故を避ければいいというわけではない。私たちにはもっと厄介な敵がいます」
「敵……?」
俺は眉をひそめた。事故を起こす、誰か特定の犯人のようなものがいるのだろうか。
だが、彼女の口から語られたのは俺の想像を遥かに超える概念だった。

「『運命の修正力』とでも呼ぶべき存在です」

「運命の修正力……?」
聞き慣れない言葉に、俺はオウム返しに尋ねる。
「はい」
彼女はまるで大学の講義でもするかのように、冷静に、そして論理的に説明を始めた。
「この世界、この時間軸は、本来流れるべき歴史のルートを維持しようとする強い力を持っています。一種の自浄作用のようなものと考えてください」
「私が過去であるこの時代に干渉し、あなたが事故に遭うという『確定した未来』を変えようとすればするほど、その修正力は強く働きます」
「……どういうことだ?」
「例えば」
彼女は一つの仮説を口にした。
「事故が起きるはずの交差点をあなたが通らなかったとします。それで安心、ではないんです。運命はあなたを本来の結末へと導くために、別の場所で別の形であなたに災いをもたらそうとする」
「階段から足を踏み外すかもしれない。工事現場の鉄骨が落ちてくるかもしれない。それはもはや偶然ではない。まるで運命そのものがあなたを狙っているかのように、次々と不運があなたを襲うんです」
そのあまりにもSF映画のような話。
だが、彼女の真剣な瞳はそれが紛れもないこの世界の法則なのだと物語っていた。
俺はぞくりと背筋に冷たいものが走るのを感じた。
「……なんだよ、それ。まるで俺たちが世界の敵みたいじゃないか」
俺がそう言うと、彼女は悲しげに微笑んだ。
「ある意味では、そうなのかもしれません。私たちは確定した未来に抗おうとしている異分子なのですから」

俺はハッとして、今までの出来事を思い返した。
文化祭の準備中に俺がペンキの缶を蹴飛ばしてしまった、あの些細なミス。
体育の授業で俺がボールを受け損ねて手首を捻挫してしまった、あの不運。
あれらは本当にただの偶然だったのだろうか。
もしかしたら、それらも全て俺と彼女の絆を引き裂こうとする、この恐るべき『運見の修正力』の仕業だったのでは……。
考えれば考えるほど、俺はその見えない敵の巨大さに身がすくむ思いだった。
「……じゃあ、どうすればいいんだよ。逃げても無駄だっていうなら」
俺の声は少しだけ震えていた。
すると彼女は、俺の手をぎゅっと力強く握りしめた。
その温かい感触に、俺は少しだけ我に返る。

「だから、です」
彼女の瞳に再び強い、強い光が宿った。
「だからただ逃げるだけではダメなんです。私たちの絆の力で、運命そのものをねじ伏せるしかない」
「絆の力……」
「はい。二人の想いがこの世界の法則を覆すほどに強く、強固になった時、初めて私たちは新しい未来を掴むことができる。運命が介入する隙もないほどに完璧な絆を築き上げるんです」
彼女はそう言い切った。
その言葉に、俺はようやく全てのパズルのピースがはまったような気がした。
彼女が今までしてきたこと。
手作りのお弁当も、二人きりの勉強会も、夏祭りのデートも、文化祭での共同作業も。
その全てが、ただの未来の再現なんかじゃなかった。
全てがこの『運命の修正力』に打ち勝つための、俺たちの絆を育むための、彼女なりの必死の戦いだったのだ。

「……そっか」
俺は大きく息を吐いた。
そして握られた彼女の手に、さらに力を込める。
恐怖はまだある。
だが、それ以上に彼女と共に戦えるという喜びが勝っていた。
「……わかった。やろうぜ、冬花」
俺は笑った。
吹っ切れた、心からの笑顔で。
「運命だろうが世界の法則だろうが関係ねえ。俺たちの絆でそんなもん、ぶっ飛ばしてやろうぜ」
俺のそのあまりにも無謀で、あまりにも頼もしい宣言。
それを聞いた彼女の瞳から、また一筋の涙がこぼれ落ちた。
だが、それはもう悲しみの涙ではなかった。
ただひたすらに愛おしくて、そして心強いパートナーを得られたことへの、喜びの涙だった。

「……はい!」

彼女は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、それでも最高に力強く微笑んだ。
夜空の星がまるで俺たち二人を祝福するかのように、ひときわ強く輝いた気がした。
重い、重い真実。
そして、あまりにも巨大な敵。
だが、俺たちの心は不思議なくらい軽かった。
なぜなら、もう一人じゃないから。
二人でならきっと、どんな運命だって乗り越えられる。
俺たちはそんな揺るぎない確信を胸に、夜が明け始めた古都の空を静かに見上げていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景
恋愛
高校三年生の柴代大和は、小学校一年生の頃からの付き合いである秋田泰希の姉である夕希に恋心を抱いていたが、夕希の結婚をきっかけに恋心を諦めていた。 そして小学生の頃の夢を見た日、泰希から大和は夕希の離婚を伝えられ、それと同時にある頼みをされる。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの幼馴染育成計画

みずがめ
恋愛
独身貴族のおっさんが逆行転生してしまった。結婚願望がなかったわけじゃない、むしろ強く思っていた。今度こそ人並みのささやかな夢を叶えるために彼女を作るのだ。 だけど結婚どころか彼女すらできたことのないような日陰ものの自分にそんなことができるのだろうか? 軟派なことをできる自信がない。ならば幼馴染の女の子を作ってそのままゴールインすればいい。という考えのもと始まる元おっさんの幼馴染育成計画。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。 ※【挿絵あり】の話にはいただいたイラストを載せています。表紙はチャーコさんが依頼して、まるぶち銀河さんに描いていただきました。

学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと
恋愛
 主人公の花野明莉は、学園のアイドル 月森三姉妹を崇拝していた。  クールな長女の月森千夜、おっとり系な二女の月森日和、ポジティブ三女の月森華凛。  明莉は遠くからその姿を見守ることが出来れば満足だった。  しかし、その情熱を恋愛感情と捉えられたクラスメイトによって、明莉は月森三姉妹に告白を強いられてしまう。結果フラれて、クラスの居場所すらも失うことに。  そんな絶望に拍車をかけるように、親の再婚により明莉は月森三姉妹と一つ屋根の下で暮らす事になってしまう。義妹としてスタートした新生活は最悪な展開になると思われたが、徐々に明莉は三姉妹との距離を縮めていく。  三姉妹に溺愛されていく共同生活が始まろうとしていた。 ※他サイトでも掲載中です。

処理中です...