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第79話 帰りの新幹線、あるいは繋がれたままの手
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重く、しかし確かな覚悟を共有したあの星空の夜から、修学旅行の残りの二日間は夢のように過ぎていった。
俺たちの間にもう何の迷いも不安もなかった。
あるのはただ、目の前の時間を二人で全力で楽しむという、シンプルで力強い想いだけ。
班別行動でも、俺は常に彼女の隣を歩いた。
陽平や天宮さんたちも、そんな俺たちの様子を何も言わずにただ温かく見守ってくれていた。
夜、旅館の部屋で陽平に「お前ら、なんか夫婦って言うより戦友って感じだな」と茶化された時も、俺はただ笑ってそれを受け流した。
戦友。
悪くない響きだ。
俺たちはこれから運命という巨大な敵と戦う、たった二人の共犯者であり戦友なのだから。
そして楽しかった修学旅行も終わりを告げ、俺たちは帰りの新幹線の中にいた。
行きと同じように、俺の隣には冬花が座っている。
だが、その空気は行きとは全く違うものになっていた。
そこにはもう初々しいぎこちなさはない。
ただ穏やかで満ち足りた静かな時間が流れているだけ。
窓の外を夕日に染まった見慣れた景色が流れていく。
俺は、その景色をぼんやりと眺めていた。
頭の中ではこの三泊四日の出来事が、走馬灯のように駆け巡っている。
楽しかったこと。
嬉しかったこと。
そしてあの夜、彼女が明かしてくれた重い、重い真実。
これから俺たちは本当に運命と戦っていかなければならない。
その途方もない現実の重さを改めて感じていた。
俺は本当に彼女を守りきれるのだろうか。
俺のこのちっぽけな力で、世界の法則に抗うことなんてできるのだろうか。
そんな漠然とした不安が胸の中に黒い染みのように広がっていくのを感じる。
俺は気づかれないように小さく息を吐いた。
その瞬間だった。
俺の膝の上に置かれていた左手に、そっと温かい感触が重なった。
ハッとして隣を見ると、冬花が俺の手の上に自分の白く華奢な手を優しく重ねてきていた。
彼女は前を向いたまま何も言わない。
ただ、その小さな手のひらから静かに、しかし確かに温もりが伝わってくる。
『大丈夫ですよ』
その無言のメッセージ。
彼女は俺の心の迷いを全て見透かしていたのだ。
俺は何も言わずに、重ねられた彼女の手に自分の右手をさらに重ねた。
彼女の少しだけ冷たい指先を、俺の手のひらで包み込むように。
彼女の体がびくりと小さく震えたのが分かった。
そして彼女はゆっくりと、その指を俺の指の間にするりと滑り込ませてくる。
それは球技大会の決勝戦の後の、あの時と同じ。
恋人同士がするような、指と指を絡め合う繋ぎ方。
もうどちらからともなく、自然とそうなっていた。
俺たちは固く、固く手を繋いだ。
その繋がれた手のひらから伝わってくる確かな温もり。
それが俺の心の中に広がっていた黒い不安の染みを、ゆっくりと溶かしていくようだった。
そうだ。
俺は一人じゃない。
俺の隣には彼女がいる。
彼女の隣には俺がいる。
二人でならきっと大丈夫だ。
どんな巨大な敵が待ち受けていようとも。
この手の温もりさえあれば、俺たちはきっと乗り越えていける。
俺たちは結局、終点の駅に着くまで一言も話さなかった。
ただ静かに固く手を繋いだまま、移りゆく景色を眺めていただけ。
だが、その無言の時間がどんな百万の言葉よりも雄弁に、俺たちの覚悟と絆を物語っていた。
重い、重い真実。
それを知って押し黙る俺の手を、彼女が強く握る。
その温もりだけで十分だった。
新幹線がゆっくりとホームに滑り込む。
俺たちの特別な三泊四日は終わりを告げた。
だが、俺たちの本当の戦いはここから始まる。
俺は繋がれたままの彼女の手を、ぎゅっと一度だけ強く握りしめた。
彼女もそれに、応えるように強く、強く握り返してくる。
俺たちは顔を見合わせて、小さく、そして力強く頷き合った。
これから始まる運命との戦い。
その始まりの合図はもう鳴らされていたのだから。
俺たちの間にもう何の迷いも不安もなかった。
あるのはただ、目の前の時間を二人で全力で楽しむという、シンプルで力強い想いだけ。
班別行動でも、俺は常に彼女の隣を歩いた。
陽平や天宮さんたちも、そんな俺たちの様子を何も言わずにただ温かく見守ってくれていた。
夜、旅館の部屋で陽平に「お前ら、なんか夫婦って言うより戦友って感じだな」と茶化された時も、俺はただ笑ってそれを受け流した。
戦友。
悪くない響きだ。
俺たちはこれから運命という巨大な敵と戦う、たった二人の共犯者であり戦友なのだから。
そして楽しかった修学旅行も終わりを告げ、俺たちは帰りの新幹線の中にいた。
行きと同じように、俺の隣には冬花が座っている。
だが、その空気は行きとは全く違うものになっていた。
そこにはもう初々しいぎこちなさはない。
ただ穏やかで満ち足りた静かな時間が流れているだけ。
窓の外を夕日に染まった見慣れた景色が流れていく。
俺は、その景色をぼんやりと眺めていた。
頭の中ではこの三泊四日の出来事が、走馬灯のように駆け巡っている。
楽しかったこと。
嬉しかったこと。
そしてあの夜、彼女が明かしてくれた重い、重い真実。
これから俺たちは本当に運命と戦っていかなければならない。
その途方もない現実の重さを改めて感じていた。
俺は本当に彼女を守りきれるのだろうか。
俺のこのちっぽけな力で、世界の法則に抗うことなんてできるのだろうか。
そんな漠然とした不安が胸の中に黒い染みのように広がっていくのを感じる。
俺は気づかれないように小さく息を吐いた。
その瞬間だった。
俺の膝の上に置かれていた左手に、そっと温かい感触が重なった。
ハッとして隣を見ると、冬花が俺の手の上に自分の白く華奢な手を優しく重ねてきていた。
彼女は前を向いたまま何も言わない。
ただ、その小さな手のひらから静かに、しかし確かに温もりが伝わってくる。
『大丈夫ですよ』
その無言のメッセージ。
彼女は俺の心の迷いを全て見透かしていたのだ。
俺は何も言わずに、重ねられた彼女の手に自分の右手をさらに重ねた。
彼女の少しだけ冷たい指先を、俺の手のひらで包み込むように。
彼女の体がびくりと小さく震えたのが分かった。
そして彼女はゆっくりと、その指を俺の指の間にするりと滑り込ませてくる。
それは球技大会の決勝戦の後の、あの時と同じ。
恋人同士がするような、指と指を絡め合う繋ぎ方。
もうどちらからともなく、自然とそうなっていた。
俺たちは固く、固く手を繋いだ。
その繋がれた手のひらから伝わってくる確かな温もり。
それが俺の心の中に広がっていた黒い不安の染みを、ゆっくりと溶かしていくようだった。
そうだ。
俺は一人じゃない。
俺の隣には彼女がいる。
彼女の隣には俺がいる。
二人でならきっと大丈夫だ。
どんな巨大な敵が待ち受けていようとも。
この手の温もりさえあれば、俺たちはきっと乗り越えていける。
俺たちは結局、終点の駅に着くまで一言も話さなかった。
ただ静かに固く手を繋いだまま、移りゆく景色を眺めていただけ。
だが、その無言の時間がどんな百万の言葉よりも雄弁に、俺たちの覚悟と絆を物語っていた。
重い、重い真実。
それを知って押し黙る俺の手を、彼女が強く握る。
その温もりだけで十分だった。
新幹線がゆっくりとホームに滑り込む。
俺たちの特別な三泊四日は終わりを告げた。
だが、俺たちの本当の戦いはここから始まる。
俺は繋がれたままの彼女の手を、ぎゅっと一度だけ強く握りしめた。
彼女もそれに、応えるように強く、強く握り返してくる。
俺たちは顔を見合わせて、小さく、そして力強く頷き合った。
これから始まる運命との戦い。
その始まりの合図はもう鳴らされていたのだから。
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