スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

文字の大きさ
44 / 75

第44話:リズベットとの進展

しおりを挟む
シルフィとの間に芽生えた淡い感情は、俺の心に温かい光を灯してくれた。だが俺たちの関係がすぐに恋人へと発展することはなかった。俺たちにはそれぞれが果たすべき役割と、共に目指すべき大きな目標があったからだ。
そして俺の周りには、もう一人かけがえのない大切な仲間がいた。

「お頭! ちょっと工房までツラ貸しな!」

ある日の午後、リズベットが工房から顔を出し、いつものように豪快な声で俺を呼んだ。彼女は俺とシルフィの間の微妙な空気の変化など、全く気付いていないようだった。その良くも悪くも裏表のない性格が、俺にとっては救いでもあった。

俺が工房を訪れると、リズベットは「まあ、そこに座ってな」と切り株の椅子を指差した。工房の中は相変わらず鉄の匂いと炉の熱気で満ちている。壁には彼女が打ち上げた見事な武具や農具が、ずらりと並べられていた。
彼女は工房の奥から、長い布に包まれた何かを大切そうに運んできた。

「なんだリズベット。何か新しい発明品でもできたのか?」
俺が尋ねると、彼女はニヤリと笑い布を解いた。
中から現れたのは、俺がいつも使っているあのミスリル製の万能農具だった。だがその姿は、俺が知っているものとは少し違っている。

柄の部分には滑り止めのための精巧な革が巻かれ、刃先との接合部はさらに頑丈に補強されている。そして何より、アタッチメントとして取り付けられていたクワの刃が以前よりも薄く、そして鋭く研ぎ澄まされ、まるで一振りの剣のような洗練されたフォルムへと生まれ変わっていた。

「こいつは……」
「お頭専用、『万能農具・改』だ。いや、もはやただの農具じゃねえな。『ガイアズ・エッジ』とでも名付けようか」
リズベットは誇らしげに言った。
「最近、お頭も領主様として物騒な連中に狙われることが多くなっただろ。畑を耕すだけの道具じゃ、いざという時に心許ねえ。だからアタシの持てる技術のすべてを注ぎ込んで、こいつを打ち直した」

彼女は俺にその『ガイアズ・エッジ』を手渡した。
手に取った瞬間、その違いは明らかだった。
以前よりもさらに軽く、そして重心のバランスは完璧の域に達している。まるで俺の体の一部になったかのように、寸分の狂いもなく手に馴染む。魔力を流し込むと刃の部分が淡い光を帯び、スキルとの親和性が格段に向上しているのが分かった。

「……すごいな、リズベット」
俺は心からの感嘆を込めて言った。「これならどんな硬い大地も耕せるし、どんな敵が来ても薙ぎ払える」
「へっ、だろ?」
リズベットは照れくさそうに鼻をこすった。「こいつにはミスリルだけじゃねえ。第二階層のロック・スコーピオンの甲殻も、第三階層のスライムの粘液も素材として練り込んである。硬さとしなやかさ、そして魔法耐性も、そこらの伝説の剣なんざ目じゃねえぜ」

彼女は俺のために、この武器をずっと作り続けてくれていたのだ。
村の皆のために武具や農具を作るその合間を縫って、ただ一人俺の身を案じ、この一本を鍛え上げてくれていた。
その献身に、俺の胸は熱くなった。

「ありがとう、リズベット。一生大事にする」
俺が真剣な顔で礼を言うと、彼女は「お、おう……」と珍しく少し顔を赤らめて視線を逸らした。
「……別に、お頭のためだけじゃねえよ。アタシは最高の素材で最高の道具を作るのが好きなだけだ。お頭は、その最高の使い手だからな。職人として腕が鳴るのさ」
早口で、ぶっきらぼうにそう言う。

その時、俺は気づいた。
彼女の気持ちもまた、ただの仲間や職人としての敬意だけではないのかもしれない、と。
姉御肌で豪快な彼女は、シルフィのように分かりやすく態度に出すことはない。だがその行動の一つ一つに、仲間を、そして俺を大切に思う不器用で、しかし深い愛情が込められている。

俺はリズベットの肩にぽんと手を置いた。
「それでも、礼を言うよ。リズベット。お前がこの村に来てくれて本当に良かった」
俺の真っ直ぐな言葉に、リズベットは「……うっせえ」とさらに顔を赤くして俯いてしまった。その姿は、いつもの彼女からは想像もつかないほど可愛らしく見えた。

工房の中に、少しだけ気まずいような、でも温かい沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのはリズベットだった。
彼女は何かをごまかすようにガシガシと頭をかくと、急に話題を変えた。

「そ、そうだ! お頭! こいつの切れ味を試すのに、ちょうどいい場所があるぜ!」
「え?」
「第四階層のその先だ! そろそろ新しい階層の扉が開く頃合いなんじゃねえかと思ってな!」

彼女の言葉に、俺はハッとした。
確かに村の発展は第四階層のゲートが出現した頃よりもさらに進んでいる。ダンジョンが新たな進化を遂げていても不思議ではなかった。
新しい武器。そして、新しい冒険。
それは俺たちの間の少し気まずい空気を吹き飛ばすには、十分すぎるほど魅力的な提案だった。

「……よし、行ってみるか!」
俺がそう言うと、リズベットは「待ってました!」と子供のようにはしゃいだ。
その笑顔は、いつもの俺がよく知る太陽のようなリズベットの笑顔だった。

俺とリズベットの関係は、シルフィとのそれとはまた違う形をしていた。
恋愛感情というにはまだ早すぎるかもしれない。
だがそれは戦友としての深い信頼と、家族のような温かい親愛の情に満ちた、かけがえのない絆だった。

シルフィとリズベット。
二人の大切な仲間。
俺は彼女たちと共にこのアルカディアを、そして俺たちの未来を築いていきたい。
俺は新しく生まれ変わった相棒『ガイアズ・エッジ』を握りしめ、来るべき新たな冒険に胸を躍らせていた。
この先に何が待ち受けていようとも、この仲間たちとこの武器があれば何も恐れることはない。
そんな確信が俺の中にはあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.
ファンタジー
平凡な高校生・篠原蓮は、クラスメイトと共に突如異世界へ召喚される。 女神から与えられた使命は「魔王討伐」。 しかし、蓮に与えられたスキルは――《リサイクル》。 戦闘にも回復にも使えない「ゴミスキル」と嘲笑され、勇者候補であるクラスメイトから追放されてしまう。 だが《リサイクル》には、誰も知らない世界の理を覆す秘密が隠されていた……。 獣人、エルフ、精霊など異種族の仲間を集め、蓮は虐げられた者たちと共に逆襲を開始する。

勇者パーティを追放された地味な器用貧乏は、 魔王軍の女騎士とスローライフを送る

ちくわ食べます
ファンタジー
勇者パーティから「地味、英雄譚の汚点」と揶揄され追放された器用貧乏な裏方の僕。 帰る場所もなく死の森を彷徨っていたところ、偶然にも重傷を負った魔王軍四天王で最強の女騎士「黒鉄剣のリューシア」と遭遇する。 敵同士のはずなのに、なぜか彼女を放っておけなくて。治療し、世話をし、一緒に暮らすことになった僕。 これは追放された男と、敗北を重ね居場所を失った女の物語。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

借金まみれの錬金術師、趣味で作ったポーションがダンジョンで飛ぶように売れる~探索者の間で【伝説のエリクサー】として話題に~

わんた
ファンタジー
「今日中に出ていけ! 半年も家賃を滞納してるんだぞ!」 現代日本にダンジョンとスキルが存在する世界。 渋谷で錬金術師として働いていた裕真は、研究に没頭しすぎて店舗の家賃を払えず、ついに追い出されるハメになった。 私物と素材だけが残された彼に残された選択肢は――“現地販売”の行商スタイル! 「マスター、売ればいいんですよ。死にかけの探索者に、定価よりちょっと高めで」 提案したのは、裕真が自作した人工精霊・ユミだ。 家事万能、事務仕事完璧、なのにちょっとだけ辛辣だが、裕真にとっては何物にも代えがたい家族でありパートナーでもある。 裕真はギルドの後ろ盾、そして常識すらないけれど、素材とスキルとユミがいればきっと大丈夫。 錬金術のスキルだけで社会の荒波を乗り切る。 主人公無双×のんびり錬金スローライフ!

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
*読者のみなさま  この作品をお読みいただきありがとうございました。こちらの作品は1月10日12時をもって非公開とさせていただきます。 『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

処理中です...