スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

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第45話:第五階層・星屑の鉱床

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リズベットの提案を受け、俺たちは数日後、万全の準備を整えてダンジョンの最深部を目指していた。
先頭を行くのは鋭い嗅覚で周囲を警戒するフェンリル。その後ろに新兵器『ガイアズ・エッジ』を携えた俺。そして弓を構えるシルフィと、巨大なウォーハンマーを軽々と担ぐリズベットが続く。

第四階層の灼熱洞窟は、もはや俺たちにとって慣れた庭のようだった。時折襲いかかってくるサラマンダーや岩陰に潜む新たなモンスター『フレイムアント』の群れも、俺たちの連携の前では敵ではなかった。
戦闘で得た素材はリズベットの工房とシルフィの研究室をさらに潤していく。俺たちの村は、このダンジョンと共に成長しているのだと改めて実感した。

やがて俺たちは、第四階層の最奥、これまで足を踏み入れたことのないエリアへと到達した。
そこには巨大な溶岩の滝が、轟音と共に流れ落ちていた。その圧倒的な熱量と光景に、俺たちは思わず足を止める。
「この先に道があるとは思えねえな……」
リズベットが汗を拭いながら言う。

だが俺の【神の農園】スキルは、この溶岩の滝の向こう側に何か巨大な空間が存在していることを明確に感知していた。
「いや、道はある」
俺はそう言うとガイアズ・エッジを構え、スキルを発動させた。
「分かれよ、大地の炎」

俺の意思に応え、轟音を立てて流れ落ちていた溶岩の滝が、まるでモーセの奇跡のように中央から左右に分かれていく。
その奥には黒曜石でできた下り階段が姿を現した。
階段の入り口からは、これまでの灼熱の空気とは全く違う、ひんやりと澄み切った空気が静かに流れ出してきていた。

「……お頭、あんた本当に何でもありだな」
リズベットが呆れたような、しかし感心しきった顔で呟いた。
俺たちは顔を見合わせ覚悟を決めると、その新たな階段へと足を踏み入れた。

階段を降りるにつれて熱気は完全に消え去り、代わりに神聖さすら感じるほどの清浄な空気が満ちてくる。
そして長い階段を降りきった俺たちの目の前に、言葉を絶するほど幻想的な光景が広がった。

そこは巨大な、そしてどこまでも静かな洞窟だった。
だがただの洞窟ではない。
壁も天井も床さえも無数の宝石や鉱石が埋め込まれ、それらが内側から放つ柔らかな光で空間全体が満たされていたのだ。
青く輝くサファイア、赤く燃えるルビー、緑に瞬くエメラルド。そして名前も知らない無数の貴石が、まるで夜空に散りばめられた星々のようにキラキラと輝いている。

天井を見上げれば、そこは満天の星空。
足元を見下ろせば、銀河が広がっている。
音という音がなく、ただ鉱石たちが奏でるかすかな共鳴音だけが、聖歌のように響いていた。

「……きれい」
シルフィがうっとりと息を漏らした。エルフである彼女にとってもこれほど幻想的な光景は、生まれて初めて見るものらしかった。「まるで神々が眠る霊廟のようです」

俺もそのあまりの美しさに、しばらく言葉を失っていた。
だが一人だけ、全く違う反応を示している者がいた。
リズベットだ。

彼女は口を半開きにしたまま、呆然と周囲を見渡している。その瞳には美しいものを見た感動ではなく、ありえないものを見てしまったという純粋な驚愕と混乱が浮かんでいた。
「……おいおいおいおい……嘘だろ……?」
その声は震えていた。
彼女はふらふらとした足取りで近くの壁に歩み寄ると、その表面をまるで聖遺物にでも触れるかのようにそっと撫でた。

「この青いのは星屑鋼(スターダストスチール)……。こっちの赤いのは太陽鉱(サンストーン)……。馬鹿な……どっちもドワーフの神話にしか出てこねえ、幻の金属じゃねえか……!」
彼女が指差す鉱石は、シルフィや俺の目にはただ美しい宝石にしか見えない。
だが最高の鍛冶師である彼女の目には、それがどれほど異常で規格外の代物であるかが一目で分かったのだ。
「こんなものが、そこらの石っころみてえに無造作に壁になってるだと……!? この階層、一体どうなってやがるんだ……!」

リズベットの絶叫が、静寂の空間に響き渡る。
俺たちは彼女の言葉に、改めてこの第五階層の異常さを思い知らされた。
ここはただ美しいだけの場所ではない。
文字通り伝説級のお宝で構成された、奇跡の鉱床なのだ。

俺たちはリズベットに促されるまま、さらに奥へと進んでいった。
モンスターの気配は全くない。この神聖な空間には、邪悪な存在は立ち入れないのかもしれない。
やがて洞窟の中心部、ひときわ開けた場所に出た。
そしてその中央に鎮座する『それ』を見て、俺たちは完全に足を止めた。

そこにあったのは、巨大な黄金色の水晶の塊だった。
高さは俺の背丈ほどもある。その内部からは虹色の光が溢れ出し、周囲の宝石たちとは比較にならないほどの圧倒的な魔力を放っている。
その神々しいまでの存在感に、俺たちはただただ圧倒された。

「……まさか……いや、しかし……」
リズベットは、その水晶の塊に吸い寄せられるように近づいていく。彼女は懐から鑑定用のルーペを取り出すと、震える手でその表面を覗き込んだ。
そして数秒の沈黙の後。

「オリハルコンだあああああああっ!」

彼女の絶叫が洞窟全体を揺るがした。
「神々の金属、オリハルコン! しかも不純物が一切ねえ、完全なピュア・オリハルコンじゃねえか! こんなもん、神話の中だけの存在だと思ってた……!」
彼女はもはや歓喜のあまり、その場に膝から崩れ落ちていた。鍛冶師としてこれ以上の宝に出会うことは、生涯ないだろう。

その、涙まで浮かべて感動しているリズベットの横で、俺はふとあることに気づいた。
その巨大なオリハルコンの塊。その根元は鉱脈として岩盤に続いているのではない。
黒々とした肥沃な『土』に、埋まっているのだ。
まるで巨大な野菜のように。

俺はその根元の土にそっと手を触れた。
そして俺の脳裏に、これまでで最も衝撃的な鑑定結果が流れ込んできた。
「……リズベット」
俺はまだ興奮冷めやらぬ彼女に、静かに声をかけた。
「こいつ、鉱石じゃないかもしれない」

「はあ? 何言ってんだいお頭! これが鉱石じゃなくて何だっていう……」
俺は鑑定結果をそのまま口にした。

「こいつの名前は、『オリハルコン芋』だそうだ」
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