スキル【土いじり】でパーティを追放された俺、開墾した畑からダンジョンが生えてきた。

夏見ナイ

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第44話:リズベットとの進展

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シルフィとの間に芽生えた淡い感情は、俺の心に温かい光を灯してくれた。だが俺たちの関係がすぐに恋人へと発展することはなかった。俺たちにはそれぞれが果たすべき役割と、共に目指すべき大きな目標があったからだ。
そして俺の周りには、もう一人かけがえのない大切な仲間がいた。

「お頭! ちょっと工房までツラ貸しな!」

ある日の午後、リズベットが工房から顔を出し、いつものように豪快な声で俺を呼んだ。彼女は俺とシルフィの間の微妙な空気の変化など、全く気付いていないようだった。その良くも悪くも裏表のない性格が、俺にとっては救いでもあった。

俺が工房を訪れると、リズベットは「まあ、そこに座ってな」と切り株の椅子を指差した。工房の中は相変わらず鉄の匂いと炉の熱気で満ちている。壁には彼女が打ち上げた見事な武具や農具が、ずらりと並べられていた。
彼女は工房の奥から、長い布に包まれた何かを大切そうに運んできた。

「なんだリズベット。何か新しい発明品でもできたのか?」
俺が尋ねると、彼女はニヤリと笑い布を解いた。
中から現れたのは、俺がいつも使っているあのミスリル製の万能農具だった。だがその姿は、俺が知っているものとは少し違っている。

柄の部分には滑り止めのための精巧な革が巻かれ、刃先との接合部はさらに頑丈に補強されている。そして何より、アタッチメントとして取り付けられていたクワの刃が以前よりも薄く、そして鋭く研ぎ澄まされ、まるで一振りの剣のような洗練されたフォルムへと生まれ変わっていた。

「こいつは……」
「お頭専用、『万能農具・改』だ。いや、もはやただの農具じゃねえな。『ガイアズ・エッジ』とでも名付けようか」
リズベットは誇らしげに言った。
「最近、お頭も領主様として物騒な連中に狙われることが多くなっただろ。畑を耕すだけの道具じゃ、いざという時に心許ねえ。だからアタシの持てる技術のすべてを注ぎ込んで、こいつを打ち直した」

彼女は俺にその『ガイアズ・エッジ』を手渡した。
手に取った瞬間、その違いは明らかだった。
以前よりもさらに軽く、そして重心のバランスは完璧の域に達している。まるで俺の体の一部になったかのように、寸分の狂いもなく手に馴染む。魔力を流し込むと刃の部分が淡い光を帯び、スキルとの親和性が格段に向上しているのが分かった。

「……すごいな、リズベット」
俺は心からの感嘆を込めて言った。「これならどんな硬い大地も耕せるし、どんな敵が来ても薙ぎ払える」
「へっ、だろ?」
リズベットは照れくさそうに鼻をこすった。「こいつにはミスリルだけじゃねえ。第二階層のロック・スコーピオンの甲殻も、第三階層のスライムの粘液も素材として練り込んである。硬さとしなやかさ、そして魔法耐性も、そこらの伝説の剣なんざ目じゃねえぜ」

彼女は俺のために、この武器をずっと作り続けてくれていたのだ。
村の皆のために武具や農具を作るその合間を縫って、ただ一人俺の身を案じ、この一本を鍛え上げてくれていた。
その献身に、俺の胸は熱くなった。

「ありがとう、リズベット。一生大事にする」
俺が真剣な顔で礼を言うと、彼女は「お、おう……」と珍しく少し顔を赤らめて視線を逸らした。
「……別に、お頭のためだけじゃねえよ。アタシは最高の素材で最高の道具を作るのが好きなだけだ。お頭は、その最高の使い手だからな。職人として腕が鳴るのさ」
早口で、ぶっきらぼうにそう言う。

その時、俺は気づいた。
彼女の気持ちもまた、ただの仲間や職人としての敬意だけではないのかもしれない、と。
姉御肌で豪快な彼女は、シルフィのように分かりやすく態度に出すことはない。だがその行動の一つ一つに、仲間を、そして俺を大切に思う不器用で、しかし深い愛情が込められている。

俺はリズベットの肩にぽんと手を置いた。
「それでも、礼を言うよ。リズベット。お前がこの村に来てくれて本当に良かった」
俺の真っ直ぐな言葉に、リズベットは「……うっせえ」とさらに顔を赤くして俯いてしまった。その姿は、いつもの彼女からは想像もつかないほど可愛らしく見えた。

工房の中に、少しだけ気まずいような、でも温かい沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのはリズベットだった。
彼女は何かをごまかすようにガシガシと頭をかくと、急に話題を変えた。

「そ、そうだ! お頭! こいつの切れ味を試すのに、ちょうどいい場所があるぜ!」
「え?」
「第四階層のその先だ! そろそろ新しい階層の扉が開く頃合いなんじゃねえかと思ってな!」

彼女の言葉に、俺はハッとした。
確かに村の発展は第四階層のゲートが出現した頃よりもさらに進んでいる。ダンジョンが新たな進化を遂げていても不思議ではなかった。
新しい武器。そして、新しい冒険。
それは俺たちの間の少し気まずい空気を吹き飛ばすには、十分すぎるほど魅力的な提案だった。

「……よし、行ってみるか!」
俺がそう言うと、リズベットは「待ってました!」と子供のようにはしゃいだ。
その笑顔は、いつもの俺がよく知る太陽のようなリズベットの笑顔だった。

俺とリズベットの関係は、シルフィとのそれとはまた違う形をしていた。
恋愛感情というにはまだ早すぎるかもしれない。
だがそれは戦友としての深い信頼と、家族のような温かい親愛の情に満ちた、かけがえのない絆だった。

シルフィとリズベット。
二人の大切な仲間。
俺は彼女たちと共にこのアルカディアを、そして俺たちの未来を築いていきたい。
俺は新しく生まれ変わった相棒『ガイアズ・エッジ』を握りしめ、来るべき新たな冒険に胸を躍らせていた。
この先に何が待ち受けていようとも、この仲間たちとこの武器があれば何も恐れることはない。
そんな確信が俺の中にはあった。
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