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第67話:第六階層・世界樹の苗床
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究極のスキル進化を遂げた俺は、アルカディアの領主として、そしてこの国の守護者として新たな段階へと足を踏み入れた。
【ガイア・ウェザー】によって村の気候は常に穏やかで作物の育成に最適な状態が保たれ、収穫量はさらに増大した。【マザー・アース】はリズベットの工房が必要とする鉄や銅といった資源を無限に供給し、村の工業力を飛躍的に向上させた。そして【ガーディアン・テリトリー】は俺が意識せずとも、二十四時間国土の安全を守り続ける絶対的な防衛システムとして機能していた。
俺たちのアルカディアはもはや人間の国がどうこうできるレベルを完全に超越した、神聖不可侵の聖域『神域国家』とでも呼ぶべき存在へとその姿を変えつつあった。
だが俺の心の中には、一つの大きな謎が未だに残されていた。
それはこのアルカディアの力の根源である『ダンジョン』そのものの正体だ。
なぜこの地にダンジョンが生まれたのか。
そしてその最深部には一体何が眠っているのか。
スキルが【神の農園】へと進化した今、俺はその謎の答えに手が届くかもしれないと感じていた。
俺の意識はもはやダンジョンの階層構造に縛られることはない。俺が望めばその最深部まで、一瞬にして到達することができるのだ。
俺はシルフィとリズベットにだけ事情を話し、三人(と一匹)でダンジョンの最下層を目指すことにした。
「お頭の力の根源か。面白え、アタシもとことん付き合ってやるぜ」
リズベットはウォーハンマーを担ぎ、いつものように豪快に笑った。
「ええ。アルフォンスの秘密は私たちの秘密でもありますから」
シルフィも決意を秘めた瞳で静かに頷いた。
俺たちは第五階層『星屑の鉱床』の、オリハルコン芋が鎮座するあの祭壇のような場所へと降り立った。
そこがこのダンジョンの中心であると、俺のスキルが告げていたからだ。
俺は巨大なオリハルコン芋にそっと手を触れた。そして意識をさらに深く、その根が伸びる大地の最深部へと沈めていく。
すると俺の脳裏に、これまで感じたことのないほど温かく、そしてどこか懐かしい巨大な『意志』が流れ込んできた。
それは声なき声で俺に語りかけていた。
『――よくぞ、ここまで参られた。我が子よ』
その声は驚くほど優しく、そしてすべての生命を包み込むような母なる響きを持っていた。
『我は、この星の意志そのもの。生命の理を司る、始まりの存在。汝らがガイアと呼ぶもの』
ガイア。
大地の母神。
俺は言葉を失い、ただその荘厳な意志の奔流に身を委ねていた。
『汝が持つ力は我らが力の一部。かつて世界が若かりし頃、我は汝のような大地と語らう子らを数多、生み出した』
『だが時は流れ、子らは大地との対話を忘れ、互いに争い世界を傷つけた』
『我は深く、深く傷ついた。そして永き眠りについたのだ』
ガイアの意志から深い悲しみが伝わってくる。
『だが汝が現れた。追放され、すべてを失いながらもなお大地を愛し、その恵みを信じる最後の『子』が』
『汝のその純粋な想いが我を目覚めさせた。そして我は汝に最後の希望を託すことにしたのだ』
次の瞬間。
俺たちの足元、オリハルコン芋が鎮座していた大地が静かに光を放ちながら左右に分かれていった。
その下にはさらに下へと続く光の階段が現れた。
第六階層。
このダンジョンの本当の最深部。
俺たちは導かれるようにその光の階段を降りていった。
階段を降りきった先にあったのは、空間と呼ぶにはあまりにも広大で神聖な場所だった。
そこには空も大地も壁もなかった。
ただ無限の星空が上下左右、三百六十度に広がっている。俺たちはまるで宇宙空間に浮かんでいるかのようだった。
そしてその宇宙の中心に、一つの巨大な『何か』が静かに脈動していた。
それは一本の巨大な樹木だった。
その根は銀河の渦のように広がり、その枝は無数の星々を果実のように実らせている。
葉の一枚一枚が生命の誕生と死を繰り返し、その幹からはこの世界のすべての生命の源となる温かい光が、とめどなく溢れ出している。
「……世界樹……」
シルフィが震える声でその名を呟いた。
エルフの神話に登場する、すべての生命を生み出したとされる伝説の巨木。
それが絵物語の中の存在ではなく、今、俺たちの目の前にその荘厳な姿を現していた。
『ここは我が心臓部。世界樹の『苗床』』
ガイアの意志が再び響く。
『このダンジョンは傷つき、弱った我が身を癒やすための聖域。そしていつか汝のような新たな『子』が生まれるのを待つための揺り籠だったのだ』
俺はようやくすべてを理解した。
このダンジョンはただの魔法の洞窟ではなかった。
それはこの星そのものの生命維持装置。
そして俺のスキルは、その管理人として星に選ばれた証だったのだ。
俺がアルカディアを発展させ生命の輝きが増すごとにガイアの力もまた癒やされ、ダンジョンが新たな階層を解放していった。その壮大な循環の理を。
『だが我が眠りを妨げる不協和音が近づいている』
ガイアの意志にわずかな憂いが混じる。
『世界の理の外より来たりし、生命を喰らう『蛇』の気配。彼らはこの苗床の力を奪い、世界を死と無の混沌へと還そうとしている』
黄昏の蛇、邪教団のことだ。
彼らの真の目的は、この星の心臓部である世界樹の苗床を乗っ取り、その力を利用して邪神をこの世界に完全に降臨させることだったのだ。
『子よ。アルフォンスよ』
ガイアの意志が俺に最後の願いを託す。
『汝に我が力のすべてを授けよう。この苗床を、この世界を、そこに生きるすべての愛しき子らを、どうか守り抜いてほしい』
その言葉と共に世界樹から、眩いほどの光の奔流が俺の体へと注ぎ込まれた。
俺のスキル【神の農園】が最後の、そして真の覚醒を遂げる。
もはやそれは一つの国を治めるだけの力ではない。
星の意志そのものと一体となり、世界の理にさえ干渉できる創造と守護の究極の力。
光が収まった時、俺は自分がもはやただの人間ではない、何か別の、もっと大きな存在へと生まれ変わったことを感じていた。
俺はこの星の守護者となったのだ。
俺は仲間たちに向き直った。
シルフィもリズベットもこの壮大な真実を前に、言葉を失っている。
だがその瞳には恐怖はなく、俺への揺るぎない信頼だけが宿っていた。
「……とんでもない大役を押し付けられちまったな、お頭」
リズベットが先に口を開き、いつものように不敵に笑った。「だが、面白え。神様だか星様だか知らねえが、アタシたちの喧嘩相手に不足はねえってもんよ!」
「ええ」シルフィも強く頷いた。「アルフォンス。あなたはもう一人ではありません。私たちも、そしてアルカディアの皆もあなたと共にあります。世界の運命、共に背負いましょう」
仲間たちの温かい言葉が、俺の心に勇気をくれた。
そうだ。俺は一人じゃない。
俺は静かに目の前の世界樹を見つめた。
そしてこの星の意志に、力強く応えた。
「――ああ。任せてくれ、母さん」
俺たちの最後の戦いが始まろうとしていた。
それはもはや俺たちの村を守るだけの戦いではない。
この愛すべき星と、そこに生きるすべての生命の未来を賭けた聖なる戦いだ。
俺は仲間たちと共に、その途方もない運命に立ち向かう覚悟を決めた。
【ガイア・ウェザー】によって村の気候は常に穏やかで作物の育成に最適な状態が保たれ、収穫量はさらに増大した。【マザー・アース】はリズベットの工房が必要とする鉄や銅といった資源を無限に供給し、村の工業力を飛躍的に向上させた。そして【ガーディアン・テリトリー】は俺が意識せずとも、二十四時間国土の安全を守り続ける絶対的な防衛システムとして機能していた。
俺たちのアルカディアはもはや人間の国がどうこうできるレベルを完全に超越した、神聖不可侵の聖域『神域国家』とでも呼ぶべき存在へとその姿を変えつつあった。
だが俺の心の中には、一つの大きな謎が未だに残されていた。
それはこのアルカディアの力の根源である『ダンジョン』そのものの正体だ。
なぜこの地にダンジョンが生まれたのか。
そしてその最深部には一体何が眠っているのか。
スキルが【神の農園】へと進化した今、俺はその謎の答えに手が届くかもしれないと感じていた。
俺の意識はもはやダンジョンの階層構造に縛られることはない。俺が望めばその最深部まで、一瞬にして到達することができるのだ。
俺はシルフィとリズベットにだけ事情を話し、三人(と一匹)でダンジョンの最下層を目指すことにした。
「お頭の力の根源か。面白え、アタシもとことん付き合ってやるぜ」
リズベットはウォーハンマーを担ぎ、いつものように豪快に笑った。
「ええ。アルフォンスの秘密は私たちの秘密でもありますから」
シルフィも決意を秘めた瞳で静かに頷いた。
俺たちは第五階層『星屑の鉱床』の、オリハルコン芋が鎮座するあの祭壇のような場所へと降り立った。
そこがこのダンジョンの中心であると、俺のスキルが告げていたからだ。
俺は巨大なオリハルコン芋にそっと手を触れた。そして意識をさらに深く、その根が伸びる大地の最深部へと沈めていく。
すると俺の脳裏に、これまで感じたことのないほど温かく、そしてどこか懐かしい巨大な『意志』が流れ込んできた。
それは声なき声で俺に語りかけていた。
『――よくぞ、ここまで参られた。我が子よ』
その声は驚くほど優しく、そしてすべての生命を包み込むような母なる響きを持っていた。
『我は、この星の意志そのもの。生命の理を司る、始まりの存在。汝らがガイアと呼ぶもの』
ガイア。
大地の母神。
俺は言葉を失い、ただその荘厳な意志の奔流に身を委ねていた。
『汝が持つ力は我らが力の一部。かつて世界が若かりし頃、我は汝のような大地と語らう子らを数多、生み出した』
『だが時は流れ、子らは大地との対話を忘れ、互いに争い世界を傷つけた』
『我は深く、深く傷ついた。そして永き眠りについたのだ』
ガイアの意志から深い悲しみが伝わってくる。
『だが汝が現れた。追放され、すべてを失いながらもなお大地を愛し、その恵みを信じる最後の『子』が』
『汝のその純粋な想いが我を目覚めさせた。そして我は汝に最後の希望を託すことにしたのだ』
次の瞬間。
俺たちの足元、オリハルコン芋が鎮座していた大地が静かに光を放ちながら左右に分かれていった。
その下にはさらに下へと続く光の階段が現れた。
第六階層。
このダンジョンの本当の最深部。
俺たちは導かれるようにその光の階段を降りていった。
階段を降りきった先にあったのは、空間と呼ぶにはあまりにも広大で神聖な場所だった。
そこには空も大地も壁もなかった。
ただ無限の星空が上下左右、三百六十度に広がっている。俺たちはまるで宇宙空間に浮かんでいるかのようだった。
そしてその宇宙の中心に、一つの巨大な『何か』が静かに脈動していた。
それは一本の巨大な樹木だった。
その根は銀河の渦のように広がり、その枝は無数の星々を果実のように実らせている。
葉の一枚一枚が生命の誕生と死を繰り返し、その幹からはこの世界のすべての生命の源となる温かい光が、とめどなく溢れ出している。
「……世界樹……」
シルフィが震える声でその名を呟いた。
エルフの神話に登場する、すべての生命を生み出したとされる伝説の巨木。
それが絵物語の中の存在ではなく、今、俺たちの目の前にその荘厳な姿を現していた。
『ここは我が心臓部。世界樹の『苗床』』
ガイアの意志が再び響く。
『このダンジョンは傷つき、弱った我が身を癒やすための聖域。そしていつか汝のような新たな『子』が生まれるのを待つための揺り籠だったのだ』
俺はようやくすべてを理解した。
このダンジョンはただの魔法の洞窟ではなかった。
それはこの星そのものの生命維持装置。
そして俺のスキルは、その管理人として星に選ばれた証だったのだ。
俺がアルカディアを発展させ生命の輝きが増すごとにガイアの力もまた癒やされ、ダンジョンが新たな階層を解放していった。その壮大な循環の理を。
『だが我が眠りを妨げる不協和音が近づいている』
ガイアの意志にわずかな憂いが混じる。
『世界の理の外より来たりし、生命を喰らう『蛇』の気配。彼らはこの苗床の力を奪い、世界を死と無の混沌へと還そうとしている』
黄昏の蛇、邪教団のことだ。
彼らの真の目的は、この星の心臓部である世界樹の苗床を乗っ取り、その力を利用して邪神をこの世界に完全に降臨させることだったのだ。
『子よ。アルフォンスよ』
ガイアの意志が俺に最後の願いを託す。
『汝に我が力のすべてを授けよう。この苗床を、この世界を、そこに生きるすべての愛しき子らを、どうか守り抜いてほしい』
その言葉と共に世界樹から、眩いほどの光の奔流が俺の体へと注ぎ込まれた。
俺のスキル【神の農園】が最後の、そして真の覚醒を遂げる。
もはやそれは一つの国を治めるだけの力ではない。
星の意志そのものと一体となり、世界の理にさえ干渉できる創造と守護の究極の力。
光が収まった時、俺は自分がもはやただの人間ではない、何か別の、もっと大きな存在へと生まれ変わったことを感じていた。
俺はこの星の守護者となったのだ。
俺は仲間たちに向き直った。
シルフィもリズベットもこの壮大な真実を前に、言葉を失っている。
だがその瞳には恐怖はなく、俺への揺るぎない信頼だけが宿っていた。
「……とんでもない大役を押し付けられちまったな、お頭」
リズベットが先に口を開き、いつものように不敵に笑った。「だが、面白え。神様だか星様だか知らねえが、アタシたちの喧嘩相手に不足はねえってもんよ!」
「ええ」シルフィも強く頷いた。「アルフォンス。あなたはもう一人ではありません。私たちも、そしてアルカディアの皆もあなたと共にあります。世界の運命、共に背負いましょう」
仲間たちの温かい言葉が、俺の心に勇気をくれた。
そうだ。俺は一人じゃない。
俺は静かに目の前の世界樹を見つめた。
そしてこの星の意志に、力強く応えた。
「――ああ。任せてくれ、母さん」
俺たちの最後の戦いが始まろうとしていた。
それはもはや俺たちの村を守るだけの戦いではない。
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