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第94話 因縁の場所へ
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夜明けと共に、【黎明の翼】を主軸とした討伐部隊はアークライトの民衆から万雷の歓声に見送られ出陣した。その隊列はさながら一つの軍隊のようだった。先頭を行くのは白銀の鎧を纏った【鋼の獅子】。その後方に軽やかな足取りの【月光の舞姫】と、魔力を秘めたローブ姿の【アカシック・アイ】が続く。そして、その全てを統率するかのように隊列の中央にはSランクの紋章を誇らしげに掲げた【黎明の翼】の三人がいた。
彼らが目指すは北方の《奈落の口》。
アレンにとっては悪夢の始まりとなった因縁の場所。
彼は揺れる馬上で、かつて一人で絶望の中を歩いた道のりを、今は頼もしい仲間たちと共に進んでいるという事実に不思議な感慨を覚えていた。
数日間の行軍の末、討伐部隊はついに《奈落の口》の前に到着した。
大地が大きく裂けた巨大な傷跡。そこから吹き出す冷気は以前よりもさらに冷たく、そして邪悪なものになっているように感じられた。ダンジョン全体が最深部に眠る災厄竜の気配に共鳴し、その魔性を増しているのだ。
「……ここが」
初めてこの場所を訪れたソフィアが、ごくりと喉を鳴らした。
「まるで地獄への入り口だな」
「ああ。そして俺にとっては、地獄から這い上がってきた始まりの場所でもある」
アレンは静かにそう答えた。その瞳にもはや過去への憎しみや恐れはない。ただ、これから成し遂げるべき使命を見据える強い光があるだけだった。
「これよりダンジョン攻略を開始する!」
アレンのSランクパーティリーダーとしての力強い号令が響き渡った。
「支援部隊は予定通りモンスターの掃討とルート確保を! 我々突入部隊は最短ルートで最深部を目指す! 各自、油断なく進め!」
「「「応!!」」」
冒険者たちの雄々しい鬨の声が谷間にこだました。
作戦は完璧に進んだ。
ゴードン率いる【鋼の獅子】が重厚な盾で道を切り開き、シルフィとルナの【月光の舞姫】がその左右を固めて奇襲を警戒する。ゼノンの【アカシック・アイ】は強力な広範囲魔法で、行く手を阻むモンスターの群れを一掃していく。
彼らAランクパーティは、アレンという絶対的な指揮官を得たことで以前とは比較にならないほどの完璧な連携を見せていた。
そして【黎明の翼】は、その支援部隊が切り開いた安全な道を一直線に最深部へと向かって突き進んでいった。
かつてアレンが一人で命からがら逃げ出した通路。
ゴブリンに怯え、オークに殺されかけた場所。
その全てを彼は今、大陸最強の仲間たちと共に王者の行進のように駆け抜けていく。
中層エリア。
かつて【熾天の剣】がミノタウロスの群れに敗走したあの広間。
そこに今は一体のモンスターもいなかった。支援部隊がすでに掃討を終えた後だった。
だがその場所にはまだ生々しい戦闘の痕跡と、そしてリリアが落としていったのであろう小さな聖印が一つだけ転がっていた。
アレンはその聖印を一瞥しただけで、何も言わずに通り過ぎた。
過去はもう振り返らない。
彼らはほとんど休息を取ることなくダンジョンを駆け下りた。
そしてついに、あの禍々しい竜のレリーフが刻まれた最深部へと続く黒曜石の扉の前にたどり着いた。
扉は半開きのままだった。【熾天の剣】のメンバーが最後に開けた、そのままで。
扉の隙間からは凄まじい熱気と硫黄の匂い、そして眠れる竜の巨大な寝息のような地響きが伝わってくる。
「……この先にいるんだな。世界の終わりが」
ソフィアが汗の滲む手でミスリルの剣を握りしめた。
カイはすでに暗殺装束のフードを目深にかぶり、その気配を完全に消している。
アレンは二人の仲間、そして自分自身に最後の確認をするように静かに言った。
「……準備はいいか?」
二人は力強く頷いた。
アレンは深く息を吸い込んだ。
かつて自分はここで無能としてゴミのように捨てられた。
仲間だと思っていた者たちに裏切られ、一人この暗闇の中を彷徨った。
だが今は違う。
自分の隣には命を預けられる最高の仲間がいる。
自分の背後には自分を信じてくれる多くの人々がいる。
そして自分の手には、この世界を、未来を守るための力がある。
(見ていてくれ、かつての俺)
彼は心の中で過去の弱い自分に語りかけた。
(お前が絶望したこの場所で。俺は世界を懸けた戦いに今、挑む)
彼は重い黒曜石の扉にそっと手をかけた。
そして仲間たちと共に、その扉をゆっくりと押し開けた。
因縁の場所へ。
世界を救うための最後の戦いの舞台へ。
英雄たちの最後の戦いが今、始まろうとしていた。
扉の向こうに広がる灼熱の地獄と、そこに眠る古の災厄竜。
そのあまりにも巨大な絶望を前にして、彼らの心は不思議なほど静かに燃え上がっていた。
彼らが目指すは北方の《奈落の口》。
アレンにとっては悪夢の始まりとなった因縁の場所。
彼は揺れる馬上で、かつて一人で絶望の中を歩いた道のりを、今は頼もしい仲間たちと共に進んでいるという事実に不思議な感慨を覚えていた。
数日間の行軍の末、討伐部隊はついに《奈落の口》の前に到着した。
大地が大きく裂けた巨大な傷跡。そこから吹き出す冷気は以前よりもさらに冷たく、そして邪悪なものになっているように感じられた。ダンジョン全体が最深部に眠る災厄竜の気配に共鳴し、その魔性を増しているのだ。
「……ここが」
初めてこの場所を訪れたソフィアが、ごくりと喉を鳴らした。
「まるで地獄への入り口だな」
「ああ。そして俺にとっては、地獄から這い上がってきた始まりの場所でもある」
アレンは静かにそう答えた。その瞳にもはや過去への憎しみや恐れはない。ただ、これから成し遂げるべき使命を見据える強い光があるだけだった。
「これよりダンジョン攻略を開始する!」
アレンのSランクパーティリーダーとしての力強い号令が響き渡った。
「支援部隊は予定通りモンスターの掃討とルート確保を! 我々突入部隊は最短ルートで最深部を目指す! 各自、油断なく進め!」
「「「応!!」」」
冒険者たちの雄々しい鬨の声が谷間にこだました。
作戦は完璧に進んだ。
ゴードン率いる【鋼の獅子】が重厚な盾で道を切り開き、シルフィとルナの【月光の舞姫】がその左右を固めて奇襲を警戒する。ゼノンの【アカシック・アイ】は強力な広範囲魔法で、行く手を阻むモンスターの群れを一掃していく。
彼らAランクパーティは、アレンという絶対的な指揮官を得たことで以前とは比較にならないほどの完璧な連携を見せていた。
そして【黎明の翼】は、その支援部隊が切り開いた安全な道を一直線に最深部へと向かって突き進んでいった。
かつてアレンが一人で命からがら逃げ出した通路。
ゴブリンに怯え、オークに殺されかけた場所。
その全てを彼は今、大陸最強の仲間たちと共に王者の行進のように駆け抜けていく。
中層エリア。
かつて【熾天の剣】がミノタウロスの群れに敗走したあの広間。
そこに今は一体のモンスターもいなかった。支援部隊がすでに掃討を終えた後だった。
だがその場所にはまだ生々しい戦闘の痕跡と、そしてリリアが落としていったのであろう小さな聖印が一つだけ転がっていた。
アレンはその聖印を一瞥しただけで、何も言わずに通り過ぎた。
過去はもう振り返らない。
彼らはほとんど休息を取ることなくダンジョンを駆け下りた。
そしてついに、あの禍々しい竜のレリーフが刻まれた最深部へと続く黒曜石の扉の前にたどり着いた。
扉は半開きのままだった。【熾天の剣】のメンバーが最後に開けた、そのままで。
扉の隙間からは凄まじい熱気と硫黄の匂い、そして眠れる竜の巨大な寝息のような地響きが伝わってくる。
「……この先にいるんだな。世界の終わりが」
ソフィアが汗の滲む手でミスリルの剣を握りしめた。
カイはすでに暗殺装束のフードを目深にかぶり、その気配を完全に消している。
アレンは二人の仲間、そして自分自身に最後の確認をするように静かに言った。
「……準備はいいか?」
二人は力強く頷いた。
アレンは深く息を吸い込んだ。
かつて自分はここで無能としてゴミのように捨てられた。
仲間だと思っていた者たちに裏切られ、一人この暗闇の中を彷徨った。
だが今は違う。
自分の隣には命を預けられる最高の仲間がいる。
自分の背後には自分を信じてくれる多くの人々がいる。
そして自分の手には、この世界を、未来を守るための力がある。
(見ていてくれ、かつての俺)
彼は心の中で過去の弱い自分に語りかけた。
(お前が絶望したこの場所で。俺は世界を懸けた戦いに今、挑む)
彼は重い黒曜石の扉にそっと手をかけた。
そして仲間たちと共に、その扉をゆっくりと押し開けた。
因縁の場所へ。
世界を救うための最後の戦いの舞台へ。
英雄たちの最後の戦いが今、始まろうとしていた。
扉の向こうに広がる灼熱の地獄と、そこに眠る古の災厄竜。
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