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第19話
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エリアーナとの帝都散策は、大和が想像していたよりもずっと穏やかなものだった。
彼女は、道端で売られている奇妙な串焼きに興味を示したり、大道芸人のパフォーマンスに目を輝かせたりと、皇女という立場を忘れさせるほど無邪気だった。その姿は、歳の離れた妹を見ているようで、大和の心も自然と和んでいく。
「ヤマト様は、どんなものがお好きなのですか?」
「俺ですか? うーん……強いて言えば、静かな場所で星を見ること、ですかね」
「星……。素敵ですわ」
エリアーナはうっとりと呟き、大和の横顔を盗み見る。彼にとっては当たり前の趣味が、彼女にはロマンチックな響きに聞こえているようだ。
そんな微笑ましいやり取りをしながら、二人は帝都で最も賑わう中央広場へとやってきた。
広場の中央には巨大な噴水があり、その周りには多くの人々が憩いを求めて集まっている。広場を囲むように立ち並ぶ高層ビルの壁面には、立体映像の巨大な広告塔がいくつも設置され、目まぐるしく映像を切り替えていた。
「わぁ……綺麗ですわ」
最新の宝飾品を宣伝する、きらびやかな立体映像に見入るエリアーナ。
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……!
不気味な低い振動音と共に、二人が見上げていた巨大な広告塔の根本から、火花が散った。固定していたアームの一部が、何らかの経年劣化か整備不良で破損したらしい。
「きゃっ!?」
「危ない!」
広場にいた人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
数十トンはあろうかという巨大な広告塔が、ゆっくりと、しかし確実に、真下で立ち尽くすエリアーナの頭上へと傾き始めたのだ。
「エリアーナ様!」
護衛として少し離れた場所で控えていたゼノが、血相を変えて駆け寄ろうとする。だが、間に合わない。広告塔が落下する方が、遥かに早い。
エリアーナは、迫りくる鉄の塊を前に、恐怖で足がすくんで動けなくなっていた。
絶体絶命。誰もがそう思った、その瞬間。
すっ、と一つの影が彼女の前に滑り込んだ。
大和だった。
彼は、落ちてくる広告塔を冷静に見上げると、右腕をスッと天にかざした。
「っと」
ドンッッ!!
地響きのような、鈍く重い衝撃音。
しかし、想像されていたような破壊と悲鳴は起こらなかった。
巨大な広告塔は、その落下をピタリと止めていた。
まるで、見えない壁にでも阻まれたかのように。
いや、違う。
広告塔の先端を、大和が、たった片手で、軽々と受け止めていたのだ。
「…………え?」
広場にいた全ての人間が、時が止まったかのように動きを止めた。
数十トンの鉄塊を、片手で。
涼しい顔で。
大和は、広告塔を支えたまま、振り返ってエリアーナに微笑みかけた。
「大丈夫ですか、エリアーナ様。怪我はありませんか?」
彼の足元の石畳は、その絶大な質量を受け止めた衝撃で、クレーターのように粉々に砕け散っている。しかし、大和自身は息一つ乱していない。
エリアーナは、目の前の光景が信じられなかった。
自分を守るために、身を挺して天を支える、その背中。
それは、どんな英雄譚に語られる伝説の勇者よりも、力強く、そして頼もしく見えた。
「……はい。だ、大丈夫、です」
かろうじてそれだけを答えるのが、彼女の精一杯だった。
胸の高鳴りが、恐怖によるものなのか、それとも別の何かなのか、彼女自身にももう分からなかった。
大和は、周囲の安全を確認すると、支えていた広告塔を「よいしょ」という掛け声と共に、ゆっくりと、元のあったビルの壁にそっと立てかけたのだった。
その神話のような光景は、帝都の民衆の目に、深く、深く焼き付いた。
彼女は、道端で売られている奇妙な串焼きに興味を示したり、大道芸人のパフォーマンスに目を輝かせたりと、皇女という立場を忘れさせるほど無邪気だった。その姿は、歳の離れた妹を見ているようで、大和の心も自然と和んでいく。
「ヤマト様は、どんなものがお好きなのですか?」
「俺ですか? うーん……強いて言えば、静かな場所で星を見ること、ですかね」
「星……。素敵ですわ」
エリアーナはうっとりと呟き、大和の横顔を盗み見る。彼にとっては当たり前の趣味が、彼女にはロマンチックな響きに聞こえているようだ。
そんな微笑ましいやり取りをしながら、二人は帝都で最も賑わう中央広場へとやってきた。
広場の中央には巨大な噴水があり、その周りには多くの人々が憩いを求めて集まっている。広場を囲むように立ち並ぶ高層ビルの壁面には、立体映像の巨大な広告塔がいくつも設置され、目まぐるしく映像を切り替えていた。
「わぁ……綺麗ですわ」
最新の宝飾品を宣伝する、きらびやかな立体映像に見入るエリアーナ。
その時だった。
ゴゴゴゴゴ……!
不気味な低い振動音と共に、二人が見上げていた巨大な広告塔の根本から、火花が散った。固定していたアームの一部が、何らかの経年劣化か整備不良で破損したらしい。
「きゃっ!?」
「危ない!」
広場にいた人々が悲鳴を上げて逃げ惑う。
数十トンはあろうかという巨大な広告塔が、ゆっくりと、しかし確実に、真下で立ち尽くすエリアーナの頭上へと傾き始めたのだ。
「エリアーナ様!」
護衛として少し離れた場所で控えていたゼノが、血相を変えて駆け寄ろうとする。だが、間に合わない。広告塔が落下する方が、遥かに早い。
エリアーナは、迫りくる鉄の塊を前に、恐怖で足がすくんで動けなくなっていた。
絶体絶命。誰もがそう思った、その瞬間。
すっ、と一つの影が彼女の前に滑り込んだ。
大和だった。
彼は、落ちてくる広告塔を冷静に見上げると、右腕をスッと天にかざした。
「っと」
ドンッッ!!
地響きのような、鈍く重い衝撃音。
しかし、想像されていたような破壊と悲鳴は起こらなかった。
巨大な広告塔は、その落下をピタリと止めていた。
まるで、見えない壁にでも阻まれたかのように。
いや、違う。
広告塔の先端を、大和が、たった片手で、軽々と受け止めていたのだ。
「…………え?」
広場にいた全ての人間が、時が止まったかのように動きを止めた。
数十トンの鉄塊を、片手で。
涼しい顔で。
大和は、広告塔を支えたまま、振り返ってエリアーナに微笑みかけた。
「大丈夫ですか、エリアーナ様。怪我はありませんか?」
彼の足元の石畳は、その絶大な質量を受け止めた衝撃で、クレーターのように粉々に砕け散っている。しかし、大和自身は息一つ乱していない。
エリアーナは、目の前の光景が信じられなかった。
自分を守るために、身を挺して天を支える、その背中。
それは、どんな英雄譚に語られる伝説の勇者よりも、力強く、そして頼もしく見えた。
「……はい。だ、大丈夫、です」
かろうじてそれだけを答えるのが、彼女の精一杯だった。
胸の高鳴りが、恐怖によるものなのか、それとも別の何かなのか、彼女自身にももう分からなかった。
大和は、周囲の安全を確認すると、支えていた広告塔を「よいしょ」という掛け声と共に、ゆっくりと、元のあったビルの壁にそっと立てかけたのだった。
その神話のような光景は、帝都の民衆の目に、深く、深く焼き付いた。
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