追放された【ガチャ師】の俺、鑑定不能のゴミアイテムばかり出ると思いきや、実は神話級の遺物だった件

夏見ナイ

文字の大きさ
16 / 70

第十六話 黒騎士の剣技

しおりを挟む
スケルトンナイトが放つ圧力は、先ほどのアンデッドの群れとは比較にならなかった。兜の奥で燃える青い鬼火は、明確な殺意を持ってレクスを捉えている。それはもはや本能で動く魔物ではない。意志を持った戦士の気配だった。

騎士はゆっくりとグレートソードを正眼に構えた。その動きには一切の無駄がない。生前は相当な手練れだったことが窺える。

レクスは【月光のダガー】を逆手に持ち、低い姿勢で対峙した。先に動いたのはレクスだった。床を蹴り、稲妻のような速さで騎士の懐に潜り込む。狙うは鎧の隙間、首筋だ。

しかし、スケルトンナイトの反応はレクスの速さを上回っていた。グレートソードの腹でダガーの切っ先を軽くいなすと、そのまま流れるような動きで剣の柄をレクスの腹部に叩き込んできた。

「ぐっ……!」

予期せぬ一撃に、レクスは数歩後退させられる。ただの力任せの攻撃ではない。洗練された剣技だ。

スケルトンナイトは追撃の手を緩めない。巨体を揺らしながら、鋼の嵐のような連続攻撃を繰り出してくる。レクスは月光のダガーで必死にそれを受け流すが、一撃一撃が重い。腕が痺れ、じりじりと後退を余儀なくされた。

(こいつ、強い……!)

聖なる浄化の力は確かに有効だ。グレートソードがダガーに触れるたびに、騎士の体から邪悪な気が霧散していく。だが、決定打を与えるには至らない。相手の剣技が巧みすぎて、致命的な一撃を叩き込む隙が見つからないのだ。

キィン、と一際大きな金属音が響く。グレートソードが力任せに振り下ろされ、レクスはそれをダガーで受け止めたが、勢いを殺しきれずに床に膝をついてしまった。がら空きになった胴体めがけて、騎士の蹴りが放たれる。レクスは咄嗟に横に転がって回避したが、その頬を鎧のつま先が掠めていった。

冷や汗が流れる。
このままでは押し切られる。レクスは大きく距離を取り、息を整えながら騎士を観察した。
闇雲に攻めても勝てない。何か、弱点があるはずだ。

レクスは脳裏に、かつてのパーティでの戦闘を思い浮かべていた。リーダーのガイウスは、敵の弱点を見つけるのが得意だった。彼はいつも言っていた。「どんな強敵にも、必ず癖がある。動きの癖、攻撃の癖、防御の癖。それを見抜け」と。

レクスは目を凝らした。
スケルトンナイトの動きは完璧に見える。だが、何度も剣を交えるうち、ごく僅かな違和感に気づいた。
騎士がグレートソードを大きく振りかぶる時、必ず左足に一瞬だけ重心が偏る。そして、その瞬間、右肩の鎧の継ぎ目がほんのわずかに開くのだ。おそらく生前の癖なのだろう。アンデッドとなっても、その体に染み付いた動きは消えていない。

(狙うは、そこだ)

勝機は一瞬。失敗すれば、次はない。
レクスは再び騎士に向かって突進した。だが、今度は真っ直ぐではない。騎士の周りを旋回するように動き、相手の焦りを誘う。

業を煮やしたスケルトンナイトが、ついに大きく動いた。予測通り、グレートソードを天に振りかぶり、渾身の一撃を放とうとする。
左足に重心が乗り、右肩の鎧が開く。

「今だ!」

レクスは振り下ろされる剣を紙一重でかわし、騎士の懐、がら空きの右側へと滑り込んだ。そして、開いた鎧の継ぎ目めがけて、月光のダガーを逆手で突き立てた。

ズブリ、という鈍い手応え。
ダガーの刃は鎧を貫通し、その下にある邪悪な魔力の源流を直接捉えた。

「ギ……ギギ……!?」

スケルトンナイトの動きが、初めて明確に止まった。青い鬼火が激しく揺らめき、その体から黒い煙が噴き出す。ダガーから放たれる聖なる光が、騎士の内部からその存在そのものを浄化していく。

やがて、黒い甲冑は力を失って崩れ落ち、カシャン、と甲高い音を立てて床に散らばった。その中心には、砕け散った黒い魔石だけが残されていた。

レクスは肩で息をしながら、ゆっくりと立ち上がった。ギリギリの勝利だった。だが、ただの力押しではない、自分の観察眼と経験で掴み取った勝利だ。その事実は、彼に新たな自信を与えた。

スケルトンナイトが守っていた石の扉は、主を失って静かに佇んでいる。レクスは警戒しながらも、その扉を押し開けた。

扉の先は、小さな祭壇の間だった。そして、その中央に、彼は探し求めていたものを見つけた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

おっさん付与術師の冒険指導 ~パーティーを追放された俺は、ギルドに頼まれて新米冒険者のアドバイザーをすることになりました~

日之影ソラ
ファンタジー
 十年前――  世界は平和だった。  多くの種族が助け合いながら街を、国を造り上げ、繁栄を築いていた。  誰もが思っただろう。  心地良いひと時が、永遠に続けばいいと。  何の根拠もなく、続いてくれるのだろうと…… ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇  付与術師としてパーティーに貢献していたシオン。  十年以上冒険者を続けているベテランの彼も、今年で三十歳を迎える。  そんなある日、リーダーのロイから突然のクビを言い渡されてしまう。 「シオンさん、悪いんだけどあんたは今日でクビだ」 「クビ?」 「ああ。もう俺たちにあんたみたいなおっさんは必要ない」  めちゃくちゃな理由でクビになってしまったシオンだが、これが初めてというわけではなかった。  彼は新たな雇い先を探して、旧友であるギルドマスターの元を尋ねる。  そこでシオンは、新米冒険者のアドバイザーにならないかと提案されるのだった。    一方、彼を失ったパーティーは、以前のように猛威を振るえなくなっていた。  順風満帆に見えた日々も、いつしか陰りが見えて……

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。 地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。 魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。 これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。 「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」

処理中です...