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第十五話 アンデッドの巣窟
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螺旋階段は、レクスの想像以上に深くまで続いていた。湿った冷気がまとわりつき、壁を伝う水滴の音が不気味に反響する。松明の光が届く範囲はごくわずかで、一歩先は底知れぬ闇が広がっていた。
やがて階段は終わり、彼は一つの広間に出た。そこは教会の地下室というより、遥か昔に打ち捨てられた神殿のようだった。天井は高く、太い石柱が何本も並んでいる。壁には風化しかけたレリーフが刻まれていたが、その内容はほとんど読み取れない。
そして、広間のあちこちで何かが蠢いていた。
ギシ、ギシ、という骨の軋む音。ズル、ズル、と地面を引きずる音。闇の中に、いくつもの人影が浮かび上がる。それは生者ではなかった。腐り落ちた肉をぶら下げたゾンビ。骨と魂だけで動くスケルトン。アンデッドの群れだった。
(ここが、邪悪な気配の正体か)
エリアナの聖なる力が、この淀んだ死の気に無意識に反応し、力を吸い上げられていたのだろう。レクスはロングソードを構え、慎重に距離を測った。数は十体以上。まともにやり合えば骨が折れる。
一体のスケルトンが、レクスに気づいてカタカタと顎を鳴らした。それを合図に、アンデッドたちが一斉に動き出す。動きは鈍いが、その目には生者への憎悪の光が宿っていた。
レクスは先手を取るべく、最も近くにいたゾンビに斬りかかった。ロングソードが腐肉を断ち、腕を切り飛ばす。だが、ゾンビは痛みを感じない。腕を失ってもなお、残った腕で殴りかかってきた。
「ちっ、厄介だな」
スケルトンの骨を砕いても、ゾンビの肉を裂いても、奴らは動きを止めない。物理攻撃に対する強い耐性。それがアンデッドの特性だった。レクスは巧みな剣さばきで攻撃をいなし、数体を戦闘不能に追い込んだが、その間にじりじりと包囲網は狭まっていく。
(ロングソードじゃ効率が悪い)
彼はバックステップで大きく距離を取ると、腰の【月光のダガー】を抜いた。神話級の遺物が闇の中で白銀の光を放つ。その聖なる輝きに、アンデッドたちが一瞬怯んだ。
ダガーを握った瞬間、レクスの脳裏にその能力が流れ込んでくる。
『聖なる浄化』。邪悪な存在に対し、追加ダメージを与える。
「試させてもらうぞ」
レクスは再びアンデッドの群れへと突っ込んだ。迫りくるスケルトンの錆びた剣をダガーで受け止める。甲高い金属音が響き、スケルトンの剣はまるでガラスのように砕け散った。それだけではない。ダガーが触れた腕の骨が、聖なる光に焼かれて黒く変色し、ボロボロと崩れ落ちていく。
「グルォ……!?」
魂だけの存在であるはずのスケルトンが、苦悶の声を上げた。
これだ。これが、このダンジョンにおける正解だ。
レクスは笑みを浮かべた。戦況は一変した。
彼はもはや、アンデッドの攻撃を避ける必要すらなかった。月光のダガーが、聖なる盾となって全てを弾き、浄化していく。
ゾンビの腐った爪がダガーに触れると、その肉体は端から浄化の光に包まれ、塵となって消えていった。スケルトンが振り下ろす剣は、ことごとく砕け散り、その骨身を崩壊させていく。
レクスの動きは、もはや戦闘ではなく舞踊のようだった。白銀の軌跡が闇を切り裂くたびに、一体、また一体とアンデッドが聖なる光の中に消滅していく。彼が通った後には、清浄な空気だけが残った。
やがて、広間にいた全てのアンデッドが浄化され、絶対的な静寂が訪れた。
「……すごいな、これが神話級の力」
レクスは月光のダガーを見つめ、改めてその絶大な威力に驚嘆した。これさえあれば、この遺跡の攻略は決して難しくない。
彼は再び松明を手に、広間の探索を始めた。壁のレリーフを注意深く見ていくと、一つの場面が目に留まった。それは、一人の聖女がペンダントのようなものを掲げ、邪悪な竜を鎮めている様を描いたものだった。風化が激しいが、そのペンダントの形には見覚えがあった。
(ペンダント……?)
それが、この遺跡を攻略し、エリアナを救うための鍵になるのかもしれない。
レクスがさらに奥へと進もうとした、その時だった。
広間の向こう側にある巨大な石の扉が、ギギギ、と重い音を立ててゆっくりと開き始めた。扉の奥から、これまでとは比較にならないほど濃密な死の気配が溢れ出してくる。
松明の光が、その影を照らし出した。
それは、全身を黒い甲冑で固めた騎士の姿をしていた。だが、兜の奥で妖しく光るのは、二つの青い鬼火。手には巨大なグレートソードを握っている。
スケルトンナイト。ただのアンデッドではない。生前の技量と邪悪な魔力を併せ持った、強力な上位アンデッドだ。
騎士は何も語らない。ただ、その鬼火がレクスを敵と認識し、殺意を燃やしていることだけがはっきりと分かった。
やがて階段は終わり、彼は一つの広間に出た。そこは教会の地下室というより、遥か昔に打ち捨てられた神殿のようだった。天井は高く、太い石柱が何本も並んでいる。壁には風化しかけたレリーフが刻まれていたが、その内容はほとんど読み取れない。
そして、広間のあちこちで何かが蠢いていた。
ギシ、ギシ、という骨の軋む音。ズル、ズル、と地面を引きずる音。闇の中に、いくつもの人影が浮かび上がる。それは生者ではなかった。腐り落ちた肉をぶら下げたゾンビ。骨と魂だけで動くスケルトン。アンデッドの群れだった。
(ここが、邪悪な気配の正体か)
エリアナの聖なる力が、この淀んだ死の気に無意識に反応し、力を吸い上げられていたのだろう。レクスはロングソードを構え、慎重に距離を測った。数は十体以上。まともにやり合えば骨が折れる。
一体のスケルトンが、レクスに気づいてカタカタと顎を鳴らした。それを合図に、アンデッドたちが一斉に動き出す。動きは鈍いが、その目には生者への憎悪の光が宿っていた。
レクスは先手を取るべく、最も近くにいたゾンビに斬りかかった。ロングソードが腐肉を断ち、腕を切り飛ばす。だが、ゾンビは痛みを感じない。腕を失ってもなお、残った腕で殴りかかってきた。
「ちっ、厄介だな」
スケルトンの骨を砕いても、ゾンビの肉を裂いても、奴らは動きを止めない。物理攻撃に対する強い耐性。それがアンデッドの特性だった。レクスは巧みな剣さばきで攻撃をいなし、数体を戦闘不能に追い込んだが、その間にじりじりと包囲網は狭まっていく。
(ロングソードじゃ効率が悪い)
彼はバックステップで大きく距離を取ると、腰の【月光のダガー】を抜いた。神話級の遺物が闇の中で白銀の光を放つ。その聖なる輝きに、アンデッドたちが一瞬怯んだ。
ダガーを握った瞬間、レクスの脳裏にその能力が流れ込んでくる。
『聖なる浄化』。邪悪な存在に対し、追加ダメージを与える。
「試させてもらうぞ」
レクスは再びアンデッドの群れへと突っ込んだ。迫りくるスケルトンの錆びた剣をダガーで受け止める。甲高い金属音が響き、スケルトンの剣はまるでガラスのように砕け散った。それだけではない。ダガーが触れた腕の骨が、聖なる光に焼かれて黒く変色し、ボロボロと崩れ落ちていく。
「グルォ……!?」
魂だけの存在であるはずのスケルトンが、苦悶の声を上げた。
これだ。これが、このダンジョンにおける正解だ。
レクスは笑みを浮かべた。戦況は一変した。
彼はもはや、アンデッドの攻撃を避ける必要すらなかった。月光のダガーが、聖なる盾となって全てを弾き、浄化していく。
ゾンビの腐った爪がダガーに触れると、その肉体は端から浄化の光に包まれ、塵となって消えていった。スケルトンが振り下ろす剣は、ことごとく砕け散り、その骨身を崩壊させていく。
レクスの動きは、もはや戦闘ではなく舞踊のようだった。白銀の軌跡が闇を切り裂くたびに、一体、また一体とアンデッドが聖なる光の中に消滅していく。彼が通った後には、清浄な空気だけが残った。
やがて、広間にいた全てのアンデッドが浄化され、絶対的な静寂が訪れた。
「……すごいな、これが神話級の力」
レクスは月光のダガーを見つめ、改めてその絶大な威力に驚嘆した。これさえあれば、この遺跡の攻略は決して難しくない。
彼は再び松明を手に、広間の探索を始めた。壁のレリーフを注意深く見ていくと、一つの場面が目に留まった。それは、一人の聖女がペンダントのようなものを掲げ、邪悪な竜を鎮めている様を描いたものだった。風化が激しいが、そのペンダントの形には見覚えがあった。
(ペンダント……?)
それが、この遺跡を攻略し、エリアナを救うための鍵になるのかもしれない。
レクスがさらに奥へと進もうとした、その時だった。
広間の向こう側にある巨大な石の扉が、ギギギ、と重い音を立ててゆっくりと開き始めた。扉の奥から、これまでとは比較にならないほど濃密な死の気配が溢れ出してくる。
松明の光が、その影を照らし出した。
それは、全身を黒い甲冑で固めた騎士の姿をしていた。だが、兜の奥で妖しく光るのは、二つの青い鬼火。手には巨大なグレートソードを握っている。
スケルトンナイト。ただのアンデッドではない。生前の技量と邪悪な魔力を併せ持った、強力な上位アンデッドだ。
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