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第45話 魔森の都、建設開始
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俺がゴブリンロードとして覚醒したという事実は、瞬く間に連合軍全体へと広まった。その姿はもはやゴブリンのそれではなく、威厳と力に満ちた魔王の風格を漂わせている。俺がただ通路を歩くだけで、すれ違うゴブリンもオークも、皆一様に足を止めて深く頭を垂れた。
種族スキル【魔王の覇気】は、俺の支配を絶対的なものにしていた。俺の意思は、言葉を介さずとも軍の隅々にまで浸透し、兵士たちの士気をかつてないほどに高揚させている。ガロンを将軍とし、オークの技術を取り込んだ連合軍は、まさに鉄壁の組織となりつつあった。
ガロッシュ砦は、勝利の熱気と、新たな王の誕生に対する祝祭の雰囲気で満ち溢れていた。
だが、俺は、この熱狂の中心にいながらも、冷静に次の一手を見据えていた。
ガロッシュ砦。ここは確かに、オークたちが築き上げた優れた要塞だ。だが、俺がこれから築き上げる国家の首都としては、致命的な欠陥がいくつもあった。
第一に、立地が悪い。森の南部に偏りすぎている。広大なグラーヴェ大森林全体を掌握し、北の人間の国境や、まだ見ぬ西や東の領域に睨みを利かせるには、あまりにも不便な場所だ。
第二に、拡張性がない。岩山をくり抜いた構造は、防御には優れているが、人口増加や施設の増設に対応できない。特に、俺が構想する大規模な農地を確保できる平野が、この周辺には存在しなかった。
そして第三に、防御思想の古さ。堅固な正門に頼り切った設計は、俺自身が証明したように、側面や背後からの奇襲に対してあまりにも脆弱だ。
このままでは駄目だ。
俺たちが目指すのは、ただの魔物の要塞ではない。多種族が共存し、生産し、文化を育む、真の『都』だ。そのためには、全く新しい拠点が必要だった。
俺は再び、ガロン、リリア、そして各部隊のリーダーたちを、俺の私室となった戦士長の間に集めた。
「皆に、新たな計画を伝える」
俺がそう切り出すと、幹部たちの顔に緊張が走った。彼らは、俺がこの勝利に満足せず、さらに大きな何かを企んでいることを察しているのだ。
「我々は、このガロッシュ砦を放棄する」
俺の言葉に、特にオーク出身の者たちが息を呑んだ。ここは、彼らが長年住み慣れた故郷そのものだ。
「そして、新たな都を、我々自身の手で、一から築き上げる」
俺は地面に、ゾルガ長老から受け継いだ【古代知識】と、俺自身の測量によって得た、グラーヴェ大森林のより正確な地図を描き出した。そして、その中央、いくつかの川が合流する広大な平野を指し示した。
「ここだ。ここが、我々の新しい都を築く場所だ」
ガロンが、地図を覗き込みながら尋ねる。
「ボス、この場所には一体何が?」
「全てがある」と俺は答えた。「森全体を見渡せる、戦略的な中心地。豊かな水源と、農耕に適した肥沃な大地。そして、周囲を丘や岩山に囲まれた、天然の防御地形。これ以上の場所は、この森にはない」
俺の脳内には、ゾルガ長老から受け継いだ【建築技術】と、前世の都市計画の知識が融合し、未来の都の設計図が既に完成していた。
城壁は、単純な壁ではない。複数の防御区画に分かれ、たとえ一角が破られても、内部で敵を殲滅できるキルゾーンを備えた多重構造。
居住区は、ゴブリン、オーク、エルフ、それぞれの種族の生態に合わせて設計し、無用な諍いが起きないよう配慮する。
そして、都の中心には、連合の心臓部となる、巨大な鍛冶場と、大規模な食料貯蔵庫、そして連合軍の兵舎を配置する。
その壮大な構想を聞き、幹部たちは言葉を失っていた。彼らが考えていた「巣」や「集落」という概念を、遥かに超えるものだったからだ。
「しかし、ゴブ様」リリアが、現実的な懸念を口にした。「それほどの都を築くには、途方もない時間と、労働力が必要です。それに、我々には、それほどの規模の土木工事を行った経験が……」
「問題ない」俺は、自信に満ちた笑みを浮かべた。「俺には、オーク族が数百年かけて培ってきた【建築技術】と【鍛冶技術】の全てがある。そして、お前たちの『知識』と、オークの『労働力』、ゴブリンの『機動力』がある。全てのピースは、既に揃っている」
俺の言葉は、単なる希望的観測ではなかった。ゴブリンロードに進化した俺の頭脳は、この巨大プロジェクトを完遂するための、具体的な工程表――いわゆるガントチャートのようなもの――を既に描き上げていた。
「これより、魔森連合の総力を挙げ、新都建設を開始する! これは、我々が真の国家となるための、最初の試練だ!」
俺の宣言に、もはや異を唱える者はいなかった。王が描く壮大なビジョンに、彼らの魂は完全に魅了されていた。
数日後、連合軍の大半は、ガロッシュ砦を発ち、森の中央平原へと移動した。
そこは、まだ何もない、ただ広大なだけの土地だった。
「まず、整地から始める! オーク部隊、木々を伐採し、土地を平らにならせ!」
ガロンの号令一下、屈強なオークたちが、巨大な斧を振るい始めた。巨大な木々が、地響きを立てて次々と倒されていく。
「ゴブリン部隊! 伐採した木材を、指定の場所へ運べ! 石材もだ! 迅速に行動しろ!」
ゴブリンたちが、その機動力を活かし、資材運搬に奔走する。
「リリア! お前には、水源の確保と、土地の浄化を頼む。精霊の力を貸してくれ」
「はい、お任せください!」
リリアが祈りを捧げると、地面から清らかな水が湧き出し、小さな川となって流れ始めた。
そして俺は、その中心に立っていた。
俺の脳内にある設計図を元に、地面に縄を張り、建物の基礎となる位置を正確に示していく。【建築技術】スキルは、俺に測量術や設計術の知識も与えてくれていた。
種族の垣根を越えた、初めての大規模共同プロジェクト。
最初はぎこちなかった彼らの連携も、明確な役割分念と、俺とガロンによる的確な指示によって、次第に一つの大きな流れとなっていく。
汗を流すオーク、走り回るゴブリン、祈りを捧げるエルフ。
誰もが、自分の役割に誇りを持ち、未来の自分たちの都を築くという共通の目的のために、瞳を輝かせていた。
夕暮れ時、俺は小高い丘の上から、活気に満ちた建設現場を見下ろした。
まだ、都の形は見えない。だが、そこには、確かな国家建設の槌音が響き渡っていた。
それは、ただの魔物の巣作りではない。
歴史に忘れ去られた種族たちが、手を取り合って築き上げる、新たな文明の、力強い夜明けだった。
種族スキル【魔王の覇気】は、俺の支配を絶対的なものにしていた。俺の意思は、言葉を介さずとも軍の隅々にまで浸透し、兵士たちの士気をかつてないほどに高揚させている。ガロンを将軍とし、オークの技術を取り込んだ連合軍は、まさに鉄壁の組織となりつつあった。
ガロッシュ砦は、勝利の熱気と、新たな王の誕生に対する祝祭の雰囲気で満ち溢れていた。
だが、俺は、この熱狂の中心にいながらも、冷静に次の一手を見据えていた。
ガロッシュ砦。ここは確かに、オークたちが築き上げた優れた要塞だ。だが、俺がこれから築き上げる国家の首都としては、致命的な欠陥がいくつもあった。
第一に、立地が悪い。森の南部に偏りすぎている。広大なグラーヴェ大森林全体を掌握し、北の人間の国境や、まだ見ぬ西や東の領域に睨みを利かせるには、あまりにも不便な場所だ。
第二に、拡張性がない。岩山をくり抜いた構造は、防御には優れているが、人口増加や施設の増設に対応できない。特に、俺が構想する大規模な農地を確保できる平野が、この周辺には存在しなかった。
そして第三に、防御思想の古さ。堅固な正門に頼り切った設計は、俺自身が証明したように、側面や背後からの奇襲に対してあまりにも脆弱だ。
このままでは駄目だ。
俺たちが目指すのは、ただの魔物の要塞ではない。多種族が共存し、生産し、文化を育む、真の『都』だ。そのためには、全く新しい拠点が必要だった。
俺は再び、ガロン、リリア、そして各部隊のリーダーたちを、俺の私室となった戦士長の間に集めた。
「皆に、新たな計画を伝える」
俺がそう切り出すと、幹部たちの顔に緊張が走った。彼らは、俺がこの勝利に満足せず、さらに大きな何かを企んでいることを察しているのだ。
「我々は、このガロッシュ砦を放棄する」
俺の言葉に、特にオーク出身の者たちが息を呑んだ。ここは、彼らが長年住み慣れた故郷そのものだ。
「そして、新たな都を、我々自身の手で、一から築き上げる」
俺は地面に、ゾルガ長老から受け継いだ【古代知識】と、俺自身の測量によって得た、グラーヴェ大森林のより正確な地図を描き出した。そして、その中央、いくつかの川が合流する広大な平野を指し示した。
「ここだ。ここが、我々の新しい都を築く場所だ」
ガロンが、地図を覗き込みながら尋ねる。
「ボス、この場所には一体何が?」
「全てがある」と俺は答えた。「森全体を見渡せる、戦略的な中心地。豊かな水源と、農耕に適した肥沃な大地。そして、周囲を丘や岩山に囲まれた、天然の防御地形。これ以上の場所は、この森にはない」
俺の脳内には、ゾルガ長老から受け継いだ【建築技術】と、前世の都市計画の知識が融合し、未来の都の設計図が既に完成していた。
城壁は、単純な壁ではない。複数の防御区画に分かれ、たとえ一角が破られても、内部で敵を殲滅できるキルゾーンを備えた多重構造。
居住区は、ゴブリン、オーク、エルフ、それぞれの種族の生態に合わせて設計し、無用な諍いが起きないよう配慮する。
そして、都の中心には、連合の心臓部となる、巨大な鍛冶場と、大規模な食料貯蔵庫、そして連合軍の兵舎を配置する。
その壮大な構想を聞き、幹部たちは言葉を失っていた。彼らが考えていた「巣」や「集落」という概念を、遥かに超えるものだったからだ。
「しかし、ゴブ様」リリアが、現実的な懸念を口にした。「それほどの都を築くには、途方もない時間と、労働力が必要です。それに、我々には、それほどの規模の土木工事を行った経験が……」
「問題ない」俺は、自信に満ちた笑みを浮かべた。「俺には、オーク族が数百年かけて培ってきた【建築技術】と【鍛冶技術】の全てがある。そして、お前たちの『知識』と、オークの『労働力』、ゴブリンの『機動力』がある。全てのピースは、既に揃っている」
俺の言葉は、単なる希望的観測ではなかった。ゴブリンロードに進化した俺の頭脳は、この巨大プロジェクトを完遂するための、具体的な工程表――いわゆるガントチャートのようなもの――を既に描き上げていた。
「これより、魔森連合の総力を挙げ、新都建設を開始する! これは、我々が真の国家となるための、最初の試練だ!」
俺の宣言に、もはや異を唱える者はいなかった。王が描く壮大なビジョンに、彼らの魂は完全に魅了されていた。
数日後、連合軍の大半は、ガロッシュ砦を発ち、森の中央平原へと移動した。
そこは、まだ何もない、ただ広大なだけの土地だった。
「まず、整地から始める! オーク部隊、木々を伐採し、土地を平らにならせ!」
ガロンの号令一下、屈強なオークたちが、巨大な斧を振るい始めた。巨大な木々が、地響きを立てて次々と倒されていく。
「ゴブリン部隊! 伐採した木材を、指定の場所へ運べ! 石材もだ! 迅速に行動しろ!」
ゴブリンたちが、その機動力を活かし、資材運搬に奔走する。
「リリア! お前には、水源の確保と、土地の浄化を頼む。精霊の力を貸してくれ」
「はい、お任せください!」
リリアが祈りを捧げると、地面から清らかな水が湧き出し、小さな川となって流れ始めた。
そして俺は、その中心に立っていた。
俺の脳内にある設計図を元に、地面に縄を張り、建物の基礎となる位置を正確に示していく。【建築技術】スキルは、俺に測量術や設計術の知識も与えてくれていた。
種族の垣根を越えた、初めての大規模共同プロジェクト。
最初はぎこちなかった彼らの連携も、明確な役割分念と、俺とガロンによる的確な指示によって、次第に一つの大きな流れとなっていく。
汗を流すオーク、走り回るゴブリン、祈りを捧げるエルフ。
誰もが、自分の役割に誇りを持ち、未来の自分たちの都を築くという共通の目的のために、瞳を輝かせていた。
夕暮れ時、俺は小高い丘の上から、活気に満ちた建設現場を見下ろした。
まだ、都の形は見えない。だが、そこには、確かな国家建設の槌音が響き渡っていた。
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