ゴブリンだって進化したい!~最弱モンスターに転生したけど、スキル【弱肉強食】で食って食って食いまくったら、気づけば魔王さえ喰らう神になってた

夏見ナイ

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第46話 グラーヘイム

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新都の建設は、驚異的な速度で進んでいった。
オークたちの圧倒的な労働力は、森を切り開き、大地を平らにならす。ゴブリンたちの機動力は、膨大な量の木材や石材を、滞りなく現場へと運び込む。そして、俺の脳内にある設計図と、ゾルガ長老から受け継いだ【建築技術】が、それらを寸分の狂いもなく組み上げていく。

まず完成したのは、都を囲む外壁だった。それは、ただの石壁ではない。内側に土を盛り、強度を高めた傾斜構造。壁の上には、無数の矢狭間(やざま)と、投石用の足場が設けられている。さらに、壁の外側には、深く掘られた空堀と、無数の杭が打ち込まれた。ガロッシュ砦の教訓を活かした、徹底的な防御思想の結晶だ。

次に、居住区画が形になっていく。オークたちのための、頑丈で広々とした石造りの家々。ゴブリンたちのための、密集した住みやすい木造の長屋。そして、リリアとルゥ、そして今後増えるかもしれない異種族のために、静かで緑豊かな一角も確保した。

都の中心部には、俺たちの心臓部となる施設が次々と建設された。
オークの鍛冶技術の粋を集めた、巨大な『大鍛冶場』。そこからは、途切れることなく鉄を打つ音が響き渡り、連合軍の武具を量産していく。
連合軍の兵士たちが起居し、訓練を行うための広大な『兵舎』と『練兵場』。
そして、何よりも重要な、都の生命線となる『大備蓄庫』。そこには、狩りで得た干し肉や、森で採集した木の実、そして将来の農耕のための種子などが、体系的に管理・貯蔵されていく。

数ヶ月後。
かつてただの平原だった場所には、壮麗で、そして機能的な要塞都市が、その威容を現していた。

「……信じられん。我々だけで、これほどの都を……」

完成した都を城壁の上から見下ろし、ガロンが感嘆の声を漏らした。他のゴブリンも、オークも、自分たちが成し遂げた偉業を前に、言葉を失っている。

俺は、彼らに向かって静かに宣言した。
「この都に、名を付ける」

全員が、固唾を飲んで俺の言葉を待つ。

「この都の名は、『グラーヘイム』。古の言葉で、『緑の家』を意味する」

グラーヘイム。
それは、このグラーヴェ大森林に生きる、全ての者たちの家。種族の垣根を越えた、我々の新たな故郷。

「ウォオオオオオ!」
「グルオオオオオ!」

ゴブリンとオークたちが、地鳴りのような歓声を上げた。その声は、自分たちの手で築き上げた都への誇りと、未来への希望に満ち溢れていた。

だが、都が完成しただけでは、国家とは言えない。
ハードウェアができたのなら、次に必要なのは、それを動かすためのソフトウェアだ。

「これより、グラーヘイムの法と秩序を定める」

俺は、祝賀ムードに沸く幹部たちを集め、次なる段階へと移行した。

俺はまず、最も基本的な三つの法を制定した。
一つ、『同胞殺しの禁』。理由の如何を問わず、グラーヘイムの住民同士で殺し合った者は、死罪とする。
二つ、『略奪・窃盗の禁』。他者の財産を不当に奪った者は、その程度に応じて、厳しい労働刑に処す。
三つ、『王命への絶対服従』。俺、および俺が任命した指揮官の命令に背いた者は、軍法会議にかけ、厳罰に処す。

それは、あまりにも単純な法だった。だが、これまで暴力と奪い合いが全てのルールだった彼らにとって、それは画期的な概念だった。

「法ノ前ニハ、全テノ者ガ平等ダ。ゴブリンデアロウガ、オークデアロウガ、俺ノ側近デアロウガ、法ヲ破レバ罰セラル。ソレガ、コノ都ノ秩序ダ」

俺の言葉に、特にこれまで虐げられることの多かったゴブリンたちが、安堵の表情を浮かべた。力あるオークが、理不尽な暴力を振るうことができなくなる。その保証は、彼らが安心して暮らす上で、何よりも重要なことだった。

次に、俺は通貨の導入を試みた。といっても、まだ金属貨幣を鋳造する技術はない。俺は、特別に加工したオークの牙や、美しい鳥の羽根などを「代用貨幣」とし、労働や成果に応じた報酬として分配するシステムを構築した。

この代用貨幣を使えば、大備蓄庫から一定量の食料や、大鍛冶場で生産された日用品などと交換できる。
これにより、「働けば報われる」という、前世では当たり前だったはずの原則が、この都に生まれた。人々は、ただ生きるためではなく、より良い生活を手に入れるために、自発的に働くようになった。

法と、経済。
国家を形成する、二つの大きな柱が、今、このグラーヘイムに打ち立てられたのだ。

俺は、都の中央に建設された、一際大きな建物――俺たちの『王城』となるべき場所の、未完成の玉座に腰を下ろした。

眼下には、活気に満ちた都の営みが広がっている。
鍛冶場で槌を振るうオーク。市場で物々交換をするゴブリンたち。薬草を育てる小さな畑を耕すリリアとルゥ。

それは、俺が夢見た光景。
俺が、この手で創り上げた、俺だけの王国。

だが、俺は知っていた。
この平和は、まだ脆い。
この都の存在が、いずれ森の外の勢力――人間や、魔王軍の知るところとなれば、彼らは必ずや、この新たな秩序を破壊しにやってくるだろう。

その日に備え、俺たちはさらに強くならなければならない。
軍備を拡張し、食料を増産し、そして、俺自身も、さらなる進化を遂げなければ。

俺の視線は、完成した都の、さらに先を見据えていた。
グラーヘイムは、ゴールではない。
世界という、より広大な戦場へ打って出るための、巨大な前線基地に過ぎないのだから。
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