デバフ専門の支援術師は勇者パーティを追放されたので、呪いのアイテム専門店を開きます

夏見ナイ

文字の大きさ
86 / 89

第八十五話 最後の夜、それぞれの誓い

しおりを挟む
王都アルカディアは、最後の決戦へと旅立つ七人の英雄たちを、静かに、しかし熱い期待を込めて見守っていた。王家は、彼らの旅のために、最速の飛空艇を用意した。世界の果てにあるという『創生の祭壇』へは、もはや陸路や海路では間に合わない。

出立を明日に控えた夜。

【ノアの箱舟】の拠点である邸宅の工房は、かつてないほどの神聖な光に満ちていた。ノアは、最後の準備として、仲間たちの装備に、最終調整を施していた。それは、七つの原初の力を最大限に共鳴させ、一つの巨大な力へと昇華させるための、集大成となる錬成だった。

「これで、よし」

ノアは、クロエの大剣に最後の一打を打ち込むと、満足げに息をついた。七つの武具や装飾品は、それぞれが主の力を象徴する紋章を宿し、互いに呼応するように、淡い光を放っている。

工房から出ると、談話室では仲間たちが、それぞれの時間を過ごしていた。

「見てくれ、この航路予測。エリオの計算と、ミオの風読み、カイの海流予測を合わせれば、飛空艇は最短ルートで創生の祭壇へたどり着けるはずだ」

ルナが、完璧な航路図を広げ、自信ありげに笑う。その横顔には、もう不安の色はない。

「私の剣も、ノア様のおかげで最高の状態です。どんな敵が来ようと、この一振りで斬り伏せてみせます」

クロエは、新たに生まれ変わった愛剣を手に、武者震いを抑えきれない様子だった。

「僕たちの力は、一つになることで、ただの足し算じゃない、掛け算以上の力を生み出す。世界の真理は、いつもシンプルで、そして美しいな」

エリオは、穏やかな表情で、仲間たちの力の繋がりを分析している。

ジンとアカリは、甲板で使うための、土と炎を組み合わせた防御壁の連携について話し合っている。ミオとカイは、飛空艇の周囲に張る、風と水の結界の調整を行っていた。

そして、セレスティアは、窓辺に座り、夜空を見上げていた。彼女の傍らには、彼女の忠実なしもべとなった、小さな影が静かに揺れている。

「怖くないかい、セレスティアさん?」

ノアが、彼女の隣に腰を下ろして尋ねた。

「いいえ」と彼女は首を振った。「少し前までは、夜が来るのが怖かった。自分の影が、私を飲み込んでしまうようで。でも、今は違います。闇は、光を輝かせるためにあるのだと、皆さんが教えてくれましたから」

その笑顔は、どんな星の光よりも、力強かった。

その時、一羽の白い鳥が、風に乗って窓辺に舞い降りてきた。その足には、一通の手紙が結ばれている。王都に残ったアンナからの、最後の便りだった。

『皆さんへ。王都は、皆さんの帰りを信じて待っています。私の力は小さいけれど、この場所から、皆さんの心の光が消えないように、ずっと祈っています。どうか、ご無事で。私たちの、最高の英雄たちへ』

手紙を読み終えたノアは、仲間たちの顔を見渡し、そして、力強く言った。

「行こう。僕たちの物語の、結末を見届けに」

それは、誰に言うでもない、自分自身への誓いの言葉だった。

夜空には、不気味なほど赤い月が昇っていた。それは、魔王の力が最大に高まっている証であり、世界の命運を賭けた戦いが、間近に迫っていることを告げていた。

だが、邸宅の窓から漏れる光は、その不吉な月光にも負けないほど、温かく、そして力強かった。

七つの光が、一つの場所に集った。

追放された呪術師の、長い、長い旅の終着点。そして、世界を救う英雄の、本当の伝説の始まり。

その夜明けは、もう、すぐそこまで来ていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

外れスキル【アイテム錬成】でSランクパーティを追放された俺、実は神の素材で最強装備を創り放題だったので、辺境で気ままな工房を開きます

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティで「外れスキル」と蔑まれ、雑用係としてこき使われていた錬金術師のアルト。ある日、リーダーの身勝手な失敗の責任を全て押し付けられ、無一文でパーティから追放されてしまう。 絶望の中、流れ着いた辺境の町で、彼は偶然にも伝説の素材【神の涙】を発見。これまで役立たずと言われたスキル【アイテム錬成】が、実は神の素材を扱える唯一無二のチート能力だと知る。 辺境で小さな工房を開いたアルトの元には、彼の作る規格外のアイテムを求めて、なぜか聖女や竜王(美少女の姿)まで訪れるようになり、賑やかで幸せな日々が始まる。 一方、アルトを失った元パーティは没落の一途を辿り、今更になって彼に復帰を懇願してくるが――。「もう、遅いんです」 これは、不遇だった青年が本当の居場所を見つける、ほのぼの工房ライフ&ときどき追放ざまぁファンタジー!

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

Sランクパーティを追放されたヒーラーの俺、禁忌スキル【完全蘇生】に覚醒する。俺を捨てたパーティがボスに全滅させられ泣きついてきたが、もう遅い

夏見ナイ
ファンタジー
Sランクパーティ【熾天の剣】で《ヒール》しか使えないアレンは、「無能」と蔑まれ追放された。絶望の淵で彼が覚醒したのは、死者さえ完全に蘇らせる禁忌のユニークスキル【完全蘇生】だった。 故郷の辺境で、心に傷を負ったエルフの少女や元女騎士といった“真の仲間”と出会ったアレンは、新パーティ【黎明の翼】を結成。回復魔法の常識を覆す戦術で「死なないパーティ」として名を馳せていく。 一方、アレンを失った元パーティは急速に凋落し、高難易度ダンジョンで全滅。泣きながら戻ってきてくれと懇願する彼らに、アレンは冷たく言い放つ。 「もう遅い」と。 これは、無能と蔑まれたヒーラーが最強の英雄となる、痛快な逆転ファンタジー!

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...