異世界転生したので、文明レベルを21世紀まで引き上げてみた ~前世の膨大な知識を元手に、貧乏貴族から世界を変える“近代化の父”になります~

夏見ナイ

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第71話:近代戦の幕開け

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敵本陣への精密砲撃は、反乱軍の指揮系統を完全に麻痺させただけでなく、彼らの精神的な支柱をも木っ端微塵に粉砕した。
総大将であるマリウス公爵は爆発の衝撃で負傷し、もはや指揮を執れる状態ではない。他の指揮官たちも神の見えざる手による攻撃に完全に怯えきってしまい、まともな命令を下すことすらできなくなっていた。
軍隊は頭脳を失った巨大な獣と化した。ただ恐怖に駆られて右往左往するだけの無力な塊に。

「好機だ! 城門を開け! 全軍、出撃!」
王都の城壁の上で、クラウス・フォン・ゲルラッハが生涯で最も大きな声で叫んだ。
これまで固く閉ざされていた王都の東門が、ギギギという重い音を立ててゆっくりと開かれていく。
その向こうから現れたのは、国王直属の精鋭騎士団を先頭にした五千の国王軍だった。
彼らの士気は最高潮に達していた。
城壁の上からアシュフォード軍の圧倒的な戦いぶりを目の当たりにした彼らは、もはや反乱軍を恐れてはいなかった。自分たちが歴史的な勝利の側に立っているのだという確固たる自信が、その顔には満ち溢れていた。
「国王陛下に栄光あれ!」
「奸臣どもに鉄槌を!」
鬨の声を上げ、国王軍は混乱する反乱軍の側面へと怒涛の勢いで突撃していく。

戦場の構図は完全に逆転した。
グラウ平原では三つの勢力が入り乱れる大混戦が繰り広げられていた。
一つは鉄道の線路際で鉄壁の防御陣地を築き、圧倒的な火力で敵を寄せ付けないアシュフォードの近代化部隊。
一つは城門から打って出て、指揮系統を失った敵軍を側面から蹂躙していく士気旺盛な国王軍の騎士団。
そしてその二つの勢力に挟み撃ちにされる形で完全にパニックに陥り、組織的な抵抗もできずにただ逃げ惑うだけの反乱軍。
もはや、それは戦争と呼べるようなものではなかった。
一方的な掃討戦だった。

アシュフォード軍の兵士たちは淡々と、そして機械的に自分たちの役割をこなし続けていた。
後装式ライフルは途切れることなく火を噴き続け、近づこうとする敵兵を容赦なく薙ぎ払っていく。
彼らの顔にはもはや恐怖の色はない。ただ自分たちの武器が持つ絶対的な優位性への信頼と、若き指揮官リオ・アシュフォードへの狂信的とも言えるほどの忠誠心だけが宿っていた。
彼らは自分たちが今、歴史を創っているのだということを肌で感じていた。
剣と槍が支配した古い時代を、自分たちの手で終わらせているのだ、と。

「……すごい」
城壁の上でエリアーナがその光景を呆然と見つめていた。「これが、あなたの言っていた新しい戦争……」
「ああ」と俺は静かに答えた。「これが近代戦の幕開けだ」
騎士の武勇伝も、一騎当千の英雄も、もはやこの戦場では意味をなさない。
勝敗を決するのは兵站、情報、そして火力。
より優れたシステムを持つ側が、ただ一方的に勝利する。
その冷徹で非情な現実が今、このグラウ平原で血をもって証明されていた。
シルフィはその凄惨な光景から目を背けるように、俺のマントの裾をぎゅっと握りしめていた。
俺はそんな彼女の頭をそっと撫でてやった。
「もうすぐ終わる」

戦況は数時間で完全に決した。
反乱軍は完全に崩壊した。戦意を喪失した兵士たちは武器を捨てて次々と投降し、あるいは戦場から逃げ出していった。
マリウス公爵とヴァイス伯爵は負傷した身で、わずかな供回りだけを連れて戦場から逃亡を図ったが、国王軍の追撃部隊によってあっけなく捕らえられた。
一万二千を誇った大軍勢は、その半数以上が死傷あるいは捕虜となり、残りは散り散りになって消えた。
王国の歴史に残る最大の内乱はたった一日の戦闘で、国王軍とアシュフォード軍の圧倒的な勝利という形で幕を閉じたのだ。

夕暮れの光が煙の立ち上る平原を赤く染め上げていた。
戦いが終わった戦場には、無数の死体と負傷者のうめき声だけが虚しく響き渡っていた。
俺は城壁の上からその光景を黙って見つめていた。
勝利の歓声はどこか遠くに聞こえる。
俺の心を満たしていたのは達成感ではなく、むしろ深い空虚感と、そして自らが解き放ってしまったこの恐るべき力の罪深さだった。
俺の知識は確かにこの国を救った。多くの味方の命を守り抜いた。
だが同時に、これほど多くの敵の命をあまりにも効率的に、そして無慈悲に奪い去った。
この光景を俺は生涯、忘れることはないだろう。
技術は人を豊かにする。だがそれは同時に、これほどまでに残酷な地獄をも生み出すことができるのだ。
俺はその両義性をこの両肩に背負って、これからも生きていかなければならない。
近代戦の幕開け。
その輝かしい響きの裏側にある夥しい死と悲しみの重さを、俺はこの戦場で嫌というほど思い知らされたのだ。
戦いは終わった。
だが俺の本当の戦いは、あるいはここから始まるのかもしれない。
この恐るべき力をどうすれば、真に人々を幸せにするために使うことができるのか。
その答えを見つけるための、長く困難な戦いが。
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