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第六話 僕のスライム軍団
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奇襲。そのコンセプトを胸に、俺は再び素材集めに奔走していた。今度のテーマは「擬態」。ただ硬いだけ、ただ粘つくだけではない。周囲の環境に溶け込むという、より高度な能力をスライムに付与する必要があった。
俺が目指す最初の擬態対象は、フィールドに点在する「岩」だ。ホーンドラビットやゴブリンといった低レベルモンスターは、岩を特に警戒しない。その無防備な背中を討つには、岩への擬態が最も効果的だと考えた。
そのためには、まず本物の岩を徹底的に観察する必要があった。俺は草原の岩の前に座り込み、その表面をじっと見つめる。灰色の岩肌。風雨に晒された微細な凹凸。ところどころに付着した乾いた土や、緑色の苔。これら全てを再現しなければ、見破られてしまうだろう。
俺は素材を集め始めた。様々な色合いの土。粒子の細かい砂。岩に生えていたものと同じ種類の苔。そして、核となるスライムの質感を岩に近づけるため、砕いた石の粉も大量に用意した。アイテムボックスは、もはや地質学者の標本箱のようになっていた。
モンスターメイカー協会に戻り、ゲッペトに挨拶もそこそこに作業台へ向かう。俺の異様な熱気に、ゲッペトは何も言わず面白そうに見守ってくれていた。
「よし、やるぞ」
深呼吸一つ。創造スキルを発動させる。
まずはシンプルに、『スライムの核』と『石の粉』だけで創ってみる。生まれたのは、ただの灰色のスライムだった。質感はざらざらしているが、形はぷるんとしたスライムのまま。これでは擬態とは言えない。失敗だ。
次に、様々な色の土を混ぜて岩肌の色合いを再現しようと試みる。だが、配合比率が少しでも狂うと、まだら模様の奇妙なスライムが生まれるだけ。まるで現代アートのオブジェのようだった。
「うーむ、難しい……」
単純な素材の組み合わせだけではダメだ。スライムに「形を岩に似せろ」という命令、概念そのものを組み込む必要がある。どうすればいい?
俺はふと、アイテムボックスに入っていたあるものを思い出した。以前、森で拾った『カメレオンの鱗』。鑑定結果は【周囲の色に合わせてわずかに変色する特性を持つ。武具の装飾などに使われる】というものだった。
これだ。この「変色」という特性が、擬態能力のトリガーになるかもしれない。俺は最後の望みを託し、新たな配合に挑んだ。
ベースは、石の粉と数種類の土を混ぜて岩の色合いに近づけたもの。そこに、接着剤の役割として苔を少量加える。そして触媒として、『カメレオンの鱗』を一枚だけ、慎重に投入した。
「頼む……!」
光が作業台を包む。今までよりも複雑な光が明滅し、収束していく。やがて光が消えた時、作業台の上には、バスケットボール大の、何の変哲もない岩が一つ、ごろんと置かれていた。
「……え?」
スライムがいない。創造は失敗したのか?俺が呆然と岩に手を伸ばした、その瞬間。岩がぐにゃりと歪み、二つの点が浮かび上がった。
「ユー様。擬態スライム、誕生です。ごろり」
頭の中に響く電子音声。成功だ。完璧な擬態能力を持つスライムが、ついに完成した。俺は興奮のあまり、その岩のようなスライムをまじまじと見つめた。
【擬態スライム】
ランク:ノーマル
HP: 40
MP: 20
攻撃力: 8
防御力: 10
スキル: 擬態(ロック)、不意打ち
【ユニーク特性:奇襲ボーナス(小)】
ステータス自体は、オブシダン・スライムに遠く及ばない。だが、重要なのはそこではない。『擬態』と『不意打ち』という専用スキル。そして、ユニーク特性の『奇襲ボーナス』。これこそが、俺が求めていたものだ。
「やった……!やりましたよ、ゲッペトさん!」
「おお……見事じゃ。本当に岩と見分けがつかん。ユー君、君はとんでもないものを創り出したぞ」
ゲッペトも自分のことのように喜んでくれた。俺は彼に礼を言い、新たな相棒を連れて再び狩り場へと向かった。オブシダン・スライムは、一時的にストック用のアイテムに変換してアイテムボックスにしまっておく。一度に連れ歩けるモンスターの数には上限があるからだ。
草原を抜け、少しレベルの高いゴブリンが出現する森の入り口へ。ゴブリンは二、三体の群れで行動することが多い。オブシダン・スライム一体では苦戦必至の相手だ。
俺は岩がいくつか転がっている場所を見つけると、擬態スライムに指示を出した。
「あの岩の隣で、擬態しろ」
擬態スライムはごろりと転がると、その場に静止した。すると、その体がゆっくりと周囲の岩と同じ色、同じ質感に変化していく。数秒後、そこには二つの岩が並んでいるだけになった。俺でさえ、どちらが本物か一瞬見失うほどの完璧な擬態だった。
俺自身は近くの茂みに身を隠し、獲物が来るのをじっと待つ。まるで狩人になったような気分だった。
数分後、二体のゴブリンが棍棒を担いで歩いてきた。彼らは擬態スライムのすぐ横を、何の警戒もせずに通り過ぎようとする。チャンスだ。
「今だ!」
俺の合図と共に、岩の一つが突如として動き出す。擬態を解いたスライムが、ゴブリンの無防備な背中に向かって飛びかかった。スキル『不意打ち』が発動する。
『-55 CRITICAL!』
赤いクリティカルヒットの表示と共に、ゴブリンのHPゲージが半分以上も削り取られた。すごい威力だ。ユニーク特性の奇襲ボーナスが、これほどとは。
奇襲を受けたゴブリンは、何が起こったか分からないという顔で混乱している。もう一体のゴブリンが慌てて棍棒を振り上げるが、その攻撃は擬態スライムの体をすり抜けて地面を叩いた。スライムは体を液状化させて攻撃を回避する能力も持っているらしい。
体勢を立て直される前に、俺は追撃を指示する。擬態スライムが再び体当たりを食らわせ、ゴブリンを難なく撃破した。残った一体も、仲間がやられたことに怯んでいる隙を突いて、あっさりと倒すことができた。
やった。勝てた。オブシダン・スライムでは、あれほど苦労したであろうゴブリンの群れを、ほとんど無傷で倒すことができた。これが、俺の戦い方だ。
この成功に気を良くした俺は、さらに戦術を発展させることにした。一体では奇襲に失敗するリスクがある。ならば、数で補えばいい。
俺は一度街に戻ると、なけなしの金で素材を買い込み、擬態スライムをさらに二体創造した。これで、合計三体の擬態スライム部隊が完成した。
再びゴブリンの縄張りへ。今度は、三体のスライムを三角形の陣形で配置し、擬態させる。ゴブリンの群れがその包囲網の中に入った瞬間、俺は一斉攻撃の合図を送った。
三方向から同時に岩が襲いかかる。ゴブリンたちは悲鳴を上げる間もなく、集中砲火を浴びてあっという間に全滅した。完璧な作戦勝ちだった。
「これだ……これなら戦える!」
俺は確かな手応えを感じていた。一体一体は弱くても、それぞれの特性を活かし、連携させることで格上の敵をも倒せる。
擬態スライムによる奇襲。
オブシダン・スライムによる防御。
スティッキー・スライムによる足止め。
それぞれの役割に特化したスライムを複数体創造し、状況に応じて使い分ける。そうだ、俺が目指すのは一体の最強モンスターじゃない。多種多様な能力を持つスライムたちで構成された、無敵の『スライム軍団』だ。
硬質化スライム、粘着スライム、そして擬態スライム。俺の最初の軍団員たちが揃った。彼らはまだ弱く、発展途上だ。だが、無限の可能性を秘めている。
戦闘ではなく、工夫で勝つ。知恵と発想力で、どんな強敵にも立ち向かう。それこそが、戦闘能力ゼロの生産職【モンスターメイカー】である俺だけの戦い方なのだ。
俺は満足げに、ゴブリンがドロップしたアイテムを拾い上げた。次の目標は、この軍団をさらに強化するための、新たな素材と資金集めだ。この戦い方なら、今まで行けなかったような危険なエリアにも挑戦できるかもしれない。
空を見上げると、夕日が世界を赤く染めていた。俺の心は、このゲームを始めた時と同じくらい、いや、それ以上に燃えていた。この道は、決して間違いじゃなかった。俺の冒険は、まだ始まったばかりなのだ。
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そのためには、まず本物の岩を徹底的に観察する必要があった。俺は草原の岩の前に座り込み、その表面をじっと見つめる。灰色の岩肌。風雨に晒された微細な凹凸。ところどころに付着した乾いた土や、緑色の苔。これら全てを再現しなければ、見破られてしまうだろう。
俺は素材を集め始めた。様々な色合いの土。粒子の細かい砂。岩に生えていたものと同じ種類の苔。そして、核となるスライムの質感を岩に近づけるため、砕いた石の粉も大量に用意した。アイテムボックスは、もはや地質学者の標本箱のようになっていた。
モンスターメイカー協会に戻り、ゲッペトに挨拶もそこそこに作業台へ向かう。俺の異様な熱気に、ゲッペトは何も言わず面白そうに見守ってくれていた。
「よし、やるぞ」
深呼吸一つ。創造スキルを発動させる。
まずはシンプルに、『スライムの核』と『石の粉』だけで創ってみる。生まれたのは、ただの灰色のスライムだった。質感はざらざらしているが、形はぷるんとしたスライムのまま。これでは擬態とは言えない。失敗だ。
次に、様々な色の土を混ぜて岩肌の色合いを再現しようと試みる。だが、配合比率が少しでも狂うと、まだら模様の奇妙なスライムが生まれるだけ。まるで現代アートのオブジェのようだった。
「うーむ、難しい……」
単純な素材の組み合わせだけではダメだ。スライムに「形を岩に似せろ」という命令、概念そのものを組み込む必要がある。どうすればいい?
俺はふと、アイテムボックスに入っていたあるものを思い出した。以前、森で拾った『カメレオンの鱗』。鑑定結果は【周囲の色に合わせてわずかに変色する特性を持つ。武具の装飾などに使われる】というものだった。
これだ。この「変色」という特性が、擬態能力のトリガーになるかもしれない。俺は最後の望みを託し、新たな配合に挑んだ。
ベースは、石の粉と数種類の土を混ぜて岩の色合いに近づけたもの。そこに、接着剤の役割として苔を少量加える。そして触媒として、『カメレオンの鱗』を一枚だけ、慎重に投入した。
「頼む……!」
光が作業台を包む。今までよりも複雑な光が明滅し、収束していく。やがて光が消えた時、作業台の上には、バスケットボール大の、何の変哲もない岩が一つ、ごろんと置かれていた。
「……え?」
スライムがいない。創造は失敗したのか?俺が呆然と岩に手を伸ばした、その瞬間。岩がぐにゃりと歪み、二つの点が浮かび上がった。
「ユー様。擬態スライム、誕生です。ごろり」
頭の中に響く電子音声。成功だ。完璧な擬態能力を持つスライムが、ついに完成した。俺は興奮のあまり、その岩のようなスライムをまじまじと見つめた。
【擬態スライム】
ランク:ノーマル
HP: 40
MP: 20
攻撃力: 8
防御力: 10
スキル: 擬態(ロック)、不意打ち
【ユニーク特性:奇襲ボーナス(小)】
ステータス自体は、オブシダン・スライムに遠く及ばない。だが、重要なのはそこではない。『擬態』と『不意打ち』という専用スキル。そして、ユニーク特性の『奇襲ボーナス』。これこそが、俺が求めていたものだ。
「やった……!やりましたよ、ゲッペトさん!」
「おお……見事じゃ。本当に岩と見分けがつかん。ユー君、君はとんでもないものを創り出したぞ」
ゲッペトも自分のことのように喜んでくれた。俺は彼に礼を言い、新たな相棒を連れて再び狩り場へと向かった。オブシダン・スライムは、一時的にストック用のアイテムに変換してアイテムボックスにしまっておく。一度に連れ歩けるモンスターの数には上限があるからだ。
草原を抜け、少しレベルの高いゴブリンが出現する森の入り口へ。ゴブリンは二、三体の群れで行動することが多い。オブシダン・スライム一体では苦戦必至の相手だ。
俺は岩がいくつか転がっている場所を見つけると、擬態スライムに指示を出した。
「あの岩の隣で、擬態しろ」
擬態スライムはごろりと転がると、その場に静止した。すると、その体がゆっくりと周囲の岩と同じ色、同じ質感に変化していく。数秒後、そこには二つの岩が並んでいるだけになった。俺でさえ、どちらが本物か一瞬見失うほどの完璧な擬態だった。
俺自身は近くの茂みに身を隠し、獲物が来るのをじっと待つ。まるで狩人になったような気分だった。
数分後、二体のゴブリンが棍棒を担いで歩いてきた。彼らは擬態スライムのすぐ横を、何の警戒もせずに通り過ぎようとする。チャンスだ。
「今だ!」
俺の合図と共に、岩の一つが突如として動き出す。擬態を解いたスライムが、ゴブリンの無防備な背中に向かって飛びかかった。スキル『不意打ち』が発動する。
『-55 CRITICAL!』
赤いクリティカルヒットの表示と共に、ゴブリンのHPゲージが半分以上も削り取られた。すごい威力だ。ユニーク特性の奇襲ボーナスが、これほどとは。
奇襲を受けたゴブリンは、何が起こったか分からないという顔で混乱している。もう一体のゴブリンが慌てて棍棒を振り上げるが、その攻撃は擬態スライムの体をすり抜けて地面を叩いた。スライムは体を液状化させて攻撃を回避する能力も持っているらしい。
体勢を立て直される前に、俺は追撃を指示する。擬態スライムが再び体当たりを食らわせ、ゴブリンを難なく撃破した。残った一体も、仲間がやられたことに怯んでいる隙を突いて、あっさりと倒すことができた。
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この成功に気を良くした俺は、さらに戦術を発展させることにした。一体では奇襲に失敗するリスクがある。ならば、数で補えばいい。
俺は一度街に戻ると、なけなしの金で素材を買い込み、擬態スライムをさらに二体創造した。これで、合計三体の擬態スライム部隊が完成した。
再びゴブリンの縄張りへ。今度は、三体のスライムを三角形の陣形で配置し、擬態させる。ゴブリンの群れがその包囲網の中に入った瞬間、俺は一斉攻撃の合図を送った。
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擬態スライムによる奇襲。
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