M.M.O. - Monster Maker Online

夏見ナイ

文字の大きさ
14 / 100

第十四話 常識外れの攻略法

しおりを挟む
「あなたを信じる」
カエデのその一言が、俺の脳に突き刺さった。もう迷いはない。俺が持てる全ての知識と、常識外れの発想を、この一手に懸ける。

俺はオブシダン・スライムを後退させ、自分の懐から一つのアイテムを取り出した。それは、道中で手に入れた『酸性スライムの粘液』が入った小瓶。鑑定結果は【金属をわずかに溶かす性質を持つ。取り扱い注意】。今まで使い道がなく、アイテムボックスの肥やしになっていたものだ。

これを、どうやってあのゴーレムに使う?
投げつけたところで、あの巨体には焼け石に水だ。もっと効率的に、そしてピンポイントで、奴の弱点を突く必要がある。

俺はカエデに叫んだ。
「カエデさん!奴の注意を引きつけてください!できるだけ派手に!」
「分かった!」

カエデはゴーレムの肩から飛び降りると、レイピアを構え直した。彼女はもう迷わない。俺が何かを成し遂げるまでの時間を稼ぐ。それが、今の自分の役割だと理解していた。

彼女はゴーレムの足元を駆け回り、聖なる光を纏った剣技を次々と繰り出す。ダメージはほとんど通らない。だが、その派手な光と動きは、ゴーレムの注意を完全に引きつけていた。

その隙に、俺は最後の創造に取り掛かる。
「スキル、創造!」

ベースにするのは、体が液体に近く、どんな隙間にも入り込めるよう調整したスライム。そこに、『酸性スライムの粘液』を限界まで投入する。さらに、森で採取した『粘つく樹液』も少量加える。これは、対象に付着し、流れ落ちるのを防ぐためだ。

イメージするのは、生物の関節を溶かし、動きを蝕む、強力な溶解液そのもの。形を持たない、不定形の暗殺者。

創造の光が俺の手元で渦を巻く。ゴーレムの攻撃の余波で、何度も体勢を崩しそうになるが、必死で集中力を維持した。

「ユー様。新たな同胞の誕生です。じゅわ…」

俺の手の中に生まれたのは、どろりとした緑色の液体状のスライムだった。見た目は不気味だが、その内にはゴーレムの鉄壁を崩す、唯一の可能性が秘められている。

【アシッド・スライム】
スキル:溶解、付着

「できた!」
俺は完成したアシッド・スライムを数体、アイテムボックスから射出可能なカプセルに詰めた。そして、カエデに向かって叫ぶ。

「カエデさん!今からスライムを投げます!それを奴の関節の隙間に叩き込んでください!」
「関節だと!?分かった、やってみる!」

俺は深呼吸し、ゴーレムの動きを見極める。カエデがゴーレムの右足に攻撃を仕掛け、その巨体がわずかに傾いた。チャンスだ。

俺はカプセルを、山なりの軌道を描くように、ゴーレムの右肩の関節部分めがけて投げ込んだ。

「そこだ!」

俺の合図に、カエデが反応する。彼女は地面を蹴ると、信じられない跳躍力でゴーレムの腕を駆け上がった。そして、空中で俺が投げたカプセルをレイピアの柄で正確に打ち据える。

バシン!と小気味よい音が響き、カプセルが弾ける。中から飛び出した緑色の液体――アシッド・スライムが、狙い違わずゴーレムの肩の関節、岩と木々のわずかな隙間にべちゃりと付着した。

「ゴ……?」
ゴーレムは、肩に付着したスライムに気づいていないようだった。カエデの攻撃の方が、よほど脅威だと判断しているのだろう。

だが、異変はすぐに起きた。
ジュウウウウウッ、と肉の焼けるような音が響き、関節の隙間から白い煙が立ち上り始めた。アシッド・スライムが、ゴーレムの体を内側から溶かし始めているのだ。

「ゴオオオオオ!?」

ゴーレムが、初めて苦痛の声を上げた。右腕を動かそうとするが、その動きは明らかに鈍く、ぎこちない。関節が溶かされ、正常に機能しなくなっているのだ。

「効いている!」
俺は確信し、次々とアシッド・スライムを投擲する。膝、肘、首。カエデは俺の意図を完璧に理解し、アクロバティックな動きで全てのカプセルを目標地点へと導いていく。

俺たちの連携は、もはや阿吽の呼吸だった。俺が投げ、カエデが撃つ。その繰り返し。
モンスターメイカーの創造力と、聖騎士の超人的な技量。本来なら決して交わることのなかった二つの力が、今、一つの奇跡を生み出していた。

ゴーレムの全身の関節から、白い煙が噴き出す。その動きは、見る見るうちに鈍重になっていった。鉄壁を誇ったその体は、今やただのでくの坊だ。

「ゴ……ガ……」
悲鳴を上げながら、ゴーレムは巨体を支えきれずに、ついにその場に膝をついた。

勝機。
カエデは、この一瞬を見逃さなかった。

「これで、終わりだ!」

彼女はゴーレムの崩れ落ちた腕を駆け上がり、弱点である胸部のコアへと肉薄する。関節を溶かされたゴーレムに、もう彼女を阻む術はなかった。

レイピアの切っ先が、紅く輝くコアに突き立てられる。

パリン、と澄んだ音が響いた。
コアに亀裂が走り、そこから眩い光が溢れ出す。

「ゴオオオオオオ……」

断末魔の咆哮。ゴーレムの巨大な体が、ゆっくりと崩れ落ちていく。岩と木々は、ただのガラクタに戻り、やがて光の粒子となって霧散した。

静寂が戻った広場には、大量のドロップアイテムと、そして、肩で息をする俺とカエデだけが残されていた。

勝った。あの絶望的な強さを誇った番人に、俺たちは勝ったのだ。

俺は全身の力が抜け、その場にへたり込んだ。カエデも、レイピアを杖代わりにして、ようやく立っているのがやっとのようだった。

俺たちは、お互いの顔を見合わせた。
そして、どちらからともなく、ふっと笑みがこぼれた。

「……とんでもない、無茶をする」
カエデが、呆れたように、それでいてどこか楽しそうに言った。

「あなたこそ。あんな動き、人間業じゃありませんよ」
俺も笑いながら返した。

常識外れの攻略法。それは、俺一人では成し得なかった。カエデだけでも、不可能だった。
俺たちの力が一つになったからこそ、掴み取れた勝利だった。

俺たちの間には、もう何のわだかまりもなかった。ただ、強大な敵を共に打ち倒した、戦友としての確かな絆が、そこには生まれていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本国 召喚獣管理省 関東庁 召喚獣総合事案即応科。

wakaba1890
ファンタジー
召喚獣。 それは向こう側とされる所から、10歳を迎えた日本人の子供の下に召喚されるモンスターのことである。 初代天皇・神武天皇が日本を建国した際に書かれた絵画には彼は金鵄と呼ばれる金色に輝く鵄(とび)と契約したのが原初となっている。 そして、縄文、弥生、古墳、飛鳥、平安、戦国時代から近代から今に至るまで、時代を動かしてきた人物の側には確かに召喚獣は介在していた。 また、奇妙な事に、日本国に限り、齢10歳を迎えた日本在住の日本人にのみ体のどこかから多種多様な紋章が発現し、当人が念じると任意の場所から召喚陣が現れ、人ならざるモンスターを召喚される。 そして、彼らモンスターは主人である当人や心を許した者に対して忠実であった。 そのため、古来の日本から、彼ら召喚獣は農耕、治水、土木、科学技術、エネルギー、政治、経済、金融、戦争など国家の基盤となる柱から、ありとあらゆる分野において、今日に至るまで日本国とアジアの繁栄に寄与してきた。 そして、建国から今まで、国益の基盤たる彼ら数万種類以上をも及ぶ召喚獣を取り締まり管理し、2600年以上と脈々と受け継がれてきた名誉ある国家職がーーーーー国家召喚獣管理官である。

シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~

尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。 だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。 全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。 勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。 そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。 エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。 これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。 …その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。 妹とは血の繋がりであろうか? 妹とは魂の繋がりである。 兄とは何か? 妹を護る存在である。 かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗
ファンタジー
俺と相棒二人だけの冴えない冒険者パーティー。普段はスライム退治が専門だ。その冴えない日常を語る。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

 神典日月神示 真実の物語

蔵屋
歴史・時代
 私は二人の方々の神憑りについて、今から25年前にその真実を知りました。 この方たちのお名前は 大本開祖•出口なお(でぐちなお)、 神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)です。  この日月神示(ひつきしんじ)または日尽神示(ひつくしんじ)は、神典研究家で画家でもあった岡本天明(おかもとてんめい)に「国常立尊(国之常立神)という高級神霊からの神示を自動書記によって記述したとされる書物のことです。  昭和19年から27年(昭和23・26年も無し)に一連の神示が降り、6年後の昭和33、34年に補巻とする1巻、さらに2年後に8巻の神示が降りたとされています。 その書物を纏めた書類です。  この書類は神国日本の未来の預言書なのだ。 私はこの日月神示(ひつきしんじ)に出会い、研究し始めてもう25年になります。  日月神示が降ろされた場所は麻賀多神社(まかたじんじゃ)です。日月神示の最初の第一帖と第二帖は第二次世界大戦中の昭和19年6月10日に、この神社の社務所で岡本天明が神憑りに合い自動書記さされたのです。 殆どが漢数字、独特の記号、若干のかな文字が混じった文体で構成され、抽象的な絵のみで書記されている「巻」もあります。 本巻38巻と補巻1巻の計39巻が既に発表されているが、他にも、神霊より発表を禁じられている「巻」が13巻あり、天明はこの未発表のものについて昭和36年に「或る時期が来れば発表を許されるものか、許されないのか、現在の所では不明であります」と語っています。 日月神示は、その難解さから、書記した天明自身も当初は、ほとんど読むことが出来なかったが、仲間の神典研究家や霊能者達の協力などで少しずつ解読が進み、天明亡き後も妻である岡本三典(1917年〈大正6年〉11月9日 ~2009年〈平成21年〉6月23日)の努力により、現在では一部を除きかなりの部分が解読されたと言われているます。しかし、一方では神示の中に「この筆示は8通りに読めるのであるぞ」と書かれていることもあり、解読法の一つに成功したという認識が関係者の間では一般的です。 そのために、仮訳という副題を添えての発表もありました。 なお、原文を解読して漢字仮名交じり文に書き直されたものは、特に「ひふみ神示」または「一二三神示」と呼ばれています。 縄文人の祝詞に「ひふみ祝詞(のりと)」という祝詞の歌があります。 日月神示はその登場以来、関係者や一部専門家を除きほとんど知られていなかったが、1990年代の初め頃より神典研究家で翻訳家の中矢伸一の著作などにより広く一般にも知られるようになってきたと言われています。 この小説は真実の物語です。 「神典日月神示(しんてんひつきしんじ)真実の物語」 どうぞ、お楽しみ下さい。 『神知りて 人の幸せ 祈るのみ 神の伝えし 愛善の道』

処理中です...