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第十八話 商人の依頼
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「お願い、ですか?」
リオの唐突な申し出に、俺は戸惑った。さっき会ったばかりの相手に、一体どんな用があるというのだろう。
リオは悪戯っぽく笑うと、人差し指を立てた。
「そう、お願い。いや、これはビジネスの話かな。ユーさん、あなたにしか頼めない、とっておきの依頼があるんだけど、興味ない?」
ビジネス、という言葉に、俺は少し身構えた。彼女は商人だ。きっと、何か裏があるに違いない。
だが、俺の創造物の価値を誰よりも正確に評価してくれた彼女への信頼感も、確かにあった。
「……内容によります」
俺が慎重に答えると、リオは「まあ、そう警戒しないでよ」と肩をすくめた。
「もちろん、タダでとは言わない。成功報酬は弾むし、ユーさんにとっても、きっと悪い話じゃないはずだよ」
彼女はそう言うと、広場のベンチを指差した。
「ちょっと長くなるから、場所を変えようか」
俺たちは露店をたたみ、人通りの少ないベンチへと移動した。街灯の柔らかな光が、彼女のそばかすの浮いた顔を照らしている。
リオは巨大なリュックサックを隣に置くと、真剣な表情で語り始めた。
「私、商人としてこの世界で一番になるのが目標なんだ。そのためには、他の誰も扱っていない、ユニークな商品が必要不可欠なの」
彼女の瞳は、夢を語る者のそれだった。ただ金儲けがしたいだけではない。自分の力で何かを成し遂げたいという、強い意志が感じられた。
「そこで目をつけたのが、『星屑の鉱石』っていうレアアイテム。これは、特殊なポーションの材料になるんだけど、まだ市場にはほとんど出回ってない。これを独占販売できれば、私は一気にトップ商人に躍り出ることができる」
「星屑の鉱石……」
聞いたことのない名前だ。きっと、相当な希少品なのだろう。
「その鉱石が採れる場所は、もう突き止めてあるんだ。問題は、そこまでの道のり」
リオはそこで言葉を区切り、俺の目をじっと見つめた。
「鉱石が眠っているのは、『ゴブリンの洞窟』の最深部。あそこは、ゴブリンシャーマンやホブゴブリンがうじゃうじゃいる、かなりの危険地帯なんだ。戦闘能力のない私一人じゃ、とてもじゃないけどたどり着けない」
ゴブリンの洞窟。フロンティア周辺では、迷いの森と並んで高難易度エリアとして知られている場所だ。確かに、商人である彼女が一人で攻略できるような場所ではない。
「それで、護衛を雇おうと?」
「その通り。でも、ただ腕が立つだけの傭兵じゃダメなんだ。洞窟の中は、厄介なトラップや、普通の攻撃が効きにくい特殊なモンスターも多い。力押しだけじゃ、絶対に攻略できない」
そこで、彼女はにやりと笑った。
「だから、ユーさんが必要だってわけ。あなたの、あの常識外れのモンスターたち。彼らの力があれば、きっとどんな困難も乗り越えられる。そう思ったんだよね」
彼女は、俺の戦い方そのものに価値を見出してくれていた。カエデが『道を切り開く力』と評した、俺の創造術。それが、彼女のビジネスの切り札になると言うのだ。
「どうかな?私の採掘の護衛、引き受けてくれない?」
彼女は期待に満ちた瞳で、俺の返事を待っている。
断る理由はなかった。むしろ、俺にとっても願ってもない話だった。
第一に、報酬だ。彼女は「弾む」と言った。当面の活動資金に困っていた俺にとって、これは干天の慈雨だ。
第二に、ゴブリンの洞窟で手に入るであろう、新たな素材。洞窟という特殊な環境には、きっと未知の特性を持つ素材が眠っているはずだ。それは、俺の創造の幅をさらに広げてくれるだろう。
そして何より、俺はリオという商人に、強く惹かれていた。自分の夢のために、リスクを恐れず突き進むその姿勢。彼女のビジネスを手伝うことは、きっと面白い冒険になる。
「分かりました。その依頼、引き受けます」
俺がそう答えると、リオは「やった!」と声を上げてガッツポーズをした。
「ありがとう、ユーさん!あなたなら、そう言ってくれると思ってた!」
彼女はリュックサタックから一枚の羊皮紙を取り出し、俺に手渡した。契約書だった。
【依頼内容:ゴブリンの洞窟における、星屑の鉱石の採掘護衛】
【成功報酬:50,000G】
【追加報酬:採掘した鉱石の10%、及び道中で獲得した素材・ドロップアイテムの50%】
その報酬額を見て、俺は息を呑んだ。五万G。俺が『生命の枝』を使うために必要だった金額と、全く同じだ。これが偶然だろうか。
それだけではない。鉱石や素材まで分けてくれるという。商人である彼女にしてみれば、破格の条件だろう。それだけ、俺の力に期待してくれているということだ。
「この条件で、問題ないかな?」
「問題ないどころか、良すぎるくらいです」
俺は契約書にサインをした。こうして、俺はリオの専属護衛として、彼女のビジネスパートナーとなった。
「さてと、話は決まりだね!出発は明日の朝。北門で待ち合わせよう」
リオは満足げに立ち上がった。
「あ、そうだ。護衛は、ユーさんだけじゃないからね。もう一人、腕利きの前衛を雇ってあるんだ。三人パーティなら、まず間違いなく最深部までたどり着けるはずだよ」
「もう一人……?」
どんなプレイヤーだろうか。屈強な戦士か、あるいは歴戦の騎士か。
リオは、その問いには答えず、意味深に笑うだけだった。
「それは、明日のお楽しみ。きっと、ユーさんも驚くと思うよ」
彼女はそう言うと、巨大なリュックサックを軽々と背負い、夜の闇へと消えていった。嵐のような少女だった。
一人残された俺は、手にした契約書と、ずしりと重い30000Gの革袋を交互に見た。
ほんの数時間前まで、金策に悩み、自分の価値を誰にも理解されずに絶望していたのが、嘘のようだ。
ゴブリンの洞窟。新たな冒険の舞台。そして、もう一人の仲間。
明日から、また新しい物語が始まる。俺は高鳴る胸を抑えながら、明日の準備のために、夜の街を歩き出した。
今夜は、久しぶりにぐっすりと眠れそうだった。
リオの唐突な申し出に、俺は戸惑った。さっき会ったばかりの相手に、一体どんな用があるというのだろう。
リオは悪戯っぽく笑うと、人差し指を立てた。
「そう、お願い。いや、これはビジネスの話かな。ユーさん、あなたにしか頼めない、とっておきの依頼があるんだけど、興味ない?」
ビジネス、という言葉に、俺は少し身構えた。彼女は商人だ。きっと、何か裏があるに違いない。
だが、俺の創造物の価値を誰よりも正確に評価してくれた彼女への信頼感も、確かにあった。
「……内容によります」
俺が慎重に答えると、リオは「まあ、そう警戒しないでよ」と肩をすくめた。
「もちろん、タダでとは言わない。成功報酬は弾むし、ユーさんにとっても、きっと悪い話じゃないはずだよ」
彼女はそう言うと、広場のベンチを指差した。
「ちょっと長くなるから、場所を変えようか」
俺たちは露店をたたみ、人通りの少ないベンチへと移動した。街灯の柔らかな光が、彼女のそばかすの浮いた顔を照らしている。
リオは巨大なリュックサックを隣に置くと、真剣な表情で語り始めた。
「私、商人としてこの世界で一番になるのが目標なんだ。そのためには、他の誰も扱っていない、ユニークな商品が必要不可欠なの」
彼女の瞳は、夢を語る者のそれだった。ただ金儲けがしたいだけではない。自分の力で何かを成し遂げたいという、強い意志が感じられた。
「そこで目をつけたのが、『星屑の鉱石』っていうレアアイテム。これは、特殊なポーションの材料になるんだけど、まだ市場にはほとんど出回ってない。これを独占販売できれば、私は一気にトップ商人に躍り出ることができる」
「星屑の鉱石……」
聞いたことのない名前だ。きっと、相当な希少品なのだろう。
「その鉱石が採れる場所は、もう突き止めてあるんだ。問題は、そこまでの道のり」
リオはそこで言葉を区切り、俺の目をじっと見つめた。
「鉱石が眠っているのは、『ゴブリンの洞窟』の最深部。あそこは、ゴブリンシャーマンやホブゴブリンがうじゃうじゃいる、かなりの危険地帯なんだ。戦闘能力のない私一人じゃ、とてもじゃないけどたどり着けない」
ゴブリンの洞窟。フロンティア周辺では、迷いの森と並んで高難易度エリアとして知られている場所だ。確かに、商人である彼女が一人で攻略できるような場所ではない。
「それで、護衛を雇おうと?」
「その通り。でも、ただ腕が立つだけの傭兵じゃダメなんだ。洞窟の中は、厄介なトラップや、普通の攻撃が効きにくい特殊なモンスターも多い。力押しだけじゃ、絶対に攻略できない」
そこで、彼女はにやりと笑った。
「だから、ユーさんが必要だってわけ。あなたの、あの常識外れのモンスターたち。彼らの力があれば、きっとどんな困難も乗り越えられる。そう思ったんだよね」
彼女は、俺の戦い方そのものに価値を見出してくれていた。カエデが『道を切り開く力』と評した、俺の創造術。それが、彼女のビジネスの切り札になると言うのだ。
「どうかな?私の採掘の護衛、引き受けてくれない?」
彼女は期待に満ちた瞳で、俺の返事を待っている。
断る理由はなかった。むしろ、俺にとっても願ってもない話だった。
第一に、報酬だ。彼女は「弾む」と言った。当面の活動資金に困っていた俺にとって、これは干天の慈雨だ。
第二に、ゴブリンの洞窟で手に入るであろう、新たな素材。洞窟という特殊な環境には、きっと未知の特性を持つ素材が眠っているはずだ。それは、俺の創造の幅をさらに広げてくれるだろう。
そして何より、俺はリオという商人に、強く惹かれていた。自分の夢のために、リスクを恐れず突き進むその姿勢。彼女のビジネスを手伝うことは、きっと面白い冒険になる。
「分かりました。その依頼、引き受けます」
俺がそう答えると、リオは「やった!」と声を上げてガッツポーズをした。
「ありがとう、ユーさん!あなたなら、そう言ってくれると思ってた!」
彼女はリュックサタックから一枚の羊皮紙を取り出し、俺に手渡した。契約書だった。
【依頼内容:ゴブリンの洞窟における、星屑の鉱石の採掘護衛】
【成功報酬:50,000G】
【追加報酬:採掘した鉱石の10%、及び道中で獲得した素材・ドロップアイテムの50%】
その報酬額を見て、俺は息を呑んだ。五万G。俺が『生命の枝』を使うために必要だった金額と、全く同じだ。これが偶然だろうか。
それだけではない。鉱石や素材まで分けてくれるという。商人である彼女にしてみれば、破格の条件だろう。それだけ、俺の力に期待してくれているということだ。
「この条件で、問題ないかな?」
「問題ないどころか、良すぎるくらいです」
俺は契約書にサインをした。こうして、俺はリオの専属護衛として、彼女のビジネスパートナーとなった。
「さてと、話は決まりだね!出発は明日の朝。北門で待ち合わせよう」
リオは満足げに立ち上がった。
「あ、そうだ。護衛は、ユーさんだけじゃないからね。もう一人、腕利きの前衛を雇ってあるんだ。三人パーティなら、まず間違いなく最深部までたどり着けるはずだよ」
「もう一人……?」
どんなプレイヤーだろうか。屈強な戦士か、あるいは歴戦の騎士か。
リオは、その問いには答えず、意味深に笑うだけだった。
「それは、明日のお楽しみ。きっと、ユーさんも驚くと思うよ」
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一人残された俺は、手にした契約書と、ずしりと重い30000Gの革袋を交互に見た。
ほんの数時間前まで、金策に悩み、自分の価値を誰にも理解されずに絶望していたのが、嘘のようだ。
ゴブリンの洞窟。新たな冒険の舞台。そして、もう一人の仲間。
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そのために、仮訳という副題を添えての発表もありました。
なお、原文を解読して漢字仮名交じり文に書き直されたものは、特に「ひふみ神示」または「一二三神示」と呼ばれています。
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