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第五十四話 第二の試練:力
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賢者の塔、第一階層。俺たちの前に立ちはだかったのは「知恵」の試練。無数のギミックが散りばめられた、巨大な謎解き部屋だった。
「マスター! 石版の解読、終わりました!」
ゴブが誇らしげに報告してきた。
「『古の王は、三人の息子に国を分けた。長男には力を、次男には富を、三男には知恵を。だが、真の王が持つべきは、その三つの調和なり』……と書かれています!」
「三人の息子……。あの石像のことか」
カエデが、大きさの違う三体の石像を見つめる。一番大きな像は剣を、中くらいの像は金貨袋を、一番小さな像は書物を持っていた。
「なるほどね!」
リオがポンと手を打った。
「『調和』っていうのが、あの天秤のことなんだよ! きっと、この三つの像を、天秤が釣り合うように正しく配置すればいいんだ!」
だが、問題はどうやって「力」「富」「知恵」という、形の無いものを天秤にかけるかだった。
石像そのものを動かそうとしても、びくともしない。
俺はホール全体を見渡しながら、思考を巡らせていた。
石像、石版、天秤。そして、水晶でできたこの空間そのもの。何か見落としているものはないか。
ふと、俺は天井を見上げた。
水晶の天井には複雑な模様が刻まれている。そして、その中央からは、プリズムのように光を屈折させる巨大な水晶が吊り下げられていた。
ホールを照らす光は、全てあの水晶から放たれている。
「……光だ」
俺は呟いた。
「この部屋の謎を解く鍵は、光だ」
俺は仲間たちに自分の仮説を話した。
「あの天秤は重さではなく、光の量を測るものじゃないでしょうか。三体の石像は、それぞれが特定の光を当てられるのを待っている。そして、正しい光を正しい量だけ天秤に注いだ時、道は開かれる」
「光の量……? でも、どうやって?」
リオが首を傾げる。
俺はアイテムボックスから、いくつかのスライムを取り出した。
「こいつらを使います」
俺が取り出したのは【ライト・スライム】、そして光を吸収する性質を持つ【シャドウスライム】のコアから創り出した【ダーク・スライム】。
俺はライト・スライムに指示を出し、天井のプリズムに向かって光を放たせた。
プリズムに当たった光は七色に分光され、ホール内に美しい虹を描き出す。
そして、その光が石像に当たると、石像が持っていたアイテム――剣、金貨袋、書物が、それぞれ異なる色の光を吸収し始めた。
剣は赤い光を、金貨袋は黄色い光を、そして書物は青い光を。
「光の三原色……!」
リオがはっとしたように声を上げた。
謎は解けた。
石版の言葉、『力の赤』、『富の黄』、『知恵の青』。この三色の光を天秤が釣り合うように、つまり同じ量だけ注ぎ込めばいい。
だが、プリズムから降り注ぐ光の量は均一ではない。赤の光が最も強く、青の光が最も弱い。
そこで、俺のスライムたちの出番だった。
「ライト・スライムは最も弱い青の光を増幅させて。ダーク・スライムは最も強い赤の光を、少しだけ吸収してくれ」
俺の指示に従い、二体のスライムが動き出す。
ライト・スライムが青い光を浴びてさらに輝きを増し、ダーク・スライムが赤い光の通り道に影を落としてその勢いを弱める。
そして、ついに。
三色の光の量が完全に均一になった、その瞬間。
天秤がカタン、と音を立てて完璧な水平を保った。
ゴゴゴゴゴ……!
螺旋階段を塞いでいた光の壁がゆっくりと消えていく。
俺たちは顔を見合わせ、勝利の笑みを浮かべた。
「やった……! やったね、ユーさん!」
「見事だ、ユー。お前の発想がなければ、永遠にこの部屋から出られなかったかもしれん」
仲間たちの称賛が心地よかった。
俺たちは螺旋階段を上り、第二階層へと向かった。
階段を上りきった先。そこは、第一階層の静謐な雰囲気とは打って変わって、殺伐とした空間だった。
広大な円形の闘技場のような場所。
床は血と油で黒ずみ、壁には無数の傷跡が刻まれている。そして、その空間を埋め尽くすように無数のゴーレムが、機械的な動作音を立てながら徘徊していた。石でできたもの、鉄でできたもの、中には水晶でできた、美しいが見るからに頑丈そうなゴーレムもいる。
『第二階層の試練は、「力」』
頭の中に再び大賢者の声が響く。
『知恵ある者よ、汝らがその知恵を守るだけの力を持つことを証明せよ。このゴーレム軍団を突破し、階層の主を打ち破りし時、次なる道が開かれん』
今度は問答無用の純粋な戦闘トライアル。
その数、ざっと見て五十体以上。
「……面白くなってきたじゃないか」
カエデがレイピアを抜き放ち、好戦的な笑みを浮かべた。謎解きで溜まった鬱憤を、ここで晴らすつもりらしい。
「数が多すぎる! 一体ずつ、確実に!」
リオが叫ぶ。
「ゴブ、インプたち! 援護を頼む!」
「はい、マスター!」
戦いの火蓋が切って落とされた。
カエデは嵐のようにゴーレムの群れへと突っ込んでいく。その剣閃は石のゴーレムをバターのように切り裂き、鉄のゴーレムの装甲を紙のように貫く。
だが、敵の数はあまりにも多い。
一体倒しても、すぐに新たな二体がその穴を埋める。
「マスター、あの水晶のゴーレム、硬いです! 僕の魔法が、あまり効きません!」
ゴブのファイアボールが水晶のゴーレムに命中するが、その表面を少し焦がすだけで決定的なダメージにはならない。
「くそっ、キリがない!」
俺は戦況を見極めていた。
このままではジリ貧だ。俺たちの体力が尽きるのが先か、ゴーレムを全滅させるのが先か。
何か、この状況を覆す一手はないか。
俺はゴーレムたちの装甲を破壊するために、アシッド・スライムを召喚した。緑色の溶解液がゴーレムの体を蝕んでいく。
確かに効果はある。だが、一体一体にスライムを付着させていては時間がかかりすぎる。
もっと効率的に。もっと広範囲に。
俺の脳裏に、一つの悪魔的な閃きが浮かんだ。
俺はアイテムボックスから、一つの巨大なスライムのコアを取り出した。
それはゴブリンの洞窟でホブゴビリン・キングを倒した時に使った、【ロックタール・スライム】のコア。超粘着と瞬間硬化の能力を持つ、俺の切り札の一つ。
俺は、そのコアにさらに【アシッド・スライム】の溶解能力と、【ボム・スライム】の爆発能力を、無理やり詰め込んでいく。
「ユー、何を創る気だ!?」
カエデが俺のただならぬ気配に気づいて叫ぶ。
俺は不敵に笑った。
「最高の絨毯爆撃をお見舞いしてやりますよ」
創造の光が弾けた。
生まれたのは、黒く、どろりとした巨大な粘液の塊。
俺は、そのスライムにたった一つの命令を下した。
「分裂し、飛び散れ!」
スライムは俺の命令に応え、無数の小さな粘液の弾丸となって闘技場全体へと弾け飛んだ。
それは、まるで黒い雨。
ゴーレム軍団のほぼ全てに、その黒い粘液が付着する。
そして、俺は最後の引き金を引いた。
「――溶解し、爆発しろ」
次の瞬間。
闘技場は閃光と轟音に包まれた。
第二の試練、「力」。
俺は、その試練に俺だけの「力」の形で答えを叩きつけてやった。
「マスター! 石版の解読、終わりました!」
ゴブが誇らしげに報告してきた。
「『古の王は、三人の息子に国を分けた。長男には力を、次男には富を、三男には知恵を。だが、真の王が持つべきは、その三つの調和なり』……と書かれています!」
「三人の息子……。あの石像のことか」
カエデが、大きさの違う三体の石像を見つめる。一番大きな像は剣を、中くらいの像は金貨袋を、一番小さな像は書物を持っていた。
「なるほどね!」
リオがポンと手を打った。
「『調和』っていうのが、あの天秤のことなんだよ! きっと、この三つの像を、天秤が釣り合うように正しく配置すればいいんだ!」
だが、問題はどうやって「力」「富」「知恵」という、形の無いものを天秤にかけるかだった。
石像そのものを動かそうとしても、びくともしない。
俺はホール全体を見渡しながら、思考を巡らせていた。
石像、石版、天秤。そして、水晶でできたこの空間そのもの。何か見落としているものはないか。
ふと、俺は天井を見上げた。
水晶の天井には複雑な模様が刻まれている。そして、その中央からは、プリズムのように光を屈折させる巨大な水晶が吊り下げられていた。
ホールを照らす光は、全てあの水晶から放たれている。
「……光だ」
俺は呟いた。
「この部屋の謎を解く鍵は、光だ」
俺は仲間たちに自分の仮説を話した。
「あの天秤は重さではなく、光の量を測るものじゃないでしょうか。三体の石像は、それぞれが特定の光を当てられるのを待っている。そして、正しい光を正しい量だけ天秤に注いだ時、道は開かれる」
「光の量……? でも、どうやって?」
リオが首を傾げる。
俺はアイテムボックスから、いくつかのスライムを取り出した。
「こいつらを使います」
俺が取り出したのは【ライト・スライム】、そして光を吸収する性質を持つ【シャドウスライム】のコアから創り出した【ダーク・スライム】。
俺はライト・スライムに指示を出し、天井のプリズムに向かって光を放たせた。
プリズムに当たった光は七色に分光され、ホール内に美しい虹を描き出す。
そして、その光が石像に当たると、石像が持っていたアイテム――剣、金貨袋、書物が、それぞれ異なる色の光を吸収し始めた。
剣は赤い光を、金貨袋は黄色い光を、そして書物は青い光を。
「光の三原色……!」
リオがはっとしたように声を上げた。
謎は解けた。
石版の言葉、『力の赤』、『富の黄』、『知恵の青』。この三色の光を天秤が釣り合うように、つまり同じ量だけ注ぎ込めばいい。
だが、プリズムから降り注ぐ光の量は均一ではない。赤の光が最も強く、青の光が最も弱い。
そこで、俺のスライムたちの出番だった。
「ライト・スライムは最も弱い青の光を増幅させて。ダーク・スライムは最も強い赤の光を、少しだけ吸収してくれ」
俺の指示に従い、二体のスライムが動き出す。
ライト・スライムが青い光を浴びてさらに輝きを増し、ダーク・スライムが赤い光の通り道に影を落としてその勢いを弱める。
そして、ついに。
三色の光の量が完全に均一になった、その瞬間。
天秤がカタン、と音を立てて完璧な水平を保った。
ゴゴゴゴゴ……!
螺旋階段を塞いでいた光の壁がゆっくりと消えていく。
俺たちは顔を見合わせ、勝利の笑みを浮かべた。
「やった……! やったね、ユーさん!」
「見事だ、ユー。お前の発想がなければ、永遠にこの部屋から出られなかったかもしれん」
仲間たちの称賛が心地よかった。
俺たちは螺旋階段を上り、第二階層へと向かった。
階段を上りきった先。そこは、第一階層の静謐な雰囲気とは打って変わって、殺伐とした空間だった。
広大な円形の闘技場のような場所。
床は血と油で黒ずみ、壁には無数の傷跡が刻まれている。そして、その空間を埋め尽くすように無数のゴーレムが、機械的な動作音を立てながら徘徊していた。石でできたもの、鉄でできたもの、中には水晶でできた、美しいが見るからに頑丈そうなゴーレムもいる。
『第二階層の試練は、「力」』
頭の中に再び大賢者の声が響く。
『知恵ある者よ、汝らがその知恵を守るだけの力を持つことを証明せよ。このゴーレム軍団を突破し、階層の主を打ち破りし時、次なる道が開かれん』
今度は問答無用の純粋な戦闘トライアル。
その数、ざっと見て五十体以上。
「……面白くなってきたじゃないか」
カエデがレイピアを抜き放ち、好戦的な笑みを浮かべた。謎解きで溜まった鬱憤を、ここで晴らすつもりらしい。
「数が多すぎる! 一体ずつ、確実に!」
リオが叫ぶ。
「ゴブ、インプたち! 援護を頼む!」
「はい、マスター!」
戦いの火蓋が切って落とされた。
カエデは嵐のようにゴーレムの群れへと突っ込んでいく。その剣閃は石のゴーレムをバターのように切り裂き、鉄のゴーレムの装甲を紙のように貫く。
だが、敵の数はあまりにも多い。
一体倒しても、すぐに新たな二体がその穴を埋める。
「マスター、あの水晶のゴーレム、硬いです! 僕の魔法が、あまり効きません!」
ゴブのファイアボールが水晶のゴーレムに命中するが、その表面を少し焦がすだけで決定的なダメージにはならない。
「くそっ、キリがない!」
俺は戦況を見極めていた。
このままではジリ貧だ。俺たちの体力が尽きるのが先か、ゴーレムを全滅させるのが先か。
何か、この状況を覆す一手はないか。
俺はゴーレムたちの装甲を破壊するために、アシッド・スライムを召喚した。緑色の溶解液がゴーレムの体を蝕んでいく。
確かに効果はある。だが、一体一体にスライムを付着させていては時間がかかりすぎる。
もっと効率的に。もっと広範囲に。
俺の脳裏に、一つの悪魔的な閃きが浮かんだ。
俺はアイテムボックスから、一つの巨大なスライムのコアを取り出した。
それはゴブリンの洞窟でホブゴビリン・キングを倒した時に使った、【ロックタール・スライム】のコア。超粘着と瞬間硬化の能力を持つ、俺の切り札の一つ。
俺は、そのコアにさらに【アシッド・スライム】の溶解能力と、【ボム・スライム】の爆発能力を、無理やり詰め込んでいく。
「ユー、何を創る気だ!?」
カエデが俺のただならぬ気配に気づいて叫ぶ。
俺は不敵に笑った。
「最高の絨毯爆撃をお見舞いしてやりますよ」
創造の光が弾けた。
生まれたのは、黒く、どろりとした巨大な粘液の塊。
俺は、そのスライムにたった一つの命令を下した。
「分裂し、飛び散れ!」
スライムは俺の命令に応え、無数の小さな粘液の弾丸となって闘技場全体へと弾け飛んだ。
それは、まるで黒い雨。
ゴーレム軍団のほぼ全てに、その黒い粘液が付着する。
そして、俺は最後の引き金を引いた。
「――溶解し、爆発しろ」
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