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第六十話 信頼の証
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ブラッドトレントの猛攻は凄まじかった。無数の根の触手が嵐のようにカエдеとエルフたちに襲いかかる。彼らは決死の覚悟で壁となり、俺が儀式を終えるための貴重な時間を稼いでくれていた。
「ぐっ……! キリがない!」
カエデが迫り来る触手を斬り払いながら歯噛みする。
「弓隊、怯むな! 聖なる矢で奴の動きを止めろ!」
アーロンも憎き人間の指示に従っていることが不本意ながらも、今は森を守るという大義のために必死に戦っていた。
俺は彼らの戦いを背中で感じながら、全ての集中力を創造の光に注ぎ込んでいた。
【ホーリー・スライム・アーク】の聖なる力。
【虹色胞子キノコ】の属性変化能力。
そして、この森そのものから感じる清浄な生命力。
俺が創り出そうとしているのは、もはやただのモンスターではなかった。
汚染という「負」の属性を、清浄という「正」の属性へと強制的に変換する、自然の摂理そのもの。
「おおおおおおっ!」
俺の全身から魔力がごっそりと吸い取られていく。視界が白く染まり、意識が遠のきそうになる。
だが、俺は歯を食いしばって耐えた。仲間たちが俺を信じて命を懸けてくれている。ここで倒れるわけにはいかない。
創造の光が極限まで高まった、その時。
光は爆発することなく、静かに、そして優しく俺の手の中に収束していった。
そこにいたのは、スライムだった。
だが、今まで創り出したどのスライムとも違う。
それは、まるで森の朝露を集めて固めたかのような透き通った翠色の体を持っていた。その内部では生命の光そのもののような柔らかな白い光が、穏やかに明滅している。
【ガイア・スライム】
ランク:ユニーク
スキル:テラ・ヒーリング、ネイチャー・サークル
ユニークスキル:ピュリフィケーション・フィールド
「……行け」
俺は、生まれたばかりのガイア・スライムを汚染された泉へとそっと放った。
翠色の雫は、ぽちゃん、と小さな音を立ててどす黒い水面へと吸い込まれていく。
その、瞬間だった。
泉の中心から、眩いばかりの翠色の光の柱が天に向かって立ち上った。
「な……!?」
戦っていたカエデもエルフたちも、そしてブラッドトレントさえも、そのあまりにも神々しい光景に動きを止めた。
ガイア・スライムが展開したユニークスキル『ピュリフィケーション・フィールド』。
それは、汚染された土地や水をその根源から浄化し、元の清浄な状態へと還す奇跡の力。
どす黒かった泉の水が光の柱を中心に、みるみるうちに透き通った青色へと変わっていく。水面から立ち上っていた紫色の瘴気は光に触れたそばから霧散し、代わりに清々しいマイナスイオンが森の空気を満たしていく。
「グルオオオオオ……!?」
ブラッドトレントが苦痛の絶叫を上げた。
彼を支えていた汚染された生命力の供給が完全に断たれたのだ。それどころか、清浄な泉の力は彼の邪悪な存在そのものを拒絶し、分解し始めていた。
彼の自慢だった無限の再生能力は、もはやない。
鋼鉄のようだった体表には亀裂が走り、そこから黒い瘴気が煙のように噴き出している。
「……今だ」
俺は静かに告げた。
その言葉は反撃の狼煙だった。
「行くぞ!」
カエデが誰よりも早く駆け出した。
「エルフの誇りを見せよ! あの忌まわしき偽りの木を、森から消し去るのだ!」
アーロンも仲間たちを鼓舞し、一斉に矢を放つ。
弱体化したブラッドトレントに、もはや抵抗する術はなかった。
カエデの聖なる剣がその胴体を両断し、エルフたちの無数の矢がその全身をハリネズミのように貫く。
そして、ゴブが詠唱した最大火力のファイアボールがとどめとなった。
「これが森を汚した、あなたへの罰です!」
灼熱の炎がブラッドトレントの巨体を包み込む。
再生能力を失った偽りの木は、今度こそ燃え盛る炎の中で断末魔の叫びと共に完全に灰燼と化した。
静寂。
後に残されたのは、完全に元の清らかさを取り戻した美しい泉と、そのほとりに立つ俺たちだけだった。
泉の水面には木漏れ日がきらきらと反射し、まるで宝石を散りばめたかのようだ。
「……信じられん」
アーロンが呆然と呟いた。
「聖なる泉が……元の姿に……」
他のエルフたちも、夢でも見ているかのようにその奇跡的な光景に見入っていた。
やて、彼らの視線はゆっくりと俺へと注がれた。
そこには、もはや敵意や侮蔑の色はなかった。ただ、純粋な畏敬と感謝の念だけが浮かんでいた。
アーロンが俺の前に進み出た。そして、エルフ族の最も格式の高い礼とされる片膝をついての礼を、俺に対して行った。
「……モンスターメイカー、ユー殿。我々はあなた方人間を見誤っていた。いや、あなたという稀有な存在を、我々のちっぽけな物差しで測ろうとしていた。許されよ」
彼に続き、他のエルフたちも一斉に俺に膝をついた。
それは彼らが俺たちを、この森を救った英雄として心から認めた証だった。
「顔を上げてください」
俺は少し照れくさくて、そう言った。
「俺たちは試練を果たしただけです。約束のものをいただけますか」
その時、森の奥から拍手をしながら長老が姿を現した。
「見事であった、人間の子らよ。汝らは力だけでなく、森を慈しむ気高き魂をも我らに示してくれた」
彼女はにっこりと微笑むと、その手に持っていた一本の美しい枝を俺に差し出した。
それは虹色の光を放ち、それ自体が生命を持っているかのように穏やかに脈打っていた。
【世界樹の枝】
レア度:伝説級
アイテム種別:モンスター素材
効果:生命の循環を司る、聖なる力を秘める。あらゆる創造、及び進化に、生命そのものの概念を付与する。
「約束の品だ。受け取るがよい。汝らならばその力を、正しく使うことができるだろう」
俺は震える手でその枝を受け取った。
伝説級素材、二つ目。それは種族を超えた信頼の証として、俺たちの手に託されたのだ。
「ありがとうございます」
俺が深く頭を下げると、長老は優しく言った。
「礼を言うのは我らの方だ。いつでもこの森を訪れるがよい。幻霧の森は、今日この時から汝らの第二の故郷となるのだから」
エルフたちの温かい見送りを受けながら、俺たちは幻霧の森を後にした。
俺たちの手の中には、伝説への二つ目の鍵が確かに握られていた。
残るは、あと一つ。
古竜が宿したという最後の素材、『古竜の心臓』。
俺たちの最も困難で、そして最も壮大な挑戦が、すぐそこに迫っていた。
「ぐっ……! キリがない!」
カエデが迫り来る触手を斬り払いながら歯噛みする。
「弓隊、怯むな! 聖なる矢で奴の動きを止めろ!」
アーロンも憎き人間の指示に従っていることが不本意ながらも、今は森を守るという大義のために必死に戦っていた。
俺は彼らの戦いを背中で感じながら、全ての集中力を創造の光に注ぎ込んでいた。
【ホーリー・スライム・アーク】の聖なる力。
【虹色胞子キノコ】の属性変化能力。
そして、この森そのものから感じる清浄な生命力。
俺が創り出そうとしているのは、もはやただのモンスターではなかった。
汚染という「負」の属性を、清浄という「正」の属性へと強制的に変換する、自然の摂理そのもの。
「おおおおおおっ!」
俺の全身から魔力がごっそりと吸い取られていく。視界が白く染まり、意識が遠のきそうになる。
だが、俺は歯を食いしばって耐えた。仲間たちが俺を信じて命を懸けてくれている。ここで倒れるわけにはいかない。
創造の光が極限まで高まった、その時。
光は爆発することなく、静かに、そして優しく俺の手の中に収束していった。
そこにいたのは、スライムだった。
だが、今まで創り出したどのスライムとも違う。
それは、まるで森の朝露を集めて固めたかのような透き通った翠色の体を持っていた。その内部では生命の光そのもののような柔らかな白い光が、穏やかに明滅している。
【ガイア・スライム】
ランク:ユニーク
スキル:テラ・ヒーリング、ネイチャー・サークル
ユニークスキル:ピュリフィケーション・フィールド
「……行け」
俺は、生まれたばかりのガイア・スライムを汚染された泉へとそっと放った。
翠色の雫は、ぽちゃん、と小さな音を立ててどす黒い水面へと吸い込まれていく。
その、瞬間だった。
泉の中心から、眩いばかりの翠色の光の柱が天に向かって立ち上った。
「な……!?」
戦っていたカエデもエルフたちも、そしてブラッドトレントさえも、そのあまりにも神々しい光景に動きを止めた。
ガイア・スライムが展開したユニークスキル『ピュリフィケーション・フィールド』。
それは、汚染された土地や水をその根源から浄化し、元の清浄な状態へと還す奇跡の力。
どす黒かった泉の水が光の柱を中心に、みるみるうちに透き通った青色へと変わっていく。水面から立ち上っていた紫色の瘴気は光に触れたそばから霧散し、代わりに清々しいマイナスイオンが森の空気を満たしていく。
「グルオオオオオ……!?」
ブラッドトレントが苦痛の絶叫を上げた。
彼を支えていた汚染された生命力の供給が完全に断たれたのだ。それどころか、清浄な泉の力は彼の邪悪な存在そのものを拒絶し、分解し始めていた。
彼の自慢だった無限の再生能力は、もはやない。
鋼鉄のようだった体表には亀裂が走り、そこから黒い瘴気が煙のように噴き出している。
「……今だ」
俺は静かに告げた。
その言葉は反撃の狼煙だった。
「行くぞ!」
カエデが誰よりも早く駆け出した。
「エルフの誇りを見せよ! あの忌まわしき偽りの木を、森から消し去るのだ!」
アーロンも仲間たちを鼓舞し、一斉に矢を放つ。
弱体化したブラッドトレントに、もはや抵抗する術はなかった。
カエデの聖なる剣がその胴体を両断し、エルフたちの無数の矢がその全身をハリネズミのように貫く。
そして、ゴブが詠唱した最大火力のファイアボールがとどめとなった。
「これが森を汚した、あなたへの罰です!」
灼熱の炎がブラッドトレントの巨体を包み込む。
再生能力を失った偽りの木は、今度こそ燃え盛る炎の中で断末魔の叫びと共に完全に灰燼と化した。
静寂。
後に残されたのは、完全に元の清らかさを取り戻した美しい泉と、そのほとりに立つ俺たちだけだった。
泉の水面には木漏れ日がきらきらと反射し、まるで宝石を散りばめたかのようだ。
「……信じられん」
アーロンが呆然と呟いた。
「聖なる泉が……元の姿に……」
他のエルフたちも、夢でも見ているかのようにその奇跡的な光景に見入っていた。
やて、彼らの視線はゆっくりと俺へと注がれた。
そこには、もはや敵意や侮蔑の色はなかった。ただ、純粋な畏敬と感謝の念だけが浮かんでいた。
アーロンが俺の前に進み出た。そして、エルフ族の最も格式の高い礼とされる片膝をついての礼を、俺に対して行った。
「……モンスターメイカー、ユー殿。我々はあなた方人間を見誤っていた。いや、あなたという稀有な存在を、我々のちっぽけな物差しで測ろうとしていた。許されよ」
彼に続き、他のエルフたちも一斉に俺に膝をついた。
それは彼らが俺たちを、この森を救った英雄として心から認めた証だった。
「顔を上げてください」
俺は少し照れくさくて、そう言った。
「俺たちは試練を果たしただけです。約束のものをいただけますか」
その時、森の奥から拍手をしながら長老が姿を現した。
「見事であった、人間の子らよ。汝らは力だけでなく、森を慈しむ気高き魂をも我らに示してくれた」
彼女はにっこりと微笑むと、その手に持っていた一本の美しい枝を俺に差し出した。
それは虹色の光を放ち、それ自体が生命を持っているかのように穏やかに脈打っていた。
【世界樹の枝】
レア度:伝説級
アイテム種別:モンスター素材
効果:生命の循環を司る、聖なる力を秘める。あらゆる創造、及び進化に、生命そのものの概念を付与する。
「約束の品だ。受け取るがよい。汝らならばその力を、正しく使うことができるだろう」
俺は震える手でその枝を受け取った。
伝説級素材、二つ目。それは種族を超えた信頼の証として、俺たちの手に託されたのだ。
「ありがとうございます」
俺が深く頭を下げると、長老は優しく言った。
「礼を言うのは我らの方だ。いつでもこの森を訪れるがよい。幻霧の森は、今日この時から汝らの第二の故郷となるのだから」
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